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第8章 Freedom国の設立!

8話 奴隷商

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 ケンジ達が、ガーライの町に支店を開くと、メイガン商会の宣伝はいらなかったのだ。
 テンペの町とはそれほど離れていない為、ケンジの店の噂はここガーライでも有名だったのである。ガーライの町の人達は、ついにFreedomが進出してきたと一種のお祭り騒ぎになったのだ。
 ガーライの町の人達は、テンペの町の人達が羨ましく思っていたのだ。テンペの町は清潔で嫌な臭いがせず、氷が手軽に手に入り、食糧事情改善され、夢のような生活が隣町で起こっているのに、自分達の町は……とコンプレックスに思っていたのである。
 冒険者や生産者、商人達は自分も頑張って早く、テンペの町へ移住しようと頑張っていたくらいなのだ。だが、Freedomが自分達の町に進出してきたと、本当に嬉しく思いこの騒ぎになっていたのだった。

 そして、進出してきた事で真っ先に喜んだのは奴隷商人である。奴隷商の中でも、ケンジの事は噂となっており、テンペと王都の奴隷商から、欠損奴隷を従業員として大量に買っていってくれると、情報がまわってきていたのである。
 それと、Freedomが来ることで、奴隷の生活空間が清潔に改善される事となるので、奴隷商としても物凄くありがいのだ。
 ケンジの店の物は、行商が一切できない為、テンペや王都以外の町では、自分で旅をして買いに行かなければならないのである。
 お金持ちや冒険者なら可能ではあるが、一般市民ではその商品だけの為に乗合馬車に乗り、危険を冒してまで旅は普通はしないのである。つまり町を出るという事は、このガイアースではそれほどまでに危険な行為なのだ。

「ケンジ様でございますね」

「は?貴方と会ったのは初めてだと思いますが……なんで?」

「ケンジ様の噂は、ここガーライの町まで届いております。それに前ここに来た時、わたしは貴方のお顔を拝見しているから覚えていました」

「えっ?俺ここに来た事あったっけ?」

「主!忘れたんか?」

「え?マードックは覚えているのか?」

「ああ、サーシャの奴隷契約をここでやっただろ」

「あ、ああ!そういやそうだったな。なんかこの店の雰囲気に覚えがあるような感じがしてたんだ」

「それで……今日はどのような奴隷をお求めですか?今なら、ケンジ様の気に入るお安い奴隷がそろっていますがいかがでしょうか?」

「そんな事まで、知っているのか?」

 ケンジは、好き好んで欠損奴隷から選んでいるのである。5体満足な奴隷なら他にも買い手はいるが、欠損奴隷や死にかけているような奴隷は、本当に買い手はいないので廃棄されてしまうのである。
 そんな悲しい事は少しでも減らしたいと思い、ケンジはそういった奴隷から契約をしていたのである。

「それじゃ、すまないがそういった奴隷でお店の販売員の経験のある人間を10人、鍛冶経験のある人間を5人よろしく頼む」

「承知いたしました」

 奴隷商の受付嬢はニコリと笑い、奥へと入っていったのだった。ケンジは、奴隷商の受付嬢は本当に綺麗でスタイル抜群な女性ばかりだと、いつも感心してその姿を見ていたのだった。

 ここガーライの町の受付嬢も、ものすごい美人で妖艶な雰囲気をかもし出しているのである。ケンジはこの受付嬢の事を見惚れていたのである。

「ご主人様が、あんな目で女性を見るなんて珍しいですね……」

 受付嬢が奥に引っ込んだと同時に、オリヴィアがそんな事を言ってきたのだ。

「えっ?俺はそんな目で見てないよ!」

「いいえ、私にはちゃんとわかります。ご主人様あの人の胸ばかり見てました!」
「たしかに、ケンちゃん好みの美人だったわよね!」

「おいおい!マイまで何を言っているんだよ……」

「ケンちゃん……嘘を言うとき耳を触る癖なおってないよ」

 ケンジはハッとして、手を下におろしたのだ。すると、そんなケンジを見たマイ達がニヤニヤして、ケンジを茶化してきたのだった。

「お、お前達なあ!」

「主……素直になりなよ。あの女に見惚れていたんだろ?隠すから変な風になるんだよ」

「そうですよ。ご主人様はシャイな所がありすぎるんですよ。」

「シャイってなんだよ!俺は普通だよ。」

「いいえ、ご主人様はもっと肉食系になったほうが良いんですよ。それだけの甲斐性もあるんですから」

「なんだよそれ?チョット見惚れただけだろ?それなのに何でそこまで言われなきゃならん!」

「主……顔を真っ赤にしていっても決まりませんよ……」

「ギルまでなんだよ」

「まあまあ、主!落ち着いて下さい。昔から英雄、色を好む!とも言いますし、そんな恥ずかしがることじゃないですよ」

「「「「「うんうん」」」」」

 マイ達はにこやかに笑い、首を縦に振っていたのだった。

「はぁあ?英雄?誰が?お前達は何を言っているんだよ」

「ケンちゃんの事に決まっているじゃない!」

「なんで、俺が英雄なんだよ!少しお店経営がうまくいっているだけじゃないか。それならメイガン商会の方が規模としたら比べ物にならないだろ」

「何言ってんのよ。ケンちゃんは一回スタンピードをとめているじゃない!王国に受賞されるとこだったでしょ?十分英雄じゃない!」

「あっ……そんなこともあったっけなあ」

「ったく……主らしいぜ……」

 マードックが、呆れて両手を広げるポーズをして苦笑いをしたのだった。そうしているうちに、さっきの受付嬢が部屋に奴隷を連れて帰ってきた。

「ケンジ様の、条件に合う奴隷達はこちらになります。いかがでしょうか?」

 ケンジが、奴隷達のステータスを見ると、店の店員経験のある者達は、みんな計算や文字の読み書きが出来る者ばかりであった。
 店の店員候補は、ヒューマン男性3人と女性のエルフ2人、犬獣人のハーフ1人、魔族3人、小人族1人だった。みんな何があったのか顔がつぶれていたり、足が欠損していたり、普通なら従業員としては購入しないような人間ばかりであった。
 そして、鍛冶工房に入るのは、男性ヒューマン3人とドワーフ2人だった。こちらも生産スキルがそこそこあり、これから伸ばしていけば問題なかったのだ。

「ああ、全然構わないよ。良い人材だと思う」

「では、20万ドゴンでもよろしいでしょうか?」

「ああ!構わないよ」

「ありがとうございます」

 こうして、ケンジと15人の契約を済ませる為に、奥の部屋に入り契約を終わらせたのだった。そして、ここにはもう用がなくなったと思い、ケンジ達は帰ろうとしたところ、対応をしてくれた受付嬢にケンジは呼び止められるのだった。

「あの……ケンジ様、ちょっとよろしいでしょうか?」

「え?どうかしましたか?」

 受付嬢は、何か言いづらそうにモジモジしていた。それを見ていたケンジは、やっぱりこの人綺麗だよなあと思っていたのだった。

「……」

「えーっと……どうかしましたか?」

「あのっ!あたしも一緒に、ケンジ様の奴隷として購入してくれませんか?」

 その受付嬢の言葉に、ケンジは固まってしまうのである。受付嬢は意を決して、目をつむりケンジに言ったので、周りから見たらケンジは固まって動かないし、受付嬢は恋の告白をしたように目をつむって、ケンジの答えを待っている異様な後景がそこにあったのだ。
 いつまでたっても答えが返ってこない受付嬢は、目をそろっと開けると、固まって動かないケンジがそこにいたのだった。

「あの・・・ケンジ様?」

 受付嬢は、ケンジの目の前で手を振ったり、肩を揺すったりして正気に戻そうとしていたのだ。ケンジが、やっと正気に戻ったら時マイ達はニヤニヤし、マードックはケンジを羨ましそうに見ていたのだった。

「はぁあ?なんで俺が君を奴隷にしなくちゃいけないんだ?」

 受付嬢は、ケンジに購入を大きな声で拒絶されたので、ものすごく落ち込みその場に崩れ落ちるのだった。

「そ、そんなぁ……そんな大きな声で拒絶しなくても……」

「いやいや……何でそんな落ち込んでいるんだよ。このまま、受付嬢として生活していったほうが良いだろ?」

 そういっているのもかかわらず、受付嬢はショックだったみたいで、目から涙が溢れていたのだ。すると、プリムが会話に入ってきたのだった。

「あの、ひょっとしてご主人様は、何か勘違いしているんじゃないですか?」

「どういうことだよ?」

「ここにいる受付嬢も、あそこのカウンターにいる受付嬢も、みんな奴隷で売り物ですよ?」

「はあ?」

 ケンジは、受付嬢を一般市民だと思っていたのだ。実はそうではなくて、受付嬢になれるような女性はここのお勧め商品なのだ。
 つまり、綺麗どころを店頭に飾っているのである。この奴隷達は、奴隷商が自信を持ってお勧めしている者達なのだ。
 そして、彼女達は特別奴隷であり、自分が気に入った主人にこうして売り込むのである。

「って事は、君も奴隷なの?」

「ええ、そうです。先ほど対応してた時に、ケンジ様がわたしを熱烈な視線で見てきて、わたしに好意があると判りお願いしました。」

 ケンジはそのセリフに顔が真っ赤になり下を向いてしまうのだ。
(なぜ、ばれたんだ?そんなに見ているつもりはなかったと思うのだが……)

「だから言ったじゃないですか。ご主人様があんな目で見るなんて珍しいって、みんなわかっていますよ」

「う……うるさい!オリヴィアは一言多い!」

「あ、酷い!そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」

「で、ケンちゃんどうするつもりよ。彼女を気に入っているんでしょ?購入してあげたら?」

「はあ?お前はそれでもいいのかよ?」

「ケンちゃん!あたしは前にも言った通り、ケンちゃんが一人の女性だけで収まるはずないって言ったはずよ。全然気になんかしてないわ!でも、彼女を買うなら覚悟して契約を結びなよ」

「どういうことだよ?」

「彼女達は、奴隷商が自信をもってお勧めする商品よ。とんでもなく高いから覚悟して買う様にと言っているのよ。まあ、ケンちゃんからしたら、はした金だろうけどね」

 ケンジは、ちらっと受付嬢を見たのだった。この人が奴隷とは、いくら見ても信じられなかったのだ。

「あの……さっきはごめん……まさか奴隷とは思わなかったんだ。だが、本当に俺が君を購入してもいいのか?」

「ケンジ様の側で役に立ちたいのです。ケンジ様が良いのです」

「わかったよ。君を購入するよ。」

「えっ?」

「えっ?て、購入して欲しいんだろ?」

「でも、金額は聞かなくてもよろしいのですか?」

「じゃあ、いくら?」

「2億3千万ドゴンです」

「「「「「「ええええええ~~~~~!」」」」」」

 ケンジが驚くより、マイ達が大きな声を上げたのだった。

「なんだよ……その値段は……俺達の査定は2000万だったんだぞ」

 マードックが、ブチブチ言っていたが無視をして購入すると言ったら、受付嬢は満面の笑みを浮かべたのだった。

 すると、カウンターの受付嬢から悲鳴のようなものが上がるのだった。受付嬢達も驚いていたのだった。こういった売込みが一回で成功するなんてまずありえないのである。
 お客は何回か奴隷商に足を運び、奴隷を購入するのだ。その時にこの人はどれくらいの生活水準で、どういった人なのかを見て受付嬢達は主人を見極めるのである。

 今回、受付嬢の中でもケンジは特別な存在だったらしく、ガーライでは噂に上がるほどの人物であり、受付嬢はみんな狙っていて、次回来た時は自分が応対する気でいたのだ。
 こんな即決で、おすすめ商品である自分達を購入するとは思いもしなかったのだ。普通は、他の商品も見てじっくり考えるものなのに、まさか自分以外者があっさり購入されるとは思わなかったのである。

 受付嬢達からしたら、まさかの想定外の事だったのである。その為、カウンターにいた受付嬢達が悲鳴を上げたのである。
 ケンジに、購入してもらったら奴隷とはいえ幸せな生活が手に入る事は、情報で知っていたからである。後は自分達は高額な為、どれだけ売り込めるかの勝負だったのである。

「ケンちゃんなら、あそこにいる全員を購入できるくらい甲斐性があるんだけどどうするの?」

「バ、バカ!いらんこと言うな!」

 ケンジとマイは、コソコソ小さな声で言い合っていたのだった。それを見ていた、受付嬢達の目は怪しく光っていたように見え、ケンジは急いで購入を決めた受付嬢と契約を結んび、奴隷商を後にしたのだった。

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