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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

10話 極級ダンジョン②

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 ケンジ達は、極級ダンジョンに潜り10日が過ぎていたが、まだ5階層にいたのだ。超級ダンジョンまでとは異質なダンジョンであり、2階層から魔物のレベルがぐんと上がり、1階層潜るたびに難易度が上がっていくのである。
 超級ダンジョンまでは10階層潜ると1段階難易度が上昇するのだが、ここ極級は1階層潜るたびに難易度が跳ね上がる感じで、難易度だけを取れば50階層に来ているのと一緒だった。
 そして、ボス部屋も1階層ごとにあり、ここまで来るのに4体のボスを討伐していた。

 そして今、5階層のボスの部屋の前にケンジ達はいたのだ。

「ご主人様!今度はどんなボスがいると思いますか?」

「システィナは、余裕があるみたいだが油断はするなよ?」

「はい!ここまで来たらそんなことも考えれませんよ!2階層からボスがいるなんて思いもしませんでしたよ」

「確かに、2階層からデーモン級の魔物が出るとは思わなかったもんな」

「それも複数体ですものね……」

 2階層には、でかい角を持った真っ黒な皮膚で見たことのないデーモンだった。3階層には蛇のような頭を持った邪神のような姿だった魔物で、4階層目には、真っ白な成龍ホワイトドラゴンだったのだ。
 そしてこのダンジョンはボスだけではなく、普通にエンカウントする魔物も普通にSランクを超えてくるような、最強最悪の魔物ばかりだった。

 ケンジは、この結果をみて鳳凰騎士団でも、2階層には潜れるが、ボスは討伐できないと判断したほどだった。だが、ケンジ達は着実に魔物達を討伐することで、スタンピードになる可能性を防いでいたのだ。

「じゃあ、5階層のボス部屋に突入開始します!」

 ボス部屋には、今ではもう第一パーティーの役目となっており、マードックが切り込み隊長としてその役割を担っていた。

 マードックは、ボス部屋の扉をあけ放ち部屋にとびこんだのだ。するとそこには一人の少女が佇んでいた。

「あれがボスなのか?」

「ダンジョンマスターに仇をなすものはお前達かえ?」

「しゃ、しゃべった?」

 ケンジ達は驚愕した。今までこういったコミニュケーションがとれたダンジョンボスは、元冒険者流星のメンバーがダンジョンマスターに、奴隷として買われた人間しか知らなかったからだ。

 だが、今回言葉を発したのは魔物なのはわかるのだが、人間にしか見えない少女である。

「主!あいつは、いったい?」

「マードック気を付けろよ!あいつは上位アンデットのバンパイアだ!」

「クックック……わらわをあのような食事と一緒にするな!」
 
 ケンジは、自分の仲間を食事と言い放つこのバンパイアに驚いたのだ。このバンパイアは真祖だったのである。バンパイアには色々いるのだが、ノーマルタイプのバンパイアでもSランクというくらいの魔物であり、その上位種にソルジャーやナイト等がいてその一番強いと言われているのが、ロードやクイーンである。
 しかしながらそれらのバンパイアは、今この目の前にいる真祖の餌でしかないのだ。

「みんな、いつも通りにやるんだ」

 ケンジが指示を出すと共に、マードックがバンパイア(真祖)に斬りかかっていた。しかし、真祖はマードックの攻撃回数を全て避けきったのだ。そして最後に重い一撃をマードックの腹に叩き込んだのだ。

「ぐはっ!」

「これで良くここまでこれたものだな。感心するよ」

「マードックゥ!」

 プリムが、マードックに駆け寄り抱きかかえようとした時、マードックがプリムに斬りかかったのだ。間一髪プリムはその攻撃を避けたのだ。

「マードックいったい何を!」

「グルルゥゥ……殺す……」

「マードック何を言っているのよ!気をしっかり!」

 マードックは、真祖に攻撃をされた時、魅了されていたのだ。

 セイラが、その様子を見てすかさず神聖魔法を唱えた。

「クリアランス!」

 その魔法で、マードックの魅了が解けたのである。

「ほう!レベルの高い聖職者がいるようだのう!わらわの呪いを解くとは想定外だったわ!」

 真祖の扱う魅了は、呪文ではなく呪術的な異常状態である。これを解除するには、神聖魔法のクリアランスかエリクサーでないと解除不可能なのだ。

「お、俺はいったい……」

「みんな気を付けるんだ!チャームされるぞ」

 ケンジは、そう指示を出しながら、真祖にスローを唱えたのだ。

「ぐはっ!わらわに、デバフだと……お主はいったい……」

「もしかして、自分が最強だと思っていたのか?何千年も生きているのだろうが、世の中が広い事をこの俺が教えてやるよ!」

「ほざけ!」

 真祖は、ケンジの言葉に苛立っている様子だった。バンパイアの餌である人間に馬鹿にされたからだ。真祖はケンジの言葉にイラつき跳びかかってきたのだ。
 しかし、スローのかかった身体では先ほどマードックの攻撃をかわした体術は無く、システィナがその前に立ちはだかった。

「お主、邪魔じゃ!そこをどくが良い!」

「あたしを倒さないと、ご主人様には指一本ふれさせないよ!」

 システィナは、真祖に向かって挑発し、盾を構えたのだ。

「ムぐぐぐ……まずは貴様からじゃ!」

 真祖は、レベルが高い為ステータスで驚異的なスピードで攻撃を繰り返していた。そして、攻撃を当てる事でチャームしていたのを、システィナは見切っていたのだ。

 その為、システィナは自分の身体には一切触れさせない様に、盾で真祖の攻撃を薙ぎ払っていた。

「むぐぐぐ!なんじゃ貴様は!そこをどけ!わらわは、あ奴と戦うと言っておろうが!」

「何言ってんのよ!お前みたいなバンパイア無勢が、ご主人様と対等に戦えるわけがないじゃないの!お前の相手はあたしで十分よ!」

「わらわがバンパイア無勢だと!この低級種族のえさの分際で!」

 それを見て、マイがケンジに一言いったのだった。

「システィナって、ああいう挑発の仕方、貴方を見習っているんじゃないの?口が貴方に似てきて、増々悪くなってきているわね……」

「なっ⁉失礼な事を言うな!あのバンパイア真祖と言ってたが、強い相手と対戦した事がなかったようだな……」

 システィナは真祖を挑発し続けて、攻撃を回避し続けていた。システィナは紙一重の所で攻撃をかわしていたのだ。真祖の攻撃をかわし続けるのは並大抵の精神力では耐えられないのである。

「いつまで、そうしているつもりじゃ!」

「はあはあはあ……何を言っているのよ?」

「クックック!いつまでそうして居るつもりじゃ?わらわの体力は無尽蔵じゃ。もうすぐ、わらわの攻撃が当たればお前はわらわの操り人形じゃ!」

「馬鹿ね!あんたは、ハアハア……あたしと、タイマンしているつもりなの?」

「なんじゃあああああああ!ぎゃああああああ!」

 真祖はいきなり、背中に激痛が走って悶絶したのだ。

「馬鹿ね!あたしには頼りになる仲間がたくさんいるのよ!」

「き、貴様……ひ、卑怯だぞ!」

「何が卑怯よ!あんたは、ダンジョンを守る魔物であたし達の敵よ!負けそうになって卑怯って、意味が分からないわ!」

 真祖はピンチになり、背中から蝙蝠の羽を生やし、上空へと逃げたのだ。

「クックック!下級生物は上空にはこれんだろ!」

 逃げた真祖を見て、システィナはニヤリと笑ったのだ。上空へと逃げた真祖は焦るのだった。

「何じゃこれは!」

「だから言ったでしょ!あたしには信頼できる仲間がいっぱいいるって!」

 真祖は上空に飛び立ったところ、上空に張り巡らされた蜘蛛の粘着糸に絡まってしまったのだ。ボスの部屋の天井には、ツバキ達が待機して部屋の半分の高さに粘着糸で罠を張っていたのである。
 真祖は、さながら蜘蛛の糸に掛った蝶々のようで、力を込めれば込めるほど糸に絡んでいくのだった。

「く、くっそおおお!だがこれでお前達はわらわに攻撃も出来ない!アラクネ達がわらわに素手で攻撃しようものなら……」

 真祖は、背後から異様な雰囲気を感じ、今の状況に冷や汗が流れた。

「だから何を言っている?上空なら、わたしが攻撃すればいい事だ!」

 真祖の背後からは、プリムがケンジ製作のハルバードを振りかぶっていた。

「ちょ、ちょっと待て!話し合おうではないか?」

「フン!笑わせるな!不老不死のお前にあの世を体験させてやるよ!」

「や、止めろ!止めろぉ~~~~~~~~!」

「ライトニング!」

 プリムは電撃を身体に纏わせて、真祖の心臓を狙ってブレイク攻撃をしたのだった。

「ぎゃあああああああああ!」

 真祖にも、死があるようでHPが0になり、ダンジョンに吸収されてしまった。

 そして、上空からドロップアイテムが降ってきたのである。アイテムは魔石・牙・爪・瞳・蝙蝠の羽根であり、いずれもとんでもない魔力を含んでいた。部屋の中心には宝箱が出現し、ギルが罠を解除して中の宝物も手に入れることが出来たのだ。


 
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