異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依

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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

65話 隷属の首輪

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 王国の使者達が帰った後、ランガスはケンジに報告書をまとめ提出した。その報告書を見たケンジは、大笑いしていた。

「ケンジ様、どうかしたのですか?」

 このころになると、ケンジの側には秘書が付いていた。その女性は、シャイアという名前で一般応募から面接を受け、合格した女性だった。
 さすが、エルフの女性であり見た目は造形美のような美しさを持っていて、システィナとはまた違った魅力を持っていた。

「この報告書なんだがな、先日王国の宰相達が訪問した時の事が書いてあるんだよ」

「それのどこが、そんなにおかしいのですか?」

「シャイア、君はこの国をどう思う?」

「いきなりですね。わたしは、この国は本当に安全で、国民達がのびのび生活できていて良いと思いますよ。最初この国に移住してきて、本当にカルチャーショックを受けたくらいですしね」

「カルチャーショック?」

「ええ、まず奴隷達が明るく店で働いている事です。そして、王族や貴族がいない事と、平民との区別がないという事と、全員が国民と呼ばれている事でした」

 シャイアは、貴族がいない事で国民達はのびのびと生活できている事実や、学校教育というものが無料で受けることが出来ている事など口早に説明した。

「そして、なんといっても銭湯で一日の疲れが癒され、次の日も元気に頑張れるという事ですね」

「今シャイアの言ったことが、普通になれば王国の使者達も良かったんだがな」

「それは無理ですよ……こんな国は、ここFreedom国だけですもの」

「だから、さっき俺はこの報告書を見て笑ってしまったんだよ。これを見てみな」

 ケンジはシャイアに、王国がなぜこの国に訪問した理由が書かれている文章を見せた。

「ああ……これはあまりに意味がありませんね……」

「だろ?この国の普通は、他国にとって普通じゃないからな。Freedomに、そんな意見を求めたとしても平行線で、話が終わるのは当たり前だよ」

「王国はどうなるのでしょうね?」

「まあ、Freedom国の知ったところではないよ。いずれ聖教国と同じ末路になれば、Freedomが動けばいいだけだからな」

「ケンジ様は、優しいのか怖いのかどうか分からない性格ですね……」

「オイオイ……いきなり何を言うんだよ」

「だって、ケンジ様のようなお人なら国が滅亡する前に、何らかの手は打てるはずなのに、それをやらず滅亡してから人々を救うのですから……」

「それを言われたら、何にも言えないがシャイアも先ほど言っただろ?」

「何をですか?」

「この国には貴族がいなくて、国民達がのびのび活気ある生活をしているって」

「えぇ、言いましたが、ケンジ様は貴族のいない世の中をおつくりになるつもりですか?」

「実際、今までの世の中はどうだ?そりゃ……貴族の中にも良い人間はいるが、そんなのはほんの一握りだと思わないか?」

「確かにそうだと思います」

「俺も、こんなこと最初からするつもりはなかったけど、あまりにこの世界の権力者達は傲慢で自分勝手な人間が多いからな。Freedom国のような国が実現できれば、王族や貴族など不必要だと思うんだよな」

「確かに、この国では貴族はいませんが、やはりケンジ様のような王族は必要かと……」

「ありがとな」

 ケンジはシャイアの肩に手を置き、自分が必要と言ってくれたことにお礼を言った。

「まあ、急いでこのシステムを実現したところで成功するわけないし、ゆっくりこの国の普通を構築していくよ」

 シャイアは、ケンジがこの国の普通を構築するという言葉に首を傾げ、ケンジがどこに見据えているのかわからなかった。シャイアが分かる事は、ケンジがこの国のトップにいる限りは安泰だという事だけだった。

「ケンジ様!しゃべっている場合ではございませんでした……今やっている作業を昼までには終わらせてください!昼休憩をはさみ2時からは、ムシュダルク様達幹部の方との会議が控えています」

「ええええ!俺は会議に出席しなくてもいいだろ?それより、やりたい事があるんだよ!」

「ダメです!そういって、先週も会議をすっぽかしたではありませんか!」

「報告だけでいいよ!俺はもうあいつ等に任せているんだし……」

「ダメです!ほら、早く!この作業を終わらせないと昼休憩も無くなりますよ」

「ひぃ~~~~~!」
(俺よりシャイアの方が怖いじゃないか……)

「ケンジ様……何か言いましたか?」

「いえ……何も言ってません……」

 ケンジは言葉に出していないのに、シャイアが睨みながらそういってきた事に寒気がした。女性が、時々発揮する勘の良さに、ケンジは逆らわず言葉を飲み込んだ。
 ケンジは、一般の人間を身近に置く事で、ギル達の身分をはっきりさせるようにしていた。この事で、ギル達が自立する様に促したのである。





 そういった忙しい中、ケンジは隷属の首輪を鑑定し、ギル達を解放するにあたり、奴隷紋がすぐに消えないかと研究していた。

「ケンジ様。今日は何をしているのですか?」

「隷属の首輪を、何とかしたいと思ってな……鑑定で首輪を調べているんだよ」

「本当にケンジ様は、奴隷達を解放させるおつもりですか?」

「ダメなのか?」

「そうは言いませんが、Freedom店で働く奴隷達はよく働き、見栄えもよろしいではないですか」

「それが、解放となんの関係あるんだ?」

「奴隷は、その主の財産ですよ?何も開放などせずともいいかと思って……」

「まあ、ギル達がどうしたいのかによるんだけどな」

「それがおかしいんですよ。奴隷に身の振り方を選ばせるだなんて」

「だが、俺はギル達を奴隷と思ってないからなぁ~。奴隷という立場じゃなくとも、今の関係は続けて行けると思うからな」

「そういうものですか?」

「まあ、Freedomは奴隷のない国を目指しているからな」

「本当にそんな世の中が来るのですか?」

「まあ、実際の所この国には貴族がいないだろ?」

「そうですけど……」

「だったら、奴隷のいない国が出来てもおかしくはないだろ?まあ、実際はどうなるかわからないんだけどな」

「まあ、確かに解放されても、奴隷紋が完全に消えるまで数年かかるんじゃ、誰も解放されたがりませんよね」

「そうだな……」

「それで、何か手掛かりは掴めたのですか?」

「まあ、エリクサーでも奴隷紋が治らない理由は分かったかな!」

「ほ、本当ですか⁉それで理由はなんなんですか?」

「エリクサーって、どんなことも治すポーションって事は知っているよな?」

「それ位は、誰でも知っていますよ」

「だから治療が出来ないんだよなぁ……」

「はっ?意味が分からないんですが?」

「この隷属の首輪って、ホントよく考えて作っているよ。要は、この隷属の首輪をつける事で、その効果はデメリットじゃないんだよ」

「デメリットじゃない?どう考えても、デメリットしかないと思うんですが……」 

「実はな、この隷属の首輪をつける事で、寿命が数十年延びる効果があるんだよ」

「ええええ!本当ですか?」

「ただし、その人間の魅力を犠牲にしてというおまけ付きだけどな……奴隷に落とされた時に、この首輪をつけられるだろ?そうすると魂に直接効果を及ぼさせるみたいなんだよ」

「魂にですか?」

「魂に直接効果を及ぼし、寿命を延ばす事で主人より先に自然死をさせない目的で作られたんだろうなあ。そのエネルギーに、その人間のカリスマ性を吸収させカリスマ性が0になるみたいだな」

「だけど、ギル達は普通に接することができてますよ」

「それは隷属の首輪が装備されているからだよ。解放されると隷属の首輪がなくなるだろ?その為にその人物の魅力がなくなり、隷属紋が消えるまでの間ゆっくり時間をかけて元の状態に戻るんだよ」

「って事は、寿命が延びるアイテムであって、デメリットじゃないから治療という概念で適応されないって事なのですね?」

「そういう事だ!」

「じゃあ、奴隷からの解放は無理じゃないですか?」

「今のところは、賢者の石しかないかもな……」

 ケンジとシャイアはお互いをみて、苦笑いするしかなかったが、だからといってケンジは諦める事はしなかった。

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