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第9章 Freedom国の発展!

75話 ギルドの崩壊?

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 ケンジとマイは、そのまま行列に並び、有名店で食事をして会話を楽しんだのである。

「ねえ、ケンちゃん……」

「うん?どうかしたのか?」

「さっきの事なんだけど、ああいうのが増えると思う?」

「どうだろうな?一応今、Freedom国の内壁側だけ、俺の結界で守られているだろ?」

「ええ、そうね!」

 今、Freedom国の結界はケンジの屋敷と奴隷達の別宅がある内側の城壁までが、ケンジの開発した結界でおおわれており、中間壁と外壁は他の町と同様の結界で守られているのである。
 理由は、外から来た行商人や移住してきた人が行動しずらい事にあったのだ。子供の頃生きる為にしょうがないとはいえ軽犯罪を犯した人まで中間壁内に入れないと、色々と不都合が出てきたのである。
 その為、ケンジの強力過ぎる結界は、ケンジの家族は生活する内壁側だけにとどめていたのである。

「ギルドが、今どんな状態にあるか、マイは知っているか?」

「もう、ギルドには行っていないからよくは知らないけど、そんな風に言うからには悲惨な状況になっているの?」

「相当やばい状況らしいぞ!最近、うちのギルドに就職させてくれと、言ってくる人間が増えているらしい」

「えっ⁉そうなの?」

「特に、元ギルド受付嬢が来ているらしいんだよ」

 ケンジの説明によると、ギルドは今大変な事になっていて、高ランク冒険者はここFreedomに拠点を移し、他の場所では魔物の素材が本当に集まらなくなっているのである。
 ただ、Freedom支店がある町は住みやすく、素材が集まらなくともFreedomで購入すればいいので、緊急の用事以外はギルドに依頼が出なくなっているのである。
 その為、ギルドに依頼が発注されるのは、殆どがFランクの雑用か採取、又はゴブリンのような常時依頼しかない状態なのだ。

 Freedom支店がない町では、その町から離れられない事情がある人以外は、移住しているのである。その移住している人間は生産者や商人である。今までなら、護衛依頼を出し採取や行商などしていたのだが、その依頼を出す対象である、高ランク冒険者が拠点を移したことで、中々連絡が取れなくなっているのである。

「ってことは、町に必要であったギルドの存在価値が無くなっているって事?」

「ああ!ギルドに依頼を出すより、Freedom支店がある町に移住をして、買い物をした方が早く揃うらしいんだよ」

「それってどういう事?」

「つまりだな、もしお客さんが癒し草を購入しに来るとするだろ?」

「うん!」

「その癒し草がなかった場合、Freedom店がうちのギルドに癒し草を依頼した場合、冒険者がすぐに動ける状態にあって、癒し草がFreedom店に納品されるって事なんだよ!」

「な、なるほど……」

「今の例は癒し草だが、これがオーガの素材だとそれなりの実力を持った冒険者がいない町だと時間がかかりすぎるから、生産者なんかはFreedom支店のある町に移住した方が、メリットが大きいという訳だ」

「なるほど……って事は、さっきのケンちゃんを殺そうとしたのは……」

「十中八九、ギルド関係者の逆恨みだな!」

「ケンちゃん、これからどうするつもりなの?」

「えっ⁉」

「えっ⁉ってなによ!ギルドに命を狙われたんでしょ?仕返しするんでしょ?だったら、あたしも乗り込むの手伝うから!」

「まあ、ちょっと待ってくれよ!今回、俺を刺そうとしたあのオッサンに対しては、何らかのアクションは起こそうと思うが、ギルドに対しては現状維持のつもりだよ」

「えぇ~~~!何でよ!」

「前も言った通り、俺がやるのは支店を建てるという事だよ」

「じゃあ、ケンちゃんはやられ損じゃん!」

「いやいや……俺は今回本当に怒っているんだ!ギルドがどのような行動しても、絶対許すつもりはないよ!徹底的に追い詰めるつもりだよ。だけどそれは暴力じゃない力だ!それに今、マイは帝国領のギルドがどうなってるか知ってるか?」

「えっ?」

「帝国領は今、どんどん領地が減っていっているんだぞ!住民はガーライやミーランに移住していると言う噂だ」

 この町は、帝国領と王国領の境にある町で、Freedom支店がある町である。つまりブリュンガスから移住してきた人間が最初に辿り着く町である。
 そして、帝国領ではゴーストタウンになる町が続出し、ギルド支店も閉鎖に追い込まれているのだ。

 ケンジが支店を建てる事により、ケンジはギルドを追い詰めているのである。

「って事は、ケンちゃんは直接ギルドには何もしないの?」

「俺は待っているんだよ!」

「何を?」

「下からの突き上げをだよ」

「俺が何かしても、もうギルドは変わらない事が分かるだろ?テンペの町でもうそれは分かるだろ?」

「確かに……テンペの町で7人ぐらいだったっけ?ギルドマスターがかわったの……」

「俺も忘れた!だから、今回は違うやり方をしているんだよ!この世界の権力者達は、自分達がいて下の者が働けているという構図をなんとかしないと、同じことの繰り返しだと思ってな」

「でも、そんなにうまくいくのかな?」

「それもよくわからんよ!実際ギルドが嫌だから、Freedom支店に雇ってくれと言ってくる人間も少なくないからな。下で働いている人間でカリスマ性のある人間が先導し、ギルドに訴えを起こすような感じにならないと無理だからな」

「それって無理じゃない?」

「まあ、ギルドが変わるか崩壊するかどっちかだろうな!まあ、俺はギルドを許さない態度をかえないだけだよ」

「ケンちゃんは、ギルドを許さないっていうか、ギルドを我が物で操っている、上層部を許さないって事でいいのよね?」

「まあ、それが大部分だけど、下で働いている人間も変わってほしいのもあるよ。ゴッドオーダーの時も、そうだけどギルドが責任を持って統計を取るって言った時でも、結局は上の判断に言いなりだっただろ?あれじゃ上が調子に乗るのは当然だろ?」

「まあ、言われてみたらそうよね」

「だから、今回は下の連中に動いてもらおうと思っているんだよ。だけど、下の者がクーデターを起こさなければギルドは崩壊するだろうな!」

 今まで、ケンジはギルド支店の、ギルドマスターを相手にしていたが、今回はギルド総本部のギルドマスターである。その人物に責任を取らせようとしている為、生半可な事をしてもギルドマスターには責任はなく、幹部連中だけが責任を取らされて、終わりになる事を避けたかったのである。
 ギルドが崩壊しそうになる事で、従業員を動かしギルドの社長と役職を退任させたかったのである。

 それには、本来カリスマ性のある人間がギルドには必要なのだが、ケンジにとってギルドはもう興味の無いことだったので、揺さぶるだけ揺さぶりどうなるのか傍観していたのだった。

「でも、ギルドが崩壊の道をたどったら、ケンちゃんはどうするつもりなの?」

「俺には関係ない事だけど?」

「え⁉」

「マイも知っての通り俺は俺だからな!正義の味方でも何でもない!その街が住み辛いと思ったら、その町の住民は他の町に移住するだけだろ?」

「まあ、そうよね……」

「ブリュンガスが滅んだのだって、住みにくいからドーナツ化現象が起こり、住みやすい町に移住した事だけだ。ただ、おれはこの国を住みやすくしたらいいだけだよ」

 ケンジは、この地点ではまだちゃんとわかっていなかったのである。ヒューマン地域におけるギルドが、もう崩壊している事に!



 ケンジ達は食事をすませ、そのお店の責任者に美味しかったと伝え、楽しい時間を過ごしたのだった。

「ケンジ様には本当に感謝しております!この町に来て、上等な食材が手に入りお客様には感謝の言葉がたくさん届いております」

「いやいや、それはこのお店が良心的で努力した結果ですよ!まあ、マイ?」

「本当にそうだと思います!今日のメニューも本当に美味しかったですもの」

「そう言って頂き、従業員一同嬉しく思います!又のお越しをいつでもお待ちしております」

 支配人は、ケンジ達に頭を下げて、ケンジ達を見送ったのである。




 家に帰って来たケンジに、セバス達が駆け寄ってきたのである。

「「「「「「ご主人様!」」」」」」

「あっ!しまった……連絡するの忘れてた」

 ケンジが、刺されかけたが無事だという連絡は、イチカから屋敷に連絡が入ってたはずだが、無事な姿が確認できないうちは、こうなるのが当たり前で屋敷中の奴隷が集まっていたのである。屋敷に入れない者は、屋敷の中庭で集まっていたのである。

「なんで、すぐ帰ってきてくれないのですか!」

「悪い!せっかくマイとの食事だったし、無事だと言う事はイチカの方から連絡がいってると思ってさ……」

「確かに連絡はきましたが、殺されかけたのですよ?そういう場合はすぐ帰ってきてくださいよ!」

「本当に悪いな!この通りだ」

 ケンジはみんなに土下座して謝罪したのだった。それを見たセバス達は慌ててケンジを止めるのだった。

「それにしても本当に焦りましたよ」

「ムシュダルクさんも来てたのですか?」

「そりゃ、国王が刺されたと聞いたら、心配もしますよ!」 

「すいません……」

「ですが、これからギルドに対してどうするつもりですか?」

「やっぱり、ギルドの差し金だったのですか?」

 そこからは、イチカが説明するのだった。あの犯人はギルドに借金があった男であり、ギルドの借金をなかった事にする代わりに、ご主人様が町に出てくるところを狙ってたと説明した。
 
「うん!さっきもマイと話していたんだけど、俺はギルドに対してもう何も言うつもりはないんだよ!」

「何を言っているのですか!」
「そうだぜ!ギルドには落とし前を!」
「そうですよ!ご主人様このままでは!」
「ここはやっぱり損害賠償の請求をするべきです!」

「まあ、ちょっと待ってくれよ!俺の話も聞いてくれ!」

 ケンジの言葉に、騒然となっていたムシュダルク達は静かになった。そして、ケンジは中庭に集まっていた者達には、無事だと言う事を報せて宿舎の方に帰ってもらうのだった。
 ケンジの元気な姿を見て、安心したのかみんなホッとため息をつき、ケンジの言う通りに、大部屋に戻っていったのである。

 そして、残ったのはムシュダルクをはじめ1軍であるギル達であった。

「主!ここはやっぱり、ギルドには責任を追及した方がいいのでは?」

「ギル、お前の言う事はもっともなのだが、今までのように動いてもギルド総本部のマスターには、罪をうやむやにされてしまって終わりなんだよ」

「どういう事でしょうか?」

 ケンジは、マイに言った説明をしたのである。その説明でムシュダルクは納得してくれたようだった。

「確かに同じようにしても、ギルドマスターは下の者に責任を擦り付け自分だけのうのうと生き残るだろうな……」

「ああ!だから、俺は支店を増やしていきギルドを追い詰めてやろうと思うんだよ。そうする事で、ギルド自身どういう道を選ぶか傍観しようと思うんだよ」

「それで本当に上手くいくのですか?」

「別に、こちらの思い通りになってもならなくてもどうでもいいんだよ!」

「どういう事ですか?」

「つまりだな!支店を増やす事でFreedomが大きくなり、自分達が豊かになるのはわかるだろ?」

「はい!」

「それによって、ギルドがつぶれようがトップが辞任に追い込まれようが関係ないって事だよ!ギルドがつぶれたらそれは時代の流れ!トップが辞任に追い込まれれば、キキョウの仇を討てたって事だよ」

「ギルドがつぶれたら、他の町はどうなるのですか?」

「そりゃ、その町の住民が考える事だろ?住みやすい町に移住するなり領主が考える事だよ。俺達の責任じゃないってことだよ!だけど、その町の領主が支店を建ててほしいと言ってくるのは確実だけどな!」

 ケンジの言葉に、その場にいた人間は冷や汗を流したのである。

「いや、これは願望だけで、そうなっても困ると言うのが正直な感想かな。ギルドには、クーデターを起こしてほしいかな。ギルドの総本部の頭が変わるなら、少しぐらいは良くなるかもしれないからな」

 ケンジが、そのように言うのは当然である。これ以上厄介事に振り回されたくないからだ。それに他の国の事など構っていたくなくて、Freedomの中で楽しく自由でいたいだけなのである。


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