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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

48話 国民達の承諾

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 ケンジは、早速ホーチュン・ホープ・ホネスト3つの町には、学校の建設が出来ない事を伝えた。すると、ムシュダルクの言った通り国民から不満が溢れたのである。

「国王様!何でこの町には学校は無理なのですか?」
「フリーの町に子供達だけ行かせるのは……」
「そうです!7歳の子供だけ知らない土地に行かせるのは!」

「ああ!分かっている」

「だったらどうしてですか?」

「学校という事業は、まだ始まったばかりだ!だから、もっと慎重に事を運ばないと、学校運営が出来なくなってしまうんだよ」

「はい……」

「それに、いま最大の壁になっているのが予算なんだよ!」

「予算?」

「そう、予算の問題だ!このFreedom領は、他の国と比べて貴方達から税金を少し多く貰っている。本当に悪いと思っている」

 ケンジは、国民達に頭を下げたのである。

「国王様止めてください!我々は、それに納得してこの国に住まわせてもらっています!それに少し高いと言っても生活が出来ないわけではないですし、それを上回る制度に助かっているんです」

「ありがとう!話を戻すが、学校運営は今はまだ慎重に運びたいと思っている!君達の言う通り、フリー以外の町に学校を建てる事も可能といえば可能だが、それだと君達に又負担をかけてしまうんだよ」

「それって……」

「そう……増税という形での協力だ」

「そ、それは……」

 増税という言葉に、ここ集会場はざわめき、子供達の親はアタフタし出した。

「みんな落ち着いてくれ!」

「国王様、その税金はどのくらいに?」

 国民達が、アタフタするこの気持ちも、ケンジはよく理解している。地球でも消費税が数%上がっただけで、国民は騒いだ事を思い出したからだ。

「だから、落ち着いてくれ!そうならない為に、俺達は慎重に事を進めて行くつもりだ‼だから、一気に学校建設を進めてしまうと増税という事になる」

「でしたら。どれくらい待てば?」

「貴方達の子供が8歳になり、もう通えない年になるかもしれない……」

「それじゃ……意味が……」

「言っておくが、意味がないなんて思わないでくれよ!」

「えっ⁉」

「勉強というものは、その気になったらいつでも出来るものなんだからな。ただ、言っちゃ悪いが貴方達は子供援助支援金が目当てなんだろ?」

「そ、それは……」

「あの支援金は、子供の為であって貴方達の暮らしを楽にさせる物ではないと理解してほしいんだ。貴方達の気持ちはいたいほどわかるが、それだけは勘違いしないでほしい」

 ケンジの言葉に、国民達は下を向き俯いてしまった。ケンジの説明はあくまでも、子供達を学校に通わせたい家族の支援金であり、子供を利用した生活援助金ではない事を分かりやすく説明したのだ。

「つまり、自分達の子供が勉学より家業を継ぎ、それで十分やっていけるのならその道に行かせてやる方が子供達のためになると考えてほしいんだよ」

「だが、勉学を学べるチャンスなんですよ?」

「だからこそ、子供達の自主性を尊重してあげてほしいんだ!勉学なんて無理やりやらせても、身にならないのは分かるだろ?」

「そ、それは……」

「それと、勉学が必要になったらいつでも出来るのが勉学だ!その人間にやる気があるなら、大人になってからでも出来る物だよ?」

「そんなところあるわけないじゃないですか?」

「だから、学校の可能性を今、慎重に進めているんじゃないか」

「それって、どういう事で?」

「とりあえず、今いえる事は国民の君達が本気で勉強をして何を学びたいかにあるという事だ?仮に君達大人は、勉学を自分の物にしたいか?」

「そりゃ、ワシらだって学べるのなら学びたいさ!商売してたら、足し算がもっとスムーズに行えたらと、思う事も多々にあるからな。それに息子が、ワシ等の宿屋を継ぐとなったら、大いに役に立つだろうしな」

「だったら、それを学んだらいいと思うよ!」

「だが、この町には学校が出来ないんですよね?」

「できないとは言ってない!急いで建設が出来ないと言っただけだ」

「ですが、7歳を過ぎたら学校に入学は……」

「今はな!」

「それって!」

「そうだ。余裕が出来たら大人も学べるようにしたいと思っている。だが、その為には慎重に物事は考えないといけないだろ?」

「そういう事ですか⁉」

「ただ、今8歳までの子供はタダで通えてさらに、子ども手当が出ているのは知っているな!」

「はい……」

「当然大人が通う事になると、子供手当なんかないし授業料なんかも支払って貰う事になる」

「それでは、ワシらに勉強の機会なんて一生無いではありませんか?」

「なんでだ?貴族達が雇う家庭教師のような高い金ではないぞ?」

「いいか?勉学を学びたいのにそんな考えでどうするんだ?」

「ですが……」

「いいことを教えてやろう!フリーの町では、先行的に学校が出来る前に、孤児院に教師を派遣していたんだ」

「はぁあ⁉孤児院に教師を?」

「そして、その孤児院を巣立った孤児達が、今どうなっていると思う?」

「どうなっているって……孤児院の子供といったら、ギルドで冒険者になるのが関の山で、文字も読めずに役に立たないのが相場としか……」

「今年、その孤児院を巣立った子供は、Freedom国の内政を担う仕事についたよ!」

「「「「なんですって!」」」」

 この衝撃は、母親の方に響いたようで、女性達が大きな声を上げた。

「国王様!それは本当なのですか?」

「ああ!本当の事だ!その子達はこれからのFreedomを、担っていく頼もしい人材だぞ?」

「私達の子供にも、そのチャンスが?」

「ああ!だからいっただろ?勉学なんてものは、いつどこでどのようにやってもできるものだって!その子達も、孤児という逆境を吹き飛ばし頑張った結果、今の状況があるんだよ」

 ケンジの言葉に、今まで自分達の考えが、如何に愚かだった事に気づかされた。学校に子供達入れたら、毎月支援金を受け取れる事ばかり目が行き、本質は子供達の未来の為という事に気づかされた。
 そして、ケンジが言いたい事は、大人になっても勉強はいつでもできるものであって、本人にその意思とやる気があるかどうかという事だった。
 大人になっても、今の状況を変えたいのであれば努力が必要で、その一歩を踏み出す勇気があるかという事だ。

 子供達は大人が守る存在であり、色んな可能性を選べる状態にしてあげる事。そして、大人達は、自分の人生をどのようにするのか、流されるのではなく自分の意思を持つ事だった。


 そして、ケンジは貴族ではない子供達が内政の仕事に就いた事を話しだした。

「いいか?貴族の子供でない孤児の子供達が内政に携わる職に就けるのがFreedom国だ。それに貴方達は、俺の事王族と思っているだろ?」

「そりゃそうですよ!今、実際このように面と向かって話しているこの状況だって信じられない程です」

「こうして、面と向かって話が出来ている時点で、俺は王族とは違うんだよ!」

「はあ?何を言っておられるのですか?」

「じゃあ、この国に貴族はいるか?」

「いえ……いません」

「そう!この国に貴族はいない。ってことはだな、俺は王族ではないんだよ。今まで貴族や王族だけが国の内政に関わっていただろ?」

「何をおっしゃっているのですか!まぎれもなくこの国のトップじゃありませんか!確かに、ワシ達平民がどう逆らっても、国の事業に携わる事はできませんでした……」

「まあ、みんなが混乱するのは分かるが、いずれ分かる時が来るよ!Freedom国はどうなっていくのかをな」

 ケンジは、この国に貴族や平民がいないという事を、こういう機会で徐々に浸透させていく事にして、ある程度国民という事が広まってから公式発表することにした。

 これは、今学校に通っている子供達が大人になり、その子達がFreedom国の事を理解できてからの事になるだろうと、ケンジは思っていた。それほどまでに、ケンジは大陸の常識が覆る事がないだろうと思ったからだ。

「まあ、話は脱線したが、学校事業というのはそれほどまでに効果のある事だと、理解してもらえたと思う」

「「「「「はい!」」」」」

「今はフリーの町にしかない学校だが、まだまだ始まったばかりで色んな事を試行錯誤してやっていきたいんだ!本当に貴方達には、不公平な事になってしまって申し訳ないが、もう少し時間を貰えるだろうか?」

 ケンジは、国民達に国の事業がスムーズにいっていない事を謝罪して、今一度頭を下げたのである。国民達は、ケンジの潔さと自分達の事をちゃんと考えている事が伝わり、国民達はその場に土下座したのである。




 その様子を、見ていたのはムシュダルクであり、あの時会議で言っていた事をやっと理解できたのである。王族という、ちっぽけなプライドなんか捨て平民達に寄り添い、今の状況を正直に話す事が大事な事であり、税金は当たり前のように湧いてくるものでは無いというのが分かった。

 そして、国の政策は今生きている者達にやるのは当然の事であり、100年先を見据えてやる事の意味も分かったのだ。
 子供達の未来の為なら、大人達は無理を承知で頑張りいい世の中にしてくれるからと理解が出来て、ムシュダルク達内政を担っている人間はその事に痛感したのだった。


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