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第9章 Freedom国の発展!
96話 馬車と蹄鉄
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遂に、ケンジの協力を得ることが出来たギルドは、今までにないスピードで旅が出来る馬車を、開発することが出来たのである。
行商人や乗合馬車を商売にしている者達は、旅にかかる時間が今までの半分になるという事もあり、馬車の購入を決めたのである。
そして、その馬車で旅をした者の噂が拡がり、魔物や盗賊に襲われたが、馬車のスピードが今までの2倍になった事で逃げ切ることが出来たと、ギルドに謝礼に来る人間が増えたのである。
当然だが、護衛の冒険者達も食材を持ち歩かなくてよくなったのである。町と町を駆け抜けることが出来る為、1日分の食材だけ買い込めばよくなったのだ。
そして、山間部の町でも魚が流通し始めたのである。ケンジのように時間停止のインベントリがある訳ではなく、今までは山間部では魚の流通は無理だったのだが、ケンジの冷蔵庫のおかげで氷が手軽に手に入れれるようになった事もあり、今まで3日ほどかかっていた山間部の町でも、無理をすれば1日で移動が可能となり、魚が流通しはじめたのである。町の人達は、やっぱりギルドは町には必要不可欠の存在だと称え始めたのである。
しかし、ギルドでは腑に落ちない事があったのである。それはFreedomである。馬車の利益は全体の20%しかとらず、馬の蹄鉄の売り上げはギルドが受注する分だけで、今までのような商品のように爆発的な売り上げになっていないのである。馬車とセットじゃないと売れていないのである。
「Freedomは、今回本当にギルドの為に動いてくれたようですね」
「アーチェ……本当にそう思うか?わしはあのFreedomが、ギルドの為だけに動いたとどうしても思えんのだよ……」
「ですが、実質Freedomでは馬車の販売はしておりませんよ?蹄鉄もギルドの馬車の為にあるようなもので、馬車が売れなければ蹄鉄も役に立たないじゃありませんか?」
「わしもてっきりFreedomで、ギルドより高性能の馬車が売り出されると思ってたんだが、そんな事もないしな……」
「そうですよ!ギルドマスターが民衆の為に動いたことを、ケンジ様も理解してくれたんですよ!」
「それならいいんだが……」
ギルドマスターは、ケンジの商人としての才能を恐れていたのである。前にもそう簡単に他人を信じちゃだめだ!と言われたばかりで、今回馬車の事でケンジがこんなに素直にギルドに損得無しで協力をするものなのかと、疑念が広がっていたのである。オッシの予想は、近い将来現実のものとなるのである。
そして、一方Freedomでは、ケンジ達が会議を開いて、今回の蹄鉄の事で話し合っていたのだった。
「ケンジ様!今回蹄鉄の事なのですが、やはり失敗に終わりそうです……」
「おいおい!結論を出すのが早すぎるって……」
「ですが、この2か月で蹄鉄が発注されたのは最初の納品分だけですよ。何で?今も蹄鉄を製作し続けているのですか?」
「まあ、待てって!俺は俺の考えで製作を続けさせているんだよ。もうあと少し待てば、世論が動き出すから楽しみにしてろって!」
「ご主人様!訳ぐらい言ってくださいませんか?この2か月で蹄鉄の在庫も万を超える数となっております!」
「ケンちゃん!あたしはなんとなくわかるからいいけど、国を管理している人達には不安になるよ?」
「そんなに不安になる事ないだろ?いつも俺の商品は成功しているじゃないか?」
「マイ様は分かるのですか?」
「まあ、ケンちゃんの考える事だから、何となくだけどね」
「では、なんで売れない蹄鉄をあんなに製作しているのですか?」
「多分ね……蹄鉄をギルドと違う他の所が、欲しがるようになるからよ!」
「えっ⁉馬車以外にどういう使い道が?」
「馬車にこだわる必要はないのよ!こだわる点は馬にするべきよ!」
「へっ?」
「つまりね……馬車が売れないと馬の装備が売れないと考えるのが、間違ってると言っているのよ」
「それって……」
「そういう事!マイの言っている事が正解だ!」
それを聞いた、ムシュダルク達はケンジの計画に驚いたのである。確かに馬車が売れないと蹄鉄が売れないというのは間違いであり、農家が運搬用にしている馬につける事で大量の荷物を一気に収穫が出来、土を耕す時耕運器具を引かせる時も役立つのである。
農家には必要不可欠である家畜に、ケンジの蹄鉄を使用することで、今までの倍以上の働きが望めるようになるのである。
今はまだ、農家の人間が気づいていないだけだが、家畜に使う事で一気に広まることを、ケンジは見通し今は在庫になるが製作し続けていたのだ。
「なんで、ケンジ様は売り込みをしないのですか?」
「なんでって、そりゃ今は農家に売り込みをしても売れないからだよ」
「どういう事ですか?」
「う~ん!説明すると難しいんだが、農家をやっている人達は基本、今までやってきた事に誇りを持っているからだよ。新しい事を導入するのは結構勇気のいる行動だから、自分達から動いてもらう方が一気に広まるんだよ」
「でも、こちらから営業をした方がいいと思うのですが?」
「いや、こちらからグイグイ行くと、絶対とは言わないが壁を作られるとおもうぞ」
「そういうものですか?」
「まあ、もう少しの辛抱だ!いずれ一気に購入者が増えると思うぞ」
ケンジの言う通り、1ヶ月もしないうちにギルドに、蹄鉄の注文依頼が殺到したのである。ある日、一人の農家の男性が蹄鉄だけを購入したのである。
「あのお客様……蹄鉄だけのお求めですか?馬車は買わないのですか?」
ギルドの受付嬢は、蹄鉄を5セットも購入したので、おかしいと思ったのだ。その購入した人物は、行商人でもなく、麦わら帽子をかぶった人物だったのである。
「ああ!馬車などいらねぇ。この蹄鉄だけでいいんだよ」
「そ、そうですか?1セット300ドゴンとなります」
「こんないいもんが、300ドゴンなんて信じられねぇな。ほんまにいいだか?」
「大丈夫ですか?その蹄鉄の期限は使い始めて半年から8ヵ月ぐらいなので、効果が薄まって来たと思ったら、交換になりますからね」
「ああ!わかっただよ。丁寧にありがとな!」
その男は、嬉しそうな笑顔を見せて、ギルドを出て行ったのである。受付嬢は、その時蹄鉄だけ買っても意味がないのにと思い、笑顔でその男性を見送ったのである。
「ねえ、今のお客様……馬車は購入しなかったの?」
「うん……おかしな人よね?馬車のお金はなかったのかしら?」
「先に蹄鉄だけ買って、馬車のお金は今貯めているのかな?」
「そうなんじゃない?少しづつ購入するのも楽しみの一つよ」
ギルド受付嬢は、気軽に考えこれから起きることが全然予想できなかったのである。この時、馬車の売り上げも好調で500台がもうすぐ売り切れようとしていたのである。その為、蹄鉄だけ購入した男性の事など、気にも留めなかったのだった。
そして、それから1ヶ月後徐々に蹄鉄だけ売ってくれと言ってくる、お客様が増えてきたのである。
「ど、どういう事だ?」
「ギルドマスター、あちこちの町から蹄鉄の発注の申し込みが、いったいこれはどうなっているのでしょうか?」
「それらは全部蹄鉄だけなのか?」
「はい!ガーライの町では500セット、ロゼンの町では800セットと田舎に行けば行くほど、セット数が多いのです」
「な、何で……だ……馬車は全然売れないのに、馬車は本当に要らないのか?」
馬車も当然売れてはいたのだった、ガーライの町の蹄鉄の売り上げなら、馬につける蹄鉄の数からすれば馬車は250台売れることになるのだ。
しかし、売れるのは蹄鉄だけで、馬車は20台前後でしか売れていないのだ。
「ケンジさんが、又何かやったのでしょうか?」
「そんなうわさが出ているのか?」
「いえ……出てはいないですが、こんな状態はおかしいではないじゃないですか?メインである、馬車が売れないのに、補助的アイテムの方が人気商品って意味が分からないですよ」
「た、確かに……いったいどんなからくりが……」
その時、ギルドの部屋に偵察をしに行っていた、職員が帰って来たのである。
「ギルドマスター大変です!」
「何かわかったのか?」
「蹄鉄は馬車を引く為の馬に使われていません。農作業の家畜に使われているのです!」
「なっ⁉」
「多分、馬車の事が噂に拡がり農家の人間が、馬車に使わず自分の家畜に使ったら農業作業の効率があがるとおもったみたいで、それが一気に広まったと考えられます」
「なんてことだ!ケンジさんは最初からこれを狙って、馬車の利益は2割と言ったのか!」
ギルドマスターは勘違いをしていたのである。ケンジは純粋にギルドの建て直しに協力をするつもりで、利益の大半をギルドに渡すつもりで2割と言ったのである。
だが、ここにきて馬車の伸びより蹄鉄の方が売れる事に誤解をしたのである。馬車の方もここにきて落ち着いてはいるが、先月も20台も売れていたのである。
「くそおぉ~~~!こういう事なら馬車の利益を6割取ってもらい、蹄鉄の方もギルドに、利益還元してもらうのだった!」
「ギルドマスターちょっと待ってください!」
ここでいつもはアーチェが口を出すのだが、今回はモーリスが意見を言ってきたのである。
「何かあったのか?」
「ケンジ様は、今回本当にギルドの為を想って行動したのだと思いますよ」
「何を言っているんだ!現状、蹄鉄だけがこんなにヒットしているではないか!」
「確かに、数を見たらそう見えますが、この帳簿を見てください‼」
モーリスは、馬車の売り上げをオッシに見せたのである。そこには馬車もちゃんと売れていて、人気商品であったのだ。
馬車の数が20台となっていたのは、もう在庫が無く製造待ちだったのだ。つまり、ケンジが最初便器を売り出したような状態であり、予約客がまだまだいっぱいいたのである。需要と供給が追い付いていないだけで、馬車の売り上げもちゃんと、この先続くことが約束されていたのである。
「馬車が普及されるその前に、蹄鉄の利用方法が農家の人間に発見されただけだったのか……」
「はい!たぶんその通りです」
「と、言う事はケンジ殿は、この事は知らないという事か?」
「いえ……ケンジ様の事です。この事も視野に入れて、ギルドに協力したと考えたほうがよろしいかと!」
「そ、そうか……出し抜かれたわけではないが、こういう先の事を見通す目がケンジさんにはあるの言う訳か……」
オッシは、つくづくギルドはケンジという人間を追放した事を後悔しないといけないと思い知らされたのだった。
「わかった!すぐにFreedomに発注要請をするのだ!」
「はい!」
「わかりました!」
「ですが、いきなりこんな数を発注してそろうと思いませんが、どのように振り分ければよろしいですか?」
「当然!発注書の順で在庫が足りない所は、待ってもらうしかなかろう!」
「分かりました!」
この蹄鉄は、一農家に家畜が5匹以上でも少ない方である。農業器具を引っ張る家畜、収穫した時の運搬する家畜等考えると、一農家で蹄鉄は20セット買う農家も珍しくないのである。
帝国領のロゼンの町のように、農家が主流の町になると、一体いくつの蹄鉄が売れるのか、予想できなかったのである。
その為、ギルドでは発注書を確認したところ、1万5千セットの蹄鉄が注文されていたのである。
「なっ⁉これは本当なのか?」
「えぇ……ケンジ様の商才を、もっと早く見極めれていたらと、後悔しますね……」
モーリスの言葉に、その場にいたギルド職員は落ち込んでしまうのだった。そして、ギルドはFreedomに発注したのである。
「ケンジ様!大変です!」
「ムシュダルクさん、朝からどうしたんだよ?もうちょっと静かにお願いします」
「申し訳ないですが、本当に大変なのです!」
「どうしたんだよ?」
「ギルドから、蹄鉄の発注書が届き数が大変な事になっているのです!」
「ようやく世間が動き出したか!それで数はどれだけ来たんだ?」
「蹄鉄3万セットです!」
「ほう!」
「ほうって……もっと驚かないのですか?」
「3万は想定内だよ!これからもっと発注されると思うぞ!」
「3万個が想定内……」
「じゃあ、すぐにギルドに納品してくれ!」
「3万個も在庫あるのですか?」
「だから想定内だって、何のために蹄鉄部門を作ったと思っているんだよ」
ムシュダルクは、ケンジの頭の中を本気で割って、見てみたいと思ったのだった。だが、これはまだケンジにとって序章であり、この先ムシュダルクはもっと驚く事を目の当たりにするのである。
行商人や乗合馬車を商売にしている者達は、旅にかかる時間が今までの半分になるという事もあり、馬車の購入を決めたのである。
そして、その馬車で旅をした者の噂が拡がり、魔物や盗賊に襲われたが、馬車のスピードが今までの2倍になった事で逃げ切ることが出来たと、ギルドに謝礼に来る人間が増えたのである。
当然だが、護衛の冒険者達も食材を持ち歩かなくてよくなったのである。町と町を駆け抜けることが出来る為、1日分の食材だけ買い込めばよくなったのだ。
そして、山間部の町でも魚が流通し始めたのである。ケンジのように時間停止のインベントリがある訳ではなく、今までは山間部では魚の流通は無理だったのだが、ケンジの冷蔵庫のおかげで氷が手軽に手に入れれるようになった事もあり、今まで3日ほどかかっていた山間部の町でも、無理をすれば1日で移動が可能となり、魚が流通しはじめたのである。町の人達は、やっぱりギルドは町には必要不可欠の存在だと称え始めたのである。
しかし、ギルドでは腑に落ちない事があったのである。それはFreedomである。馬車の利益は全体の20%しかとらず、馬の蹄鉄の売り上げはギルドが受注する分だけで、今までのような商品のように爆発的な売り上げになっていないのである。馬車とセットじゃないと売れていないのである。
「Freedomは、今回本当にギルドの為に動いてくれたようですね」
「アーチェ……本当にそう思うか?わしはあのFreedomが、ギルドの為だけに動いたとどうしても思えんのだよ……」
「ですが、実質Freedomでは馬車の販売はしておりませんよ?蹄鉄もギルドの馬車の為にあるようなもので、馬車が売れなければ蹄鉄も役に立たないじゃありませんか?」
「わしもてっきりFreedomで、ギルドより高性能の馬車が売り出されると思ってたんだが、そんな事もないしな……」
「そうですよ!ギルドマスターが民衆の為に動いたことを、ケンジ様も理解してくれたんですよ!」
「それならいいんだが……」
ギルドマスターは、ケンジの商人としての才能を恐れていたのである。前にもそう簡単に他人を信じちゃだめだ!と言われたばかりで、今回馬車の事でケンジがこんなに素直にギルドに損得無しで協力をするものなのかと、疑念が広がっていたのである。オッシの予想は、近い将来現実のものとなるのである。
そして、一方Freedomでは、ケンジ達が会議を開いて、今回の蹄鉄の事で話し合っていたのだった。
「ケンジ様!今回蹄鉄の事なのですが、やはり失敗に終わりそうです……」
「おいおい!結論を出すのが早すぎるって……」
「ですが、この2か月で蹄鉄が発注されたのは最初の納品分だけですよ。何で?今も蹄鉄を製作し続けているのですか?」
「まあ、待てって!俺は俺の考えで製作を続けさせているんだよ。もうあと少し待てば、世論が動き出すから楽しみにしてろって!」
「ご主人様!訳ぐらい言ってくださいませんか?この2か月で蹄鉄の在庫も万を超える数となっております!」
「ケンちゃん!あたしはなんとなくわかるからいいけど、国を管理している人達には不安になるよ?」
「そんなに不安になる事ないだろ?いつも俺の商品は成功しているじゃないか?」
「マイ様は分かるのですか?」
「まあ、ケンちゃんの考える事だから、何となくだけどね」
「では、なんで売れない蹄鉄をあんなに製作しているのですか?」
「多分ね……蹄鉄をギルドと違う他の所が、欲しがるようになるからよ!」
「えっ⁉馬車以外にどういう使い道が?」
「馬車にこだわる必要はないのよ!こだわる点は馬にするべきよ!」
「へっ?」
「つまりね……馬車が売れないと馬の装備が売れないと考えるのが、間違ってると言っているのよ」
「それって……」
「そういう事!マイの言っている事が正解だ!」
それを聞いた、ムシュダルク達はケンジの計画に驚いたのである。確かに馬車が売れないと蹄鉄が売れないというのは間違いであり、農家が運搬用にしている馬につける事で大量の荷物を一気に収穫が出来、土を耕す時耕運器具を引かせる時も役立つのである。
農家には必要不可欠である家畜に、ケンジの蹄鉄を使用することで、今までの倍以上の働きが望めるようになるのである。
今はまだ、農家の人間が気づいていないだけだが、家畜に使う事で一気に広まることを、ケンジは見通し今は在庫になるが製作し続けていたのだ。
「なんで、ケンジ様は売り込みをしないのですか?」
「なんでって、そりゃ今は農家に売り込みをしても売れないからだよ」
「どういう事ですか?」
「う~ん!説明すると難しいんだが、農家をやっている人達は基本、今までやってきた事に誇りを持っているからだよ。新しい事を導入するのは結構勇気のいる行動だから、自分達から動いてもらう方が一気に広まるんだよ」
「でも、こちらから営業をした方がいいと思うのですが?」
「いや、こちらからグイグイ行くと、絶対とは言わないが壁を作られるとおもうぞ」
「そういうものですか?」
「まあ、もう少しの辛抱だ!いずれ一気に購入者が増えると思うぞ」
ケンジの言う通り、1ヶ月もしないうちにギルドに、蹄鉄の注文依頼が殺到したのである。ある日、一人の農家の男性が蹄鉄だけを購入したのである。
「あのお客様……蹄鉄だけのお求めですか?馬車は買わないのですか?」
ギルドの受付嬢は、蹄鉄を5セットも購入したので、おかしいと思ったのだ。その購入した人物は、行商人でもなく、麦わら帽子をかぶった人物だったのである。
「ああ!馬車などいらねぇ。この蹄鉄だけでいいんだよ」
「そ、そうですか?1セット300ドゴンとなります」
「こんないいもんが、300ドゴンなんて信じられねぇな。ほんまにいいだか?」
「大丈夫ですか?その蹄鉄の期限は使い始めて半年から8ヵ月ぐらいなので、効果が薄まって来たと思ったら、交換になりますからね」
「ああ!わかっただよ。丁寧にありがとな!」
その男は、嬉しそうな笑顔を見せて、ギルドを出て行ったのである。受付嬢は、その時蹄鉄だけ買っても意味がないのにと思い、笑顔でその男性を見送ったのである。
「ねえ、今のお客様……馬車は購入しなかったの?」
「うん……おかしな人よね?馬車のお金はなかったのかしら?」
「先に蹄鉄だけ買って、馬車のお金は今貯めているのかな?」
「そうなんじゃない?少しづつ購入するのも楽しみの一つよ」
ギルド受付嬢は、気軽に考えこれから起きることが全然予想できなかったのである。この時、馬車の売り上げも好調で500台がもうすぐ売り切れようとしていたのである。その為、蹄鉄だけ購入した男性の事など、気にも留めなかったのだった。
そして、それから1ヶ月後徐々に蹄鉄だけ売ってくれと言ってくる、お客様が増えてきたのである。
「ど、どういう事だ?」
「ギルドマスター、あちこちの町から蹄鉄の発注の申し込みが、いったいこれはどうなっているのでしょうか?」
「それらは全部蹄鉄だけなのか?」
「はい!ガーライの町では500セット、ロゼンの町では800セットと田舎に行けば行くほど、セット数が多いのです」
「な、何で……だ……馬車は全然売れないのに、馬車は本当に要らないのか?」
馬車も当然売れてはいたのだった、ガーライの町の蹄鉄の売り上げなら、馬につける蹄鉄の数からすれば馬車は250台売れることになるのだ。
しかし、売れるのは蹄鉄だけで、馬車は20台前後でしか売れていないのだ。
「ケンジさんが、又何かやったのでしょうか?」
「そんなうわさが出ているのか?」
「いえ……出てはいないですが、こんな状態はおかしいではないじゃないですか?メインである、馬車が売れないのに、補助的アイテムの方が人気商品って意味が分からないですよ」
「た、確かに……いったいどんなからくりが……」
その時、ギルドの部屋に偵察をしに行っていた、職員が帰って来たのである。
「ギルドマスター大変です!」
「何かわかったのか?」
「蹄鉄は馬車を引く為の馬に使われていません。農作業の家畜に使われているのです!」
「なっ⁉」
「多分、馬車の事が噂に拡がり農家の人間が、馬車に使わず自分の家畜に使ったら農業作業の効率があがるとおもったみたいで、それが一気に広まったと考えられます」
「なんてことだ!ケンジさんは最初からこれを狙って、馬車の利益は2割と言ったのか!」
ギルドマスターは勘違いをしていたのである。ケンジは純粋にギルドの建て直しに協力をするつもりで、利益の大半をギルドに渡すつもりで2割と言ったのである。
だが、ここにきて馬車の伸びより蹄鉄の方が売れる事に誤解をしたのである。馬車の方もここにきて落ち着いてはいるが、先月も20台も売れていたのである。
「くそおぉ~~~!こういう事なら馬車の利益を6割取ってもらい、蹄鉄の方もギルドに、利益還元してもらうのだった!」
「ギルドマスターちょっと待ってください!」
ここでいつもはアーチェが口を出すのだが、今回はモーリスが意見を言ってきたのである。
「何かあったのか?」
「ケンジ様は、今回本当にギルドの為を想って行動したのだと思いますよ」
「何を言っているんだ!現状、蹄鉄だけがこんなにヒットしているではないか!」
「確かに、数を見たらそう見えますが、この帳簿を見てください‼」
モーリスは、馬車の売り上げをオッシに見せたのである。そこには馬車もちゃんと売れていて、人気商品であったのだ。
馬車の数が20台となっていたのは、もう在庫が無く製造待ちだったのだ。つまり、ケンジが最初便器を売り出したような状態であり、予約客がまだまだいっぱいいたのである。需要と供給が追い付いていないだけで、馬車の売り上げもちゃんと、この先続くことが約束されていたのである。
「馬車が普及されるその前に、蹄鉄の利用方法が農家の人間に発見されただけだったのか……」
「はい!たぶんその通りです」
「と、言う事はケンジ殿は、この事は知らないという事か?」
「いえ……ケンジ様の事です。この事も視野に入れて、ギルドに協力したと考えたほうがよろしいかと!」
「そ、そうか……出し抜かれたわけではないが、こういう先の事を見通す目がケンジさんにはあるの言う訳か……」
オッシは、つくづくギルドはケンジという人間を追放した事を後悔しないといけないと思い知らされたのだった。
「わかった!すぐにFreedomに発注要請をするのだ!」
「はい!」
「わかりました!」
「ですが、いきなりこんな数を発注してそろうと思いませんが、どのように振り分ければよろしいですか?」
「当然!発注書の順で在庫が足りない所は、待ってもらうしかなかろう!」
「分かりました!」
この蹄鉄は、一農家に家畜が5匹以上でも少ない方である。農業器具を引っ張る家畜、収穫した時の運搬する家畜等考えると、一農家で蹄鉄は20セット買う農家も珍しくないのである。
帝国領のロゼンの町のように、農家が主流の町になると、一体いくつの蹄鉄が売れるのか、予想できなかったのである。
その為、ギルドでは発注書を確認したところ、1万5千セットの蹄鉄が注文されていたのである。
「なっ⁉これは本当なのか?」
「えぇ……ケンジ様の商才を、もっと早く見極めれていたらと、後悔しますね……」
モーリスの言葉に、その場にいたギルド職員は落ち込んでしまうのだった。そして、ギルドはFreedomに発注したのである。
「ケンジ様!大変です!」
「ムシュダルクさん、朝からどうしたんだよ?もうちょっと静かにお願いします」
「申し訳ないですが、本当に大変なのです!」
「どうしたんだよ?」
「ギルドから、蹄鉄の発注書が届き数が大変な事になっているのです!」
「ようやく世間が動き出したか!それで数はどれだけ来たんだ?」
「蹄鉄3万セットです!」
「ほう!」
「ほうって……もっと驚かないのですか?」
「3万は想定内だよ!これからもっと発注されると思うぞ!」
「3万個が想定内……」
「じゃあ、すぐにギルドに納品してくれ!」
「3万個も在庫あるのですか?」
「だから想定内だって、何のために蹄鉄部門を作ったと思っているんだよ」
ムシュダルクは、ケンジの頭の中を本気で割って、見てみたいと思ったのだった。だが、これはまだケンジにとって序章であり、この先ムシュダルクはもっと驚く事を目の当たりにするのである。
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