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第8章 Freedom国の設立!
22話 ギルドの改変
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ギルド総本部の役員が、やっと帰ってケンジはげっそりして、ソファーにもたれかかっていたのだった。
「はあ~~~……やっと帰っていったよ」
ケンジが独り言を呟いた時、客室の扉が開くのだった。
「失礼します……ご主人様お疲れ様です」
「ああ……ミナレスか……やっと帰ったよ。ホント、ギルドの人間ってなんであんな……自分勝手な人間ばかりなんだろうな?」
「まあ……わたくしは、実際今回の人は見ていないのですが、たぶんそれが普通なんだと思いますよ」
「あんな人間ばかりがか?」
「多分ですが、上の立場になればなるほど、強引で自分の意見を通す人は多くなるでしょうね」
「そんなとこで身は置きたくないよな……ストレスで禿げるよ……」
「まあ、そういう性格じゃないと、ギルドでは出世できないんでしょうね」
「なるほどな……」
「でも、ご主人様良かったのですか?」
「うん、何がだ?」
「あの人って、ギルド総本部のお偉い方なんでしょ?今までみたいに、テンペのような片田舎のギルドではないんですよね?」
「それがどうしたんだ?」
「なんか、今までのようにはいかないんじゃ……」
「まあ、それは心配いらないんじゃないかな」
「えっ?それはなんでですか?」
「だって、さっき来たような人間が、上層部で役職をやっている人間なんだろ?あれなら今までの人間より扱いやすいからだよ」
「え!ホントですか?」
「確かに、今までの様にすぐ暴走はしないかと思うが、なまじ総本部の役職になっているぶん、プライドは高そうだしな」
「へ、へええ……」
「結局は、頭に血が上って帰っていったんだ。今までと同じだよ」
「な、なるほど……」
ケンジは、今回のギルド総本部である人間をみて、結局は大元である人間を何とかしないと、ギルドは変わらないんだろうなあとため息をつきながら、客室から出ていくのだった。
そして、テンペの町に新しく就任するギルドマスターもまた、同じような人間なんだろうと思ったのである。
それから、2か月たったある日ケンジはいつものようにFランクの依頼をやろうと、生産ギルドに顔をだしたのである。すると、ギルド内は喧騒としていて、カウンターには生産者や冒険者達が怒鳴りあっていたのだった。
「おい!これはいったいどういうことなんだ!」
「そうよ!この依頼は、あたし達にはまだ無理よ!」
「そうだ!俺達に死ねというのか!」
カウンターには、多くの人間が押し寄せて苦情を入れているようだったが、ケンジはあまり関わらないようにと、Fランクの依頼を数点選び、受付に持っていくのだった。
「今日は、これだけやるので受付よろしくお願いします」
「ケンジ様……申し訳ございません。この依頼は受けることは無理です」
「は?どういうことだよ」
「ギルドのシステムが、少しばかり変更になったのです」
受付嬢の説明によると、その人物のランクによって受ける事が出来る依頼の幅を狭くしたという事であった。
「ケンジ様は、今Sランクですのでこれからは、Aランク以上の依頼しか受ける事が出来ないようになりました。ですので、依頼を受ける場合Aランク以上の依頼でお願いいたします」
「ほう!なかなか面白いシステムじゃないか!」
すると、マイがケンジの姿を見つけたようで駆け寄ってきたのだった。
「ケンちゃん聞いてよ!こんな無茶な事許せないよ!」
「ああ!俺も今聞いたよ」
ギルドは、ケンジの為だけにギルドのシステムを変えたのが、丸わかりの変更をしてきたのだ。
その人物のランクで依頼を振り分け、ケンジの場合だとSランクなのでSS~Aランクの依頼を強制的にやらせようとしたのだった。高ランクにFランクの雑用をやらせないようにしたのだ。
「おいおい!今までは良かったじゃないか!何でいきなり変更したんだよ!」
「そ、それは……」
受付嬢は言いにくそうにしていたのだった。こんな事をすれば、ケンジ達は確かに依頼を受ける事はできるが、他の冒険者や生産者には無理難題をいうようなものなのだ。
今まで、頑張って来た冒険者はAランクになっていたが、ここ最近の魔物の強さである。Aランク冒険者でもランクを落としCランクやDランクの魔物を狩って生活をしているのである。
つまり、ようやく一人前になってCランクになったとしても、Eランクであるゴブリンやフォレストウルフのような小者をコツコツ狩って生計を立てているのである。
そのような者が、Dランクの魔物でオーガなどの依頼を受けたら瞬殺され、依頼などとてもじゃないが受ける事が出来ないのだ。
そして、マイに至ってはSSランクの冒険者の為、依頼はSランク以上を受けてくれと言われる始末である。
「で、なんでこんなシステムになったんだよ」
「それがですね。最近の冒険者や生産者は、軟弱になってきているんではないかと問題視されてきたんです」
「はぁ?」
「だから、ギルドとしては冒険者達を鍛える為にも、少し強引な手で難しい依頼を受けてもらいたく、変更に至ったわけでございます……」
「それで、冒険者達が死んだらどうするんだよ!」
「それは、今までその人達が訓練をさぼって弱くなっていた証拠という事で……」
「そんなバカな!」
「それに死にたくなければ、やり用はいくらでもあると思います」
「どういう事だよ!」
「つまり!パーティーで討伐できなければ、連合やファミリーを結成すればいいんですよ」
ギルドの言い分としては、ケンジのせいでこういうシステムにしたわけじゃなく、冒険者や生産者の為だと言い張るのである。
魔物が強くなったのなら、どうしようと悩むのではなくこちらもレベルアップし、対応するのが当然であり普通だというのだ。
最初は確かに、人数を増やす事で一人頭の金額が減るが、レベルアップすれば今までのように1パーティーで討伐できるようになり、結果今の報酬額を貰えるようになり、生活が楽になる事を説明されるのである。
確かに、ギルドの言い分はわかるが、それですぐさま連合を組み、対応出来るかと言えばそんなのは無理である。パーティーにはパ-ティーの連携もあり、人間関係もあるのだ。
「ギルドの言い分はよくわかったよ。でも苦情を言っているあの連中は何であそこまで騒いでいるんだ?」
「ええ、それはですね……もしそういう事になれば、ギルドの依頼を一切受けなくなるなりますよね?ギルドを通さず、町に売ればいいだけなので!」
「そりゃそうなるだろうな!俺もそうするつもりだよ」
「ケンちゃん!それが無理になったのよ!」
「はぁ?何が無理なんだ?」
「ケンジ様も注意してくださいね。ギルドを通さず素材を町の人達に売るのは別に構いません!ですが、構成員なのに、ギルドの依頼を受けないとペナルティーを与える事になったんです」
「はあ?どういう事だよ!」
「つまり、1か月間全く依頼を受けなければ、身分証明書としてのギルドカードは剥奪させていただきます」
「剥奪⁉」
「それは当然ですよね?ギルド所属の構成員なのに、あえて依頼を受けないで自分の事だけ考えて、身分証明としてカードだけ持つなんて図々しいと思いませんか?」
「……ギルドもなりふり構わず、強硬手段をしてきたみたいだな」
「ケンジ様も、ギルドカードを剥奪されたくないですよね?」
「ああ……いまのところはな!」
「でしたら、これからはオリハルコンのインゴットをよろしくお願いしますね。ケンジ様ならインゴットを余裕で集めてこれますし、あそこで苦情を申し立てている人達みたいにしませんよね?」
「本当に、ギルドはこんな事を遂行するつもりなのか?どうなっても俺は知らないぞ!」
「そんな脅しには、ギルドは屈しませんよ!」
ケンジは、声のした方を見るとダークエルフの女性が立っていたのだ。その女性は、オリヴィアとはまた別の妖艶さをかもし出した女性で、セクシーな身体のラインが際立つ服を着ていたのだった。
「ほう!あんたが次に就任したギルドマスターって訳か」
「初めまして!今度、生産ギルドマスターに就任しましたミッシェルと申します。あなたが噂のケンジさんですね。お見知りおきを!」
「この、新しいシステムはあんたの案か?」
「まあ、そうですね。これでギルドの売り上げも、ギルド所属の構成員達もレベルアップできて一石二鳥ですわ」
ミッシェルは、手で口を押え勝ち誇ったように、笑顔を見せるのだった。
「そんな事で、勝ち誇っているようでは先が知れているな!本当にどうなっても知らんぞ!」
「まあ、どちらにしてもギルド依頼を受けてもらわないと、ギルドカードは没収!ギルドは追放って事よ。それが嫌なら頑張ってレベルを上げ、依頼を受けてくれなきゃね」
そう言って、ミッシェルは高々な笑い声を出して、奥のギルドマスターの部屋へと戻っていくのだった。
「ケンちゃんどうするの?」
「マイ、とりあえず家に帰ろうか。ギル達もスマンな!今日は何もせず家で休憩だ!」
それを見た受付嬢は、焦りながらケンジを呼び止めるのだった。
「ケンジ様!そのまま帰るのですか?依頼を受けないのですか?」
「あんた達が決めたルールだ!俺はそれに従うよ。Fランクの依頼は受けれないんだろ?」
「それはそうですが……」
「だったら、受けれないんだからしょうがないだろ?今日は帰るよ!」
ケンジは、受付嬢の静止を無視してギルドを後にするのだった。
「ケンジ様、マイマール様!いいですね?一か月ですよ。それ以上たったら自動的に追放処分となりますからね」
ケンジ達が出て行こうとした時、後ろで受付嬢が叫んでいたのだった。
「なんだよ、ギルドの奴ら!主の事言う事を聞かせようとしているのが見え見えだぜ!腹が立つなぁ~~~!」
「ホントよ!ご主人様があんなことで言う事聞く訳ないでしょう!」
「本当にむかつきますわ!これまで、どんだけご主人様がギルドの無茶を聞いてきたか!なのにこんな仕打ちを!」
「そうだ!姉貴、俺達でギルドをやっちまわねぇか!」
「マードック!そんな事したらご主人様に迷惑がかかるじゃない!」
「だって、プリムよう!こんなのあんまりじゃねえか!」
「それはわたしだって悔しいわよ!」
マードック達がギルドの態度に腹を立てて言いたい放題だった。
「でも……ケンちゃん。これからどうするつもりなの?」
「主!本当にどうするのですか?」
マイ達が、ケンジの顔を見ると思わず、小さく悲鳴を上げてしまったのだった。
「ケ、ケンちゃん……少し落ち着いてよ」
マイが、ケンジの背中を優しく擦りながら気持ちを落ち着けるのだった。
「あ……悪いな」
「で、ケンちゃんこれからどうするの?」
「マイ、悪いけどギルドは脱退する方面で考えてくれるか?」
「うん!わかったわ。今まで頑張ったのは勿体ないけどしょうがないよね」
「悪いな!我儘聞いてもらって……」
「いいよ。あたしは、どんな事があってもケンちゃんの味方だからね」
ケンジは少し黙って、マイを抱きしめるのだった。
「な、なにっ!」
マイは、ケンジにいきなり抱きしめられ、アタフタして顔を真っ赤にした。それを見たギル達は気を利かせ、少し離れるのだった。
「ケ、ケンちゃんどうしたの?ちょっと落ち着いて……」
「いいから!もう少しこのままでいさせてくれ!」
ケンジは、今までギルドに対していう事を聞かず、遂に他の冒険者や生産者達に、迷惑をかけてしまった事を悔やんでいたのだった。
ギルドは、ケンジを言う事を聞かせようとして、こんなルールに変えた訳ではないと言っていたが、どう考えてもケンジにインゴットを納品させる為だけのルールだったのだ。そして、このルールのせいでテンペの町の滅亡が決まった瞬間でもあったのだった。
このルールにより、他の町でも冒険者達や生産者の無茶な行動が目立つようになり、冒険中の死亡率が増えるのである。
そんな中でも、生き残った冒険者達はレベルが上がるのだが、それなりに金を稼いだ人間は、早々と冒険家業を引退し田舎に引っ込む人間が出てきたのだ。地元の村に戻り、土いじりをして時々出没する魔物を退治し、自給自足の生活に戻るのである。
ケンジ達も早々に、生産ギルドを追放という形になるのだった。マイも又、ケンジと一緒に冒険者を引退という形となり追放されたのだ。
これはギルドも信じられない様子だったが後の祭りである。ケンジはまだ身分証明を手放したくないはずなのに、こんなあっさりギルドのルールに従うとは思わなかったのだ。
そして、ギルドはまたピンチをむかえるのである。
「はあ~~~……やっと帰っていったよ」
ケンジが独り言を呟いた時、客室の扉が開くのだった。
「失礼します……ご主人様お疲れ様です」
「ああ……ミナレスか……やっと帰ったよ。ホント、ギルドの人間ってなんであんな……自分勝手な人間ばかりなんだろうな?」
「まあ……わたくしは、実際今回の人は見ていないのですが、たぶんそれが普通なんだと思いますよ」
「あんな人間ばかりがか?」
「多分ですが、上の立場になればなるほど、強引で自分の意見を通す人は多くなるでしょうね」
「そんなとこで身は置きたくないよな……ストレスで禿げるよ……」
「まあ、そういう性格じゃないと、ギルドでは出世できないんでしょうね」
「なるほどな……」
「でも、ご主人様良かったのですか?」
「うん、何がだ?」
「あの人って、ギルド総本部のお偉い方なんでしょ?今までみたいに、テンペのような片田舎のギルドではないんですよね?」
「それがどうしたんだ?」
「なんか、今までのようにはいかないんじゃ……」
「まあ、それは心配いらないんじゃないかな」
「えっ?それはなんでですか?」
「だって、さっき来たような人間が、上層部で役職をやっている人間なんだろ?あれなら今までの人間より扱いやすいからだよ」
「え!ホントですか?」
「確かに、今までの様にすぐ暴走はしないかと思うが、なまじ総本部の役職になっているぶん、プライドは高そうだしな」
「へ、へええ……」
「結局は、頭に血が上って帰っていったんだ。今までと同じだよ」
「な、なるほど……」
ケンジは、今回のギルド総本部である人間をみて、結局は大元である人間を何とかしないと、ギルドは変わらないんだろうなあとため息をつきながら、客室から出ていくのだった。
そして、テンペの町に新しく就任するギルドマスターもまた、同じような人間なんだろうと思ったのである。
それから、2か月たったある日ケンジはいつものようにFランクの依頼をやろうと、生産ギルドに顔をだしたのである。すると、ギルド内は喧騒としていて、カウンターには生産者や冒険者達が怒鳴りあっていたのだった。
「おい!これはいったいどういうことなんだ!」
「そうよ!この依頼は、あたし達にはまだ無理よ!」
「そうだ!俺達に死ねというのか!」
カウンターには、多くの人間が押し寄せて苦情を入れているようだったが、ケンジはあまり関わらないようにと、Fランクの依頼を数点選び、受付に持っていくのだった。
「今日は、これだけやるので受付よろしくお願いします」
「ケンジ様……申し訳ございません。この依頼は受けることは無理です」
「は?どういうことだよ」
「ギルドのシステムが、少しばかり変更になったのです」
受付嬢の説明によると、その人物のランクによって受ける事が出来る依頼の幅を狭くしたという事であった。
「ケンジ様は、今Sランクですのでこれからは、Aランク以上の依頼しか受ける事が出来ないようになりました。ですので、依頼を受ける場合Aランク以上の依頼でお願いいたします」
「ほう!なかなか面白いシステムじゃないか!」
すると、マイがケンジの姿を見つけたようで駆け寄ってきたのだった。
「ケンちゃん聞いてよ!こんな無茶な事許せないよ!」
「ああ!俺も今聞いたよ」
ギルドは、ケンジの為だけにギルドのシステムを変えたのが、丸わかりの変更をしてきたのだ。
その人物のランクで依頼を振り分け、ケンジの場合だとSランクなのでSS~Aランクの依頼を強制的にやらせようとしたのだった。高ランクにFランクの雑用をやらせないようにしたのだ。
「おいおい!今までは良かったじゃないか!何でいきなり変更したんだよ!」
「そ、それは……」
受付嬢は言いにくそうにしていたのだった。こんな事をすれば、ケンジ達は確かに依頼を受ける事はできるが、他の冒険者や生産者には無理難題をいうようなものなのだ。
今まで、頑張って来た冒険者はAランクになっていたが、ここ最近の魔物の強さである。Aランク冒険者でもランクを落としCランクやDランクの魔物を狩って生活をしているのである。
つまり、ようやく一人前になってCランクになったとしても、Eランクであるゴブリンやフォレストウルフのような小者をコツコツ狩って生計を立てているのである。
そのような者が、Dランクの魔物でオーガなどの依頼を受けたら瞬殺され、依頼などとてもじゃないが受ける事が出来ないのだ。
そして、マイに至ってはSSランクの冒険者の為、依頼はSランク以上を受けてくれと言われる始末である。
「で、なんでこんなシステムになったんだよ」
「それがですね。最近の冒険者や生産者は、軟弱になってきているんではないかと問題視されてきたんです」
「はぁ?」
「だから、ギルドとしては冒険者達を鍛える為にも、少し強引な手で難しい依頼を受けてもらいたく、変更に至ったわけでございます……」
「それで、冒険者達が死んだらどうするんだよ!」
「それは、今までその人達が訓練をさぼって弱くなっていた証拠という事で……」
「そんなバカな!」
「それに死にたくなければ、やり用はいくらでもあると思います」
「どういう事だよ!」
「つまり!パーティーで討伐できなければ、連合やファミリーを結成すればいいんですよ」
ギルドの言い分としては、ケンジのせいでこういうシステムにしたわけじゃなく、冒険者や生産者の為だと言い張るのである。
魔物が強くなったのなら、どうしようと悩むのではなくこちらもレベルアップし、対応するのが当然であり普通だというのだ。
最初は確かに、人数を増やす事で一人頭の金額が減るが、レベルアップすれば今までのように1パーティーで討伐できるようになり、結果今の報酬額を貰えるようになり、生活が楽になる事を説明されるのである。
確かに、ギルドの言い分はわかるが、それですぐさま連合を組み、対応出来るかと言えばそんなのは無理である。パーティーにはパ-ティーの連携もあり、人間関係もあるのだ。
「ギルドの言い分はよくわかったよ。でも苦情を言っているあの連中は何であそこまで騒いでいるんだ?」
「ええ、それはですね……もしそういう事になれば、ギルドの依頼を一切受けなくなるなりますよね?ギルドを通さず、町に売ればいいだけなので!」
「そりゃそうなるだろうな!俺もそうするつもりだよ」
「ケンちゃん!それが無理になったのよ!」
「はぁ?何が無理なんだ?」
「ケンジ様も注意してくださいね。ギルドを通さず素材を町の人達に売るのは別に構いません!ですが、構成員なのに、ギルドの依頼を受けないとペナルティーを与える事になったんです」
「はあ?どういう事だよ!」
「つまり、1か月間全く依頼を受けなければ、身分証明書としてのギルドカードは剥奪させていただきます」
「剥奪⁉」
「それは当然ですよね?ギルド所属の構成員なのに、あえて依頼を受けないで自分の事だけ考えて、身分証明としてカードだけ持つなんて図々しいと思いませんか?」
「……ギルドもなりふり構わず、強硬手段をしてきたみたいだな」
「ケンジ様も、ギルドカードを剥奪されたくないですよね?」
「ああ……いまのところはな!」
「でしたら、これからはオリハルコンのインゴットをよろしくお願いしますね。ケンジ様ならインゴットを余裕で集めてこれますし、あそこで苦情を申し立てている人達みたいにしませんよね?」
「本当に、ギルドはこんな事を遂行するつもりなのか?どうなっても俺は知らないぞ!」
「そんな脅しには、ギルドは屈しませんよ!」
ケンジは、声のした方を見るとダークエルフの女性が立っていたのだ。その女性は、オリヴィアとはまた別の妖艶さをかもし出した女性で、セクシーな身体のラインが際立つ服を着ていたのだった。
「ほう!あんたが次に就任したギルドマスターって訳か」
「初めまして!今度、生産ギルドマスターに就任しましたミッシェルと申します。あなたが噂のケンジさんですね。お見知りおきを!」
「この、新しいシステムはあんたの案か?」
「まあ、そうですね。これでギルドの売り上げも、ギルド所属の構成員達もレベルアップできて一石二鳥ですわ」
ミッシェルは、手で口を押え勝ち誇ったように、笑顔を見せるのだった。
「そんな事で、勝ち誇っているようでは先が知れているな!本当にどうなっても知らんぞ!」
「まあ、どちらにしてもギルド依頼を受けてもらわないと、ギルドカードは没収!ギルドは追放って事よ。それが嫌なら頑張ってレベルを上げ、依頼を受けてくれなきゃね」
そう言って、ミッシェルは高々な笑い声を出して、奥のギルドマスターの部屋へと戻っていくのだった。
「ケンちゃんどうするの?」
「マイ、とりあえず家に帰ろうか。ギル達もスマンな!今日は何もせず家で休憩だ!」
それを見た受付嬢は、焦りながらケンジを呼び止めるのだった。
「ケンジ様!そのまま帰るのですか?依頼を受けないのですか?」
「あんた達が決めたルールだ!俺はそれに従うよ。Fランクの依頼は受けれないんだろ?」
「それはそうですが……」
「だったら、受けれないんだからしょうがないだろ?今日は帰るよ!」
ケンジは、受付嬢の静止を無視してギルドを後にするのだった。
「ケンジ様、マイマール様!いいですね?一か月ですよ。それ以上たったら自動的に追放処分となりますからね」
ケンジ達が出て行こうとした時、後ろで受付嬢が叫んでいたのだった。
「なんだよ、ギルドの奴ら!主の事言う事を聞かせようとしているのが見え見えだぜ!腹が立つなぁ~~~!」
「ホントよ!ご主人様があんなことで言う事聞く訳ないでしょう!」
「本当にむかつきますわ!これまで、どんだけご主人様がギルドの無茶を聞いてきたか!なのにこんな仕打ちを!」
「そうだ!姉貴、俺達でギルドをやっちまわねぇか!」
「マードック!そんな事したらご主人様に迷惑がかかるじゃない!」
「だって、プリムよう!こんなのあんまりじゃねえか!」
「それはわたしだって悔しいわよ!」
マードック達がギルドの態度に腹を立てて言いたい放題だった。
「でも……ケンちゃん。これからどうするつもりなの?」
「主!本当にどうするのですか?」
マイ達が、ケンジの顔を見ると思わず、小さく悲鳴を上げてしまったのだった。
「ケ、ケンちゃん……少し落ち着いてよ」
マイが、ケンジの背中を優しく擦りながら気持ちを落ち着けるのだった。
「あ……悪いな」
「で、ケンちゃんこれからどうするの?」
「マイ、悪いけどギルドは脱退する方面で考えてくれるか?」
「うん!わかったわ。今まで頑張ったのは勿体ないけどしょうがないよね」
「悪いな!我儘聞いてもらって……」
「いいよ。あたしは、どんな事があってもケンちゃんの味方だからね」
ケンジは少し黙って、マイを抱きしめるのだった。
「な、なにっ!」
マイは、ケンジにいきなり抱きしめられ、アタフタして顔を真っ赤にした。それを見たギル達は気を利かせ、少し離れるのだった。
「ケ、ケンちゃんどうしたの?ちょっと落ち着いて……」
「いいから!もう少しこのままでいさせてくれ!」
ケンジは、今までギルドに対していう事を聞かず、遂に他の冒険者や生産者達に、迷惑をかけてしまった事を悔やんでいたのだった。
ギルドは、ケンジを言う事を聞かせようとして、こんなルールに変えた訳ではないと言っていたが、どう考えてもケンジにインゴットを納品させる為だけのルールだったのだ。そして、このルールのせいでテンペの町の滅亡が決まった瞬間でもあったのだった。
このルールにより、他の町でも冒険者達や生産者の無茶な行動が目立つようになり、冒険中の死亡率が増えるのである。
そんな中でも、生き残った冒険者達はレベルが上がるのだが、それなりに金を稼いだ人間は、早々と冒険家業を引退し田舎に引っ込む人間が出てきたのだ。地元の村に戻り、土いじりをして時々出没する魔物を退治し、自給自足の生活に戻るのである。
ケンジ達も早々に、生産ギルドを追放という形になるのだった。マイも又、ケンジと一緒に冒険者を引退という形となり追放されたのだ。
これはギルドも信じられない様子だったが後の祭りである。ケンジはまだ身分証明を手放したくないはずなのに、こんなあっさりギルドのルールに従うとは思わなかったのだ。
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