異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします！

第９章 Ｆｒｅｅｄｏｍ国の発展！

１１１話 キキョウ復活

　ケンジの知らせは、Ｆｒｅｅｄｏｍ全体に伝わり、ケンジの家族達が訓練場に集まっていた。その様子は、復活式として賑わっている者とかキキョウの復活が成功するようにと神妙な顔をしている者もいたのだ。
　これは、神の涙の時に失敗に終わった事にあり、今回も失敗に終わるのではないかと心配したからだ。

「なあ……今回は成功するかな？」
「お前、何言ってんだよ！ご主人が頑張って錬金術を上げて復活アイテムを作ってくれたんだぞ」
「でもよう……この間も神の涙だったっけ？その時も……」
「今回はその時より凄いアイテムだって！」
「ご主人様を信じようよ！」

　このような感じで、ケンジの奴隷達は心配と期待で入り混じり、一種のお祭り騒ぎのようになっていた。

「ケンちゃん、本当に大丈夫なの？」

「ああ！任せろ！今度こそ大丈夫なはずだ……」
　
「大丈夫なはず？」

「マイ様……ご主人様なら絶対大丈夫ですよ」

　ダリアがマイに、安心させる様にしゃべりかけたのだ。ダリア自身、ケンジが大丈夫と言った反面、大丈夫なはずと不確定要素で言った気持ちは痛いほどわかったのである。
　賢者の石といえば、全ての錬金術士が望んでやまないアイテムであるが、誰もなしえなかったのだ。

「ダリア……賢者の石って、誰も見た事がないのでしょ？」

「そうですね……でも、ご主人様なら成功なさるはずです」

「そ、そうよね」

　マイとダリアが話している所に、ツバキが話に加わってきた。

「ご、ご主人様は絶対成功します！」

「そうよね！」

　そして、ケンジがみんなに向かって話し始める。

「みんな聞いてくれ！俺はキキョウが殺された時、本当に後悔した……そして、この世界は命が軽く物騒な世の中だとも思い、嫌になった事も沢山あった」

　この場にいた人間すべて、ケンジの言葉を黙って聞いていた。

「しかし、その反対にみんなと出会えたことは、本当に良かったと思っているんだ！」

「ケンちゃん……」

「これからは、キキョウのような悲しい出来事は本当になくしたい！これが成功したら、俺の肩の荷がやっと軽くなると思うんだ」

「ケンちゃん！何を言っているの？まさか……この国を出ていくとか言わないよね？」

「本当は、キキョウが亡くなった時、俺は全てを投げ出して……一人で自由にしがらみのない生活を選ぼうとしたんだ……」

　ケンジの言葉に、マイをはじめギル達や新しく入ってきた奴隷達全員が唖然としてしまい、その場で固まってしまった。

「ケンちゃんどういう事よ！みんなを見捨てるつもり？」

「いやいや……ちゃんと聞いてくれ。自由を求めて出て行こうと思ったと過去形だろ？今は、そう思っていないよ」

　それを聞いたギル達は、ホッとして胸をなでおろしたのだった。

「主！何でそんなことを？」

「うん！この賢者の石が完成して、もうそんな事を思う必要が無くなったからだよ」

「主、何を言っているのかよくわからないのですが？」

「みんなに聞きたい？今のこの世界をどう思う？俺はこんな住みにくい世界を変えたいと思っている！」

「それはその賢者の石で、魔物をどうにかしたいと言うのですか？」

「誰がそんな事言っているんだ？俺は、この世界にいる権力者や自分勝手な人間が本当に嫌いなんだ！魔物は人間社会にとって必要だよ！スタンピードと言う災害はあるが、素材や食料となり魔物がまったくいなくなると、経済がまわらないからな」

「ケンちゃん、いったい何を考えているのよ？」

「メイガン商会のガンスさんが言ってた通り、このＦｒｅｅｄｏｍ国を本格的に経済の中心にしたいと思う！」

　ケンジの目標を聞き、ここにいる人間すべてが歓喜したのだった。

「そして、俺の最終目標は奴隷のいない、イズモ大陸にする事だ！」

「そんな事が可能なのですか？」

「まあ、犯罪奴隷は仕方ないかもしれないが、借金・違法・戦争・特別奴隷は全てなくしたい！」

　それを聞き、ギル達は歓声を上げたのだが、その中のセイラ達数名が暗い顔をしたのだ。ここＦｒｅｅｄｏｍにも何人か犯罪奴隷が購入されていた。だが、ケンジは犯罪奴隷だとは思っていないのだ。そのわけは、貴族に騙されたり、罠に嵌められた犯罪奴隷であり、ケンジからしたら冤罪だったのである。

「セイラ！お前達は犯罪奴隷じゃない！貴族や権力者に騙されて、嵌められた冤罪だ！そういう人間をなくしたい！それが、これから人生を掛けていく目標だ！」

　ケンジは、みんなの前で高々と宣言したのだ。

「ケンちゃん！そんな事できると本当に思っているの？」

「俺だけじゃ無理だ！みんなが協力してくれても出来るかわからないが、俺はこの世界をいい意味でぶち壊したいんだよ！」

　ケンジは、このＦｒｅｅｄｏｍ国を経済の中心にすることにより平民の生活を引き上げ、王族や貴族達だけ得する世界をなくしたいと思っていた。
　生活水準を上げる事で、その日を食べる事も出来ず貧困から抜け出す事が出来ない人をなくす事で、借金奴隷がいなくなると考えたのだ。

　その豊かな国に人は集まり、他の国から手出しできなくして大陸から戦争をなくし、戦争奴隷や敗戦国をなくすことで、特別奴隷もなくしたいと考えたのだった。

「主！やっぱ主は考えることが凄いぜ！俺は主にどんなことがあってもついていくぜ！」

　マードックが、そういうと次々に賛同の声が上がったのだ。そして、セイラ達犯罪奴隷達も目を真っ赤にして涙を流し、自分達と同じような奴隷がいなくかもしれないと思うと、嬉しくて涙が止まらなかったのだ。

「ご主人様……本当にそんな世界が来るのですか？」

「システィナ、俺と初めて会った時の事覚えているか？」

「当然です！あの時、あたし達はゴブリンに囲まれ、ご主人様に会えなければあのまま死んでいたでしょう」

　その話を聞いた時、周りの人間は騒めき驚いた様子だった。それも当然であり、そんな昔の事を知らない人間は、システィナがゴブリンに殺されかけていたとは想像できなかったのだ。

「俺はあの頃から、奴隷の待遇に辟易してたんだよ。こんな人権のない世の中は間違っているとな！」

「そんなあたし達を、気にしてくれるのはご主人様だけですよ……」

「この賢者の石があれば、奴隷紋を何とかできるはずだ！」

　ケンジは、賢者の石が手に入り、もしキキョウを蘇生できるほどの、奇跡が起こせるのなら奴隷達を解放しても、数十年身体に刻まれたままの奴隷紋をすぐに消せると思ったのだ。

「みんな注目してくれ！これからキキョウの蘇生を行う！」

　ケンジの言葉に、マイ達は静かになってキキョウの亡骸を見つめたのだった。そして、ケンジは賢者の石をキキョウの身体に埋め込んだのである。
　するとケンジは、物凄い脱力感に襲われたのだ。気をしっかり持たないと気絶してしまうほどだった。キキョウの亡骸は、神の涙の時のように光り輝いて、その場にいる人間は眩しくて目を開けられなかったのだ。
　その光が治まると、キキョウの身体は元通りになっていて、解体された素材も元通りになっていたのだった。
　
　そして、キキョウがゆっくりその目を開けたのだ。その瞬間、ツバキ達がアラクネがキキョウに抱きつき、涙を流してキキョウの復活を祝福していた。周りでいた人間は、この奇跡に歓声を上げたのである。

「ツバキ姉さん……どうしたのですか？」

「キキョウ！良かった……本当に良かったよ！」

「サクラ達もなんで泣いているのですか？」

　キキョウは、今まで死んでいた事に気づいていないのである。死んだ時の記憶は無くなっていて、みんなが抱きつき泣いていたことも分からないし、周りにいる人間は歓声を上げていてお祭り騒ぎになっていたのだった。

　そして、ケンジはその場で倒れ込んでいて、マイに抱きかかえられて介抱されていたのだった。ケンジの様子に気づいていたのは、やはりマイとギル達護衛メンバー、セバス達家の管理をしている初期メンバーである。

「ケンちゃん、大丈夫？」

「ああ……マイありがとな。助かったよ」

　ケンジが倒れたのは、賢者の石を使ったときに一気にＭＰを吸い取られたからだ。ケンジのＭＰが、一気に９０％を抜き取られたので立ちくらみしてしまったようだった。マイの声に、ツバキ達や周りで歓声を上げていた人間も、気づいて心配そうな顔つきになっていた。

「ご主人様！大丈夫ですか？」

「ああ！ツバキ待たせて悪かったな……キキョウがやっと蘇生できたよ」

「ご主人様、ありがとうございました！本当に私達は、ご主人様の従魔になれて本当に幸せです」

　そのツバキの言葉で、ケンジは安心して気絶してしまったのである。

「「「「「「ご主人様！」」」」」」

「みんな！ケンちゃんは大丈夫よ。ちょっとＭＰを使い過ぎただけ！」

　マイは、ケンジを介抱しながらツバキ達に説明をし解散させて、ケンジを部屋へとつれていくのだった。マイとケンジの後姿を見て、ツバキ達は心配そうに見送ったのである。