上 下
249 / 619
第7章 超級ダンジョン攻略!

12話 撤退!

しおりを挟む


 ケンジ達はファイヤーデーモンを倒した中ボス部屋でハウスを建ててその日を過ごしたのだった。そして次の日の朝、起床したケンジ達はご飯を食べながらこの後どうするのか話し合うのだった。

「さて、これからなんだが俺は一旦地上に戻ろうとおもう。」

「えええ~~~!ケンちゃんなんでよ?」

「そうだよ!せっかくここまで来たのになんでそんな事を言うんだよ!」

「マイ、マードックそれを俺に言わせるのか?」

「そうだな。私も主の考えには賛成だ。」

「ちょっとギル何言ってんのよ。」

「マイさんあなたの考えもわかる気がしますがこれは後衛でいた者の意見です。」

「え?」

 ギルの意見にオリヴィア、セイラも視線を合わせず下を向いていたのだった。

「さすがギルだ!ちゃんとパーティーをよく見ていてくれている。」

「ご主人様!お願いです。あたし達もっと頑張りますだから・・・」

「そうよ!ケンちゃんお願いよ!」

 システィナもケンジ達に反論したがケンジは首を縦には振らなかった。というより振ることが出来なかったのである。

「いや駄目だ!これ以上潜っても意味はない!俺達はまだ弱いことが悔しいがよくわかった。」

「そんな・・・」

「マイ、それにシスティナもよく聞いてくれ。今回ファイヤーデーモンという俺達には未知の魔物と戦うことが出来た。それゆえに今まで自分に強化魔法をかけてブーストした相手は冒険者やアサシンくらいだったろ?」
「そういった敵にはお互いブーストしているため基本的な戦闘力が必要になって来たんだよ。」
「これから先このダンジョンを攻略していこうと思うったらそうゆう相手はいくらでも出現してくるであろう!」

「だったら、もうそのことはわかったんだから注意して進んでいったら良いんじゃないのか?」

「マードックお前の気持ちもわかるがよくわかるがあきらめろ。」

「なんでだよ!」

「いいか、マードック!あのファイヤーデーモンあんなに強い魔物だが魔界の生物では下級デーモンだぞ。」

「なっ!」

「あれはファイヤーデーモンと名称はあるがレッサーデーモンだ。」

 ケンジのセリフを聞いてマードックはもちろんだがマイやシスティナも開いた口が塞がらなかったのである。

「たぶん、この先潜っても・・・あの程度のデーモンでプリムは死にかけたんだ!これ以上潜ってもお前達は勝てる事はできないし自殺行為なんだ。」

 プリムは自分が死にかけた事でこの話し合いには無言であった。プリム自身も死にかけた汚名返上の為この先に進みたかったのであるだが、その為自分の意見を言っても説得力が全くない事がわかっていたからである。

「この先ケンちゃんは絶対無理だと言いたいの?」

「ああ、50階層と言ったらまだ半分だ。俺はお前達で楽勝で攻略できると思っていたが実際は半分で頭打ちになってしまった。」

「でも!」

「ここが90階層なら俺も先に進む事が出来るかもしれないが50階層だぞ。この先多分もっと強力な魔物が出て来るのは絶対だ!そんななか先に進む選択は絶対できない。これはパーティーリーダーとしての判断だ!」

「「「「・・・・・」」」」

 前衛の4人は本当に悔しそうで下を向いたままで拳を握りしめ何も言わなかった。ケンジの言っていることは当然の選択であの強かったデーモンもケンジがいなかったら全滅をしていたことがわかるからだ。

 そして、悔しかったのは前衛の4人だけではなく後衛のメンバーも同じだったのである。自分達もまた前衛のサポートをしきれなくて結局はケンジにおんぶに抱っこだったからである。
 自分達はケンジの護衛だと言うのに装備は作ってもらい日々の生活もしてもらいそれなのにまだ主の足を引っ張ってしまったのが悔しくてしょうがなかったのである。

 自分達がもっと強くなりケンジの役に立てればこんな判断をさせなくてもすむのである。これも自分達がまだ弱くケンジに頼っているからなのであるとおもいギル達もまた反論することなく下を向いていたのだった。

「みんないいか落ち込んでいるかもしれないがそんなに気にするな。」

「なんでだよ!俺達はまた主の足を引っ張ったんだぞ!こ・・・・こんなことを俺は・・・・まだ・・・・」

「マードック。お前達みんなの気持ちはちゃんとわかっているから。だけどな、これは負けじゃないんだぞ。」

「なんでだよ!こんな敗退して撤退は負けじゃねえか・・・」

「マードック、ダンジョンは死んでさえしていなければ負けじゃないんだ!」

「はっ?」

 ケンジのセリフにマードックは変な声を発してしまうのだった。

「何でですか?攻略を諦めたのに・・・わたしが死にかけたせいで撤退に・・・」

「プリムそこは気にするな!これからそれを経験にして強くなればいいんだよ。それに聞くがここで撤退して何か不都合な事はあるのか?」

「「「「「「「え?」」」」」」」

 ケンジ以外の人間が声を出したのだった。それは当然のことである。自分達はダンジョンを攻略しに来たのにこれ以上は無理だから撤退しようと言っているのにケンジは何か不都合はあるのかと尋ねてきているからである。

「ケンちゃん何言っているのよ。これ以上無理だから・・・」

「だから、ここで撤退してなんか不都合があるのか?マイ、お前は依頼の素材はとれなかったのか?」

「それはもうとっくに入手したわよ。」

「俺は今回依頼を受けたわけじゃないんだぞ。違約金が発生するわけじゃないし、お前達はここで撤退したとしてもこれまでの魔物の経験値があり得ない位入手しているはずだろ?」

「それはそうですが・・・・」

「本来の目的はこのダンジョンを攻略する事だったじゃありませんか。」

「じゃあ、お前達はこのままダンジョンの奥に突き進めと?」

「そうはいっていません。先ほど主が気にするなと言っていたからそれにこれは負けじゃないと・・・」

「いいか?これは負けじゃないよ。何回も言ってやる!これは負けじゃなく勇気ある撤退だよ。ここで死んでなければ何回も挑戦できるんだぞ?それに今回はどれだけ儲けたと思っているんだ。お前達の経験にもなったし、マイだってその素材を売ればどんだけ儲けれる?」

「それはとんでもない金額になるよ。」

「私達もレベルは上がり3次職に近づいたと思います。」

「だったらこのハウスは?この転移マットは?ここで無理をして全滅になる方が負けと思わないか?」

「「「「それは・・・・」」」」

「でも、攻略もせず帰ったら町のギルドや冒険者達が何を言ってくるか・・・」

「そんなの言わせとけばいいんだよ。もしうるさい事を言ってくるようならそいつらを超級ダンジョンまで引きずってやればいいんだよ。」
「いいか?俺はお前達にさっきは弱いと言ったがこのダンジョンを攻略するにはという意味でだ。地上に戻ったらお前達に敵うやつはいないと自覚するんだ。」
「そしてまた力をつけてみんなで攻略すればいいんだよ。いいな!」

「「「「「「はい!」」」」」」

「マイもわかったな?」

「うん・・・でもあたし悔しいよ。まだ半分しか攻略できなくて撤退だなんて・・・」

 マイはケンジの腕の中で肩を震わせながら涙を流したのだった。そして、みんな落ち着き2時間ハウスでゆっくりしたあと、中ボスの部屋に浮かび上がっている魔法陣で地上へと転移したのであった。




 するとそこに地上で守っている衛兵がケンジの姿に驚いていたのだった。

「ケンジ殿!よく無事でおもどりになられました!」

 兵士はケンジとその仲間の姿が無事であることを確認して笑顔になったのである。

「心配かけて申し訳ありません。」

「いえいえ、ケンジ殿を心配するのは当然でございます。スタンピードから我々を救ってくれたのですから。」

「ありがとうございます。」

 ケンジは兵士の言葉に頭を下げたのだった。そして兵士は中の様子をケンジに聞こうとしたところ団長もその場に跳んできたのだった。

「ケンジ殿無事で良かった!無茶をするのかと思っていて心配でしたぞ。でも1か月半で戻って来たと言う事はやっぱりケンジ殿でも無理でしたか?」

「団長さんお久しぶりです。ああ、俺の目算が間違っていたよ。今のままでは50階層の半分が精一杯だ。」

「「「はぁああああ?」」」

 団長たちはケンジのセリフに大声を出したのだった。団長が驚くのも無理はなかった。この間10階層の中ボスを攻略したのでてっきり20階層の中ボスをギリギリ攻略をして危ないと思い帰って来たんだと思っていたのだ。

「なんだと?今50階層と言ったのか?20階層ではなくてか?」

「ああ・・・攻略できると思っていたがもっとレベルを上げてまた挑戦する事にするよ。」

「ちょっと待て!本当に50階層の中ボスを攻略したのか?」

「ああ!嘘は言わないよ。50階層の中ボスは魔界の生物で悪魔族のファイヤーデーモンだったんだよ。」

 団長たちはその悪魔族というのもファイヤーデーモンとか言われてもなにがなにやら全然理解できず放心してしまったのである。

「ちょっと待て・・・悪魔族とか魔界の生物とはいったいなんなのだ?そんなの御伽話の事じゃないのか?」

「まあ、今まではそう思われていたことかもしれませんが実際俺達は50階層で戦ってきましたよ。これが証拠になるかわかりませんが見てくれてもかまいませんよ。」

 そういってケンジはバックの中からファイヤーデーモンの素材をだして団長に差し出したのだった。その素材はデーモンの角、牙、爪、翼、魔石で団長でさえ見たことのない素材でそれを見せられたことで信じるしかなかったのである。特に魔石は炎と闇と邪の属性が入り混じった見たことのない魔石で嫌な感じが見てとれるのだった。

 そんな事ってあり得るのか?という雰囲気で団長は息をのむのだった。もしその魔物達が今回の様に地上に這い出てくるような事があったらどうなってしまうのか?団長は頭が痛くなってしまうのである。

「団長さんとりあえず俺達は帰ってもいいかな?」

「あ、ああ・・・ケンジ殿情報提供感謝する・・・」

 団長はそう言ってふらふらしながら兵舎の方へと戻っていってしまったのである。



 ケンジは久しぶりに家でゆっくりできると思いニコニコ顔で帰る支度をしていたのだった。

「どうしたハヤテ?帰りたくないのか?」

「ぶるるるる・・・・」

 するとツバキが通訳をしてくれるのだった。

「ハヤテは最後の敵に役に立てなかったことが悲しいと言って言っているみたいですね・・・ご主人様それはわたくしもです・・・本当にすいませんでした。」

 ツバキとハヤテは今まで謝る機会を逃していてやっとケンジに謝ることが出来たようだった。

「なんだ、お前達まで俺は言っただろ。気にすることじゃないと!」

「ですが・・・・」
「ぶるるるる・・・・」

「まあそう言うならお前達もこれから頑張れってレベルを上げたらいいんだよ。ダンジョンは逃げないしいつでもここにあるんだから。」

「はい・・・・」
「ぶるるるる」

 ケンジはそう言ってハヤテに確認を取って馬車を繋げたのだった。そして、ケンジ達はテンペの町へと帰っていったのだった。


*-----*-----*-----*-----*


 初めてケンジが目標を達成できずに撤退する話でした。
だけど、この撤退はケンジ自身まだまだ成長しなければいけないと
思う事でもっと凄い物を発明をする。
 そしてギル達はもっと成長し3次職になる。マイもまた
この悔しさをばねにして強くなるのである。

 いつもこの小説を読みに来てくれてありがとうございます。
これからもどうぞよろしくおねがいします<m(__)m>

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依
ファンタジー
主人公である小野田博俊(おのだひろとし)は女神ミーレヌのせいで死んでしまい、 異世界であるミストラルに転移してもらう。  そこには研磨という職業は無く、博俊は研磨でお店を開き、魔法と掛け合わせて 楽しく儲けて生活する物語。  研磨で新しい効果を生み出し、時には笑い時には悲しみありの長編小説。に、 したいとおもいます(*^-^*)

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...