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第6章 ケンジの新しい生産力!

36話 ガーライの町へ①

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「ケンちゃんこの馬車なに?こんなスピード出ているのに全然揺れないんだけど!」

「ホント・・・ご主人様!お尻が全然痛くありません!」

 結局ケンジ達は賊が家に侵入してから3日後にガーライの町に向かうのだった。ケンジはハヤテの足の速さと馬力をアテにしてたのだが、よく考えたら馬車の方が木造のままだということを思い出し急遽2日使って馬車を製作したのだった。
 ケンジの知っている限りの知識を使い、車輪の部分は折れにくくするためアダマンタイトで作り、この世界ではまだないベアリングで製作することでスムーズに車輪が回り軽い物が出来た。そして粘り強くするためミスリルでバネを作りサスペンションを取り入れガタガタ道でも衝撃吸収し揺れない馬車を作ったのだった。馬車の中にはソファーを装備しさらにお尻が痛くなくなったのである。
 馬車の台座を木造ではなく金属で作ることによりハヤテの馬力でひっぱってもそう簡単に壊れる事がなくなったのである。

 テンペの町を出るとき町中の人たちがハヤテと鉄の馬車を見て驚くのだった。物凄い重そうな馬車をハヤテが引っ張り普通の馬車を悠然と追い抜く姿はかっこよかったのである。
 そして街中ではスピードを出すと危ないので出せなかったが城門を抜け街道に出たらハヤテはものすごいスピードで走るのだった。先に行く馬車を次々に追い抜き颯爽と走り去っていくケンジの馬車を驚き口を開けたまま呆然とする馭者とそれを護衛する冒険者の姿があった。

「な・・・なんだよあの馬車のスピード・・・」
「あんなの初めて見たぜ!」
「でもあんなスピードなら俺達みたいな護衛はいらないよな・・・」
「ああ・・・盗賊も待ち伏せようがないもんな・・・・」

「ワシの馬車もあれなら盗賊に悩まされる事がないかもしれんなあ・・・」

「そんな事なったら俺達の仕事がなくなるから勘弁してくれよな・・・」

 追い抜かれた馬車の一行はそんなことを口々に噂をしていたのだった。




「ケンちゃん。これって地球での車に乗っているみたいだよ。」

「マイさん車って何ですか?」

「ギル達には信じられないかもしれないけどものすごいスピードが出る馬車だと思ってくれたらいいよ。」

「物凄いスピードってどのぐらいなんだ?」

「マードックは王国の首都がどこにあるか知っているよね。」

「ああ!ここから東に200kmぐらいか?」

 マードックが言った距離はテンペの町は琵琶湖の下辺りにあり、そこから静岡の富士山の辺りをさしていたのだった。この世界では普通その距離を馬車で魔物や盗賊を討伐しながらだとゆうに2か月はかかる距離なのである。

「その車を使うとね。大体5時間もあれば着くようなスピードが出る乗り物だよ。」

 マイの言葉を聞いたマードック達は口をあけっぱなしになり固まってしまうのだった。

「ああ、そうだな!俺達のいた世界には魔物も盗賊もいなかったし平和だからな。道もこんなガタガタじゃなかったしな。」

 ケンジとマイは笑いながら説明をしたのだった。

「マイ。車みたいと言うが車輪やサスペンションは車と同じ技術を使っているから車みたいなものだよ。だけどこれもハヤテが居て作れたみたいなものだよ。」

 それを聞いたハヤテは馬車を引きながらひひ~~~~んと勇ましく一鳴きしたのだった。

「でも今回は時間が無かったからこんな馬車しか作れなかったんだよ。」

「「「「はあぁ?」」」」」

 ケンジの言葉にマイたちは変な声をあげるのだった。こんな最新式の馬車で全然揺れない馬車をこんな馬車だとケンジは言うのだった。

「ケンちゃん何を言っているのよ・・・もしこの馬車を引くことが出来る馬がいたら行商人はもちろん貴族達から引く手あまたでヒット商品になるよ。」

「だけどよく考えてみろよ・・・これは地球での技術しか使っていないんだぞ。この世界の魔法技術は素材の金属だけだ。」

「それはそうかもしれないけど・・・でも、この馬車は本当に凄い物なんだよ。」

「マイ、よくきいてくれよ。俺が時々宙に浮くことが出来る魔法を使う事があるだろ?」

「うん。あるね・・・」

「もしその魔法技術をこの馬車の台座に魔道具として使ったらどうなるとおもう?」

「どうなるっていわれても・・・」

「それを台座に使うと馬車が宙に浮くことになり、解りやすく言えばあのリニアモーターカーが馬車で再現できることになるんだぞ。」

「あ・・・・ああああ~~~~!」

「そうなるとこの馬車の揺れが全くなくなることになるんだ。」

「主!そんなことが可能なのか?」

「そりゃすぐには無理だよ・・・だけど可能性はあるだろ?」

「でも馬車が浮くってそんなの考えられないよ。」

「じゃあ人間は翼もないのに浮き上がるのは普通なのか?」

「主!それは魔法で浮き上がる事なんだから普通じゃないのか?」

「だったら魔法技術で馬車が浮いてもおかしくないじゃないか。浮くことで地面と車輪の抵抗が無くなり揺れる事がなくなり快適な馬車が出来上がるんだぞ。」

 ケンジの説明にみんな唖然としてしまっていた。





「ところでご主人様さっき言った、リ・・・ニア・・・何とかって何ですか?」

「ああ、簡単に言えば馬車って多くても1パーティー10人ぐらいを運ぶ乗り物だろ?」

「ええ。そうですね。」

「リニアモーターカーってのは何百人という人数を運ぶ乗り物で時速300kで走る乗り物だよ。」

「なんですか!その乗り物は!ご主人様と話していると頭が変になりそうなんですが・・・」

「まあ、この世界は魔法文明だけど俺の元居た世界は魔法じゃなくて科学文明だったから理解しようにも難しいだろうな。だけど俺はこの世界の魔法の方が魅力的に映っているんだよな。」

「ケンちゃんのその気持ちわかる!」

「だろ!」

 ケンジとマイの話を聞いてギル達はこの世界よりよっぽどケンジの元居た世界の方が凄くて魅力的だろうと思うのだった。






 そしてガーライの町まで4日かかる道のりをハヤテはわずか8時間で駆け抜けてしまったのだった。

「ご主人様!ガーライの町が見えてきましたよ。」

 馭者をしていたプリムが馬車の中にいるケンジに言ったがギル達が変な声を上げたのだった。

「「「「はあ?」」」」「そんな早く着くわけないだろ?」

 ギル達は馬車の中で困惑していたのだった3.4日かかる道のりを8時間程度でつけるはずがないと思っていたのだった。これは地球の日本でもあった話なのだが、当時旅は東海道を歩きでしていた時代から始めて蒸気機関車にのった客が歩いて2.3日の距離を蒸気機関車で半日で着いたことによりお客は車掌のアナウンスを信じなくて横浜までこんな早くつくわけがないと思い降車拒否した逸話があるのだった。
 それと同じようにギル達もこんなに早くつくわけがないと思っていたのだった。

「ギル!ホントだってば!あれガーライの町の城壁だよ!」

 ギル達は馬車の窓から顔を出すと本当に道の向こうの方に城壁がみえるのだった。町に近づいてきたのか人通りもちらほら見えてきて追い抜いた馬車から叫び声がちらほら聞こえてきているのである。

 それもそのはずで鋼鉄の馬車があり得ないスピードで自分の馬車を追い抜いていくのである。だが叫び声の原因は他にあったのである。そう、ツバキの存在だ。ツバキは馬車に乗ることが出来ず馬車の天井部分に乗っていたのだった。
 当然他から見るとアラクネが馬車の天井にへばりつき中に入ろうとしているが入れずにいて襲われている馬車がものすごい勢いで逃げているようにしか見えないのである。

 そんなことも気にせずケンジはガーライの町まで気にせずに走れと指示を出したのだった。ハヤテもツバキも魔物だがもう従魔のしるしをつけているので城門で説明すればいいだけなのである。





 そしてケンジ達はガーライの町の城門に到着し町に入る行列の最後尾に並ぶのだった。すると案の定ハヤテとツバキを見た町に入ろうとしている人達が大声を上げるのだった。

「きゃああ!魔物ぉ~~~~!」
「た、たすけてくれ!」

 辺り一帯パニックを起こした人たちで騒然となった。その騒ぎで城門の衛兵たちが飛び出してきて人々を守るかんじとなったのだ。
 だがその魔物たちは大人しく行列にマナーを守り並んでいただけなのだ。衛兵の一人が恐る恐るケンジの馬車に近づき馭者のプリムに話しかけるのだった。

「おい!あんた!これはいったいどうゆうことなんだ?」

「どうゆう事と言われても従魔ですよ。大人しいでしょ?何も問題はないかと・・・」

 従魔と聞いてその兵士はツバキとハヤテの首元に従魔のしるしが本当あるとおもい城門の仲間たちに報せに行ったのだった。ケンジは馬車の窓から顔を出し城門までの行列が無くなってしまったのを見てゆっくり城門に近づくのだった。

「ちょっと待ってくれ!」と兵士が叫ぶのだった。

 ケンジは馬車から降りてツバキを連れてゆっくり近づくのだった。

「あのちょっといいですか?この通りツバキは大人しくしているし従魔の印もしているでしょ?」

「ちょっと待ってくれ!今団長を呼びに行っているんだ指示を仰ぐことにするから悪いがそのままで頼む。」

 衛兵からしたらS級の魔物の存在が従魔になることがあるのかそれにこのまま従魔のしるしがあるだけで町に入れてもいいものなのか、判断が出来なかったのである。
 するとこの町の団長らしきものが城門にやってきたのだった。団長もまたツバキとハヤテの姿を見て固まってしまうのだった。

「そ、それはアラクネなのか?そっちの馬はバトルウォーホースの上位異種のようだが・・・」

「ええ、お、いえ、私はテンペの町から来たケンジと言います。この魔物たちはとても賢くて大人しいので大丈夫ですよ。」

 団長はケンジの身分証明を確認する為近づくことにした。ケンジの身分証明は確認できたがすぐそばでツバキが自分の従魔証明を見せ挨拶をするのだった。

「驚かせて申し訳ありません。ツバキと申します!わたしもハヤテもご主人様の迷惑を掛けることはしないのでどうぞ町に入れてください。」

 魔物がこんな丁寧にあいさつをして人間と関わりを持てていることに団長は驚くのだった。その頭の良さにこの魔物はもう魔物ではなく獣人やリザードマンの上位種と同等の存在だと判断を下したのだった。
 そして団長はツバキ達は従魔のしるしも持っていることだし危険は無いと判断して町の中に入ることを許可したのだった。

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