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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

22話 魔の森

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 キース国王や聖女アリサ達が帰還して、すぐさまFreedomの面々は不満をあらわにした。

「あなた!本当にあれで良かったの?あれじゃFreedomの面子が!」
「そうですよ!わたくしも王国と聖教国の態度には!」

「まあまあ!マイ様もムシュダルク様も落ち着いて下さい!」

「セバス、何でそんなに落ち着いているの⁉あたしは、ケンちゃんが我慢していたから何も言わず黙っていたけど、本当は腸煮えくり返っていたんだからね!」

「マイ様。落ち着いて下さい……ご主人様がただあんな風に黙っていた訳無いじゃないですか?報復とは言いませんが、絶対何か考えているはずですよ」

 セバスは、ケンジの顔を見てニコニコ笑っていた。

「ご主人様、一体何を考えていたのですか?そのことをみんなに伝えてあげてください!」

「ったく……セバスには、もう隠し事はできないな……」

「ご主人様とは、もう長いお付き合いになりますからね」

「みんなに聞きたいんだが、今回王国と聖教国の態度は目の見張るものがあったと思う!」

「あの態度は本当にいただけない!」
「ケンジ様が、黙ってたのをいいことに好き放題言って、なにかペナルティーを与えたほうが良いかと思います!」

「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」

「このまま何もしないのであれば、Freedomの面子に関わるかと思います!」

 ケンジが言った言葉に、ムシュダルクをはじめアルバン達も不満が噴出した。

「みんなの気持ちは分かるが、少しは落ち着くんだ!面子とかは王族や貴族だけにしてくれ!」

「何を言っているのですか!ケンジ様はこの国の王族です!面子は大事な事ですぞ!」

「アルバンさんも落ち着いてくれよ。俺は確かにこの国の主だが、王族というのはな……この国の者は、全て平等でいきたいんだよ!たしかに、役職と言うものはある。上司や部下と言う立場も理解している」

「ですが!実際の所、ケンジ様はこの国の王様じゃ……」

「わかっているよ。ただ、そうじゃなくてだな……王族や貴族は選ばれた民と勘違いしている人間が多すぎるんだ。王族や貴族が偉いんじゃなく、少し違うかもしれないが、周りの人間が尊敬してくれる人間が偉いと思ってくれ」

「それはどういうことですか?」

「俺のイメージする、王族や貴族って威張り散らし、平民をや奴隷達を自分の思い通りに動かそうとするだろ?それで、言う通りにしなければ不敬罪だ!そんな人間に周りにいる人間が慕うわけないだろ?」

「確かにそれはそうですが……」

「だが、奴隷の中にもいい人間はたくさんいて、その人物が慕われていたら、その人物が奴隷であっても偉い人間と考えるんだ!つまり、王族と奴隷は同じ人間と考えることが大事なんだ」

「ご主人様!」

「セバス……言いたいことは分かるがなんだ?」

「ご主人様と私が一緒なわけないじゃないですか!ご主人様は、私達の主であって同等の人間じゃありません!」

「それは、主人と奴隷という関係性ではなく、セバスにとって俺を慕ってくれているという関係性と思ってくれたらいいんだよ。だから、俺もセバスを尊敬して慕っていると思ってくれたらいいんだよ」

「勿体ないお言葉ありがとうございます!」

「主!俺も主の事は尊敬しているんだぞ!セバスばかりズルいと思うが!」

「当然、俺はマードックの事もシスティナの事も尊敬して慕っているぞ!こういう感じで、思ってくれたらいいんだよ」

「な、なるほど……そういう感じで、この国は奴隷の立場の人間を減らして行こうと言うのですな?」

「いや……今のは意識改革なだけで奴隷という立場の人間は減らないよ。いったん奴隷に堕ちてしまえば、奴隷紋が邪魔して解放されたいと言う人間はいないだろ?」

「た、確かに!」

「今のところは、奴隷紋が何とかなるのは賢者の石のみだ!だが、あのアイテムを使うとなれば、この間のように寝込む事になるから頻繁には使えないんだよ……」

「ご主人様が、あたし達奴隷に負担になる事はやるべきではないです!」

「システィナ、ありがとな!しかし、いずれは奴隷紋がすんなり消滅できる方法を見つけるよ」

「別に構いません!あたし達はご主人様を慕っています。このままでも十分幸せな人生ですよ」

「ああ!わかっているよ。ありがとな」



「ところで、あなた……王国と聖教国はどうするつもりなの?」

「俺達が手を出さずとも、勝手に自滅していくと思うよ……」

「はぁあ?どういう事よ!」
「ケンジ様!それはいったい?」
「勝手に自滅って?」

「なんでかって?そんなの当り前だろ……今回、俺達はエンペラーを討つ事にした。地上にあんな魔物がとうとう出現し出したんだ」

「それが何で、自滅する事に繋がるのよ?」

「マイ、よく考えてみろよ。2か月前にそんな魔物がいたか?」

「そういえばいなかったわね……」

「つまりだ、この2か月でエンペラーに進化して、集落が出来たと考えるべきだ!まだ仮説でしかないけどな」

「どういう事よ……」

「わからないのか?つまり、それほどのスピードであの樹海の魔物が進化しているんだよ」

「まさか!」

「ああ!どういう訳か分からんけどな……もし、その過程が成り立つとしたら、あの樹海はもうテンプルナイトですら、手の出せない魔の森へと……」

「ご主人様!いったいどうするつもりですか?」

「システィナ!どうもしないさ……あの場所はFreedomの領地じゃないが、数回Freedom国が討伐を代わって出るつもりだが、そんな何回も出る必要はないよ!」

「ですが……」

「もし、出張ることになったらどうなる?」

「あなた……もしかして、本気でそんなことになると考えているの?」

「そりゃなるだろ?王国は平民の命を守れないんだぞ?そうなった場合、平民はどういう選択をするかな?」

「移住しかないわね……頼りにできる国に!」

「それを早い段階で気づくことが出来て、飛龍騎士団でも災害級の魔物を何とかしないと、平民の支持率は下がっていく一方だと思うよ」

「じゃあ、聖教国は何で自滅していくのよ!」

「聖教国は……トップが頼りないと言う事で、テンプルナイトが反乱を起こす可能性が出てくるからさ……」

「反乱?」

「いいか?テンプルナイトは聖女に信仰を持っている訳じゃないんだよ。絶対信仰心は女神クローティア様だよ。布教を広める為には、強い国でなければならないと昔に言っていただろ?」

「確かに言っていたわね……」

「なのに、奴隷騎士団と文句を言っている騎士団に、聖教国が討伐依頼ばかり出していたらどうなる?」

「……」

「そんな事ばかりしていたら、テンプルナイトだけでは樹海の魔物を討伐できなくなるんだよ?つまり、極級ダンジョンに駐留出来なくなるって事だ!聖教国は、Freedom国に頼ってばかりの立場の弱い国になるんだよ」

「それって……本当にそうなるの?」

「今の段階ではまだ仮定でしかないが、何らかの対策を取らないと王国と聖教国は消滅するだろうな」

「聖教国は消滅はしないんじゃないの?」

「なんでだ?」

「だって、反乱がおきた場合テンプルナイトがトップになるんだよ?」

「だからだよ!騎士はトップがいて、初めて力を引き出す事ができるんだ。聖女を失えば、聖教国の強みは無くなるよ」

「なんで?もし今の聖女がいなくなっても、次世代の聖女が生まれるんでしょ?」

「マイはもう忘れたのか?もし、仲間内で聖女が殺されたとなればもう聖女は生まれないよ!ティアさんが、聖教国に災害じゃなく天災を落とすだろうな……」

「じゃあ、本当に聖教国は……」

「ああ!そして、次の聖教国はFreedomになるだろうな……」

「「「「「えええええええ!」」」」」」

 ケンジの言葉に、この場にいる全員が大きな声を上げて驚いた。

「何を驚いているんだよ……国は消滅しても、信仰心のある人間はいなくならないだろ?だったら、信者はここFreedomに集まってくるだろ?」

「なんでよ?」

「そりゃティアさんが、俺の友人だからだよ!当り前じゃないか!」

「って事は……」

「まあ、このFreedom国はヒューマン統一国家となるんだろうな……俺は面倒なのはいやだが、そうなることで野望は一つ叶うけどな」

「あなたに野望ってあるの?それに帝国はどうするのよ?ヒューマン統一国家じゃないじゃない!」

「まあ、細かい事を言うなって!それと野望ってのは、ギル達奴隷の立場を引き上げやすくなる事だよ。他国だと、口出しできないけど自分の国だからやりやすいだろ?実際、今でもFreedomでは奴隷の立場は他の国に比べ優遇されているはずだからな」

「た、確かに……でも、貴族達は残るでしょ?その人種がそう簡単に考えが代わるとは思えないけど大丈夫なの?」

「なんで、貴族達の心配しているんだよ?」

「それは当たり前ですよ!マイ様の言う通りです。もし仮に統一国家となった場合、貴族達の力は必要不可欠です」

「この計画が成り立つのは数年では無理だよ!数十年数百年でやる事業だよ!」

「だからこそ、貴族達の力がいるんですよ!」

「いやいや、そんな考えを改めない貴族は必要ないよ」

「だったら、どこから人材を?」

「みんなもう忘れたのか?俺が今進めている計画はなんだ?」

「「「「「「あっ!」」」」」」

 ケンジは、極級ダンジョンに潜る前に、ムシュダルク達に話していた、孤児院の予算を組み直していた計画があった。それは、着実に進行しており、孤児院では子供達に勉学を学ばせていたのだ。
 最初、孤児院ではカルチャーショックを受けて、そんな意味の無いこととされていて不満が持ち上がったが、子供達の中には、勉学に目覚めた者が出てきていた。
 孤児院出身の子供は、冒険者しかなれないと思っていた固定概念が崩れ去った事により、子供達の就職先が拡がった事になる。

「なるほど!ケンジ様は、その子供達の中から内政が出来る子供が育つ事にかけているのですね!」

「そういう事だ!まあ、俺としては王国や聖教国が消滅はしてほしくないんだが、今のままではバッドエンディングになってもおかしくないからな」

「だからあなたは、王国と聖教国の要請に何も言わず、Freedomだけで討伐をすると言ったの?」

「俺も色々考えていたんだよ……手を貸すのは簡単なんだがそのたびに色々言われて、ランスロット達が馬鹿にされるのが耐えられなくてな……」

「主様、ありがとうございます!その言葉を聞いたら部下達も報われます」

「だったら、もう自分達が得になる事を、優先で動いた方がマシだなってな」

「あなたがそういう理由で動くなら、王国や聖教国の言いなりになっていると思えないから、全員文句はないわよ」

「主はホントすげぇな!まさかあの会議でそこまで考えていただなんて、俺達は王国や聖教国にいいようにあつかわれると思って、むかっ腹を立てていただけなのによ……」

「私も、ご主人様が何かを想って行動しているとは思っていましたが、まさかそんな計画を考えていたとは本当に驚きです!」

「そういう訳だから、みんな取り敢えずはエンペラーの方はよろしく頼むぞ!」

「「「「「「はい!」」」」」」

 ケンジの予想したように、ジーフマウンのふもとにある極級ダンジョンには、それから半年後にはテンプルナイトでさえ到着するのが困難な森へと変貌してしまった。
 その魔の森へと変貌した事により、王国と聖教国は慌てることになったが、もう後の祭りだった。


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