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第8章 Freedom国の設立!
5話 販売
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ケンジの店では、水道という魔道具が売り出されたと、町では噂になり一気に注目の商品となったのだ。
主婦達に、とっては本当に助かり洗濯をする時、いちいち滑車で水を汲み上げなくとも蛇口をひねるだけで、手軽に水が出てくるのだった。
それもその水は、飲料水にも使う事が出来て、今までの様にいったん沸騰させなくとも使う事の出来る水なのだ。
この商品は、Freedomで初日の売り上げは、冷蔵庫と便器を大幅に追い抜き、とんでもない利益となるのである。
この水道を、購入した家庭では井戸に落ちないように、蓋も設置されていくのである。
テンペの町では、みんながこぞって購入を希望したのだが、販売開始して3時間で売り切れになってしまうのだった。その為、王都支店の在庫分も、テンペの町に回し全て売り切れてしまったのだ。
王都の方も、徐々にFreedomの店が知れ渡ってきて、売り上げが伸びてきていたのだ。水の確保は、やっぱり王都でも大変な事で、テンペの町同様、この水道は活気的な魔道具なのだ。
「ケンジさん!今回の水道は本当にありがとねえ」
「いえいえ……」
ケンジは、王都でFランクの仕事をしていた時に、王都に住む老婆に、話しかけられ恐縮していたのだ。
徐々に、ケンジも王都の様なでかい町でも、知り合いが増えてきた事で、依頼をしている時にこうして話しかけられ、コミニュケーションをかわしていたのである。
「そうやってお礼を言われると、作った甲斐があるというもんですよ」
「今まで、私のような年寄りにはもう井戸の水をくみ上げる作業は辛くなってきたから、家の中で水がひねれば出るなんて夢のようよ」
「少しでもお役に立てて本当に嬉しいです。」
ケンジは、工事現場の資材の運びをしていたので、老婆に丁寧な挨拶をしてその場を後にした。
だが、その後も今回の商品はとても便利の良いモノで、水道を買った町の人達からドンドン話しかけられるのである。
そして、この水道が起爆剤となり、Freedomの店には今まで入店してこなかった人間が、便器や冷蔵庫を買い求めるようになったのである。
Fランクの仕事を終えたケンジは王都の生産ギルドに帰って来た。当然、依頼料を清算する為に訪れたのである。
「ケンジ様、今日もFランクの依頼しかやらないのですか?」
「ああ!そうだよ。」
「なんでですか?ケンジ様はSランクの生産者ですよね?もっと報酬の高い依頼をすればいいのに、なんでしないのですか?」
「なんでって、そりゃ……やりたくないからだな」
「ケンジ様は、オリハルコンとかアダマンタイトとか採掘したりしないのですか?ギルドとしてはしてほしいのですが……」
「ギルドが、インゴットを欲しければ、俺の店で買ってくれたらいいんだよ。」
「それじゃあ、高いじゃないですか!」
「なんで、俺がギルドの為に安い値段で売らなきゃならんのだ」
「そんなこと言わないで、協力してくれてもいいじゃないですかぁ」
「受付嬢さん、協力とはお互いが補うって事だと知っていますか?」
「そんなの当り前じゃないですか!」
「じゃあ、俺が苦労してダンジョンに篭り、採掘したインゴットを安く売った後、ギルドは俺にどんな事してくれるんだい?」
「そりゃ、当然ギルドのバックアップを受けて、ケンジ様のお店にお客を紹介したり、依頼人を紹介し、指名依頼を沢山受けれる様に手配したりしますよ」
「そんなのは、俺がやっていて必要のない事ばかりじゃないか!」
「だから、そういう事はギルドに任せて、ケンジ様はインゴットをもっと納品したり、装備品や商品開発に力を入れたらいいんじゃないんですか」
「それは、協力じゃなくギルドにとって、都合の良い生産者になるだけだからお・こ・と・わ・り!」
「ギルドが、生産者の為になるような事をするなら協力はするが、ギルドが得になる前提では俺は動かないよ」
「そんな事言わないで、昔からギルドと構成員の間は、このように成立しているんだから、我儘言わないでくださいよ」
「いやいや……我儘言っているのは、受付嬢さんあんたなんだからね」
「なんで、あたしが!」
「いいかい。よく聞きなよ。さっきあんたは俺にもっと、報酬の高い依頼を受けてくれと言っただろ?」
「はい」
「それと、ギルドと構成員つまり生産者の間は、昔からこれで成り立っているとも言ったよな?」
「それは当然ですよね?」
「うん、それは当然だと俺もそう思うよ。」
「だったら!」
「まあ、待ちなよ。じゃ反対に聞くが、俺はギルドが掲示板に張り出している依頼を受けていないのか?」
「そ、それは……」
「ギルドはFランクの依頼は依頼と違うというのか?違うよな?俺は、誰もやりたがらない、Fランクの仕事を率先してやっている事は、協力と言わないのか?」
「それは有り難いと思っています。」
「だろ?それにもかかわらず、あんたは俺にそんな依頼より、報酬の高い依頼をやれと命令しているんだ。どっちが我儘を言っているかわかるか?」
「でも、ケンジ様はインゴットを採掘できる、腕を持っているじゃありませんか?」
「それは、俺だけじゃないよね?俺は自分の店の売り上げで十分満足している。だから、その依頼は他の採掘士が頑張ればいいと思っているんだよ」
「ですが、インゴットは万年在庫不足で……」
「だから、言っているじゃないか。足りないインゴットは俺の店で買ってくれって!高いと言って買わないのであれば、文句言うつもりはないし勝手にしたらいいだけだよ。俺は、ギルドが得になる事は絶対にしないから諦めるんだな!」
「そんな……」
「そんな、無駄口叩いているんじゃなく、早く今日の分を清算してくれ!」
「そんな事ばかりやっていたら、ギルドを追放されても知りませんよ」
「追放できるならやってみなよ。俺に落ち度はないはずだ。ちゃんとFランクの依頼を、常人では考えられない数をこなしているんだ。」
「うぐっ……」
ケンジは自国を持つ事で、もうFランクの仕事に関しては、自重する事をしなくなっていたのである。
これにより、ギルドは町の人達からありがたられて、信頼が出てきているので、ケンジを追放など絶対にできなくなっていたのである。
ケンジは、こういった事でもギルドの弱みを握りつつ、イニシアティブを取りにきていたのだ。
受付嬢も、ケンジが一日に多い時では、10件近いFランクの依頼を処理してくれているのを知っていたので、追放という言葉は苦し紛れに発した言葉だったのだ。いま、ケンジにギルドを脱退される方が、ギルドにとって痛手であるのだ。
ケンジは、受付嬢の顔を見てニヤリと笑い、ギルドを後にするのだった。
ギルドを出た、ケンジはクククッと笑いをこらえていたのだった。それを見た、ギルとシスティナはやれやれと言う様な雰囲気で二人で顔を見合わせ苦笑いを浮かべるのだ。
「ご主人様……結構悪趣味なんですね」
「だって、あの悔しそうな顔みたか?」
「まあ、見ましたけど……」
「主は、ギルドをどうしたいのですか?」
「ギル、それは愚問だろ」
「え?」
「言ってみたらだな。俺はギルドや権力者達が得するような事が許せないだけだよ」
「ギルドをどうしたいかは、ギルド内でやってくれたらいいんだよ。俺にしたら、自分の事やお前達の事の方が大事だからな。自由に楽しく暮らせていければいいだけなんだよ。」
「そういえばそうでしたね」
「そういう事だ!」
「で、ご主人様は、どこに向かっているのですか?」
「奴隷商店だよ」
「え?また購入なさるのですか?」
「ああ!今度は大工が出来る職人をな?それと鍛冶工房の補充だ!」
「「ええ~~~~~!」」
ケンジの計画は、もう頭の中に構想が出来ていたのである。
「大工職人、なんてどうするのですか?」
「まあまあ!」
「主の、秘密主義が久しぶりに出た……」
「こうなったら、意地でも言いませんものね……」
「まあ、そう言う事だ」
ケンジは、奴隷商人の所に行き、大工のできる男奴隷を10人購入したのだ。10人のうち9人が欠損奴隷で使い道のないもう廃棄寸前の奴隷を購入したのだ。
人員はなるべく安く済ませ、治療した方が信頼してもらいやすいからだ。そして、あと10人は鍛冶工房に入ってもらう人間達である。
こちらの方も欠損奴隷から購入するのだった。これには奴隷商人も喜んだ。売り物にならない奴隷が、一気に片づき安く売れたとしても儲けが出たからである。
「今度、購入される時は、サービスさせていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ。」
ケンジは、足がない奴隷達には、インベントリから出したリアカーに乗ってもらい、歩ける奴隷は自分達で歩いてついてくるようにと指示を出すのだった。
家に帰ると、当然だがみんなが驚き、ケンジに何でこんなにも購入したのか聞いてくるのだった。
「ご主人様!これはいったいどうしたのですか?」
「いやな……王都の売り上げがこれから爆発的に上がると思ってな。人員確保しないと生産が間に合わないと思ったんだよ」
ケンジはただ、Fランクの仕事で店を宣伝している訳でなく、町の様子もモニタリングしていたのだ。
「どういうことですか?」
「今日Fランクの依頼を受けていて、王都の中の店の人気が上がってきていてな、たぶんこれから王都の人間が、この店の商品を、我先にと購入してくると思ったんだよ」
「それで今のうちに人員を揃えたって事ですか?」
「そういう事だ」
ケンジはそういう訳で、ギル達手の空いている人間にベットや服を、テンペの町に買いに行ってもらうのだった。
「あの、ご主人……我々はこんななりです。人員といってももう、満足に働けないだ……」
「買って貰って申し訳ないんだが……」
「そんなのわかっているよ。だからお前達を今から治すから安心しろ」
ケンジは、ダンジョンから出た余りまくっている※①【エリクサー】を出し、奴隷達にエリクサーを飲ませるのだった。すると、奴隷達は欠損が治り、歓喜に震えるのだった。
「ご、ご主人!これはいったい……」
「ああ、これでお前達は十二分に働く事が出来るだろ?」
「あ、ありがとうございます……」
治してもらった奴隷達は涙を流し喜び、みんな土下座してお礼を言うのだった。
「セバス!こっちの10人は鍛冶工房に連れて行き、ダンギとシェムに言って手伝わせてやってくれ。さっきの忙しくなる事をダンギ達に伝えてくれよ」
「はい。承知いたしました」
セバスは、鍛冶の心得がある者達10人を鍛冶工房に案内し、連れて行くのだった。そして、残った10人にケンジは話し始めたのである。
「お前達は、この土地に家を作ってくれないか?」
「ご主人の頼み事ならどんな事でもやらさせていただきやす!どんな家でしょうか?」
「宿屋のような大きな建物で、一部屋に5,6人が住めるような建物はできるか?」
「その建物には誰が住むのでしょうか?」
「お前達だよ。」
ケンジは、人員確保のため人数が多くなってきた奴隷の為に、快適な住む場所を作る為に、大工職人を購入したのである。
「「「「はぁあ?」」」」」
「俺達なら外にあるような小屋で十分でさぁ!」
「そうですぜ!勿体ないだけです!」
ケンジは、今のギル達の寝床が、だんだん狭くなってきていたのを気にしていたのである。店はこれからどんどん他の町とつなぐ事で大きくなり、人員確保のため奴隷が増える事になり、住み込みのような大きな建物を建てたかったのである。
ハウスで建てても良かったのだが、奴隷達だけの家をハウスで建てたとなると、またセバス達が納得せず、反論してくるのがわかっていたので、この土地に普通の宿舎のような建物を建てようと思ったのだ。
それとケンジは、この土地にある店はいずれ、店だけでなく流通が始まるだろうとも思っていたのである。
だがそれはまだ、だいぶんと遠い未来の話になるのだが……
*-----*-----*-----*-----*
この話で出てきたアイテム
※①【エリクサー】
ダンジョンボスの宝箱からしか取れない伝説級のポーション。
欠損部分をも直してしまい異常状態、毒やパラライスはもちろん
呪術的な呪いでさえ治してしまう。
取引は、闇オークションでのみ取引があり出品されれば、
億のお金では購入できない程の高価格。
主婦達に、とっては本当に助かり洗濯をする時、いちいち滑車で水を汲み上げなくとも蛇口をひねるだけで、手軽に水が出てくるのだった。
それもその水は、飲料水にも使う事が出来て、今までの様にいったん沸騰させなくとも使う事の出来る水なのだ。
この商品は、Freedomで初日の売り上げは、冷蔵庫と便器を大幅に追い抜き、とんでもない利益となるのである。
この水道を、購入した家庭では井戸に落ちないように、蓋も設置されていくのである。
テンペの町では、みんながこぞって購入を希望したのだが、販売開始して3時間で売り切れになってしまうのだった。その為、王都支店の在庫分も、テンペの町に回し全て売り切れてしまったのだ。
王都の方も、徐々にFreedomの店が知れ渡ってきて、売り上げが伸びてきていたのだ。水の確保は、やっぱり王都でも大変な事で、テンペの町同様、この水道は活気的な魔道具なのだ。
「ケンジさん!今回の水道は本当にありがとねえ」
「いえいえ……」
ケンジは、王都でFランクの仕事をしていた時に、王都に住む老婆に、話しかけられ恐縮していたのだ。
徐々に、ケンジも王都の様なでかい町でも、知り合いが増えてきた事で、依頼をしている時にこうして話しかけられ、コミニュケーションをかわしていたのである。
「そうやってお礼を言われると、作った甲斐があるというもんですよ」
「今まで、私のような年寄りにはもう井戸の水をくみ上げる作業は辛くなってきたから、家の中で水がひねれば出るなんて夢のようよ」
「少しでもお役に立てて本当に嬉しいです。」
ケンジは、工事現場の資材の運びをしていたので、老婆に丁寧な挨拶をしてその場を後にした。
だが、その後も今回の商品はとても便利の良いモノで、水道を買った町の人達からドンドン話しかけられるのである。
そして、この水道が起爆剤となり、Freedomの店には今まで入店してこなかった人間が、便器や冷蔵庫を買い求めるようになったのである。
Fランクの仕事を終えたケンジは王都の生産ギルドに帰って来た。当然、依頼料を清算する為に訪れたのである。
「ケンジ様、今日もFランクの依頼しかやらないのですか?」
「ああ!そうだよ。」
「なんでですか?ケンジ様はSランクの生産者ですよね?もっと報酬の高い依頼をすればいいのに、なんでしないのですか?」
「なんでって、そりゃ……やりたくないからだな」
「ケンジ様は、オリハルコンとかアダマンタイトとか採掘したりしないのですか?ギルドとしてはしてほしいのですが……」
「ギルドが、インゴットを欲しければ、俺の店で買ってくれたらいいんだよ。」
「それじゃあ、高いじゃないですか!」
「なんで、俺がギルドの為に安い値段で売らなきゃならんのだ」
「そんなこと言わないで、協力してくれてもいいじゃないですかぁ」
「受付嬢さん、協力とはお互いが補うって事だと知っていますか?」
「そんなの当り前じゃないですか!」
「じゃあ、俺が苦労してダンジョンに篭り、採掘したインゴットを安く売った後、ギルドは俺にどんな事してくれるんだい?」
「そりゃ、当然ギルドのバックアップを受けて、ケンジ様のお店にお客を紹介したり、依頼人を紹介し、指名依頼を沢山受けれる様に手配したりしますよ」
「そんなのは、俺がやっていて必要のない事ばかりじゃないか!」
「だから、そういう事はギルドに任せて、ケンジ様はインゴットをもっと納品したり、装備品や商品開発に力を入れたらいいんじゃないんですか」
「それは、協力じゃなくギルドにとって、都合の良い生産者になるだけだからお・こ・と・わ・り!」
「ギルドが、生産者の為になるような事をするなら協力はするが、ギルドが得になる前提では俺は動かないよ」
「そんな事言わないで、昔からギルドと構成員の間は、このように成立しているんだから、我儘言わないでくださいよ」
「いやいや……我儘言っているのは、受付嬢さんあんたなんだからね」
「なんで、あたしが!」
「いいかい。よく聞きなよ。さっきあんたは俺にもっと、報酬の高い依頼を受けてくれと言っただろ?」
「はい」
「それと、ギルドと構成員つまり生産者の間は、昔からこれで成り立っているとも言ったよな?」
「それは当然ですよね?」
「うん、それは当然だと俺もそう思うよ。」
「だったら!」
「まあ、待ちなよ。じゃ反対に聞くが、俺はギルドが掲示板に張り出している依頼を受けていないのか?」
「そ、それは……」
「ギルドはFランクの依頼は依頼と違うというのか?違うよな?俺は、誰もやりたがらない、Fランクの仕事を率先してやっている事は、協力と言わないのか?」
「それは有り難いと思っています。」
「だろ?それにもかかわらず、あんたは俺にそんな依頼より、報酬の高い依頼をやれと命令しているんだ。どっちが我儘を言っているかわかるか?」
「でも、ケンジ様はインゴットを採掘できる、腕を持っているじゃありませんか?」
「それは、俺だけじゃないよね?俺は自分の店の売り上げで十分満足している。だから、その依頼は他の採掘士が頑張ればいいと思っているんだよ」
「ですが、インゴットは万年在庫不足で……」
「だから、言っているじゃないか。足りないインゴットは俺の店で買ってくれって!高いと言って買わないのであれば、文句言うつもりはないし勝手にしたらいいだけだよ。俺は、ギルドが得になる事は絶対にしないから諦めるんだな!」
「そんな……」
「そんな、無駄口叩いているんじゃなく、早く今日の分を清算してくれ!」
「そんな事ばかりやっていたら、ギルドを追放されても知りませんよ」
「追放できるならやってみなよ。俺に落ち度はないはずだ。ちゃんとFランクの依頼を、常人では考えられない数をこなしているんだ。」
「うぐっ……」
ケンジは自国を持つ事で、もうFランクの仕事に関しては、自重する事をしなくなっていたのである。
これにより、ギルドは町の人達からありがたられて、信頼が出てきているので、ケンジを追放など絶対にできなくなっていたのである。
ケンジは、こういった事でもギルドの弱みを握りつつ、イニシアティブを取りにきていたのだ。
受付嬢も、ケンジが一日に多い時では、10件近いFランクの依頼を処理してくれているのを知っていたので、追放という言葉は苦し紛れに発した言葉だったのだ。いま、ケンジにギルドを脱退される方が、ギルドにとって痛手であるのだ。
ケンジは、受付嬢の顔を見てニヤリと笑い、ギルドを後にするのだった。
ギルドを出た、ケンジはクククッと笑いをこらえていたのだった。それを見た、ギルとシスティナはやれやれと言う様な雰囲気で二人で顔を見合わせ苦笑いを浮かべるのだ。
「ご主人様……結構悪趣味なんですね」
「だって、あの悔しそうな顔みたか?」
「まあ、見ましたけど……」
「主は、ギルドをどうしたいのですか?」
「ギル、それは愚問だろ」
「え?」
「言ってみたらだな。俺はギルドや権力者達が得するような事が許せないだけだよ」
「ギルドをどうしたいかは、ギルド内でやってくれたらいいんだよ。俺にしたら、自分の事やお前達の事の方が大事だからな。自由に楽しく暮らせていければいいだけなんだよ。」
「そういえばそうでしたね」
「そういう事だ!」
「で、ご主人様は、どこに向かっているのですか?」
「奴隷商店だよ」
「え?また購入なさるのですか?」
「ああ!今度は大工が出来る職人をな?それと鍛冶工房の補充だ!」
「「ええ~~~~~!」」
ケンジの計画は、もう頭の中に構想が出来ていたのである。
「大工職人、なんてどうするのですか?」
「まあまあ!」
「主の、秘密主義が久しぶりに出た……」
「こうなったら、意地でも言いませんものね……」
「まあ、そう言う事だ」
ケンジは、奴隷商人の所に行き、大工のできる男奴隷を10人購入したのだ。10人のうち9人が欠損奴隷で使い道のないもう廃棄寸前の奴隷を購入したのだ。
人員はなるべく安く済ませ、治療した方が信頼してもらいやすいからだ。そして、あと10人は鍛冶工房に入ってもらう人間達である。
こちらの方も欠損奴隷から購入するのだった。これには奴隷商人も喜んだ。売り物にならない奴隷が、一気に片づき安く売れたとしても儲けが出たからである。
「今度、購入される時は、サービスさせていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ。」
ケンジは、足がない奴隷達には、インベントリから出したリアカーに乗ってもらい、歩ける奴隷は自分達で歩いてついてくるようにと指示を出すのだった。
家に帰ると、当然だがみんなが驚き、ケンジに何でこんなにも購入したのか聞いてくるのだった。
「ご主人様!これはいったいどうしたのですか?」
「いやな……王都の売り上げがこれから爆発的に上がると思ってな。人員確保しないと生産が間に合わないと思ったんだよ」
ケンジはただ、Fランクの仕事で店を宣伝している訳でなく、町の様子もモニタリングしていたのだ。
「どういうことですか?」
「今日Fランクの依頼を受けていて、王都の中の店の人気が上がってきていてな、たぶんこれから王都の人間が、この店の商品を、我先にと購入してくると思ったんだよ」
「それで今のうちに人員を揃えたって事ですか?」
「そういう事だ」
ケンジはそういう訳で、ギル達手の空いている人間にベットや服を、テンペの町に買いに行ってもらうのだった。
「あの、ご主人……我々はこんななりです。人員といってももう、満足に働けないだ……」
「買って貰って申し訳ないんだが……」
「そんなのわかっているよ。だからお前達を今から治すから安心しろ」
ケンジは、ダンジョンから出た余りまくっている※①【エリクサー】を出し、奴隷達にエリクサーを飲ませるのだった。すると、奴隷達は欠損が治り、歓喜に震えるのだった。
「ご、ご主人!これはいったい……」
「ああ、これでお前達は十二分に働く事が出来るだろ?」
「あ、ありがとうございます……」
治してもらった奴隷達は涙を流し喜び、みんな土下座してお礼を言うのだった。
「セバス!こっちの10人は鍛冶工房に連れて行き、ダンギとシェムに言って手伝わせてやってくれ。さっきの忙しくなる事をダンギ達に伝えてくれよ」
「はい。承知いたしました」
セバスは、鍛冶の心得がある者達10人を鍛冶工房に案内し、連れて行くのだった。そして、残った10人にケンジは話し始めたのである。
「お前達は、この土地に家を作ってくれないか?」
「ご主人の頼み事ならどんな事でもやらさせていただきやす!どんな家でしょうか?」
「宿屋のような大きな建物で、一部屋に5,6人が住めるような建物はできるか?」
「その建物には誰が住むのでしょうか?」
「お前達だよ。」
ケンジは、人員確保のため人数が多くなってきた奴隷の為に、快適な住む場所を作る為に、大工職人を購入したのである。
「「「「はぁあ?」」」」」
「俺達なら外にあるような小屋で十分でさぁ!」
「そうですぜ!勿体ないだけです!」
ケンジは、今のギル達の寝床が、だんだん狭くなってきていたのを気にしていたのである。店はこれからどんどん他の町とつなぐ事で大きくなり、人員確保のため奴隷が増える事になり、住み込みのような大きな建物を建てたかったのである。
ハウスで建てても良かったのだが、奴隷達だけの家をハウスで建てたとなると、またセバス達が納得せず、反論してくるのがわかっていたので、この土地に普通の宿舎のような建物を建てようと思ったのだ。
それとケンジは、この土地にある店はいずれ、店だけでなく流通が始まるだろうとも思っていたのである。
だがそれはまだ、だいぶんと遠い未来の話になるのだが……
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この話で出てきたアイテム
※①【エリクサー】
ダンジョンボスの宝箱からしか取れない伝説級のポーション。
欠損部分をも直してしまい異常状態、毒やパラライスはもちろん
呪術的な呪いでさえ治してしまう。
取引は、闇オークションでのみ取引があり出品されれば、
億のお金では購入できない程の高価格。
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