異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依

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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

5話 Freedom国では

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 その日も、いつも日課でお祈りをしていたセイラは、朝早くから教会に足を運んでいた。

 セイラは、教会の様子を見て微笑む。5年前には教会関係者は一部の人以外お祈りはせず、大聖堂は本当に静かだったのだ。今も、静かではあるが司祭や司教、神父達が静かに毎朝3時間女神神像に向かってお祈りを続けている。

 セイラは、この空間が本当に好きだった。何とも言えないこの空間に女神クローティアがいるような雰囲気に包まれ、清浄化されているのが肌で感じるのである。
 そして、時折孤児院の方から、子供達が朝食を美味しいそうに食べているであろう声が、本当に楽しそうな声なのだ。
 セイラは、元々は帝国領ブリュンガスの町で父の跡を継ぎ教会を運営していたが、その時子供達は毎日お腹を減らしていて、町の食事処でたむろしており羨ましそうに食事をしている人間を見ていただけだった。

 しかし、このFreedomではケンジが内政で、孤児院の予算を多めに組んでいる為、子供達が飢える事はない様にしていた。
 最初、ケンジとムシュダルクの間では孤児院の予算が多すぎるともめたと聞いたが、ケンジがムシュダルク達を必死に説得したらしい。
 ケンジは、ムシュダルクに子供達がちゃんと飢えずに成長すれば、この町から絶対に離れる事は無いと言い切り、その子供達の職業の選択が冒険者以外となり、将来この町に根をうずめ人口増加につながると言ったのだ。

 セイラは、ケンジの説明に説得力があると思った。確かに自分が教会の傍ら孤児院をやっていた時には、子供達は毎日腹を減らし、その日を生きるのに必死で余裕がなかった。
 その為、早く大人となり冒険者となり金を稼ぎ満足に食事をしたいという事だけを願っていた。その為、冒険初心者にもかかわらず、少しでも報酬の高い依頼を受け、無駄に命を捨てる負の連鎖に陥っていた。

 しかし、ケンジの言う通りこの5年で孤児院を巣立った子供達は、毎日お腹いっぱいとは言わないが普通に食事が出来ていたことで余裕が生まれ、この国では冒険者にならずとも普通に町の中で職にありつく子供達や、農家になる子供もいっぱいいたのだ。その子供達が成長し、町に税金を落とす事で町は繁栄し続けるのである。

「ケンジ様!なんでまた孤児院の予算が増えているのですか?今でも十分に多いはずなのに説明をお願いします!」

 ムシュダルク達は、ケンジに詰め寄ったのだ。ケンジには内政の事で少しでも負担を減らしてほしくて、5年前に特別奴隷を購入してもらったのに、時々このように勝手に予算を振り分けるのである。

「別に構わないだろ?この5年で孤児院の子供達が巣立って、町の生産者やお店をやり始めた子供達が増えてきたんだ」

「それはそうかもしれませんが……その子供達がやっと成人し、これからやっと今までの分を返済し始めるんじゃないですか?」

「ムシュダルクさん、その税金は次世代の子供達に使うべきだよ!」

「だからって、これ以上食材費を増やすことはないでしょ?今でも、他国のどの町より多くの予算を組んでいるのですよ。今の予算でも、子供達は飢える事はしないはずです!」

「あ~!違うよ。これ以上は食材としての予算じゃないよ」

「え⁉では何で予算を増やすのですか?」

「この増やした分は、子供達の教育分だよ」

「はぁあ?孤児院の子供達に教育を受けさせるのですか?貴族のように?」

「ああ!今の段階では毎日は無理だが、いずれ子供達が成長した時、言葉の読み書きや計算が普通に出来るようになるんだよ」

「そんなバカな‼平民の……いや、親無しの子供達に教育を?そんな無駄な事を?」

「何を言ってんだ!子供の内から言葉の読み書きができるようになって、計算ができるようになっていたら、子供達の職の幅が圧倒的によくなるんだぞ?」

「しかし、そんなことは今まで貴族だけしか!」

「それだよ、それ!なんで貴族だけしか教育を受けれないんだ?だから、冒険者の中でも文字が読めずに難しい依頼を受けてしまって、命を落とす新人がいるんだよ」

「そ、それは……」

「それに商売を始めた人間も、文字は読めるが意味がちゃんと把握できなくて詐欺にあい、奴隷に堕ちる人間もいるらしいじゃないか?それらの問題を解消するには、やっぱり教育が必要なんだよ!」

「しかし、それでは予算が圧倒的に足りないですよ?」

「だから、最初は月一回でもいいから、言葉の読み書きが出来る人間を孤児院に派遣させて、子供達に勉強の日を作るんだ!」

「では、子供達はその日の仕事はどうするのですか?教会の手伝いで、運搬とかしているじゃないですか?」

「その日の子供達の仕事は勉学だ!教会の一個所だけの子供達が動かなくても、大人達が子供達をフォローしたら問題はない!」

「それでは段取りと言うものが!」

「ムシュダルクさん!よく聞いてほしい。Freedomでは、世間一般の常識で動かない様にしてほしいんだ!俺がFreedom国の、目標を掲げたのを覚えているか?」

「ケンジ様は、犯罪奴隷以外の奴隷制度を極力なくしていくと……」

「そういう目標を掲げた今、Freedomでは何をするかを本当に考えて実行していくかを考えなきゃいけないかと思うんだよ。冒険者の中には文字が読めないから、掲示板の依頼を他人に読んでもらう為に、金を払い報酬額が減り、金が貯まらない負の連鎖に陥りそれに耐えられないから、難しい依頼を受け違約金を払う人間も少なくないんだよ?」

「しかし、それはその人間の責任であって……」

「だから、そういう人間がなくなる事が借金奴隷を減らす事につながるんだよな?もし、文字が読めたうえで無理をしたなら、その人間の自己責任だ。そこまでは俺達の関与するところじゃないよ」

「た、確かに……」

「それにそれだけじゃないんだ!文字や計算が出来ると言う事は、平民から国の事業に携わる仕事に就く人間も出てきてもおかしくない」

「平民が貴族ギルドの仕事を?」

「ああ!貴族の凝り固まった考えではなく、平民目線からの内政の案が出てきてもおかしくないいんだ!そうなったらどうなると思う?」

「どうなるって、そんな未来考えもしないですよ!」

「そうなったら、貴族や権力者だけが得するような世の中じゃなくなるんだよ」

 ムシュダルク達は、ケンジの言葉に思考が停止して開いた口が塞がらなかったのだ。

「そんな世の中が……」

「まあ、これだけで上手く行くとは思えないけどな……そうなった世の中にはまた違った悪が生まれるからな……」

「それってどういう意味ですか?」

「それだけ、人間と言うのは厄介で欲深いって事だよ……」

 ケンジは寂しそうに笑い、会議を続けていた時、会議室の扉が大きな音を立てて開いたのだ。

「ご主人様!大変です!」

「びっくりしたぁ~~~~~!セイラ!もっと静かに入って来い、心臓が停まるかと思っただろ!」

「あっ!」

 周りを見ると、ムシュダルク達も自分の胸を抑えて目を見開いていたのだった。

「で、なんだ?そんな急いでなにかあったのか?」

「今、教会でお祈りを上げていた時に、女神様から啓示がおりました!」

「はっ、ティアさんから?で、なんて言ってきたんだ?」

「近々、極級ダンジョンが溢れるそうです!」

 ムシュダルク達がセイラの言葉を聞き大きな声を出した。

「なんだって!それは本当か?」

「ムシュダルク様、女神様の啓示だから間違いはありません」

「いや、セイラの言う事を信じないわけではないよ。だが、極級ダンジョンが溢れるだなんて、あのダンジョンはその昔魔王が暴れていた時代に、勇者が魔王を封印したという言い伝えのあるダンジョンなんだぞ」

「だからこそ、現実味があるって事だよな?」

「ケンジ様、どういう事ですか?」

「魔王の復活が、近づいているかもしれないのかもな?」

「それは本当ですか?」

「え?今、魔王が封印されている言い伝えがあるって、ムシュダルクさんが言ったんじゃないか?」

「只の言い伝えで、私も分かりませんよ……」

「なんだ?ただの言い伝えなのか……」

「極級ダンジョンは、今王国や聖教国の騎士達でも一階層の魔物を間引く事しか出来ません。当然何階層あって、2階層以降の魔物も何がいるのか分からない状態なのです」

「ああ!そのあたりはなんとなくだが、ランスロットに聞いたことがあるよ」

「その為、その言い伝えが本当の事かどうか分からないのです。その昔、勇者が下界に降臨して魔王を封印したとあり、ダンジョンの最奥に聖剣を突き立て魔王を仮死状態にするのが精一杯で、魔王と相打ちとなったらしいのです」

「なるほどなあ……それなら、魔王の封印が解け始めていて、近年の各地のダンジョンの魔物達が、魔王の魔力に反応していて活性化しているかもしれないのかもな?」

「そんな事となれば、地上世界はまた魔王が君臨していた暗黒時代に突入すると言う事ですか?」

「いやいや……魔王伝説は言い伝えであって、誰も知らないんだろ?だったら、魔王じゃないかもしれないじゃないか?俺が言ったのはあくまでも仮説だよ」

「そんな、いい加減な事言わないでくださいよ!ケンジ様は普通と違うのだから、本気にしか聞こえないんですよ」

 すると、そこにセバスが会議室に入ってきたのだ。会議室はそういった話をしていた為ドキッとしてみんな一斉にドアに目を向けたのだった。

「ご主人様!王国と聖教国が面会に来て緊急の要件だそうです」

「分かった!すぐに行くから、両方謁見の間に通しておいてくれ」

「承知しました!」

「さてと!忙しくなりそうだな……」

 ケンジは、やれやれと言った感じで謁見の間に急ぐのだった。 

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