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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

46話 大盛況

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 フィアナの件があり、ティアナがフォローしたおかげもあって、なんとか大事にならずにすんだ。

 ケンジはホッとしたように胸をなでおろし、銭湯の開店の準備をしていた。銭湯の前で準備をしていたケンジは、国民達に見つかり話しかけられたのだ。

「国王様!こんなところで何をしてらっしゃるのですか?」

 この状況も又、Freedom特有の物だった。普通は、王族にこんな気安く声などかけられないが、Freedomでは普通の事だった。
 当然ケンジの周りには、護衛のギルやシスティナがついていたが、町の中でケンジが襲われる事はまずなかった。

「ああ!やっと銭湯が開くことが出来るようになったから、その準備をしてたんだよ!」

「なんですって!銭湯がやっと開店⁉」

 その男性は、ケンジの言葉に待ちに待った銭湯が、開店する事に驚き大きな声を上げた。

「ああ!待たせて悪かったな?たぶん一週間以内には開けられると思うよ」

「本当ですかい?そりゃ楽しみだなあ!」

 男性の大声で、周りにいた人間達が喜びの歓声を上げた。

「まさか平民の俺達が風呂に入れる世の中がくるなんてなあ!」
「あたし本当に楽しみにしてたんですよ」
「風呂ってどんな感じなんだ?」
「それにあの石鹸を使えるのでしょ?」

「ああ!あの石鹸はFreedomとしても力作の一つだからな、銭湯で気に入ったら通常サイズのものもあるから買ってくれよな!」

「国王様、その石鹸ってFreedom店で従業員の奴隷達が使用して、あのいい香りがする石鹸ですよね?」

「ああ!そうだぞ」

「それなら私、購入したいと思います!」

「そうか!気に入ったらでいいからな」

 ケンジは、国民達に負担のならない様に気をつけながら、商品の説明をした。国民達は、銭湯の開店を心待ちをしながら、ケンジにお礼をいい自分達の仕事に戻っていった。
 そして、ケンジはこのFreedomもまた、大変だという事を身に染みると思う。

「主も、大変な事をやろうとして、後悔しているんじゃありませんか?」

「ギル!いきなりなにをいってんだ?」

「ですが、主は貴族制度を無くそうとしているのですよね?平民達の意識改革をするのは、骨が折れそうだと思ったのでは?」

「ああ!お前達も含めてな!」

 ケンジは、先ほどの会話で思っていた事を、ギルに言い当てられた事で皮肉を言い誤魔化したのだった。

「主!いきなり私を責めなくとも!」

「お前達もいずれは、その奴隷根性を払拭させてやるから覚悟しておけ!」

「私達はずっと、主の奴隷であり払拭などさせられません!」
「そうですよ!あたし達は、ご主人様に仕えると決めていますからね!」

「はははは!いずれこの国は、犯罪奴隷しかいなくなるよ!お前達みたいな、借金奴隷はいなくなると覚悟をしておけ!」

「「そ、そんな!」」
「主……私達は!」
「そうですよ!ご主人様逃げないでください!」

 ケンジは、皮肉たっぷりにギルとシスティナに笑顔で宣言して、笑いながら銭湯の敷地の中に逃げて行った。ギルとシスティナは、困った顔をして追いかけて行ったのだった。

 その話を、その場に残って聞いていた国民達は、ケンジが何を言っていたのか理解できなかった。借金奴隷がなくなる?貴族制度がなくなる?いったい何を言っているのか分からず、考えるのを止めてしまい聞いた事を聞き流してしまっていた。

 そして、五日後銭湯が開店する事が出来たのだ。仕事帰りに寄る人間や、家族連れで来る人間が大半で大盛況だった。
 かなり大きな敷地で作ったのも拘らず、銭湯の前には行列が起きてしまった。



 ようやく銭湯に入れた国民達は、驚き目を丸くした。

「うはああ!こいつが銭湯かあ!こいつはすげぇもんだな!」

 銭湯に訪れた客は、中に入った瞬間大声を上げるのも無理はなかった。まず、入り口にはかけ湯があり、入り口近くには大きな湯船があり、ライオンのオブジェの口からお湯がコンコンと湧き出していた。

 そして、その大きな湯船の奥には、少し小さめの湯船が並んでいて、泡ぶろや電気風呂があった。

 大人でさえ、興奮するようなもので、子供達にとっては遊び場のようにはしゃいでいた。風呂場には注意事項も促しており、子供達の親は自分達の子供が滑らない様に、注意をしていたのが微笑ましい光景だった。

 そして、一番奥には扉がありその扉を開けると、琵琶湖が一望できる風景が拡がっていた。岩風呂に浸かってこの風景を見るのは、また違った風景に見えて好評だったのだ。

 これは、男風呂の中だったが女風呂はまた違った装飾になっていて、ビーナスが肩に壺を持ったオブジェで、壺からお湯がコンコンと湧き出していた。
 このオブジェに女性客達は、日頃の主婦生活の疲れを大いに癒す事ができて好評だったが、初日は女風呂の岩風呂にお客は出ようとしなかった。

「あら?この扉は何かしら?」

 女性客がこの扉を開けるとそこには、琵琶湖が一望できる岩風呂だった。裸で、外の風景が見えたことにより、女性客は小さく悲鳴を上げ、素早く扉を閉めた。

「何……今、外に出たわよ?」
「奥さんも、びっくりしたよね?私も、さっき開けてしまってびっくりしたわ」
「裸で外に出るというの?お風呂ってそういうもの?」

 やはり、裸で外に出るという事に抵抗があったのかもしれない。今まで、お風呂というのは貴族達だけの物だったので平民だった人間にとってカルチャーショックだったのだ。
 しかし、それも初日だけで数日したら、女風呂の岩風呂のスペースにもお湯につかっている女性客で一杯だった。

「最初はびっくりしたけど、慣れてしまえば開放感があって気持ちいいよね」
「ホントホント!国王様には銭湯を作っていただき感謝しかないわ!」
「あたしなんて毎日銭湯に通っていて、最近ではこの石鹸の香りがするって、旦那から言われて久しぶりにいい仲になったわ」
「きゃあ!大胆ねえ!」

 女性達は、私生活が充実したと喜んでいたのだった。

 男風呂では、この銭湯の料金にも驚いていた。この石鹸を購入させる事で入浴料をタダにするのが本当にありがたかった。
 そして、この石鹸は本当に好評であり、通常サイズの石鹸と髪石鹸(シャンプー)もFreedom店や銭湯の番台で購入可能である。
 そして、このシャンプーは石鹸の3倍高価なのだが、これを購入するとこのシャンプーがなくなるまで、入浴料はタダになるシステムが好評だった。

「最近うちの嫁さんが良い匂いでな!」
「そうなんだよ!うちも同じでよ!」
「やっぱそうか」
「わしも久しぶりに嫁さんと夜を共にしたわい!がはははは!」
「おやっさん!その年で元気だな!」
「まだまだ若いもんには負けんわい!」

 銭湯は夜8時くらいがこうした家族で賑わっていた。そして、それ以降は冒険者達や生産者達が、その日の疲れを落としにやって来るのだ。
 そして、それから深夜3時以降は、飲み屋の女性達が酔いを醒ましがてら、その日の疲れをいやしにやって来る感じであり、銭湯は夕方5時から朝方5時くらいまでお客が途切れなかったのだ。

 この事で、ケンジは銭湯の開店時間を夕方5時から朝方の5時に決めたのだ。朝方5時から夕方の5時までは銭湯を閉める事にして、その間にタイルや湯船を清掃する事にした。
 お湯は琵琶湖の水をフィルターで綺麗にしていて、風呂に浸かったお湯はフィルターで綺麗にして琵琶湖にもどしていたので問題はなかった。

「君達には、この銭湯の係を任せるが、何か問題があったり言いたい事があれば、遠慮なく報告してもらいたい!」

「はい!」

 ケンジは、ギルド職員と同じように銭湯の従業員には、3交代制での勤務体制にした。これにより、重労働にならず安心して働いてもらえるようにした。

 そして、この事で新たな問題も、浮き彫りになったのはいう間でもなかった。ケンジは他の町からも、お客を呼び込もうとしていた事だ。
 支店から、転移マットでくるお客は夕方5時まであり、それ以降は朝8時まで、支店は閉めてしまう事になるからだ。
 フリーの町で検証しても、その時間は誰一人銭湯に入浴しに来る人間はいない為、清掃時間にしたくらいお客がいなかった。地球のように、スーパー銭湯のように24時間開いても、ここガイアースでは昼間から風呂に入る人間は皆無だった。

 他国の町の人間を銭湯に呼び込もうとすれば、城壁内の一角に支店を開き、そこからお客を呼び込もうとしないといけない事がわかったのだ。

 これには、ケンジも頭を抱える事になった。城壁内に支店を構える事になれば、当然税金を納めないといけなくなり、とてもじゃないが今のような値段設定では赤字になる。しかし、支店を夕方5時以降に開けていたとしても、お客が陽の落ちた夜道を、町の城門まで帰る事など出来るはずもなかった。

 そうしているうちに、Freedom国に行商にしていた商人達の口コミで、フリーの町には平民でも風呂に入れる事が、王国や聖教国や帝国に広まっていくのだった。

 ケンジも又、色々と考えた結果、他の町に作る必要はないと考えたのだ。よくよく考えれば、Freedom国領の町に転移マットを設置している為に、4つの町の人間がフリーの町の銭湯に入りに来てくれていたので、無理してそんな事を考える必要すらなかったのだ。

 この銭湯の出現で、さらにほかの国との差が出たのは言うまでもなかった。


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