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第7章 超級ダンジョン攻略!

29話 ケンジの計画発動

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 ケンジはグランパス王に町の城壁の外側に店を構える事で独自の店のスタイルの許可を得るのだった。
 グランパス王は最初町の城壁の内側で今まで通りの経営を進めたのだがケンジとしてはもうギルドや権力者達に振り回される事が辟易していたので自由に仲間達と生活したいと思っていたのだった。

 ケンジはこれでもう生産ギルドからのやっかみが無くなると思い嬉しくてしょうがなかったのである。ケンジは国王に王都での店の開店はいつになるかわからないが早急に準備をして連絡する様にすると伝えケンジ達は家路に着くのだった。

「ケンちゃん!王都の近くにも店を出すの?誰がやるつもりなのよ?」

「まあ、任せろって!」

「ご主人様?また奴隷を購入してその者に任せるのですか?」

「奴隷だけじゃそんなことできるわけないだろ?俺だってみんなと一緒にいたいんだからさ。」

「じゃあどうするのですか?」

「だからダンジョンから出た魔道具を使うんじゃないか!」

「あっ!」

「マイは気付いたようだな。そうこの転移マットを使うんだよ。」

 ケンジは王都とテンペの町に個人宅を建てて先ほどグランパス王に貰った土地に店を作り2つの町を転移マットでお客を呼び込み販売することを計画していたのである。言ってみればケンジの土地は独自国家にような感じになるのである。ただしケンジはテンペの町と王都を転移マットでつなげる事はしないとみんなに説明したのだった。

「え?なんでテンペと王都を繋げないのですか?」

「おいおい・・・・そんなことしたら確かに行商している者には喜ばれるがその護衛で生活している冒険者はどうなる?」

「あ!」

「その冒険者達は護衛のスキルを長い時間をかけて育てたのに生活が出来なくなるだろ?」

「だから店のロビーを部屋で区切ってだなテンペの町から転移してきたお客は王都の転移マットの部屋には行けないようにして店を改築するんだ。」
「当然だが逆の場合も同じように王都からテンペの町には行けないようになる。」

「主は国王に迷惑をかけられた時からそんなことを考えていたのか?」

「ああ、マードック!この転移マットが手に入ったころからだけどな。王様から賠償金としてお金だけだったら返還して自分達の土地を貰うつもりだったんだよ。」

「ご主人様は本当凄いですね。こんな店誰も考えつきませんよ。」

「おいおい!オリヴィア感心するのはまだ早いぞ!」

「「「「「え?」」」」」「ケンちゃんそれってどういう事?」

「いいか。よく考えるんだ!俺達はまだこれからも超級ダンジョンに潜るんだぞ。転移マットはどんどん手に入るんだ。」

「まさか?主はそんな事を最終的に実行なさるのですか?」

「ギル!どうだ驚いたか?グランパス王国中に俺の便器や冷蔵庫を広げるつもりだよ。まあ、新商品はそれだけじゃないがな。水道もまだ実用できるか実験しているしまだまだアイデアはあるよ。」

 それを聞いたマイ達はケンジの最終目標に驚き何も言えなくなっていたのだった。これが実現すればテンペの町だけでなく王国中がケンジの商品でみんなの生活が豊かになるのである。

 そしてその計画が成功したあかつきには貴族はおろか王族でももう気軽にケンジに逆らえなくなるのがいやおうなしに想像が出来るのである。

「だから、これから当分店の事で忙しくなると思ってくれ。」

 ケンジはみんなにそういったのである。そしてケンジはマイに国王から貰った虹金貨100枚の内80枚をマイに渡してしまったのである。

「ケンちゃんこれってなによ。」

「ああ、それはさっき王様からお金貰っただろ?あれはパーティーとして貰ったが20枚はこれからの資金として俺が貰う事でいいか?」

「何言ってんのよ。これは全部ケンちゃんの分じゃない!」

「それはマイが貰ってくれ!俺は土地も貰ってるし虹金貨20枚も貰うから貰い過ぎの感じもあるし悪いと思ってんだよ。」




 ケンジの貰った土地はテンペの町より北東にあり位置としては地球でいうと滋賀県の米原(まいばら)辺りに位置する琵琶湖に面した土地であった。
 そこはまだ開拓村もなく手つかずの土地であり広大な土地であった。その場所にケンジは大魔道士としての力を使い城壁から建築しようとしていたのだった。

 ケンジはまず王都を出て国王からもらった土地、琵琶湖に近くに進路を取りハヤテの機動力を使い急いで帰るのだった。

 そしてちょうどいい場所に※①【ハウス】を使い大きな店舗を建てたのだった。内装は大きなロビーを何分割にしたような見取り図にしてカウンター越しにお客が買い物をできる感じにして店から出るには転移マットを使い元の町に戻るしかできない構造の店にしたのだった。

 その店の外観は正面玄関が無い異様なお店が広大な土地に一軒だけポツンと建っている不思議な店だったのだ。

 そのお店の店員が応対する方の広いロビーには商品は並べられお客が店員に商品を伝えて手渡すシステムとなり万引きしようにもできない仕組みである。

 お店の裏口がケンジの家の玄関となり2階、3階が住居スペースとなるのである。広大な土地にポツンとあるこの店は結界も超級ダンジョンでゆっくりできるほどに強力なものであり魔物や盗賊の心配はいらないのである。
 いずれ転移マットがいくつも手に入れば町の個数分だけカウンターを増やせばいいだけなので簡単に改築も可能なのである。
 この【ハウス】の凄い所はテントのような小さいものから白亜の王城のような巨大な建築物にすることもできるのだ。

 しかしケンジはこの【ハウス】がいくら結界が強力とはいえ囲いがなく丸裸なのは気分的に居心地が悪いので※②【ウォールオブストーン】の魔法で土壁を作り高さ5m100m四方の城壁を作ってしまったのだ。
 その城壁のまわりは幅5m深さ5mの堀を掘り正面の城門には橋をかけたのだった。堀には琵琶湖の水が流れ込み難攻不落の小さな町が出来てしまったのである。

 そして※③【聖属性魔石】を※④【神鋼魔石】に吸収させた※⑤【神聖魔石】という新たな魔石を作り出したのである。ケンジはこの神聖魔石を城壁の角に一つづつ設置し城壁全体を結界で包んでしまったのである。これにより門から悪意のある者や魔物は絶対に入れなくなり門番も必要なくなってしまうのである。

 この町というか家?をケンジは一人で1か月で作ってしまったのである。






 そして、ここはテンペの町である。ケンジがいなくなって1か月王都からの連絡も入りケンジは犯罪者ではないと通達があり、町の人達は安心するのだった。そしてケンジの店もまた販売中止の御触れも撤回されていたのだった。
 だがケンジの家の敷地は相変らず結界で誰も入ることが出来なかったのである。それを見ていた町の人達は勘違いとはいえ冤罪でケンジを追い詰めたと言って兵士達を責めていたのだった。
 町の人達はもうケンジは帰ってこないと思い込んでいたのである。団長もまた最後にケンジの言った言葉が気になっていて夜も眠れない日々が続いていたのだった。

「ケンジ殿はあれから王都を出てどこに行ってしまったのだろうか・・・」

「団長、そんなに思い詰めないでください!」

「そんな事出来るわけなかろう!」

「ですが団長は最近夜も寝てないじゃないですか?気づいたら城壁の上に立ち王都の方を見つめていて・・・」

 そんな話をしていた時町の方が何やら騒がしくなっていたのだった。その時兵士の一人が息を切らして団長の部屋に飛び込んできたのだった。

「だ、だ、だ、団長!大変です!」

「なんだ騒がしい!何があったのだ!」

「ケ、ケ、ケンジ殿が!ケンジ殿がこの町に帰ってきました!」

「な、なに~~~!それは本当か?」

「はい!敷地内に前の様に誰でも入れる事になってケンジ殿が店の前に立札を立て直し近日中に店を再開するようです!」

 団長はそれを部下から聞きソファーにドッと疲れた様に座ったのである。

「ははは・・・・良かった・・・・本当に良かった!」

 団長は今まで気が張っていたのが嘘のように全身の力が抜けホッとため息をつくのだった。

 そして、ケンジの家ではケンジが今までと同じように町の人達に囲まれ笑顔で対応していたのだった。

「ケン坊!今までどこに行っていたんだ!」
「そうよ・・・もう帰ってこないかと思ったんだから!」
「でも、よく帰ってきてくれたな。俺は嬉しいぜ!」

「長い事留守にしてすいません・・・魔石の方も切れて迷惑をかけました。」

「その辺は冒険者達が協力してくれてよ。前の様に便所掃除やら雑用をしてくれて助かったよ。」

「俺達さ・・・日頃の生活の為少しでもいい依頼ばかり受けてケンジに甘えていた事がお前がいなくなったことで痛感したよ。今まで本当に悪かった。」

 町の人達はケンジが帰って来た事に歓声を上げ冒険者達はケンジの商品で実入りの良い依頼ばかり受けることが出来ていたことに感謝し、生産者はケンジがいなくなったことで素材が手に入らなくなり自分達でなんとかしないと生活が出来なくなるほど何も作れなくなっていたのだった。
 ケンジの店に来れば素材がいつでも売っていて生産者達は製作に没頭することが出来ていたのだがケンジの店が閉まってしまっては自分達で調達するしかなかったのだ。

「で、いつから再開するんだ?」

「今の予定だと1週間はかかるかと思います。もうちょっと迷惑をかけるかと思いますが申し訳ないです。」

 集まっていた町の人達は今までもうケンジの店は開かないと思っていたが一週間とわかると気が楽になったと反対に喜ばれるのだった。

 そして開店までの間、ケンジは新たな従業員である奴隷を購入し売り子と製作する人員を整えるのだった。
 テンペの町には前の店舗に転移マットを設置しここから新店舗に転移してもらう事にしたのだった。旧店舗には案内人である人間を一人いたら十分であり転移マットを盗む人間もいるかもしれないがそこはしっかりセキュリティーが働き万引き防止で店の外にある鉄格子に拘束されるのであるから安心なのだ。

 そして、一週間後町の人達は何もない店舗に驚きケンジから説明を受けることになるのである。

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この話で出てくるアイテム・魔法の一覧

※①【ハウス】
 超級ダンジョンの中ボスの宝物。物としてはミニチュアサイズの家の玩具
のような魔道具。用途は少しの魔力を込めイメージした家が簡単に建築可能。
そして、ミニチュアに戻し持ち運び可能。テントとして使ったり白亜の王城を
建築したりできる。

※②【ウォールオブストーン】
土属性魔法   5階位
消費MP    35
詠唱速度    5.75秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間    永久
効果対象    なし
効果範囲    レベル×1mまでの範囲
必要秘薬    虹色パール5個
備考欄
 この魔法は一瞬にして土を盛り上げ術者の前に土壁を作り上げ
ガードをする魔法。それ以外にも土壁の基礎にして小屋を建てたり
城壁の修繕工事にしたりと用途はさまざまである。
魔道士職業レベル50と魔法スキル80以上で使用可能

※③【聖属性魔石】
 この魔石は魔物から取れるのではなく採掘スキルが120.00になると
初めてダンジョンから採掘出来る魔石で聖の属性を持つ魔石。魔力を込める
事で短時間聖属性の魔力を稼働し続ける。
 町の結界はこの聖の魔石を使いヒイロカネの魔力を利用し町の結界を
維持しているのである。
この他に火・水・木・風・土などもある。

※④【神鋼魔石】
 ガイアースで唯一採掘が出来るのがケンジである。採掘スキルが
200.00になって初めて超級ダンジョンから採掘できる鉱物。
加工すると何でも吸収することが出来る魔石に精製できる。

※⑤【神聖魔石】
 神鋼魔石を加工する際に聖属性魔石を吸収させ作った新しい種類の
聖の属性を持った魔石。周りにある聖の魔力を吸収し魔石に蓄え
1年以上の長い期間稼働し続ける魔石。
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