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第8章 Freedom国の設立!

10話 考え方

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 あれから、半年という月日が過ぎ、新しく来た15人もケンジの家の者達とも、うちとけ日々の生活を満喫していたのだ。
 最初の頃は、元貴族であるエリスは、みんなに対してどのように接したらいいのか解らなくて、エリスはその晩ケンジの部屋に相談をしに来ていたのだった。

「ご主人様……少しよろしいでしょうか?」

「なんだ?こんな時間になんか様か?」

「私は、どうしたらいいのかよくわからないのです」

「みんなと、どう接していけばいいのか……私は元貴族です。ご主人様からご購入され後の人生は飾り物として過ごすつもりでした」
「確かに、お仕事をしていて今までにない自由と楽しさがあり、貴族の頃とは比べ物がないほど充実しているのですが、他の者との係わりをどうしたらいいのかわからないのです」

「それは、ユエティー達の事か?それともお客様の事か?」

「ユエティー達の事でございます。お客様の方は奴隷商にいた時に接客の経験があり、その時の要領で出来るのですが……」

「まず、言わせてもらうとエリスの事は、この一か月見ていて俺も気にはなっていたんだ」

「……」

「エリスはまだ、貴族の時の感覚が残っているんだと思う。それを排除しないと、みんなとの溝は埋まらないんじゃないかな?」

「そ、そんなことは!」

「本当にそうか?今も、ユエティー達の事をあの者達と、言ってたけどそれはどうしてだ?」

「それは……」

「ここでは、元貴族とか平民とか奴隷みんな一緒でいいと言ったはずだよ。俺はエリスが、どこの地域の貴族だった事は聞いていないよな?」

「はい……」

「それは過去の事は、ここでは通用しないし意味の無い事だからだ。俺とエリスとの関係は主人と奴隷だが、本当はこの関係も仲間にしたいくらいなんだよ」

「それは……」

「だからな、エリスも元貴族という感覚を捨て去る事を進めるよ。それと、ここでは絶対に差別する事は、ご法度だからな!」

「!」

「エリスを見てて思うのだが、ミナレスやミイナに対して特に壁みたいなモノを作っているが、ハーフに対して差別をするようだったら、今の暮らしは無くなると思ってくれよ」

「それは……」

 エリスは帝国領の貴族だったのである。帝国領は人至上主義の土地でありハーフはもちろんの事、獣人やエルフも住みにくい土地なのだ。
 ケンジが、初めてこのガイアースに来た時、帝国領ブリュンガスの町には、殆どヒューマン以外の種族を見なかったのはこの為である。
 
 エリスは、帝国出身の貴族なので、幼いころからそのように教育されていた為、ヒューマン以外は下級種族だと思っていたのだ。今は、自分も奴隷という立場でその感覚は抑えられてはいるが、ハーフと言う存在は、どうしても拭い去る事が出来ないでいたのだった。

「私は帝国領の元貴族でした……」

「エリス、そんなこと言わなくてもいいだろ。それよりもだな」

「ご主人様はもうわかっているのでしょ?」

「……まあ、お前の行動を見てたらだいたい想像はつくよ……」

「幼いころからずっとそのように教育されて、どうしてもその感覚が抜けないのです……」
「でも、ご主人様に買われ、ここにきて本当にびっくりする事ばかりで、混乱しているのです」
「奴隷になって、もうあの時のような食事やお洒落や夢のような生活は諦めてました」
「だけど、ここは奴隷達もお風呂に入れ、食事もレア食材をふんだんに使い貴族のような、いえ……貴族以上の生活を送っているのです」

「それがどうしたんだ?みんなは日頃、俺の為にと想い一生懸命働いているんだ。当然それだけの報酬があって当たり前だと思わないのか?」

「だから、ここにきて初めてご主人様の感覚が、そうなんだなと理解できました。」

「今は、貴族の頃が異常な感覚だと思ってきているんだな?」

「それは、まだわかりません……だからこそ、ミナレスやミイナに対して、どのように接したらいいのかも分からないのです」

「いいか?エリス、小さい頃怪我をした時どうだった?」

「いきなりなんですか?それは両親が慌てて、教会に連れて行きヒールで治療してくれましたよ。その時、私はこんなに血が溢れてくるんだと思い、泣く事しかできなくて恐怖しました」

「それは、ミナレスやミイナも同じ事で、怪我をしたら血が出るし、傷もつくんだ。重症になれば命も無くなる。エリスと同じなんだよ」

「ですが、あの者達は長生きします。私達には理解できない程100年以上、エルフ族に至っては1000年という果てしない時間を生きているんです。それが何で一緒なのですか?」




 これが帝国領での教えなのである。何百年も生きる他種族と違い、ヒューマンは短い命を輝かし一生懸命生きるという考え方なのだ。
 つまり、ヒューマンは短い時間でこれだけの文明を築いたので、他の種族には真似ができないだろうという考え方なのだ。
 その為、ハーフはその崇高な遺伝子を貰い生まれた者として、ヒューマンの技術を盗もうとした半端者として、下級種族としてヒューマンを崇めろという危険な思想なのである。

「エリス!ヒューマンだって個人差があるだろ?」

「個人差?」

「そうだ!エリスは今まで19年間無事で生きてこれた。確かに奴隷となってしまったが、生きている者として19年生きてこれたんだ。だけど、このままヒューマンの平均寿命と言われる60歳まで、絶対生きられるとは言えないだろ?」

「それは確かに……」

「同じヒューマンでも、80まで生きて大往生する人もいる。反対に病気で1歳で亡くなる赤ちゃんもいるんだ。」

「それは同じヒューマンでの話では……」

「命の重さはみんな一緒だよ!」

「!」

 ケンジの大きな声にエリスはビクッとなるのだ。

「でかい声を出してすまない」

「いいか?ヒューマンが頂点に立っているという事は絶対ない。みんな命の重さは一緒だよ。まあ、盗賊や魔物で自分勝手に人を襲うやつらとは一緒とは思わんけど、町で一生懸命生活をしている人達は一緒だと思う」
「それに、寿命の長さで差別するとなると、エリスは俺の事も差罰する事になるんだぞ」

「えっ?ご主人様はヒューマンの中でも優秀な一人で、画期的な商品を生み出し、人々の生活を豊かにしている第一人者ではありませんか!」
「それに、スタンピードもお止になった英雄として称える事はあっても、差別する人間ではありません。」

「だが、俺はヒューマンじゃなくハイヒューマンだ」

 エリスは、驚愕して声も出ないようだった。ヒューマンの中でも異端といわれる種族なのである。その存在はおとぎ話の中で聞くぐらいで、実在しているものとは思わなかったのである。

「いいか?俺はハイヒューマンだ。ティアさんに言わせると、平気で5000年以上生きると言われている。それを聞いて、お前は俺を差別するのか?」

「そ、そんな……嘘でしょ……」

「これが現実なんだよ。人至上主義なんてどれほど馬鹿な考えかわかっただろ?今現実に、3つの町は俺の考えた商品で生活が豊かになっているのはわかるな?」

「はい……」

「どの種族が優秀で、どの種族が劣等ではないんだよ。みんな一緒で、個人差と考えるんだ」
「そして、苦手な事をカバーし合える仲間と思うんだ」

 エリスは、ケンジが何を言いたいのかを、理解できるような感じがしたのだった。

「ここにいる人間は、色んな種族がいて全員が仲間と考えてくれるといいんだ。つまり、エリスは料理はできないだろ?だけど、ミナレスの料理は素晴らしくおいしいだろ?」

「はい……」

「だから、今度はミナレスの苦手な事をエリスが協力して助け合えば、接し方がわかるんじゃないのか?」

「あっ……そういうことですか」

 エリスは、ケンジの事を差別なんて当然することは無く尊敬していたのである。他種族であるのに、ヒューマンの生活を豊かにして、大富豪並みの経済力を持つ事を間近で見てきた為、今までの考えが、バカバカしく思えたのである。それほどまでに、ケンジのハイヒューマンというのは衝撃的だったのだ。

「ところで、ご主人様?」

「なんだ?」

「さっきの、ハイヒューマンの寿命の下りで出てきた、ティアさんってどなたですか?」

「あっ!ティアさんというのは、女神クローティア様の事だよ。」

 そのセリフにまた、エリスは固まって動けなくなったのだった。

「お~~~い!エリス、何固まっているんだ?」

「なんで!ご主人様!女神クローティア様の事をティアさんだなんて友達のように言ってんですか!罰が当たりますよ!」

 エリスは、ケンジが初めてブリュンガスの町に来た時の様に、町の人達から責められたみたいに、大きな声を出したのだった。
 そして、エリスに今までの事を話すのだった。エリスはその説明に、ケンジが常識という物がない訳が納得いくのだった。

 最初は、信じられない事ばかりだったが、信じるしかなかったのである。そして、このガイアースに来た時に、ケンジはクローティアと友達となり今では恋人の様に接しているというのである。

 その証拠に、ケンジは女神像を取り出しクローティアとコンタクトを取り出し、まるで恋人に会いに来たように、クローティアが部屋に降臨したのである。
 
 教会でもないのに降臨するのはおかしいと思うだろうが、そんなことは全然ないのである。この国は教会以上に聖の結界でおおわれているのである。
 ダンジョンで出た龍宝玉を核に、神鋼魔石で加工し町中を聖の魔力で結界を作っているからである。
 この町自体、教会と同じような神聖な場所となっているのである。そのおかげで、クローティアは短い時間だがケンジに会いに来る事ができるのである。
 つまり、女神がわざわざヒューマンに会いに来ることなど絶対あり得ないのだが、こうして恋人に会いに来るような感じのクローティアを目のあたりにしたら、信じないわけにはいかないのだ。

 そういった経緯もあり、エリスの考えはとても愚かであり、間違っていた事を思い知らされたのだ。

「ご主人様は、女神クローティア様の使途だったのですか?」

「何言ってんだよ!ティアさんとちょっと知り合いである普通の人間だよ」

「それは普通というのですか……」

「ああ!俺が普通というのだから普通なんだよ」

「ご主人様がとんでもないという事は理解できました」

「ま、まあ……その辺は流してくれていいよ。これからはみんなと仲良くしてくれたら、俺からは何にも言うことは無いよ」

 ケンジは話は終わったと思い、読みかけの本を読みだしたのだった。そして、エリスはそのまま部屋に居続けるのだった。

「ん?どうしたんだ?まだ何かあるのか?」

「……」

 エリスは顔を真っ赤にしながら俯くのだった。そして、その後景は見た事があると思ったのだ。

「ご主人様……今日はこのままご奉仕を……」

 エリスは、恥じらいながら着ている服を少しづつ脱いで、ケンジに近づくのだった。
 ケンジは、エリスの姿形が物凄くタイプで顔も好みで購入していた為、エリスの誘惑にはいつものように抵抗できず陥落しまったのだ。
 そして、ケンジは朝までエリスの奉仕を受け続けて、エリスは当然だが、ケンジの果てしない体力に朝まで寝かせてもらえず、奉仕した事を後悔するのだった。

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