異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依

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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

30話 領地拡大

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 ケンジが、ムシュダルクに言った事は信じられないものだった。

「ケンジ様!いくら何でもそれはあり得ないでは?」

「そうか?俺は十分あり得ると思うぞ」

「そんな事をしたら……」

「だが、帝国も同じような事をしたじゃないか?まあ、今回それと同じような事をした場合、魔物からの危険は和らぐが帝国より不味い状況になるけどな」

「そんなの当り前ですよ!王国と聖教国は自分で自分の首を締める事になるのですよ?」

「そうだけどな……あいつ等は馬鹿だから目先の事しか考えないよ!まあ、見てなって多分後1ヶ月ほどで根を上げてFreedomに提案してくるよ」

「まさか……」



 ケンジがムシュダルクに、そんな事を言ってから1ヶ月半が経ったある日、王国と聖教国がFreedom国に又訪問し、面会を求めてきたのだ。

「ケンジ様!今回は王国と聖教国の話し合いの末、ある提案をさせてほしいのです」

「それは、王国と聖教国のトップとしての決断ですか?」

「「はい!」」
「この間、ケンジ様に色々助言して頂き2国間で話し合いをした結果、あの領地から撤退することにしました」

 ムシュダルクは、ケンジの言ったことになった事に驚いた。

「ちょっと待て!撤退するのは分かるが、なぜそれをFreedomに報告してくるんだ?」

 ケンジは驚いて大きな声を出したが、ムシュダルクはケンジの大声に目を見開いた。

(ケンジ様はこうなると知っていたのになんで?)

「わし達では、もうあの土地は手に余るのだ……それならあの土地を、Freedom国に譲渡し治めてもらいたいのだ!」

「馬鹿な!そんな事できるわけが!」

「帝国も治めきれないと領土を縮小したであろう?それと同じ事だよ!」

「それは2国間の事だから分かるが、何で俺達Freedomがその土地を治めねばならんのだ?」

「それは当然だろう?王国と聖教国は撤退したが、あの付近にある町にはFreedom支店が残っているじゃないか?」

「そうですよ!つまり聖教国もあの付近には、統治する町がございません!」

「本当にそんな強引な事をして後悔しないんだな?」

「後悔も何も、あの土地をFreedom国が治めてくれたら、わたし達も助かります!」

 グランパス王国は地球で言うと愛知県と静岡県の県境にある。マルシェイム聖教国は関東一円を治めていたが、街道がある静岡県ぐらいの土地から撤退してしまったのだ。
 そして、撤退された町とFreedom支店だけが、街道沿いに残されていた。

「ケンジ様!貴方の言ってた通り、あの土地の平民達はあなたの国が治める平民になり申した!」

「本気で自分の国の民を見捨てるのか?」

「見捨てる訳ではない!もし不安になれば、平民達の判断で移住を選択するはずだ!」

 ケンジの思った通り、グランパス王国は自分の治める領地を縮小し、聖教国も神奈川県と静岡県の県境まで撤退してしまった。

 こんなに簡単に撤退してしまうとは本当にあり得ない事だったが、魔物がいるこのガイアースでは珍しくない事のようだ。

 王国と聖教国が帰った後、ケンジはすぐさま行動を開始した。ムシュダルク達も、ケンジから予想を聞いていた為支店の売り上げを見ていたのだ。売り上げが落ちていたことにより、移住を決断していた平民がいる事にFreedomでは撤退の準備をしていた情報を入手していた。

 その為、Freedom国はすぐに動く事が出来て、鳳凰騎士団の2軍兵を、2つの町に送り込み守備を固めたのだ。

 町の中は、移住できないような人間ばかりだった。自分の命が大事な人間は全て撤退していて、町から出れない人間や、昔からここに住み出て行きたくない人間だけが町には残り、1万人も残っていなかった。当然だが、町にはギルドも同じように撤退していたのだ。

 ケンジは、町の大広場で宣言した。

「この町は、Freedom国が治めることになった。だから、この町の人間は安心して欲しい!王国のように貴方達をFreedomは見捨てないと誓う!」

 これは、関東側にある町にも、同じように宣言された。これには町の人も驚きを隠せなかった。まさかこの町がFreedom国になるとは思わなかったからだ。

「ケンジ様!この町は本当に大丈夫ですか?」

「ああ!大丈夫だ。町の規模は縮小するが物資は町の中に支店が出来る事になり、町の外に出る必要もなくなる」

「それは本当ですか?」

「当然だ!この町はFreedomが治める町になる。そして、ギルドもFreedom独自のギルドが町の為に頑張ってくれるから安心してくれ!」

「しかし、騎士団は大丈夫なのか?なんでも2軍という噂をきいたですが……飛龍騎士団でも、もう魔物に対応出来なくなってたみたいです」

 ケンジは、この一か月半の間鍛冶工房で空気砲を作らせていた。それを城壁の四方に設置したのである。それを見た平民達やスラムの人間達は歓声を上げた。

「まさか、これはFreedom国の攻城兵器ですか?」

 先の戦争の事は噂として、王国と聖教国内に広く広まっていたので、城壁に設置した地点で平民達は、その存在に気づいたのだ。

「これがあれば、そうそう町は滅亡しないから安心してくれ!それと申し訳ないが、町の中心部にある貴族街は潰させてもらう。この町にはもう必要のないものだからな!」

 当然貴族達もこの町の領主も、すでに撤退していて誰もいなかったのだ。ケンジは町の中心部に建っていた貴族の屋敷を、※①【アースクエイク】で建物を破壊してしまった。そして、その場所にFreedom支店を建ててしまったのだ。

 そして、ケンジは街道沿いの山側に※②【ウォールオブストーン】の魔法で5m級の城壁を作り始めた。
 この城壁のおかげで街道には、魔の森の魔物が出没しなくなったのである。時おり壁を壊し、出現することはあったが、大量の魔物ではない為馬車で十分逃走が可能だった。
 そして、半年の月日をかけて空気砲を街道沿いの城壁にも設置させた。


 ここからが、王国と聖教国が想定もしていなかった事である。この城壁は街道の関所となった。

「ケンジ様!あの関税とはどういう事ですか!」

 キース王が、自由に街道を通れない事にFreedomに乗り込んで来たのだった。これは聖教国も同じで、街道を通るのにお金が必要となった。

「ああ!あの関税は街道を安全に通る為に城壁を作ったんだよ!その整備費に必要なんだ」

「ばかな!街道に城壁だと!」

「ああ!町に旅人が入場する場合、王国も聖教国も入場税として金をとっているだろ?それと同じだよ!」

「そんな事が認められる訳!」

「いや、あの土地は王国も聖教国も見放した土地で危険な土地だったろ?そこを安全に通れるようにしたんだ。それなりに金もかかるから当り前だろ?」

「だからと言って、あんな高い税金を取るだなんて!」

「そりゃ、町を守る城壁ではなく何kmもある街道を守るんだ。高くなるのは当然だよ!もし、高いと言うならFreedom支店から物資を購入してくれたらいいんだし、問題はないだろ?」

 あり得ないような事をケンジはやってのけた。これを見た、王国や聖教国に移住を決めた平民達はまた引き返して来たのである。Freedom国民になる事を決め、住民権を求める人間がFreedom国に殺到した。

 ケンジは愛知県側にある元王国の町にホープという名前を付け、神奈川県側にある元聖教国の町にホネストと名付けた。

「ケンジ様!これはあんまりです!街道を通るのに税金を取るだなんて!」

「おいおい!聖女様、何を言っているんだ?酷いのはそっちだろ?いきなりFreedomに厄介な土地を押し付けてきたのはそっちだろ?俺は半年も掛けてやっと安全な街道を確保したんだ」

「それは分かりますが……関税が高すぎるせいで、平民達がホネストの町に移住して、聖教国の信者が町からいなくなってきているのです!」

「それはしょうがないだろ?国民がどの町に住もうがその人が決める事だよ。俺がこっちに住めと命令などしたわけじゃないよ」

 行商人達をはじめ平民達は街道を通るのに、税金を納めるのなら聖教国や王国に住むことはせず、Freedomの住人になる事にした。Freedomの住人なら街道を通るたびに税金を納める必要はなく、住民税やギルド構成員になれば、身分証明を見せればタダで通行できるからである。
 それに、たった半年であれだけ危険だった街道を前の状態に戻したFreedomにいれば、安全に生活が出来ると判断したようだ。

「キース国王様聖女アリサ様、俺は本当に残念に思うよ……」

「な、何を……」

「やっぱり人間というのは、長い事権力が続くと初心を忘れていくんだな」

「訳の分からんことを!」

「キース国王様、あなたは前国王から国を継いだ時どう思っていた?そんな傲慢な考え方だったのか?」

「わしの考え方が傲慢だと?」

「ああ!俺が覚えている限りでは、前国王のようにはならず自分のやり方で国を盛り立てると言っていた。聖女様も同じように、教皇猊下からやっと解放され、人々を幸せな生活を守るつもりで頑張ると言っていたはずだ!」

「「……」」

「なのに、今のこのざまはなんだ?自分達には手に負えないからといって、簡単に平民達が住む町を斬り捨て、逃げる事をしなかった平民は、自分の国の民ではないような言い方をして逃げなかった方が悪いだと?」

「誰もそんな事は言ってはないじゃないですか」

「だったら、逃げなかったのは平民達の選択だったからしょうがないとでも言うのか?」

「しかし、ケンジ様は選択の自由は平民もするものだと!」

「だから、お前達は自分の都合の良い考え方しかしないと言ったんだよ!そうと違うだろ!国民達には逃げる選択や留まる選択をしても、そこには魔物からの危険が無い状態で、どっちを選んでも大丈夫という前提があってこその選択なんだよ!」

「それでは、平民達が得ばかりするではない……」

「馬鹿か!お前は?」

「なっ⁉」

「国民達が国に対して信頼を置けば、その国に人は集まるだろうが!お前達は自分の得にならない事しか何もしないから、国民達の信頼を得られないんだよ!」

「無礼者が!わしが平民達の信頼が無いと申すのか?」

「実際そうだろ?今、ホープの町はどうなっている?」

「むぐぐぐ……」

「言う間でもないが、逃げた住人は舞い戻りせっかく人口増加した他の町からも、移住要請者とまらないんじゃないのか?」

 今、ホープの町とホネストの町は、人口がどんどん増えている状態だった。その為、簡易的な城壁を更に作らないといけないとまで、ケンジは考えていた。それほどまでに、王国と聖教国の町のドーナツ化現象が止まらなくなっていたのだ。

「こんなやり方卑怯だぞ!街道に税金をかけて人口を増やすだなんて!」

「何を言っている?城壁を作り安全を確保して税金を集めているのはどこの国でもやっている事じゃないか?」

「ゥぐっ……」

「それに卑怯というならそちらも同じだろ!いきなり厄介な土地から手を引き、Freedom支店があるからといって、強引にこの土地はFreedomの領地にさせて、自分達だけ高みの見物で楽をしようとしたじゃないか!」

「「……」」

「何も言えないか?だから言っただろ?そんな強引な事をして後悔はしないのかって?聖女アリサ!」

 アリサは、ケンジがいきなり呼び捨てにしてびっくりした。今まで様をつけて呼んでいたのに、いきなりの事だった。

「なんですか?」

「本当に俺は残念に思うよ。多分これで、聖教国の復活は無くなったよ!」

「何を言っているのですか⁉」

「そりゃあたりまえだろ?他の国に、女神クローティア様の信者がどんどん流出しているんだぜ?頭でっかちの聖教国に、何の意味があると思うんだ?」

「あっ……」

「多分だが、この流出は当分止まらないよ。その時どうなる事か?言わなくてもわかるだろ?」

「そ、そんな……」

「さてと、俺も新しい町の事で忙しい身なんだ!そろそろお開きにさせてもらっていいかな?」

 ケンジの言葉に、キース国王も聖女アリサも側近達も何も言えなかった。その場でただ下を向き黙っているしかなかったのだ。

「そのまま黙っていても困るのだが?」

 その言葉にキース国王達は奥歯を噛みしめ、聖女達は暗く沈んだまま自分達の国へと帰っていた。

*-----*-----*-----*

 この話で出てきた魔法

※①【アースクエイク】
土属性魔法   8階位
消費MP    56
詠唱速度    10秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間    一瞬
効果対象    範囲全部
効果範囲    レベル×1平方m(任意に広さを設定可)
必要秘薬    紫水晶・マンドラゴラの根・アビスの葉 各3個
備考
この魔法は本来、他国が攻めてきたとき範囲魔法として地震を起こし、
大量虐殺する魔法。
大魔道士職業レベル100、魔法スキル120.00で使用可能

※②【ウォールオブストーン】
土属性魔法   5階位
消費MP    35
詠唱速度    5.75秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間    永久
効果対象    なし
効果範囲    レベル×1mまでの範囲
必要秘薬    虹色パール5個
備考欄
 この魔法は一瞬にして土を盛り上げ術者の前に土壁を作り上げ
ガードをする魔法。それ以外にも土壁の基礎にして小屋を建てたり
城壁の修繕工事にしたりと用途はさまざまである。
魔道士職業レベル50と魔法スキル80以上で使用可能


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