異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依

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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

35話 新たな商品

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「いったいどうしたらいいのですか?」

「聖女様!ここはやはりFreedomに協力を……」

「何の協力を要請するのですか?町の人口が、減り始めて助けてくれというつもりですか?」

「それは……」

「そんなくだらない事を言っているなら、何かいい案でも考えてはいかがですか?」

 聖教国では、平民達の移住が止まらなくなっていた。それに伴い、ギルド本部から苦情が出始めていた。ギルドも又、聖教国や王国から平民達が、Freedomに流れる事で売り上げが落ちてきていたのだ。
 ギルドも何とかして、Freedom国に進出させてほしいと要請を出していたのだが、Freedom国独自のギルドが確立した今、同じ役割の組織はいらないと突っぱねられていた。
 ギルドは、Freedomに頼らず新しい新商品の開発を頑張っていて、新商品をFreedomに売込みしていたのだが、いまいち不便であり平民達には広まらなかった。
 どうしてもギルドの作る商品は、万人が使用できるものではなく、魔力の使用量が莫大で燃費が悪すぎるのだ。

「今回も、ギルドの商品はちょっと、Freedom店での販売は見送りさせていただきます」

「うう……これにどれだけ開発費をかけたか、それを組んでいただけて欲しいのですが!」

「どれだけかけても、こう燃費が悪いとFreedomでは売れませんよ。お客様から苦情が出ます」

 ギルドは、Freedomでも扱ってくれるような商品開発をしていた。Freedomで売り出せると、ネームバリューが付くと考えたのだ。しかし、何度も開発するが、どうしても首を縦に振ってくれるような商品が作れなかった。

 今やもう、Freedomの商品開発に携わっている生産者のスキルは、グランドマスターでは若造の部類になり殆どの者がレジェンダリーに近づいていたからだ。
 ギルドの物を、Freedomで製作しようものなら、当然それより良い物を製作できるため、どうあがいてもFreedomより良い物が製作できないのだ。

 ギルドの思惑は、Freedomに認めてもらえるような商品が出来たなら売り上げは上り、Freedom国に進出できると本気で考えていた。
 しかし、所詮は他力本願であり、Freedom国は独自のギルドがあるので余程の事がない限り、既存のギルドがFreedom国に進出できる見込みはなかった。

「でしたら、少しでいいのでケンジ様に面会をお願いしたいのですが!」

「ただいま、ケンジ様は体調不良で長期休暇しています!こういう交渉は、わたくしが一任されているのでご遠慮してください」

「ケンジ様は、いつ復帰なさるのですか?」

「精神的な事もあるので、いつ復帰かとはお約束できないので諦めてください!」

「ムぐぐぐ……」

 アーチェとモーリスは、その後が続かなかった。ギルドも又、王国や聖教国と同じく、Freedomに頼らないと後が続かなくなっていた。

「あの……アーチェさんモーリスさんその意欲は買うのですが、根本的に考え方を正さないと、いずれギルドは消滅しますよ?」

「どういう事ですか⁉」

「今の王国と聖教国とギルドは同じなんです。Freedomに依存し過ぎなのですよ」

「「……」」

「まだ、こうやって商品を売り込みに来るだけマシといえるのですが、Freedomを頼りにしているのが丸わかりなのです」

「ですが、この商品がFreedomから売り出してくれれば、その評判は上がりギルドの商品としても信頼が!」

「そこですよ!ギルドも自ら頑張るのではなく、Freedomギルドに依存しようとしているのですよ」

「そんな、依存だなんて!」
(何であたし達が、奴隷に言いくるめられないといけないんですか……)

「しかし、その通りでは?魔道具は売れると利益率が高いですが、それは誰もが使いやすいという前提があってこそだと思いませんか?」

「それは……だけど今までは!」

「今までは今までですよ。わたし達Freedom店の商品は、平民達が誰でも便利に使える商品を売っているのであって、今までのように貴族様が大金を払って、使える商品を売っている訳ではありません」

「この商品も、平民達が使えるように魔力を抑えて今までにない……」

「それは認めます。しかしながら、燃費が悪すぎるのですよ。こんなに毎日魔力を注いでいたら、その人物は魔力切れを起こしてしまい、日々の日常で倒れてしまいますよ」

「……」

「そうなるとどうなりますか?」

「それは……」

「そうです、結局は魔力提供の依頼を出す事になり、平民達では賄えない魔道具になるのです。これは貴族様をターゲットにして売った方がよろしいかと?」

「でも!」

「ご存知かもしれませんが、Freedom国には貴族様はいません!確かに商会の会長や社長はいますが、商売のプロである商人達が買う様な事もありません。ですからこの件は諦めてください!」

 ユエティーは、ギルドからの売り込みを毅然な態度で断った。ここは奴隷だからといって、言いなりになってはいけない取引だからだ。
 本来なら、ケンジやムシュダルクが出る所だが、ユエティーはケンジの休暇の時に一任されていた為、自分の責任で頑張っていた。

 アーチェとモーリスは、突破口が見つける事が出来ず、引き下がるしかなかった。



 そして、Freedomでの定例会議で、ティアナとフィアナの提案した商品に注目が集まった。ガーデニングのスキルがとうとうレジェンダリーとなり、このスキルの本領が発揮される事になったのだ。

「今回あたし達は、ガーデニングのスキルで花のエキスの抽出に成功しました」

「二人ともいったい何を言っているのだ?」

 ティアナとフィアナの二人は、ガーデニングのスキルをレジェンダリーまで上げることが出来た事で、花や薬草から植物のエキスを抽出する事が出来るようになったと報告した。今まで、ガーデニングとは草花を成長させ、グランドマスターまでしかスキルを成長したという実績がなかったのだ。

「そして、錬金術士のダリアと共に製作したのがこちらです」

 ティアナとフィアナが、テーブルに出したのは石鹸と髪石鹸だった。これには他のメンバーはキョトンとした顔になったが、マイだけは喜んだのである。
 このガイアースにはシャンプーなどは無く、石鹸で洗うのである。これは平民も水道水で、体を拭き髪を洗う様になったが泡立ちがなく何となく洗ったように感じられるものだった。
 そして、石鹸で髪を洗うとごわつき、髪が爆発したように纏まらなくて、お金に余裕のある貴族達なんかはオイルで整えたりする。

「これをFreedom店で売り出すつもりですか?」

「「はい!自信の作です‼」」

「しかし、平民達は風呂の概念が無い!井戸の水で体を拭くだけだぞ?」

「ムシュダルク様!今は水道のおかげで、平民達も石鹸を使い身体を洗っていますよ?」

「それは知っている!だが、それも毎日ではないだろ?それにその髪石鹸?平民達に受け入れられるとは思えん!」

 たしかに、ムシュダルクの言う事はもっともだった。風呂の概念もない平民達が、石鹸とは別に髪の石鹸を買い求める事は無いと、ティアナ達に説明したのである。

 しかしティアナ達には、この石鹸が売れると勝算があった。今までの石鹸とは違い、バラのエキスを抽出したこの石鹸は香りが物凄くよく女性受けする事は間違いなかった。
 そして、髪石鹸にはツバキの花から抽出して、髪が艶やかになりサラサラヘアとなる。お風呂上りにオイルで整えなくてもよく良い香りが持続する逸品だった。

 しかし、この石鹸はFreedomから売り出す事は保留になった。その理由はやはり、平民達の間では風呂が無かった事にあった。
 マイもまた、この商品の良さをプッシュしたのだが、平民達が使用する事にはもう一つ強みというモノが足りなかった。

 体を拭くだけでは、売れる見込みがなかったからである。いい商品だと言う事は、ムシュダルク達にも理解はできたが、この商品は保留としてFreedomの家族達だけで使い様子を見ることにした。

「姉さん……わたし悔しいです……」

「フィアナ……あたしもそうだよ!せっかくダリアと協力して作ったのに商品化されないのは本当に残念です……」

 しかし、商品開発がそう簡単に出来る物ではないとも、二人は理解していた。ケンジが肥料を作り出した時も、神鋼魔石のせいで土がやせ細り、何回も実験を繰り返しようやく商品化したのを思い出していたからだ。
 あの万能のケンジでさえ、あれだけ苦労をして商品にできたのを知っている2人は、スキルがレジェンダリーになったからといってすぐにいい商品が出来るとも思っていなかった。
 レジェンダリーになるのがゴールではなく、これからがスタートと思いなおして別の商品開発に勤しむのだった。

 そして、ムシュダルク達はティアナ達の行動には関心を持っていた。今までは、ケンジが便利な商品を開発して、その商品を作る為だけに動いていたが、ティアナ達奴隷が自ら発信者になった事だ。
 つまり、ケンジには無い自分の強みであるスキルを生かし、商品開発をした事にある。今回残念な事は貴族向けの商品だったが、これが平民に向けた商品だった場合、Freedom国は新たなステージに立てる事になる。

 それらを踏まえて、ムシュダルクはティアナ達のやる気に期待をして微笑んだのだった。


    
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