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第9章 Freedom国の発展!

112話-1 奴隷達の想い

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「ん……ここは?」

「ケ、ケンちゃん!良かったやっと目が覚めた……」

「マ、マイ……」

 キキョウ復活させた際、ケンジのMPは回復しようとしても、継続的に消費されて1週間眠り続けていたのだ。
 マイも大丈夫だと、みんなに伝えていたのだが賢者の石を使用した事で、ケンジがこんな事になるとは予想外だった。

「ケンちゃん!目が覚めてくれて本当に良かった……1週間も目が覚めなかったんだよ。肌もダイオウイカのように真っ白だったんだから!」

「マイ……心配かけてごめんな……」

「本当だよ!前を言ったけど、今度あたしより先に死んだら許さないって言ったでしょ?」

「ああ!分かっているってば……ちゃんと覚えているから」

「ケンちゃんは、いつも無理ばっかするんだから!それと賢者の石だけど、本当にこれから使い続けるつもりなの?あたし、ケンちゃんが毎回こんな事になるなら絶対賛成できないよ!」

「だが、賢者の石を使って奴隷達を解放してあげたいと思って!」

「ケンちゃんの奴隷って何人いるのよ!少なくとも350人以上いるはずでしょ?」

「まあ……それぐらいかな?」

「あたしは絶対賛成できない!みんなの事は大事だよ。奴隷から解放させれるならさせてあげたいけど、ケンちゃんが毎回こんな事になるなら反対だよ!」

 そこに、ギル達がケンジが目を覚ましたと聞き、ケンジの寝室に入ってきたのだった。

「主!良かった!目を覚まされたのですね」

 後ろを見ると、システィナやミナレス達女性陣が、目を真っ赤にして涙を流しながらケンジの無事を喜んでいた。

「みんな……心配かけてすまなかったな」

「このまま主が、目を覚まさなかったらどうしようと思いましたよ……」

「ご主人様!もう賢者の石は使わないでください!」

「プリム……俺はお前達を奴隷から解放したかったんだぞ」

「ご主人様の気持ちは嬉しいです!ですが、ご主人様がこんな危険な目に合うのなら、わたし達は奴隷の解放を望みません」

 プリムの言葉に、ギル達も同意する様に首を縦に振っていた。

「危険と言ってもMPが尽きただけじゃないか?」

「ケンちゃん!何を言っているのよ?MPが切れて気を失い続けたんだよ」

「だから、気を失っていただけだろ?」

「ケンちゃん、何を勘違いしているのか知らないけど、MPが回復できなかったんだよ?今回は確かに1週間で目覚めることが出来たんだけど、これが1ヶ月続いたらどうなると思うのよ」

「どうなるって?」

「身体機能の低下……心臓が止まるかもしれないのよ!」

「そ、そうなのか?MP切れなら死ぬことは無いと思ってたよ」

「ったく、ケンちゃんは本当にそういう事を全然知らないんだから!」

「そうだよ!主は本当に無理はするなよな。俺達は主を犠牲にして、奴隷からの解放なんて絶対いやだからな!」

「マードック……」

「ご主人様、この意見は護衛メンバーだけでなく、私達も一緒ですからね!」

 そう言いながら、Freedom店で働く従業員達であるエリスやユエティーが部屋に入ってきた。ユエティー達も、ケンジが目を覚ましたことに安堵し疲労困憊だった。

「ケンちゃん、この状況どう思う?」

「どうって言われても……俺の事心配してくれてありがたいなあと……」


「ケンちゃん……ケンちゃんが目覚めないだけでこんなにみんなが心配しているのよ?」

「ああ!それはわかったってば……悪かったよ」

「ホントにわかってるの?」

「わかってるってば、何が言いたいんだよ!」

「キキョウの事だよ!ケンちゃんがキキョウを蘇生したのに、そのせいで1週間目覚めなかったら、キキョウは責任感じて今も死んだように気落ちしてるっていうのよ!」

「あ……」

「やっとわかった?ケンちゃんが、こんな事になるってわかっているのに、みんなが奴隷解放を望む訳ないって事だよ!」

 マイと言いあっている時、ケンジの部屋の扉が大きな音を立てて開いて、涙で目を真っ赤にさせたキキョウが、ケンジに飛びついてきた。

「ご主人様ぁ!目覚めて本当に良かった!もしこのまま目を覚まさなければ、わたしはマイ様やみんなに何をすればいいのか分からなかったです!」

「キキョウ……生き返って本当に良かった。そして、心配かけてごめん」

「ご主人様のバカ……私が生き返っても、ご主人様がいなくなったら意味がないじゃないですか……」

 キキョウは、ケンジの腕の中で大声で泣いたいた。ケンジは、キキョウの不安を解くように、ベットの上で抱きかかえ、赤子をあやすように頭を優しく撫で続けたのだ。

 それを見ていた、マイ達は本当にFreedomは元通りになったと安心して、涙を流しながら、笑顔になっていた。

「ケンちゃん、これで分かったでしょ?」

「なにがだ?」

「賢者の石よ!本当に最後の手段として使うのならいいけど、そんなに頻繁に使わないでよ!」

「わ、分かったよ……」

 ケンジは、マイ達に強引に約束させられてしまったが、ケンジもマイ達が本当に心配したのが分かったので、承諾するしかなかったのだ。

 そして、次の日ケンジが目覚めた事は、みんな知っており歓声が上がった。訓練場にみんなを集め全校朝礼のようになっていた。

「みんな、心配かけてごめん!この通り俺は大丈夫だ!」

「良かった!主殿が目を覚ましてくれて!」
「旦那様……」
「ご主人様!」

 奴隷達それぞれが、ケンジの元気な姿を見て、涙ぐんで大きな声を出していたのだ。
 そして、ケンジの元気な姿も確認できて、前のような明るいFreedomに戻り、店の開店や工房での生産が開始したのだった。

 店に来たお客様は、店の従業員たちが前のように明るい笑顔に戻った事を察して、ケンジが目覚めたのだと分かったのだ。

「リンダさん!ひょっとして?」

「ええ!ご心配かけて申し訳ありませんでした!旦那様が目覚めました」

「ホントかい?それはよかったねえ」

「はい!」

 店の従業員たちは、常連客のお年寄りやリンダを気に入っている冒険者達と会話して、明るく接客をしてFreedom店が明るくなったのだ。

「リンダさんが明るくなって俺達も嬉しいぜ!」

「今まで、ちゃんと接客できなくてごめんなさい……」

「まあ、しょうがねぇよ。ケンジさんが無事に目を覚ましてよかったな!」

「はい!ありがとうございます」

「それじゃ、今日はヒールポーションとこれとこれと用意してくれよ!」

「はい!ありがとうございます」

 Freedom店では、明るく接客する女性達が元気に働いて、一日が過ぎ去るのだった。




 ケンジは皆に言われて、1週間の休暇を言い渡されてしまったのだ。

「まさか、賢者の石の使用を禁じられてしまうとは思わなかった……」

 ケンジは、これから賢者の石を起点に色んなことをしようと思っていたのに、使用することでMPがあんなに消費すると思っていなかったのだ。
 その為、みんなを奴隷から解放できると思っていたのに、出鼻をくじかれる事となったのである。

「でも……どうしようかな?」

 ケンジはベットの中で、もやもやした雰囲気となっていた。せっかく色んな奇跡が起こす事の出来る賢者の石はあるのに、賢者の石を持て余す事となったのだ。

「ご主人様?起きていますか?」

「どうぞ!開いてるよ」

「失礼します……」

「ミナレスか、何か用か?」

 ミナレスは、ケンジが倒れたときずっと看病をしていた為、ケンジがベットから起きてこなかったので心配で見に来たのである。

「いえ……今日はずっと起きてこなかったので、また倒れてしまったのかと心配した次第でございます。でも起きててくれて安心しました」

「ミナレス、ちょっと聞いていいか?」

「なんでしょうか?」

「もし賢者の石を使って、俺が倒れなかったらお前達を奴隷から解放しても問題はないよな?」

「ええ!それは問題はないかと。ギル達も何も言わないでしょうね」

「そっか、それを聞いて安心したよ」

 ミナレスはそう言って、ニコッと寂しそうな笑顔を見せた。

「ご主人様、少しよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「私は、セバス達と一緒にご主人様に購入され、ご主人様にお仕えしております。わたしも言ってみれば、初期メンバーの一人と自負しております」

「ああ!そうだな……ミナレスは最初、放って置いたら数日で亡くなってもおかしくなかったな」

「その通りでございます。ご主人様に買われて本当に良かったと、昨日の事のように思い出します」

「それで何が言いたいんだ?」

「わたしは、もし賢者の石でご主人様が倒れなくても、許されるなら奴隷からの解放を望みません!」

「はぁ?なんでだよ!」

 ケンジはミナレスが奴隷のままでいたいと言うので声を荒げてしまった。その声に、ミナレスは肩をすくめビックリして謝罪したほどだった。

「ご、ごめんなさい!」

「あっ……悪かった!怒ってないから訳を話してくれないか?」

「はい……わたしは、ご主人様に購入されてなかったら、とっくにこの世から亡くなっていたでしょう……わたしはその恩を人生を掛けてご主人様に返したいのです!」

「何言ってんだよ!お前は俺の家族であって奴隷じゃないんだぞ?奴隷から解放されたからと言って、この関係が無くなる訳じゃないんだ。だったら、奴隷から解放されて人並みの幸せもつかむことが出来るかもしれないんだぞ?」

「今、わたしは155歳ぐらいです。ハーフエルフのわたしが後何年生きれるかわかりませんが、平均寿命は500歳ほどです。残りの人生は、許されるのならご主人様の奴隷として、お側でお仕えしたいのでございます」

「ミナレス……」

「先ほど言ったように人並みの幸せが確かに訪れるかもしれませんが、わたしは忌み嫌われるハーフです。平民となってもご主人様の側から離れれば、奴隷のような扱いを受けるのは分かり切っています。だったら、ご主人様の側で奴隷としてお仕えしたいのです」

「ミナレス、よく考えるんだ。ここFreedomで平民として暮らせるんだぞ?種族差別はないんだよ」

「じゃあ、言い方を変えさせてください!わたしはケンジ様の奴隷でいたいのです。この奴隷紋は、ケンジ様との絆の証であってこれをなくしたくないです!」

「おいおい!その奴隷紋が無くなると、俺達の関係が無くなると思っているのか?そんなわけないだろ!」

「でも、わたしはご主人様の奴隷でいたいのです」

 ミナレスの必死の説得に、ケンジは折れるしかなかった。ケンジは良かれと思って奴隷解放を計画していたのに、涙を流してまでケンジの奴隷でいたいと言われてしまったのだ。

「そんなに、奴隷のままでいたいのか?」

「はい!一生ご主人様といたいのです!それともう一ついいですか?」

「まだ何かあるのか?」

「新しく入ってきた奴隷の事は分かりませんが、殆どの者は奴隷からの解放を望まないと思いますよ」

「はっ?」

「ですから、ご主人様が奴隷制度をなくすことは賛成ですが、わたし達はご主人様からの解放を望まないと言う事です。それはご主人様が賢者の石を使っても気を失わなくともです」

 ケンジは、ミナレスの言葉に驚き開いた口が塞がらなかった。ケンジは奴隷という立場は不憫と思い、何とかできないものかと悩んでいたが、当の本人は解放されたくないというのだ。それも、ギル達はもちろんの事、ほとんどの奴隷達も一緒の考えだと驚きの告白をしてきたのである。

「わたしはそういう気持ちなので、他のみんなにも聞いた方がいいかと思います」

「お、おい……本当にそれでいいのか?」

「はい!」

 ミナレスはケンジの問いかけに、満面の笑みで肯定して、ケンジの部屋から退室したのだった。


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