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第9章 Freedom国の発展!

5話 結界の弊害

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 ケンジが部屋の外に出て行き、部屋の中は重く沈んだ雰囲気でなんとも居心地が悪かった。そして、自然とみんなも部屋から次々出ていくのだった。マイは、ケンジの事が気になりケンジの部屋の扉をノックし部屋に入ったのだ。

「ケンちゃん。入るよ」

「開いてるよ。どうかしたか?」

「うん……ケンちゃんは大丈夫かなって……」

「ああ!俺はマイとギル達がいれば何の問題はないよ」

「でも、いきなりあんな風に出ていかれて、落ち込んでないのかなって思って……」

「マイ、俺は国を作ったんだ。そりゃ今までみたいにはいかないよ。ギル達みたいに俺を慕ってくれる人もいれば、ランスロットの様に前の主人がいいって言う人間も出てくるよ」

「でも、ケンちゃんはあんなに親身になって、ランスロット達の事を考えてたじゃない……」

「そりゃ考えるよ。あいつ等が得になるだけじゃなく、この国がうまくいくように、あいつ等には巡回の役目を与えたんだよ。ただ、それがうまくいかなかっただけなんだ。だから、俺はそんなにショックではないよ」

「でも、ケンちゃん……部屋を出ていく時、何であんなに悲しそうでショックをうけていたの?」

「そりゃ、俺だって全く悲しくないという訳じゃないよ。これで又、次の手を考えないといけないんだからな」

「じゃあ、ケンちゃんはランスロット達が裏切ったことに関しては、なんにもショックを受けてないって事なの?」

「反対に聞くけど、何でそんな小さい事にショックを受けないといけないんだ?もしこれが、マイやギル達が俺の側から離れていったらショックを受けるとは思うが、ランスロット達の付き合いはまだ2ヶ月程度なんだぞ?」

「あたしは、ケンちゃんから離れないよ!」

「だろ?だったら、俺はショックじゃないよ」

「ケンちゃんって結構ドライね……」

「失礼な!これが普通だと思うぞ……普通人付き合いって、大きく分けて3種類しかないだろ?」

「どういう事よ!」

「例えば、一つ目!俺にとって好きな奴。これはマイやギル達だろ。2つ目は嫌いな奴。これは貴族や権力者達だ!3つ目は好きでも嫌いでもない普通の人達だ!俺にとってランスロット達はまだここに属していただけなんだよ。これから付き合いが深くなれば変わってくるだろうが、2ヶ月程度ではその人がどんな人間なのかよくわからないよ」

「まあ、言っている意味は分からないではないけど……」

「だから、俺の考え方が普通だと思う。それより俺は、ランスロット達がいなくなった穴をどう埋める方が大変なんだよ」

「そんなの簡単よ!」

「え?マイにはなんか得策があるのか?」

「街道は出来たんでしょ?だったら後は別に放って置いたらいいのよ」

「はあ?この土地は危険なんだぞ?知らずに踏み込んだら……」

「ケンちゃんだけだよ!そんな旅人の心配しているのは。普通は街道を繋げたら、街道を巡回させる町を見たことある?」

「いや……ないな……」

「どこの町も、最初は開発村から始まって、流通が始まるけど行商人達が、自作の地図を作って旅をしている物なのよ。そして、新たな街道が出来ていたら、次の期会に万端の準備をして、町に到着し行商を成功させるものなのよ」

「そういうものなのか?」

「だから行商人の品物は高価なのよ。それでも、売れるって事は行商人の腕が良いって事よ。だから、心配ならケンちゃんは、街道を繋げた場所に立札を設置したらいいだけじゃない?」

「そ、そっか……」

「だから、中継地点の兵舎も回収してもいいと思うわよ。あたしから言わせれば、街道が繋がったから、この国の発展に力を注いだ方がいいと思うわ」

 マイが、ランスロット達を裏切り者と興奮していたのは、ここに理由があったのである。ケンジが町の守衛はいらないのに、わざわざランスロット達に仕事を無理やり作った感じで任せたのに、呆気なく王国に戻ると結論を出したからである。
 ランスロット達も、町への街道の巡回など聞いた事もない仕事をくれた事知っているはずなのに、ケンジより前の国王の方がいいと言った事が、許せなかったのである。

「マイ……ありがとな。いつも俺の事を想ってくれて……」

「なによ!いきなり、そんなの当然じゃない!この世界では本当に常識が常識で無い事がたくさんあるわ。ケンちゃんは自分で優しくないと言ったけど、常識知らずの優しさを持っているのよ」

「それって、褒めてるの?……」

「一応は褒めているよ」

 ケンジの疑問に、マイは意地悪そうに笑うのだった。




 次の日、ケンジはガーライの町のメイガン商会へと出向くのであった。

「あ、貴方はケンジ殿ではありませんか‼」

「お久しぶりです。ここガーライの町はスタンピードの影響はなかったですか?」

「ええ!王国騎士団が来てくれたおかげで、なんとか無事でした」

 ここ、ガーライの町はテンペの町とそんなに離れてはいなくて、魔物達が流れてきたのだが、テンペの町の様に集団で来ることは無く、町の結界もメイガン商会のおかげで、なんとか維持が出来ていたのだった。

「それで、今日は何か用ですか?」

「うん、ガンスさんにうちの国へのメイガン商会の出店はどうかなと思いまして」

「はっ?どういう事ですか?」

「今回、テンペの町が滅亡したのは知っていますよね?」

「えぇ……まさかあんな大きく発展した街が無くなるなんて……」

「それで、テンペの人達の殆どが王都に移住したのですが、その一部の人達は俺の国への移住を決めましてですね」

「そ、それは本当でございますか?」

「うん!俺の国でも流通が始まる事になり、俺の国までの街道が繋がったので、ガンスさんにはお世話になってたしお知らせにきたんですよ。」

「しょ、少々お待ちください!今、ガンスに報告いたします‼」

 メイガン商会ガーライ支部は、ケンジの申し出に騒めきだしたのである。商会は新しい町が出来たら、一番乗りでその町に店を構える事に命をかけているのである。
 一番乗りで店を構える事が出来ると、その町での商売はいつもイニシアティブを取ることが出来て、売り上げも他とは比べ物にならない位上げることが出来るのである。





「坊主!久しぶりだな!今の話は本当か⁉」

「ガンスさん!お久しぶりです。ええ、つい2日前に街道が繋がったんですよ。それで、ガンスさんの所に報せに来た次第で……」

 ガンスは、ケンジの説明を全部聞かず、いきなり抱きついてきたのだった。

「ガンスさん!ちょっといきなり抱きしめないでくださいよ!俺は、爺さんに抱きしめられる趣味はないです!」

「ば、馬鹿者!ワシだってそんな趣味はないわい!」

 そんな事を言いあって二人は豪快に笑いあった。新しくメイガン商会に雇われた従業員は、若いケンジがガンスにそんな口の利き方をして、ハラハラしたが、ガンスが豪快に笑っているのを見て、ケンジとはどういった人物なのか興味津々で見ていたのだった。

「で、どうしますか?」

「そんなの聞くまでもないわい!坊主の申し出はありがたく受けるに決まっとるわい!」

「ただし、気を付けて万全の準備で旅をしてきてください!俺達も街道沿いの魔物達を間引いていますが、普通にBランク程度の魔物が出没する地域ですので、気を抜かないようにお願いします」

 ガンスは、ケンジのセリフに息をのみ、若い頃の事を思い出し、不安と期待に胸を弾ませるのである。

 ケンジは、ガンスに挨拶をしメイガン商会を後にするのである。若い従業員は、ケンジの事を先輩に聞き、顔を絶対に覚えるように指導されていたのは言うまでもなかった。



 Freedom国に、帰って来たケンジは、ムシュダルクに相談を受けていたのである。

「ケンジ様少しよろしいですか?」

「なにかありましたか?」

「この国の事なのですが、この国はどのくらいの犯罪者が侵入不可能なのですか?」

「ど……どういう事だ?」

「いえ、これから行商人達が、この町に来る事になるんですよね?ケンジ様は、この町には絶対犯罪者は入れないと言われたものですから……」

「それのどこが気になるんだ?」

「つまりですね……行商人でも犯罪行為ギリギリな事している人間もたくさんいてですね、仮にそれは今までスルーされていた事でも、この国に入れないほど厳しい縛りですと、反対に流通の妨げの恐れになるって事です」

「ん?よくわからないが……」

「つまりですね、グレーゾーンを増やしたほうが良いのではと言っているのです」

 ムシュダルクは、完全に犯罪者な人物は、当然町には入れないほうが良いというが、軽犯罪者も町に入れないのでは、町は発展することは無く、行商人達のネットワークで噂され寄りつかなくなり、流通が起きないと言っているのである。
 この町の結界は、他の町と違い強力過ぎる為魔物や盗賊は当然どんな事をしても侵入されないが、スラムで子供が食うのに困り、リンゴ一つ引ったくりした事でさえ、犯罪者として認識されていたのである。

 それでは、せっかく危険を冒してまで、この町に来ても入れないのでは意味がなくなり、行商人は2度とこの町に来てくれなくなるのである。そうならないように、ムシュダルクはケンジに結界のレベルを下げろとアドバイスをしたのである。

「な、なるほど……そんなこと全然気にもしていなかった……」

 ケンジは、町の結界の事を見てみたのだが、龍宝玉を触媒にしている為、レベルを落とすとかそういった物ではないと諦めたのだった。

 その為、ケンジは結界の範囲を狭めたのである。つまりFreedom国は3つの城壁に守られているので、中央に位置するケンジの屋敷と店舗、そして中間に位置するケンジの家族達、つまり奴隷達と最初に移住してきた平民達のエリアである。この第2城壁まで、結界の範囲を狭めたのである。
 そして、第2第3城壁の間である、外側のエリアを他の町と同じ結界で守ろうと考えたのだった。

 ヒイロカネの魔力を使い、聖属性の魔石を触媒にした、ケンジにとったら玩具のような結界だが、これなら他の町と同様に流通が起こるので、十分な結界だと思ったのだ。

 この事は、レーラ達元ギルド職員に伝えられ、外側エリアの結界の担当の任を指示したのである。

「この、結界の仕事はレーラ達に任せるからよろしく頼むぞ!」

「あの……インゴットはどのようにして、手に入れたらよろしいのですか?」

「今まで通り、流通が起こり始めたら、魔道ギルドの構成員の人間がいるだろ?その錬金術師をギルドで育てるんだよ。そして、インゴットを手に入れ錬成して運用だ!」

「あの……それまでは?」

「それまでは、俺がヒイロカネを用意するから大丈夫だ」

「はぁあ⁉ヒイロカネですよ?どうやって用意するのですか!そんなの絶対無理ですよ」

 ケンジは黙って、ヒイロカネのインゴットをカウンターに置くのだった。

「これなら大丈夫だろ?」

 それを見たレーラ達、元ギルド職員は口を開けて、固まってしまったのだ。何故かというと、ケンジはレア鋼鉄であるヒイロカネインゴットを20本ほどテーブルに出したからであった。



 それを見た、レーラ達は正気に戻り、ケンジに詰め寄ったのである。

「ケ、ケンジ様‼これを一体どのように手に入れたのですか⁉」

「まあ、驚くのはよくわかるが、商人の入手経路は内緒だよな?」

「うっ……それはそうですが……」

 ケンジの採掘のスキルは、今更だが200.00であり、世の中は今だにスキルの最高値が120.00だと思っているのである。
 ヒイロカネの採掘の値は、120.01からである。それも幸運値が90以上ないと掘れることは無いのだ。つまり、一般的に入手するにはオリハルコンとアダマンタイトを、錬金術士が錬成を成功させる事でしか手に入らない物なのだ。それを、ケンジは20本以上所持しているので、レーラ達が驚くのは無理もなかったのである。

「あの……ケンジ様一つお聞きしてもよろしいですか?」

「言いたい事は予想はつくがなんだ?」

「このヒイロカネって、テンペの町が滅亡する前から所持していたのですか?」

「……ああ……所持していたよ」

「それなら、な、なんで!町の為にインゴットを売ってくれなかったのですか?」

 レーラが怒るのは無理もなかったのだ。これさえあれば結界は復活し、テンペの町は滅亡する事は無かったのだ。

「君達がそれを言うのか?俺はずっと前からギルドの態度を思い直すのであれば、協力はすると言っていたが変なプライドのせいで、歩み寄るって事はしなかったと思うが?」

「そ、それは……」

「それに俺は、ギルドを追放された身だぞ。つまり、どう考えても王国に対してやギルドの組織に対して、役に立つという行動なんかしないと思わないか?」

「それはそうですが!」

「俺が、今回動いたのはあくまでも、テンペの町の平民達の命の為だけで動いたにすぎないよ」

「でも……」

「テンペの町を、救ってくれても良かったと言いたいんだろ?だが、それだと又王国から呼び出しをくらうので面倒臭いからな」

「そ、そんな理由で⁉」

「だが、勘違いするんじゃないぞ!俺は、テンペの人達の命を弄んだつもりはないし、誰一人犠牲にはしてないからな!」

「ですが、最初から救ってくれるなら、インゴットを通常価格で売って頂けたらいいじゃありませんか!」

「なんで、そんなギルドまで助けるような事を、俺がしなくちゃいけない?」

「ギルドじゃなくて、町の人達を救うんでしょ?」

「いやいや……もし、あのスタンピードの時に、俺がギルドにこのインゴットを出したら、町の人達から、ギルドは万が一の時は頼りになると思われるよね?」

「それは……ですが、その結果町の人達の命は助かるのですよ」

「え?今回のスタンピードで犠牲者が出たのか?出てないよね?」

「あっ!」

「つまりそういう事だよ!今回スタンピードで王国領の町が一つ滅亡した事によって、ギルドの信用は失墜!そして町の人の命を救ったのは、ギルドが追放に追い込んだ構成員。それも冒険者じゃなくて生産者だという事だよ」

「それじゃ……ケンジ様は、最初からこのシナリオを考えていたのですか?」

「ギルドが、新しいルールを起用した時から、こうなる事は分かっていたよ。冒険者達は依頼を受けようと無理なスケジュールをして、犠牲者が増えていっただろ?」

「……」

「それ故に、ダンジョン内の魔物が間引きできなくなり、今回の中級上級同時スタンピードだ。俺から言わせればこれはもう人災だよ」

「そ、そんな!」

「だから、俺は早々にギルドから撤退し、この国の建築を急がせたんだ。それでも、10ヶ月という期間では100軒と宿屋が精一杯だったんだよ」

「……」

「俺が、君達元ギルド職員を受け入れたのは、最後まで町の人達を救おうと奮闘したからだ。もし、今までの様に事なかれ主義で、構成員達のせいにしていたら、問答無用で王都に送っていたよ」

 それを聞いた、レーラ達一同は過去の自分達の行動を思いはじめ、何も言えなくなってしまったのだ。今回のスタンピードで町の人達を救ったのはギルドではなく、まぎれもなくケンジでなのだ。

「落ち込んでいる所悪いんだが、話を元に戻す!そう言う訳で、流通が
始まれば、君達が責任を持って、町の結界を守り維持をしてくれ」

「はい……承知しました」

 レーラ達元ギルド職員は、ケンジに逆らったギルドは馬鹿だと思ったのだ。この人物に逆らうんじゃなく、変なプライドは邪魔なだけで、ケンジの言っていた言葉を実行すればよかったと後悔したのだった。



(構成員はギルドがあって生活できるんじゃない!構成員がいて初めてギルドが運営できるんだよ!)



 今、こういう事になって初めて元ギルド職員達は、ケンジの言葉の意味が分かったような気がしたが、テンペの街が無くなった今では全てが遅かったのである。


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