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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

56話 王国と聖教国の会合

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 ケンジ達はマイに、ギル達奴隷達の教育をちゃんとする様にと注意されていた頃、王国や聖教国ではギルドに苦言を申し渡されていた。

「このままでは共倒れになりますが、どうするつもりですか?」

「そんな事を言われても、人口の流出が止まらないんだから、ギルドの方でも何とか便利の良いモノを発明して頂けませんか?」

「王国も、かつては平民達が一番生活しやすいと誇った国ですよね?なんとかならないのですか?」

「そうは言うが……ワシの国でも、人口流出が止まらんのだ!このままでは、ガーライの町も捨て領地縮小を考えているんだ!」

 王国では、王都から遠い町を捨て縮小を考えるほど、どうしようもない状態になっていた。今の王国は、かつて繁栄した王国とは程遠く、貴族位を返上し平民となった貴族達もいっぱいいたのである。
 貴族が貴族位を捨て、Freedom国に移住を決めているのだから、平民達も国への信頼がなくなっていてもしょうがないのである。
 
 当然、これは聖教国でも同じであり、聖都から離れている町は捨て縮小していた。これによりギルドも又、国が捨てた町から撤退するしかなかった。

「このままでは、ギルドも売り上げがなくなるのです!」

「ギルドは、経済面でなんとしてくれないと、国が成り立たない!」

 キース国王と聖女アリサは、ギルドの方にも問題があるのではないかと責め立てた。当然ギルドマスターも負けてはおらず、魔物の対処が出来なくなった国の責任だとせめたてたのである。

「わし等は、馬車や甘味とか経済に影響を与えておる!どちらかといえば、平民達は国に不信感をもった結果じゃないですか?」

「なにが!馬車や甘味だ。その二つはFreedomのおかげではないか!それに代わる何かを生み出せたのか?」

「むぐぐぐ!今、新しい魔道具を開発している途中だ!」

「わしが知らないと思っているのか?ギルドの湯沸かし器が又売り物にならなくなったのを!あのおかげで貴族達がいなくなった原因でもあるのだぞ!」

 今や、大陸のヒューマン領ではFreedom国がなければ、なにも出来ない国ばかりになっていた。ここにはいないが、帝国領も又人口が減り続けていたのだ。

 帝国領の平民達は、どちらかといえば人類至上主義の国民性がある為、帝国領から出るようなことは無かったが、ここにきてFreedom支店が進出してきた影響で、国を出る人間が増えてきていた。
  帝国でも、人口流出は問題になってきており、更に領地を縮小していた為、ギルドの売り上げはさらに少なくなっていた。

 そして、国に捨てられた町はFreedom国に助けを求めていた。Freedomでは、順に支店を町の中に移店を計画して、領地を増やし確固たる地位を確立していた。
 本来、国の領地は外側に開拓村を作り町に成長させ、領地を増やしていくのがセオリーなのだが、Freedom国は他国が捨てた町からの援助でそれにこたえ、領地を増やしていったのである。

 なので、普通ではあり得ない事なのだが、Freedom国の町の間に他国がある状態になっていた。しかし、Freedom国の町は転移マットで繋がる為、他国を通り過ぎて移動する概念がない。つまり、今までなら帝国領の町から聖教国領の町まで、何か月も旅をしないと辿り着けなかった旅が一瞬で到着してしまうのだ。

 この事も又、Freedom国に移住する人間が増える要因になっていた。

「このままでは、国が吸収されてしまうんじゃないのか?」

「聖教国は、女神の信仰を広める為そんな事になれば……」

「ギルドは、あの国に入れないんだ!貴方達王国や聖教国には、頑張って貰わなければならんのだ!」

「「それを言うなら、ギルドこそ何か便利の良い魔道具を!」」

 もはや、国のトップは他力本願で自分達で何か行動を起こそうとすら考えが浮かばなかった。そして、ギルドマスターもまたどうしようもないほど追い詰められていた。

 その時、ギルドの幹部連中はもう諦めに近いものを感じ取っていた。

(このままではもうギルドは終わりね……)

(アーチェも失望しているようね……あたしも次を考えなくっちゃ……)

「ギルドマスター!少しよろしいですか?」

 アーチェがギルドマスターに話しかけた。

「何かいい案があるのか?」

「申し訳ありません……このまま私達がいても埒が明かないと思います!いったん私達は、ギルド本部に帰り対策を立てたいと……」

「な、何を言っておる!だからこうして話し合っているではないか!お前達も何かいい案を出さないか!」

 ギルドマスターは、幹部達の帰還を認めなかった。人数が多い方がいい案が出るのではないかと思ったからだ。しかし、ここには責任の擦り合いばかりであり、会議ではなく時間の無駄としか言いようがなかったのだ。

「アーチェ……ここは静かにしていた方がいいかと……」
「そ、そうねモーリス……だけどこのままでは……」
「多分、ギルドは終わりでしょうね。王国や聖教国はもう終わっているけどね」

 二人は小さな声で話し合っていた。

「何を二人でコソコソ話しておる!何かあるなら大きな声で話せ!」

「申し訳ありません……」
「私達もいい案が出てきません!」

「他の者はどうした?」

 ギルドマスターの声に、他の幹部も又下を向き何も発案しなかったのだ。

 キース王はギルドに、Freedom国のように銭湯はできないのかと尋ねたが、銭湯のような水量を温める湯沸かし器はどう考えても出来ないと答えた。


 ギルドも又、国にFreedom国のように内政で学校に通う子供手当のような、援助が出来ないのかと聞いた。

「ば、馬鹿な!そんな税金の使い方が出来るわけなかろう!それに、そんな予算を組んだら国が破産するわ!」

「だが、Freedomではそういう平民達へのサポートがあるから移住するのでは?」

「平民が、学業など何の役に立つのだ!そんな無駄な事に予算を組めるわけなかろう!」

「ですが、Freedom国では今年、孤児院出身の子供が成人し、国の政に携わったと情報がありますが……」

「馬鹿な!孤児院の子供が政に起用したと申すのか?」

「そのように聞いてます!」

 すると、アーチェの言葉に王国側の重鎮達が、大声を出して笑いだしたのだ。

「「「「わはははははは!」」」」」

「何を笑っているのですか?」

「孤児院の出身者が、国の大事に携わっているのか?それを聞いて安心したわ!これでFreedom国も風前の灯火よ」
「そうだ!それを聞いて安心した。今はまだいいが、孤児院の人間が貴族の仕事をやるだなんて片腹痛いわ!」

 宰相や公爵は、その情報を聞き大笑いしていた。

「何が可笑しいのですか?Freedom国では、内政が出来る人間が貴族様以外から輩出されたという事じゃないですか?」

「はんっ!何が輩出だ!孤児院の人間といえば、今まで文字もロクに読めない人間だ!そんな人間がまともに仕事など出来るものか?」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」
「これで、Freedom国も放って置いてもいずれ縮小するはずだ!」

 その言葉に、王国側は数年我慢すれば、平民達はまた王国領に移住すると思いこんだのだ。それに対して、ギルドマスターも安心して笑顔となっていた。

 そして、聖教国側はFreedomの行動がよめなかった。聖女アリサは、本当に孤児院の人間が内政をと疑問符が出ていて意見も出なかった。

「聖女様、本当にFreedomではそんな無謀な事を?」

「ですが、ケンジ様の事です。そんな無茶な事をしてもおかしくは……」

「いくらなんでも、無謀すぎるのでは?」

「今までの、ケンジ様を見てあり得ない事ではありませんが、実際孤児院の人間が働くのですから、今この時点では何とも言えませんね……」

 聖女アリサは、ケンジが無謀な事をしても何とかしてしまうと思うが、孤児院の人間が内政をして出来る物なのかと理解できなかった。
 しかし、実際の所聖教国も又、ケンジが内政をするのではなく、孤児院の人間が内政をするという情報を聞き、安堵していたのも確かだった。

 ギルドの幹部達だけが、学校の実用性を危険視していたので、国のトップ達の考えに絶句した。

(そんな……まさかこんなに愚かな人間が……)
(本当にこれでもう……)
((((……))))

 そして、キース王や宰相、ギルドマスターは笑顔になっていたことに、ギルド幹部達は絶望し項垂れてしまった。


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