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第9章 Freedom国の発展!
33話 ブラックスペンサーの実力②
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ここ、グランパス王国ではランスロット達の行方を、表からも情報を集めて会議を行っていたのである。
「まだ、見つからんのか?」
「はい……」
会議では、行方の糸口でさえ見つからなかったのだ。
「なぜ、あんなに大量の奴隷達を引き連れた一行が、ただの一人も目撃者がいないのだ!」
それは当たり前である。ケンジはランスロット達を、転移マットでFreedom国に送って、自らは馬車で帰ったからで、目撃者が出るわけがないのだ。
その時、国王の頭の中だけに聴こえる声が聞こえたのである。
「国王……ランスロット達の、行方が見つかったかもしれません!」
「だ、誰じゃ⁉姿を見せい‼」
すると、入り口付近に黒い影がスッと現れるのだった。
「お主は、ブラックスペンサーか?」
「はっ!」
「でかした!で、どこにいたのだ?」
「まだ、そのランスロット達の姿は確認はしていませんが、Freedom国にいると思われます!取り敢えず報告にあがりました!」
ブラックスペンサーは、馬車の残骸のあった場所の手がかりを説明し、残りの者達でFreedom国に偵察に行った事を報告したのだった。
「なんだと!よりによって、Freedom国に身請けされているかもしれないと言うのか?お主達の勘違いではないのか?」
「現場の状況からみて、ほぼ確実かと……」
「国王!」
「宰相、いきなり大きな声を出してなんだ?」
「確かに、ケンジとやらなら、ランスロット達を目撃者なしで、自国に連れて行く事は可能です!」
「どういう事だ?」
「国王、お忘れですか?Freedom店は、どのようにお客を呼び込んでいるのです?」
「あっ……た、確かに、あの方法なら目撃者の一人も出さず、大人数を移動させる事も可能だ!」
「ならば、すぐにランスロット達を返還要請を、Freedom国に出すのだ!」
「国王!もう少し待つべきです‼」
「なぜだ?」
「本当にランスロット達が、Freedom国に身請けされているのか、事実確認をしてからでも遅くありません。それに、今要請を出し、あちらに返還する意思がなければ、はぐらかされる恐れも……」
「フム……た、確かに!」
「お主は、よく報告してくれた!」
ブラックスペンサーの隊員は、国王の言葉に頭を下げるのであった。
「それでは、私は本隊に戻ります!」
「ああ!Freedom国は常識が通じない国だ!くれぐれも用心し探ってくれ!」
「勿体ないお言葉ありがとうございます!」
ブラックスペンサーの一人はスッと姿を消し、本隊へと戻っていくのだった。
Freedom国では、日々の訓練が続けられていたのである。
「ランスロット!いま少し話せないか?」
「今は、訓練中でもう少ししたら休憩に入るのですが……」
それを聞いた、ロイが主であるケンジを待たせるのはあり得ないと、ランスロットを怒鳴るのだった!
「ランスロット、何を言っているんだ‼主様が用事があるんだ。主を優先にしないといけないだろうが!」
「ロ、ロイ……そんなに怒鳴らなくていいよ。今は、筋力を元に戻すのも大事な事だからさ……」
「いえ……そんなものは、主様の役に立ってから言える言葉です!こいつらは、まだその舞台にも立っていないのです。だったら、少しでも主様の役に立つ事を、優先しないといけないと思います!」
「わかったよ。ロイありがとな」
「いえ、そんな勿体ない!礼を言われるような事ではありません」
ロイは、結構暑苦しい性格をしているんだなと、ケンジは苦笑いをしてしまうのだった。
「じゃあ、ランスロットこっちに来てくれるか?」
「はい!」
ケンジは、ランスロットを会議室に連れて行くのだった。そこには、マイとムシュダルク、セバスに内政をしてくれている3人が揃っていたのである。
「ランスロット、まずそこに座ってくれるか?俺はお前に聞きたい事があるんだがいいかな?」
「主殿!なんでしょうか?」
「俺は、最初……君達、元王国騎士団を受け入れるつもりはなかったんだが、こうして数ヶ月ここで暮らしているのを見て、なし崩しになっていると思っている」
「それは、私達を王国に返還しようという事でしょうか?」
「それも、この数ヶ月で議題に上がっていた事だ!だけど、そうなるとお前達自身の身柄の事も心配なんだよ」
「たしかに、我々が王国に返還されたら、また鉱山送りになる事になりますからね……」
「ランスロット……お前はそんな事を考えているのか?何とも呑気な考え方なんだな……」
「えっ⁉」
「お前達全員が、生きて王国の土を踏める事は絶対にありえないよ!」
「なっ!なぜですか?」
「いいか?お前達の、今の立場は亡命と同じなんだよ。次、王国に戻ったら裏切り者として、人知れず処刑されるだろう!」
「我々は逃げてなんか……」
「まあそうだな!だが、王国側はそのようにとらえているのか?違うよな?逃げないのなら、何で助かった地点で王国に、引き渡してくれと言わなかった?」
「そ、それは……」
「意地悪な言い方して悪いな……でも、実際は王国側からしたら、そういう事なんだよ」
「私達はどうしたら……」
「そこで、質問なんだが」
「はい!なんなりと……」
「お前達は、いったん王国に戻ると行った時、グランパス王に暇を貰うつもりと言ってただろ?」
「はい……主殿が紋章のついた鎧を与えてくれた時、二臣があるのはいけないと思い、グランパス国の騎士の称号を返上する思いで、戻った次第でございます」
「それは、今でも変わらないのか?」
「それは、もちろんです!前の時とはもう全然違い、ブラッドタイガーから救ってくれて、私達が奴隷の立場であるにもかかわらず、生活は前より優雅な暮らしを与えてくれて、本当にありがたいと思っています」
「って事は、もうグランパス王国には戻りたくはないと?」
「えぇ!もし、この待遇がなくともグランパス王国には戻りたくない理由があります」
「それは、王族や貴族達からの処遇についてか?」
「えぇ!私達は、確かにテンペの町からいったん逃げたのは事実です。ですが我々の言い分も聞いてくれず、有無も言わせず奴隷に落とし、口封じのように強制連行にされ、挙句の果てにもう還らなくなった、部下達があまりに不憫で……」
ランスロットは、自分で言ってその瞳に涙を溜めながら、ケンジに訴えかけるように、言葉を振絞るように震えていたのだった。
「ランスロット、俺は自分で言うのも何なんだが、人間を信用していない!」
「主殿!わたしはっ‼」
「まあ、最後まで聞いてくれないか?」
「はい……申し訳ございません……」
「人間を、信用していないと言うのは他人って事だ!特に見ず知らずの人間は信用していないが、基本的には来るもの拒まず去る者追わずを念頭に置き、付き合っているんだよ」
「ケンちゃん……」
「でだ、その中で信頼というものが育ち、信用になると思っている。だから、ランスロット達が王国に戻りたいと行った時、俺はこうなる事は予想出来たが、それでも前の主人がいいと言うお前達の主張を優先したんだよ」
「主殿……」
「マイにも言われたんだが、俺は俺の中で自己処理を、勝手にし過ぎだと怒られた。今回の事も俺がもっとお前達とコミニュケーションを取っていればお前達は、奴隷に堕ちなくても良かったんだと思う」
ケンジは、ランスロットの目を見て話の続きをし始めるのだった。
「それで、俺は信頼した人間は家族だと思っている!テンペの町から移住を決めてくれた民衆達の事もふくまれるけどな!なのに、俺のもとから離れる人間もいたから、その人間達は俺にとって他人という事で、最後の忠告はしたがそれだけの事だったんだ」
「……」
「あの時、もっと話を聞いていればランスロット達は奴隷にも落ちず、犠牲者が出る事もなかったんだ……本当にごめんなさい!」
ケンジはそのように説明して、ランスロットに頭を下げたのだった。ランスロットは何が起こっているのかが理解できないでいた。主人がそれもこの国の国王が奴隷に頭を下げる事を、平気でやってのけたのである。
「あ、主殿!やめてください‼頭を上げてください‼」
「……」
ケンジは、ランスロットに頭を下げ続け謝罪したのである。
「ランスロット!お前はもうどこにも行ける所はない、だからこんな事を言うのは卑怯かもしれないが、このままこの国で衛兵を本気でやってみないか?」
「私達は、それだけしか出来ません……それに、一度この国を離れる時もこの国の兵士になる為に、グランパス王国に戻ったのです。それの気持ちは今も変わっていません!こちらからお願いしたいぐらいです!」
「そっか!そう言ってくれて良かったよ……」
「あの……それはどういう事でしょうか?」
「俺の性格は、さっきも言った通りあんな感じだ。もしここで、ランスロットがここでは、もうやっていけないと言ってもおかしくないと思ってた」
「そんな訳……」
「実際の所……奴隷じゃなかったら、その選択もあったのと違うか?」
「……」
ランスロットが無口になるのも無理はなかった。王国には裏切られた形になり、Freedom国では、今だ何の役にも立てないどころか厄介者なのだ。奴隷という立場で無かったら、帝国領や聖都に行く手段もあるのだ。
だが、奴隷となってしまえば一人では行動できず、ケンジに頼らなくては何もできないのである。
「主殿……もし、私がこの立場であるにもかかわらず、この国に留まらないと言っていたら、どうなっていたのですか?」
「ふむ!俺の予想だが、あと数ヶ月……いや、長くて一か月後にはグランパス王国から、ランスロット達を返還要請が届くことになる」
「「「「「えぇ~~~~~~」」」」」
「なんだよ、お前達が驚く事じゃないだろ?」
ランスロットが驚くより、マイやムシュダルク達が驚き、大声を出したのだった。
「ケンちゃん!あたしそんなこと聞いてないよ⁉」
「そんな事言わなくても分かる事だろ!何で気づかないんだよ‼」
ランスロットは下を向き、小さな声で呟くのだった。
「主殿は、私達を返還するおつもりですか?」
「お前が、この国は嫌だと言っていたら、俺は王国の返還に応じていたよ。俺は、その本人が嫌だと言う事を、無理やりやらせようとは思わないよ」
「では、私達はこれから?」
「お前は、この国に残りたいと言ったじゃないか。だから、王国からの返還要請は突っぱねるつもりだよ」
「それでは、私達は本当に厄介者ではありませんか?」
「けんちゃん!相手は王国だよ?」
「「「「ご主人様!いったいどのようにするおつもりですか?」」」」
「お前達は、そんな事心配しなくてもいいんだよ!交渉は俺がやる事だ!お前達は内政をやってくれたら十分だよ」
「ランスロット!お前達は家族として迎え入れるから安心して大船に乗ったつもりで、訓練に精を出していたらいいからな」
「主殿……ありがとうございます!」
「それと、お前達、元騎士団はまだ奴隷契約が仮状態だがもうちょっとそのままでいてくれ!この町にいずれ奴隷商人も移住してきたら、その時に本契約するからな」
「ケンちゃん何でよ!他の町に行って、今してあげたらいいじゃない!」
「ったく、お前は本当何も考えていないだから……」
「なによ!そんな風に言わずにやってあげたらいいじゃない!」
「マイさん!それは無理でございます!」
「セバスまで何言ってんのよ!」
「マイさんよく考えてください。本契約するには王国領の町に行かないといけないのですよ。今のランスロット達はこの国に亡命しているようなものです。それを、他の国に行くなんて自殺行為ですよ!」
「あっ……」
「まあ、そう言う事だ……この国に奴隷商人が移住してきた時で、何の問題はないからな。そっちの方が安全って事だ!」
その時、会議室の扉がバタンと開くのだった。
「ご主人様!曲者が一人、引っかかりましたのでお連れしました」
そこには、ツバキが麻痺毒で動けなくした人物を粘着糸で拘束して、会議室に連れてきたのであった。
「なっ!何でこのエリアに不審者が⁉」
「それをわたしに聞かれても……ですが、屋敷の屋根裏に侵入して来たところを、わたしの張った粘着糸の罠に引っかかったのでお連れしたしだいです」
「そっか……ツバキありがとな!」
このFreedom国の中間壁の内側には、不審者は絶対に入れない結界が張ってあるので、絶対無理なはずである。
だが、この盗賊は侵入が出来たと言う事は、結界を無効化できる何かを持っているか、それとも結界が作動しない善人という事である。
ケンジは粘着糸を剥がし、その人物を見ようとしたのだ。その時、粘着糸がはがれず、着衣の肩口が破れてしまったのである。
その肩口には、王国の印が入れ墨として入っていたのだ。だが王国に印にB・Sと下に入っていたのだった。
「これって……王国の印に似ているけど少し違うな……ムシュダルクさん、この意味は分かる?」
「こ、これは!」
その印を見た、ムシュダルクは言葉を詰まらせるのだった。
「ランスロットよ。これを見てみろ……さっきの事が本当になりそうだぞ!」
「……」
ランスロットも、その印を見た瞬間、生唾をごくりと飲むのだった。
「これって、なんの印なんだ?」
「王国最強の諜報部隊……ブラックスペンサーですよ……」
ムシュダルクの王国最強と言う言葉に、みんなは目を見合わせるのだった。
「まだ、見つからんのか?」
「はい……」
会議では、行方の糸口でさえ見つからなかったのだ。
「なぜ、あんなに大量の奴隷達を引き連れた一行が、ただの一人も目撃者がいないのだ!」
それは当たり前である。ケンジはランスロット達を、転移マットでFreedom国に送って、自らは馬車で帰ったからで、目撃者が出るわけがないのだ。
その時、国王の頭の中だけに聴こえる声が聞こえたのである。
「国王……ランスロット達の、行方が見つかったかもしれません!」
「だ、誰じゃ⁉姿を見せい‼」
すると、入り口付近に黒い影がスッと現れるのだった。
「お主は、ブラックスペンサーか?」
「はっ!」
「でかした!で、どこにいたのだ?」
「まだ、そのランスロット達の姿は確認はしていませんが、Freedom国にいると思われます!取り敢えず報告にあがりました!」
ブラックスペンサーは、馬車の残骸のあった場所の手がかりを説明し、残りの者達でFreedom国に偵察に行った事を報告したのだった。
「なんだと!よりによって、Freedom国に身請けされているかもしれないと言うのか?お主達の勘違いではないのか?」
「現場の状況からみて、ほぼ確実かと……」
「国王!」
「宰相、いきなり大きな声を出してなんだ?」
「確かに、ケンジとやらなら、ランスロット達を目撃者なしで、自国に連れて行く事は可能です!」
「どういう事だ?」
「国王、お忘れですか?Freedom店は、どのようにお客を呼び込んでいるのです?」
「あっ……た、確かに、あの方法なら目撃者の一人も出さず、大人数を移動させる事も可能だ!」
「ならば、すぐにランスロット達を返還要請を、Freedom国に出すのだ!」
「国王!もう少し待つべきです‼」
「なぜだ?」
「本当にランスロット達が、Freedom国に身請けされているのか、事実確認をしてからでも遅くありません。それに、今要請を出し、あちらに返還する意思がなければ、はぐらかされる恐れも……」
「フム……た、確かに!」
「お主は、よく報告してくれた!」
ブラックスペンサーの隊員は、国王の言葉に頭を下げるのであった。
「それでは、私は本隊に戻ります!」
「ああ!Freedom国は常識が通じない国だ!くれぐれも用心し探ってくれ!」
「勿体ないお言葉ありがとうございます!」
ブラックスペンサーの一人はスッと姿を消し、本隊へと戻っていくのだった。
Freedom国では、日々の訓練が続けられていたのである。
「ランスロット!いま少し話せないか?」
「今は、訓練中でもう少ししたら休憩に入るのですが……」
それを聞いた、ロイが主であるケンジを待たせるのはあり得ないと、ランスロットを怒鳴るのだった!
「ランスロット、何を言っているんだ‼主様が用事があるんだ。主を優先にしないといけないだろうが!」
「ロ、ロイ……そんなに怒鳴らなくていいよ。今は、筋力を元に戻すのも大事な事だからさ……」
「いえ……そんなものは、主様の役に立ってから言える言葉です!こいつらは、まだその舞台にも立っていないのです。だったら、少しでも主様の役に立つ事を、優先しないといけないと思います!」
「わかったよ。ロイありがとな」
「いえ、そんな勿体ない!礼を言われるような事ではありません」
ロイは、結構暑苦しい性格をしているんだなと、ケンジは苦笑いをしてしまうのだった。
「じゃあ、ランスロットこっちに来てくれるか?」
「はい!」
ケンジは、ランスロットを会議室に連れて行くのだった。そこには、マイとムシュダルク、セバスに内政をしてくれている3人が揃っていたのである。
「ランスロット、まずそこに座ってくれるか?俺はお前に聞きたい事があるんだがいいかな?」
「主殿!なんでしょうか?」
「俺は、最初……君達、元王国騎士団を受け入れるつもりはなかったんだが、こうして数ヶ月ここで暮らしているのを見て、なし崩しになっていると思っている」
「それは、私達を王国に返還しようという事でしょうか?」
「それも、この数ヶ月で議題に上がっていた事だ!だけど、そうなるとお前達自身の身柄の事も心配なんだよ」
「たしかに、我々が王国に返還されたら、また鉱山送りになる事になりますからね……」
「ランスロット……お前はそんな事を考えているのか?何とも呑気な考え方なんだな……」
「えっ⁉」
「お前達全員が、生きて王国の土を踏める事は絶対にありえないよ!」
「なっ!なぜですか?」
「いいか?お前達の、今の立場は亡命と同じなんだよ。次、王国に戻ったら裏切り者として、人知れず処刑されるだろう!」
「我々は逃げてなんか……」
「まあそうだな!だが、王国側はそのようにとらえているのか?違うよな?逃げないのなら、何で助かった地点で王国に、引き渡してくれと言わなかった?」
「そ、それは……」
「意地悪な言い方して悪いな……でも、実際は王国側からしたら、そういう事なんだよ」
「私達はどうしたら……」
「そこで、質問なんだが」
「はい!なんなりと……」
「お前達は、いったん王国に戻ると行った時、グランパス王に暇を貰うつもりと言ってただろ?」
「はい……主殿が紋章のついた鎧を与えてくれた時、二臣があるのはいけないと思い、グランパス国の騎士の称号を返上する思いで、戻った次第でございます」
「それは、今でも変わらないのか?」
「それは、もちろんです!前の時とはもう全然違い、ブラッドタイガーから救ってくれて、私達が奴隷の立場であるにもかかわらず、生活は前より優雅な暮らしを与えてくれて、本当にありがたいと思っています」
「って事は、もうグランパス王国には戻りたくはないと?」
「えぇ!もし、この待遇がなくともグランパス王国には戻りたくない理由があります」
「それは、王族や貴族達からの処遇についてか?」
「えぇ!私達は、確かにテンペの町からいったん逃げたのは事実です。ですが我々の言い分も聞いてくれず、有無も言わせず奴隷に落とし、口封じのように強制連行にされ、挙句の果てにもう還らなくなった、部下達があまりに不憫で……」
ランスロットは、自分で言ってその瞳に涙を溜めながら、ケンジに訴えかけるように、言葉を振絞るように震えていたのだった。
「ランスロット、俺は自分で言うのも何なんだが、人間を信用していない!」
「主殿!わたしはっ‼」
「まあ、最後まで聞いてくれないか?」
「はい……申し訳ございません……」
「人間を、信用していないと言うのは他人って事だ!特に見ず知らずの人間は信用していないが、基本的には来るもの拒まず去る者追わずを念頭に置き、付き合っているんだよ」
「ケンちゃん……」
「でだ、その中で信頼というものが育ち、信用になると思っている。だから、ランスロット達が王国に戻りたいと行った時、俺はこうなる事は予想出来たが、それでも前の主人がいいと言うお前達の主張を優先したんだよ」
「主殿……」
「マイにも言われたんだが、俺は俺の中で自己処理を、勝手にし過ぎだと怒られた。今回の事も俺がもっとお前達とコミニュケーションを取っていればお前達は、奴隷に堕ちなくても良かったんだと思う」
ケンジは、ランスロットの目を見て話の続きをし始めるのだった。
「それで、俺は信頼した人間は家族だと思っている!テンペの町から移住を決めてくれた民衆達の事もふくまれるけどな!なのに、俺のもとから離れる人間もいたから、その人間達は俺にとって他人という事で、最後の忠告はしたがそれだけの事だったんだ」
「……」
「あの時、もっと話を聞いていればランスロット達は奴隷にも落ちず、犠牲者が出る事もなかったんだ……本当にごめんなさい!」
ケンジはそのように説明して、ランスロットに頭を下げたのだった。ランスロットは何が起こっているのかが理解できないでいた。主人がそれもこの国の国王が奴隷に頭を下げる事を、平気でやってのけたのである。
「あ、主殿!やめてください‼頭を上げてください‼」
「……」
ケンジは、ランスロットに頭を下げ続け謝罪したのである。
「ランスロット!お前はもうどこにも行ける所はない、だからこんな事を言うのは卑怯かもしれないが、このままこの国で衛兵を本気でやってみないか?」
「私達は、それだけしか出来ません……それに、一度この国を離れる時もこの国の兵士になる為に、グランパス王国に戻ったのです。それの気持ちは今も変わっていません!こちらからお願いしたいぐらいです!」
「そっか!そう言ってくれて良かったよ……」
「あの……それはどういう事でしょうか?」
「俺の性格は、さっきも言った通りあんな感じだ。もしここで、ランスロットがここでは、もうやっていけないと言ってもおかしくないと思ってた」
「そんな訳……」
「実際の所……奴隷じゃなかったら、その選択もあったのと違うか?」
「……」
ランスロットが無口になるのも無理はなかった。王国には裏切られた形になり、Freedom国では、今だ何の役にも立てないどころか厄介者なのだ。奴隷という立場で無かったら、帝国領や聖都に行く手段もあるのだ。
だが、奴隷となってしまえば一人では行動できず、ケンジに頼らなくては何もできないのである。
「主殿……もし、私がこの立場であるにもかかわらず、この国に留まらないと言っていたら、どうなっていたのですか?」
「ふむ!俺の予想だが、あと数ヶ月……いや、長くて一か月後にはグランパス王国から、ランスロット達を返還要請が届くことになる」
「「「「「えぇ~~~~~~」」」」」
「なんだよ、お前達が驚く事じゃないだろ?」
ランスロットが驚くより、マイやムシュダルク達が驚き、大声を出したのだった。
「ケンちゃん!あたしそんなこと聞いてないよ⁉」
「そんな事言わなくても分かる事だろ!何で気づかないんだよ‼」
ランスロットは下を向き、小さな声で呟くのだった。
「主殿は、私達を返還するおつもりですか?」
「お前が、この国は嫌だと言っていたら、俺は王国の返還に応じていたよ。俺は、その本人が嫌だと言う事を、無理やりやらせようとは思わないよ」
「では、私達はこれから?」
「お前は、この国に残りたいと言ったじゃないか。だから、王国からの返還要請は突っぱねるつもりだよ」
「それでは、私達は本当に厄介者ではありませんか?」
「けんちゃん!相手は王国だよ?」
「「「「ご主人様!いったいどのようにするおつもりですか?」」」」
「お前達は、そんな事心配しなくてもいいんだよ!交渉は俺がやる事だ!お前達は内政をやってくれたら十分だよ」
「ランスロット!お前達は家族として迎え入れるから安心して大船に乗ったつもりで、訓練に精を出していたらいいからな」
「主殿……ありがとうございます!」
「それと、お前達、元騎士団はまだ奴隷契約が仮状態だがもうちょっとそのままでいてくれ!この町にいずれ奴隷商人も移住してきたら、その時に本契約するからな」
「ケンちゃん何でよ!他の町に行って、今してあげたらいいじゃない!」
「ったく、お前は本当何も考えていないだから……」
「なによ!そんな風に言わずにやってあげたらいいじゃない!」
「マイさん!それは無理でございます!」
「セバスまで何言ってんのよ!」
「マイさんよく考えてください。本契約するには王国領の町に行かないといけないのですよ。今のランスロット達はこの国に亡命しているようなものです。それを、他の国に行くなんて自殺行為ですよ!」
「あっ……」
「まあ、そう言う事だ……この国に奴隷商人が移住してきた時で、何の問題はないからな。そっちの方が安全って事だ!」
その時、会議室の扉がバタンと開くのだった。
「ご主人様!曲者が一人、引っかかりましたのでお連れしました」
そこには、ツバキが麻痺毒で動けなくした人物を粘着糸で拘束して、会議室に連れてきたのであった。
「なっ!何でこのエリアに不審者が⁉」
「それをわたしに聞かれても……ですが、屋敷の屋根裏に侵入して来たところを、わたしの張った粘着糸の罠に引っかかったのでお連れしたしだいです」
「そっか……ツバキありがとな!」
このFreedom国の中間壁の内側には、不審者は絶対に入れない結界が張ってあるので、絶対無理なはずである。
だが、この盗賊は侵入が出来たと言う事は、結界を無効化できる何かを持っているか、それとも結界が作動しない善人という事である。
ケンジは粘着糸を剥がし、その人物を見ようとしたのだ。その時、粘着糸がはがれず、着衣の肩口が破れてしまったのである。
その肩口には、王国の印が入れ墨として入っていたのだ。だが王国に印にB・Sと下に入っていたのだった。
「これって……王国の印に似ているけど少し違うな……ムシュダルクさん、この意味は分かる?」
「こ、これは!」
その印を見た、ムシュダルクは言葉を詰まらせるのだった。
「ランスロットよ。これを見てみろ……さっきの事が本当になりそうだぞ!」
「……」
ランスロットも、その印を見た瞬間、生唾をごくりと飲むのだった。
「これって、なんの印なんだ?」
「王国最強の諜報部隊……ブラックスペンサーですよ……」
ムシュダルクの王国最強と言う言葉に、みんなは目を見合わせるのだった。
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