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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

74話 闇ギルド再び

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 ケンジが部屋の隅をキッと睨んだ。すると、そこには真っ黒な黒装束の男が立っていた。

「ケ、ケンジ様!」

「ムシュダルクさん、大丈夫!あれは幻影だよ」

「ほ、本当ですか?」

「さすがだな……」

「当たり前だ!ここにはお前のような人間が侵入できるほど、やわな結界が張っているわけないだろ。それで、何の用だ?宣戦布告でもしにきたのか?」

「ば、馬鹿な事を言うな!闇ギルドは今回の件あずかり知らぬ事だ!あんたとの不可侵条約は守られていると言いに来たんだ」

「ほう!そんな事を信じろというのか?闇ギルドの証拠が、こんなにたくさん出てきているんだぞ?」

「ま、待て!今、闇ギルドはヒューマン国内に拠点は一切ないのだ!」

「はぁあ?どういう事だよ?」

「当たり前だ!Freedom国が勢力を伸ばし、聖教国は滅亡王国と帝国は風前の灯。そんな国で、闇ギルドの報酬を賄えるわけがないだろうが!」

「だが、実際この契約の書類が出てきているではないか?」

「確かに、この国でなら活動はできるが、不可侵条約を結んだ闇ギルドには手が出せんよ!手を出した瞬間、我らが潰される。そんな決まったリスクには手を出せんよ」

「なら、この闇ギルドはいったい?」

「何を言ってやがる!この国にも既存のギルドとは違う、独自のギルドが存在しているだろ?」

「なっ⁉まさか、この国で独自の闇ギルドが出来上がっているのか?」

「そういう事だ!馬鹿な連中だ……そういう訳で、この件は闇ギルドとは一切関係が無い!」

「という事は?」

「我らとしても、厄介なギルドだ!潰してくれて構わんよ。闇ギルドが、あんたと不可侵条約を結んだ時に抜け出た半端者の集まりだ。我らとしても見つけ次第始末していたところだ!」

 闇ギルドが言うには、数年前に闇ギルドと不可侵条約を結んだ時に、納得のいかない闇ギルド構成員達が反発し離脱し、その人間達が新たに闇ギルドを結成した。
 そして、裕福な国となったFreedom国内に、他国から元貴族達が流れ込んだことで、新生闇ギルドがFreedom国領で活動する様になったらしい。
 闇ギルドとしても、不可侵条約を結んでいる手前、なかなかアジトを限定する事が困難で、今回抜け出た構成員を始末する前にケンジが始末してしまったのである。

 これには、闇ギルドは騒然となり、闇ギルドマスターがあわてて行動したという事だった。

「一つ聞きたいがいいか?」

「なんだ?」

「Freedom国領に、何人ほど逃げ込んでいるかわかっているのか?」

「数年前に、不可侵条約を結んだときは数百人程度だったが、今の新生闇ギルドはどのくらいの規模になっているのか、我々でも把握はしていない。というより出来ないと言った方が正しいな」

「何てことだ……」

 ムシュダルクは、闇ギルドマスターの言葉に頭を抱えるしかなかった。実際、行方不明者や殺されていた人間がここ1年ほど増えてきていて、報告書が上がってきていたからだ。まさか、闇ギルドが介入してきているとは思いもしなかったのだ。

「まあ、この国は本当にいい国だよ!我らも、不可侵条約が無ければ拠点を置きたいくらいだよ。はははははは!」

「ぬかせ!」

 ケンジは立ち上がり、闇ギルドマスターに殴りかかろうとした。

「おーっと!待て待て!この姿は幻影だ。無駄な事はせぬほうがいい」

「チッ!」

「そういう訳だから、この件やそこにある証拠の品々、又これから起こるであろう事件は、闇ギルドは一切預かりの知らなぬ事だ」

「だが、元はといえば闇ギルドから抜け出た構成員ではないか?」

「ムシュダルクと言ったか?じゃあ聞くが、この国のギルドから出た人間が問題を起こした場合、この国のギルドは何か責任を取るというのか?」

「そ、それは……」

「取らないだろ?それと一緒の事だよ。今回この件やこれから起こる事は闇ギルドに一切責任が無いという事だよ。だが、これからも闇ギルドは、不可侵条約を破ることは無いと伝えておきたくてな。こうして、わざわざ参上したという事だよ」

「わかったよ!お前の言う事に嘘はないと信じよう」

「そうか。これで我らも、安心して他の国で活動が出来るよ」

 そういって、闇ギルドマスターは安心してスッと姿を消した。それを見ていたムシュダルクは、ケンジに話しかけた。

「ケンジ様……どうなさるおつもりですか?」

「どうもしないさ……」

「な、なんですか?放って置いたら犠牲者が増えるのでは?」

「確かに、誘拐事件が増えている傾向にあるみたいだな?」

「だったら、何とかしないと。ケンジ様は、この国の奴隷を減らしたいのですよね?」

「ああ、確かに減らしたいと思うが、今回の件で分かったことがある」

「何がですか?」

「貴族達だよ!あいつ等を何とかしないと、世の中は変わらんことがよく理解したよ」

「なっ⁉」

「新生闇ギルドはこのまま泳がす。そして、Freedom国領に流れ込んで来た、元貴族達を一網打尽にしてやるよ!まず、フリーの町で闇ギルドとつながりのあった、この書類の人間を全て逮捕だ」

 ケンジは、今回の件で明るみに出た、元貴族達を全て逮捕した。その中には誘拐や暗殺多岐にわたっていた。
 元貴族を止め商売人となった人間もいて、ライバルになるであろう商会の会長や社長を暗殺し、自分の店を成長させる元貴族もいた。

 逮捕された元貴族達は、Freedom国の判決に不満をあらわにした。自分達は元貴族だから、奴隷に落とすのなら犯罪奴隷ではなく特別奴隷だとわめき散らしていた。

「何言ってやがる!お前達は貴族じゃない!この国に貴族に対しての甘い判決なんかないんだ!犯罪を犯せば国民として罰せられるだけなんだ」

「そんな常識は聞いた事がない!」

「何を言っている?この国には貴族がいないから、貴族がいる国と一緒なわけあるわけないじゃないか!」

「むぐぐぐ!」

「それに、お前は奴隷に堕ちるのではなく死刑だよ。お前一人で罪のない人を何人殺しているんだ?」

 ケンジの言葉に、自分の命が風前の灯火だとようやく気づき、命乞いをし始めた。

「わしは直接手を下していない!だから、死刑はおかしい!」

「何を言ってやがる。お前みたいな人間は、これ以上生きていても更生は無理と判断されるよ」

「ば、馬鹿な……わしが、なぜ死刑にならなければいかんのだ!」

「お前みたいな、傲慢で自己中心な人間は死ななきゃ治らんよ。自分の行いを後悔して死んでいくがいい!」

 ケンジは、闇ギルドと繋がっている元貴族達をどんどん処刑させた。そして、奴隷に落とされた何の罪のない人間達を、出来るだけ探し出す事にしたのである。

 ジョン一家のように、世界地図でサーチすればすぐに見つかる為、サーチされなかった人間は、もうこの世にはいないものとし諦めるしかなかった。

「あなた、そこまでしなくてもいいんじゃないの?」

「マイ……この誘拐された人達は、ここフリーの町の住人だぞ?」

「だからって、貴方のやっていることは常軌を逸しているわよ!」

「だけどよう……俺がもっと早く、闇ギルドの存在に気づいていれば……」

「気づいたからってなんなのよ!あなたが、しょいこむ必要がどこにあるのよ?」

「そうかもしれないが……」

「そうかもしれないじゃなくそうなのよ!犯罪者を捕らえる事は必要だよ。だけど、その犠牲になった人間も、あなたがどうにかする必要はないよ」

「……」

「よく考えてよ!今はまだいいよ?だけど、このまま犠牲になった人間を、貴方の奴隷にして衣食住の保証をしていくんでしょ?どこからそのお金を捻出していくつもりなのよ」

「それは……」

「あなたが優しい事はいいけど、もっと現実的に考えなさいよ!」

「分かったよ……」

「あなたの悪い癖は、この世界にきてなんでも出来るようになったからよ。もっと足元を見て、いっぺんにこなさない様に、一個づつ解決していきなさい」

「……」

「納得いかないの?」

「ああ……こうしている間にも、犠牲者は増えているかもしれないんだからな」

「貴方のやろうとしているのは世の中の改革よ。そんなすぐに出来るわけないじゃない!王国や帝国だって、何世代も掛けてやってきたにもかかわらず今あんな状態なのよ?そう簡単にできるような事じゃないの。分かってる?」

「ああ……」

「あなたは、これから先人間には考えられないような、時の流れを過ごしていくわ。その時の長さを、利用していくくらいの気持ちで構えていくぐらいがちょうどいいのよ」

 マイの言葉で、何となく落ち着いたケンジがいた。どうしても、貴族達の横暴を目にしたら、頭に血が上り視野が狭くなるケンジだったのだ。
 そして、マイには貴族達の逮捕は衛兵に任せ、貴族達の処分は裁判に任せろと言われた。ケンジは、ケンジにしかできない事をやったらいいと、再度念を押される事になったのだった。
 そして、頭が冷えたケンジは、隷属の首輪の事を調べて1年という時間が過ぎた。


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