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第8章 Freedom国の設立!

29話 テンペの町滅亡①

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 ケンジ達の生活は、店を中心に回っていた。ケンジの屋敷が町の中心に内壁・中壁・外壁の3つの城壁に囲まれ鉄壁の町となっていた。中壁と外壁の間には、宿屋や平民の家が次々と建設されていたのだった。

「主様!ただいま100軒ほどの一軒家が完成いたしました」

「そっか、順調なようだな!」

「でも、こんなに家を建てて、どうするつもりで?住む人がいないんですぜ」

「たぶん……もうじき家の数が足りなくなるよ。それと宿屋のような大きな建物もよろしく頼む」

 Freedom国の街並みは、区画整理もされており暮らしやすいだろうと予想されるのである。職人達は、家が傷まないように部屋を毎日変えて移り住んでいたのだ。

 ギル達は、家を建てる為に伐採しなければいけない大工職人と共に護衛役で旅立つのだった。

「なあ、ギルよ」

「なんだ?ブロン!」

「主様は、何であんなに家を建てろと言われるのだ?」

「主の思うところは俺にも分からんよ。ただ、主はいつも先を見通し行動しているから、ひょっとしたらこの町への街道を作るのかもしれないな」

「って事は、この町にも旅人がきて、流通が始まるって事か?」

「まあ、今の所俺にはそれ位しかわからんけどな。はははは!」

「でも、そう考えるとまだまだ家は必要なんだが、町の規模を考えると全然足りないよな……」

「まあ、そうだな。町の規模はテンペ程あるから、家の数も全体で言えば0.1%にも満たないんだからな……」

「そう考えたら、先に街道を繋げて人を呼び込んだ方が早いと思うんだよな。ギルはそう思わないか?」

「たぶんだが、主の考えは違うのかもしれないな。俺達には、計り知れないような計画があるのかもな」

「主様の、頭の中ってどうなっているのか見てみたいよな?」

「俺にもその辺はよくわからんよ。この間も、新しく奴隷を購入して、護衛役を育てると言ったんだ」

「それは、なんでだ?護衛役ならお前達がいるじゃないか……」

「だから、結構修羅場になったんだぞ。特にシスティナ、プリムがヒステリックに騒いで、止めるのが大変だったんだ」

 ギル、システィナ、プリムはケンジの最初に奴隷となり、長い間ずっと生活してきただけあって、自分たち以外に
ケンジを守れる人間をつくると聞いて、ショックを受けたのだ。

「それでどうなったんだ?」

「実はな、これから町を作っていくにあたり、ブロンの様に奴隷が増えていくらしいんだよ。すると、護衛役が足りなくなってくるだろ?」

「ああ!それで、儂達につける護衛役を補充したのか?」

「まあ、そう言う事だ。俺達だけだと手が足りなくなってくるだろうから、今から護衛役も育てるんだって言ってくれたよ」

「儂達……本当に幸せ者だな」

「ああ!俺達は主に感謝してもしきれないな」

 ギルはブロンとしみじみしながら、森の中にはブロン達の伐採の音が響いていたのだった。





 そして、こちらは裁縫工房である。ケンジに言われて忙しく働いている裁縫職人たちが、天幕のような物を忙しなく製作していたのだ。



 そこに、ティアナとフィアナが今日収穫した綿花を、裁縫工房に持ってきたのだった。

「これが今日の分だよ!」

「ティアナありがとね。そこに置いてくれる?」

「は~い!って、みんな何を作っているの?」

「ご主人様の命令で、テントの天幕を作ってくれって言われているのよ。それと毛布類かな?」

「そんなにいっぱい在庫作って、置いておける場所はどうするの?」

「それは、ご主人様が保管庫を作ってくれたんで、大丈夫なんだけど数がね……」

「たしかに、こんなに作ってどうすんだろ?マリンは、ご主人様から何も聞いてないの?」

「うん……私なんかがご主人様の計画に口を出せないもの……言われた事を、取り敢えず確実に遂行しようと思ってね」

「マリン……私なんかなんて思っちゃダメ……」

「フィアナ……」

「そうだよ。ここではみんな一緒の立場だってご主人様が言ってたもん。疑問があれば遠慮なく聞いてもご主人様は怒らないよ」

 マリン達、裁縫職人はもっとも新しくここに来た人間達だった。その為、まだここの生活に慣れていなく、ご飯の時でさえ立派な食事や、就寝時間に暖かいベットに驚いていたのだ。

「ねえ、二人に聞きたいんだけどいいかな?」

「ご主人様の事?」

「うん……なんでご主人様は、奴隷に対してあんなに気を使ってくれるの?なにか、後でとんでもない事を言われたりしない?」

「まあ、最初はそう思うよね……でも、そんな心配は全然しなくていいよ」

「そう……ご主人様はだた優しい人だよ」

「ただ、注意しないといけないのは……」

「やっぱり何かあるの?」

「いや……そうじゃないんだけど……」
「「ねぇ……」」

 ティアナとフィアナは目を見合わせながら苦笑したのだった。

「マリンも、ご主人様に夜の奉仕をするなら絶対一人で行っちゃだめだよ」

 マリンは、ティアナのいきなりのセリフに、顔が真っ赤になるのだった。

「夜の奉仕に一人で言ったらダメって……そんな複数人で行くものなの?やっぱり初めては恥ずかしいし、一人で行くつもりだったんだけど……」

 ティアナとフィアナは、マリンの肩を持って考え直すように説得するのだった。

「マリン、詳しい事は言わないけど……もし一人で行くなら覚悟して行きなさい」

「わたし達は、どうなっても知らないよとしか言えないから……」

「どういう事よ!全然わからないわ」

「まあ、でも安心してよね。ご主人様は普段は本当に優しい方よ」

「うん……奴隷達に贅沢な暮らしを与えてくださる……それに対しての見返りは、こうしてちゃんと役に立っている事だけだよ」

「でも……」

「ご主人様は、マリンに対して酷い事をした?ご主人様は、夜の奉仕だってあたし達に強要した事ないはずだよ」

「うん……確かにそうなんだけど」

「だったら……そんな恐縮する事ないと思うんだけど。あたし達から言えるのは、この生活に早く慣れるようにっていうしかないけどね……」

「でも、調子に乗ったらだめだよ!この生活はご主人様の優しさなんだから、それが当たり前って思っちゃ駄目なんだからね!」

「そんなだいそれた真似できないよ!私達はご主人様の奴隷なんだから!」

「「うん!なら大丈夫!ここにいれば平民の時より幸せに暮らせるよ」」

 そう言って、二人は自分の持ち場である畑に戻っていったのだった。マリンは、二人が言ったように調子に乗らず早く、この生活に慣れるしかないんだなぁ……と思うしかしょうがなかった。




 そして、それから10か月が経った頃、悪夢が起こり、テンペの町に冒険者達が駆け込んできたのだった。

 ギルドの入り口に、数名血だらけになった冒険者が転がり込んで、大きな声で叫んだのだった。

「た、大変だ!中級ダンジョンが溢れた!」

 その報告に、ギルド中が騒めいたのだった。

「溢れたってどういうことだ⁉」

「ば、馬鹿!わからないの?中級ダンジョンの魔物が地上に溢れたって事よ!」

「はぁあ?スタンピードが起こったのか?」

「だからそう言っているじゃない!」



 中級ダンジョンが溢れたと知らされ、ギルドはそんなに慌てた様子はまだなかったのだが、裏ではとんでもない事が起こっていたのだった。

「落ち着いて下さい!中級なら我々と騎士団でまだ何とかなるはずです!」

 ギルドは緊急招集をかけるのだった。これによりギルド構成員は、ギルドに集まらなくてはいけなくなるのだ。冒険者と、魔道ギルドの魔法使いもその対象で、生産者や商人達は自宅や宿屋に待機が命じられるのである。

 この緊急招集は、ギルドカードで知らされピーピーと鳴り赤く光るのだ。そして裏面に、どの町で緊急招集がかかりその町を中心に5kmにいる構成員に連絡が入るのだ。

 職員や受付嬢達は、すぐさまギルドマスターに報告しようとしたのだが、ギルドマスターと幹部達が、ギルド内にいないのである。
 別の職員は、騎士団の方へ知らせに入ったのだが、騎士団そして貴族の姿がなくなっていたのである。

 そして、戻って来たギルド職員達は、連絡し合いその報告に絶望したのだった。

「ど、どういう事だ……」
「ひょっとして、私達平民達は……貴族様や権力者に見捨てられたの……」
「そんな、馬鹿な……」

 ギルド職員は、顔が真っ青になったのだ。そして職員達はすぐに気を引き締め、町の城門を閉じる事にしたのだった。
 町の鐘を鳴らし、緊急事態を知らせ、東西南北の城門を閉める事にしたのだ。


 ケンジのテンペ支店では、この緊急事態の鐘の音で、お客の人々は城門に戻ってしまったのである。

 支店にいた、お客様の行列を整理していたダリア達はすぐさま本店に戻り、テンペの町がおかしい事をケンジに報せたのだった。

「ご主人様!テンペの町が何かおかしいです」

「なにかあったのか?」

「詳しい事はわからないのですが、緊急事態を知らせる鐘が鳴り、お客様が全員城門内に避難しました!」

「そっか……テンペ支店の戸締りはしっかりしたか?」

「はい!それは大丈夫です!テンペの町から、ここに来ていたお客様全員に知らせて帰っていただきました」

「そっか。ありがとな……それにしても早かったな……」



 そして、緊急事態を知らせたテンペの町では、ギルドが中心となり冒険者が騒めいていたのだった。

「ギルマスは、どうしたんだ?」
「兵士達も、誰もいなかったがあれはいったいどういう事なんだ?」
「これから、どうしたらいいんだ?」

 ギルド職員達は、どう説明したらいいのか分からなかったのだ。こんな大事な時に、ギルマス幹部達は誰もいなくなっていたのだ。そして、貴族達もすでにもぬけの殻で、どこに行ったか全然わからないのである。



 そこに、城壁で見張りをしていた人間に別の知らせが入ったのだ。上級ダンジョンの方から、兵士が一人早馬で来たのだった。それによると上級ダンジョンが溢れたらしく、つまり中級上級ダンジョンで、同時に溢れた事となったのだ。

「なにっ?本当に上級なのか?中級の間違いなんじゃ!」

「違う!俺は上級で任務にあたっていたんだ!先に何人か知らせに来ているはずなんだが!」

「何っ⁉そんな知らせなんかきてないぞ!少し前に、中級で溢れたと知らせが入ったばかりなんだ!」

 早馬で来た兵士は、いったい何が起こっているのか全然わからなかったのだ。

「先行で、知らせに来た兵士はここに来なかったのか?自分は上級ダンジョンの最後の生き残りだと思い、必死にここまで知らせに来たんだぞ」
 
「とにかく、上級からの知らせは来てないんだよ!それにここには、もう衛兵達も人っ子一人いないんだよ!いるのは平民の町民とギルド構成員だけなんだ!」


 実は、この恐ろしい事態は数時間前にさかのぼる事となる。

 上級ダンジョンが溢れた事は、町の兵士達に入っていたのだった。それをすぐ、貴族に知らせたのだが、今この町は結界が無い状態で、とてもじゃないが上級ダンジョンのスタンピードに耐えれるはずがなく、貴族は民衆を捨て衛兵達に護衛をさせ、テンペの町を捨てる決定をしたのである。
 そして、堂々と城門から逃げると民衆達にばれる恐れがある為、民衆を囮にして逃走口からテンペの町を脱出したのである。

 衛兵達は、貴族や権力者達に逆らうことが出来ない為、渋々護衛でついて行ってしまったのである。

「それで、上級ダンジョンの方はどうなっているんだ?」

「団長が……生き残りの俺に早馬でテンペの町に知らせろと……そして、テンペの町で援軍をと言ったのを最後に別れてきたから、たぶんもう……」

 そしてこの知らせを、ギルドに報告したのだった。すると、ギルド内ではまた騒然となったのだ。
 上級ダンジョンも溢れたという知らせが届き、ギルド職員だけではもうどうしようもなかったのだ。いつまでも隠しておけるわけもなく、ギルマス幹部連中がいなくなっている事を知らせたのである。

「構成員の皆さんにお知らせがあります」

「なんだ?これから俺達は何をしたらいいんだ?」
「早く何でもいいから言ってくれ!」

「そ、それが……ギルドマスターと幹部達、そして貴族様はもうこの町にはいないのです……」

「ど、どういうことだよ!」
「ギルドマスターもか⁉」
「俺達はいったい、どうしたら……」

 その事実を聞き、ギルド内は騒ぎ出す者や、この世の終わりのように膝から力が抜け立っていられない者が続出していたのだ。
 リーダーのいない冒険者達は、只パニックに陥りスタンピードに対応する事ができなくなっていたのである。


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