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第6章 ケンジの新しい生産力!

27話 新たな仲間⑥

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 ケンジ達はテンペの町までのんびり帰ることにしたのだった。理由はツバキとハヤテがダンジョンから出るのは初めての経験でテンションが上がっていたからだった。

「ハヤテ!テンション上がるのはわかるがもっとゆっくり走るんだ!」

「ひひ~~~~~ん!」

 ケンジがなぜハヤテにそんな事を言ったかというとハヤテの馬力があり過ぎて木造の馬車では壊れてしまいそうだったからである。
 ケンジはダンジョンの簡易村から出るときハヤテにお願いして馬車を引いてもらう事にしていたのでハヤテにお願いしていたのだった。ハヤテもまたケンジの役に立てると思ったらしく快く引き受けてくれたのだった。

 テンペの町と超級ダンジョンの距離は馬車で半日の距離だったがハヤテの馬力と早さなら1時間ちょっとでいけると思い、ケンジはこの事からも家に帰ったらもっと頑丈で丈夫なミスリルを使って馬車を作ろうと思ったのだった。

 台座の車輪部分やシャフト、サスペンスを作ることが出来たら充分にハヤテの馬力にも耐えられるだろうと思ったのだった。車輪部分のタイヤは一華の外皮で使ったスライムの素材、スライムゼリーでゴムの代用が出来ると思っていたのだった。
 この鉄の馬車は多分普通の馬では重すぎて馬を何匹も使わないと動かせないがハヤテなら軽々と引くことが出来ると思うのでハヤテが居て初めて鉄の馬車が作れるのだ。

 そして馬車の後方からはツバキがシャカシャカ走ってついてくるのである。多分はたから見ると魔物に襲われているように見えるのだが、ツバキからしたらしんがりをしっかり務めているのである。
 旅の途中この光景を見ていた盗賊たちは、この辺りにはこんな物騒な見ただけでも動けなくなる魔物が跋扈(ばっこ)している危険な地域だと誤解し盗賊たちが一時テンペの町周辺からいなくなったのだった。





 そしてここ、テンペの町では町に入る為に行列ができていたのだが一番後ろに並ぶはずだった馬に乗った冒険者が血の気を引かせ大声を出して門番に助けを求めるのだった。

「た、たすけてくれ~~~~!早く俺達を町の中に入れてくれ!」

「なにがあったんだ?落ち着いて話せ!」

「さっき、俺達が帰ってくる途中魔物に襲われている馬車がいたんだ!」

「お前達それでその馬車を見捨てたのか?」

「見捨てるも何ももう終わりなんだよ!その襲っていた魔物は・・・」

「なんだはっきり言え!」

「アラクネだ!」

「な、なんだと・・・それは本当か?!」

「嘘でそんなこと言うかよ!その馬車はこっちに向かって走っていたからもうすぐやってくるぞ!だから早く町に入れてくれ!」

 それを聞いた列に並んでいた人たちはパニックを起こし城門に殺到したのだった。

「ワシも早く入れてくれ!」
「か、金なら多めに渡すから儂を先に!」
「きゃああああ!」
「ぼ、ぼうや!どこ?」
「うわ~~~ん!おかあさ~~~ん!」
「じゃまだ!どけ!町に入れないだろう!」

 手を放してしまった母親が子供を心配する悲鳴が聞こえたり、我先に町の中に避難しようとする人達でごった返すのだった。

 町の兵士はまさかアラクネが町に向かっている情報に半信半疑だったが情報を持ってきた冒険者の焦りようは嘘じゃないとおもえるのだった。兵士たちは行列を手際よくさばき町の中に入れ団長に報告そして門の守りを固めるのだった。

 そして、遠くの方から砂煙を立てて近づく馬車が一台テンペの町の見張り台から見えるのだった。団長や上位騎士たちが見張り台から見るとその馬車の後方には確かに蜘蛛の魔物が見えるのだった。

 その魔物の上半身には確かに女性のかたちをしていて下半身は蜘蛛の魔物であることが確認ができたのだった。

「まずいぞ!このままあの馬車を城門に入れたらアラクネも一緒に町の中に入ってしまうぞ・・・」

「では見捨てるのですか?」

 団長は選択を迫られるのだった。馬車に何人乗っているかわからないが町の人たちを犠牲にするわけにはいかないのだ。






 一方こちらはケンジ達馬車の中でゆっくりしながらテンペの町に近づいていたのだった。

「主!見てください!テンペの町ですよ。やっと帰ってきました。」

「ちょっと待て・・・なんだあの城門の雰囲気は・・・」

 ケンジ達は遠目からでもわかる感じで城門の上には兵士たちがずらっとこちらを睨んでいて下には兵士たちや冒険者達がこちらを睨んでいるのである。




 ケンジはこのまま町に向かったら反対に危ないと思い馬車を停めるのだった

「主・・・ひょっとしてまた同じような感じですか?」

「ああ・・・そのようだな・・・ダンジョンの守衛は早馬を飛ばしたんじゃないのか?」

「ケンちゃん・・・早馬は王国のほうだとおもうよ。」

「あ!なるほど・・・」





「団長!馬車が止まりました・・・」

「はっ?馬車はどうなった?アラクネに襲われたのか?」

「いえ・・・アラクネも一緒に止まっています・・・」

「ど、どういうことだ?」

「わかりません・・・こんなことって・・・」

 団長も兵士も冒険者達もいったい何が起こっているのかわからずにいたのだった。





「主・・・どうしましょうか?」

「じゃあ、スマンがマイとギルとシスティナ事情を説明して来てくれないか?俺達はここで待っているからさ・・・そしてギルは伝えたら戻ってきてくれ!」

「ケンちゃん・・・あたしが説明に行くの?」

「え?無理なのか?」

「どうやって説明するのよ・・・アラクネのような災害級の魔物をテイムしたっていっても信じてくれないよ?」

 マイの言う通りであった。ギルドをはじめ世間の常識ではテイムは頑張ってもゴブリンしかテイムを成功した実例がないのである。

 それもわなを仕掛けてやっとのことでできるのである。テイムのやり方は身動きを封じて手を魔物や動物に当てて喋りかけるのである。その間10秒。成功したら精神的につながるので失敗したか成功したかわかるのである。失敗したらもう一回しゃべるかけ、スキルを使うといいのだがその時魔物のランクによって精神を使いMPが減るのである。そして何回も失敗しMPが足りなくなると魔物は凶暴化しその魔物や動物はテイム出来なくなるのである。

「しょうがないなあ・・・じゃあ俺がちょっと行ってくるよ。みんなはここで待機していてくれ!システィナはついてきてくれ。」

「「「「はいわかりました。」」」」

 ケンジは馬車を降りツバキとハヤテに「ここでちょっと待っていてくれ」といいケンジはシスティナと一緒にテンペの町に歩きで向かったのだった。

「何者かが馬車から出てきてこっちに向かっています。」

「ちょっと、遠見メガネを貸してみろ!」

 団長は部下の兵士から望遠鏡に似た魔道具を奪いその人影にピントを合わせみてみる。そこには団長の知った顔が2名みえるのだった。

「あ、あれはケンジ殿じゃないか?」

 近づく人影に下で戦闘態勢を取っている兵士と冒険者達に緊張がはしるのである。みんなはアラクネが攻めてくると思っていたのに、その襲われている馬車から人影が下りてきて近づいてくるのだ。



 すると城壁の上から大きな声で団長が叫ぶのだった。

「あれは!ケンジだ!みんな戦闘態勢を解くんだ!」

 ケンジは兵士や冒険者たち、生産者達からは信頼を得ているのである。それもそのはずでギルドや権力者に臆することなくもっとサポートをしてやれと言ってくれたり、ケンジの店では冒険者の役に立つアイテムや武器を格安で売ってくれているので、ケンジに対して感謝の気持ちを持っているのである。
 ケンジに絡んでくる一部の人間は新しくこの町にやって来た人間かケンジが自分の思い通りにならない権力者なのである。

 遠くの方からケンジが大声で叫んできたと言うより【ウィスパニングウィンド】で城壁にいる人達全員に聞こえてきたのだった。

「ご迷惑を掛けてすいません・・・ケンジです。町を守っている団長さんはいますか?」

 ケンジはそう言いながら町に近づいてきたのだった。すると部下数名を引き連れ団長が城門の外に出てくるのだった。

「ケンジ殿!いったいどうゆことなんだ?それにあれはアラクネじゃないのか?」





 遠くの方で馬車とアラクネがこちらをじっと見ているのであった。

「ええ、今回俺はギルド依頼で超級ダンジョンに行ってたのは知っていますよね?」

「ああ、君達【Freedom】はこの町では唯一超級ダンジョンに潜れるパーティーだからな。あのダンジョンを起点にしている事はここにいる人間全てが知っていることだ。」

「それでですね。今回採掘のついでとは何なんですが魔物をテイムしにいく事も目的の一つだったんですよ。」

 団長と部下の兵士はハトが豆鉄砲をくらったような顔をしたのだった。

「「「「はっ?」」」」
「ケンジ殿・・・何を言っているのだ?」

「何をって言われても・・・・」

「ケンジ殿はあのアラクネをテイムしたと言っておるのか?」
「そ、そんなこと今まで聞いたことありません!」
「団長・・・そんな事信じるおつもりですか?」

「お前達ちょっと待て!ケンジ殿が今まで我々に嘘をついたことあったか?」

「そ、それは・・・ですがテイマーとは馬を調達するぐらいで魔物はゴブリンしか聞いたことないですよ。」

「だが、あのアラクネは馬車を襲っていないじゃないか。それはどう説明するんだ?」

「それは・・・・」

「ケンジ殿スマンがあの馬車と共に来てくれないか?」

「だ、団長!本当によろしいのですか?あれはSランクの魔物で災害級・・・なんですよ。」

「だがこのままじゃ拉致が明かんだろ・・・」

「ですが・・・」

「ケンジ殿スマンな・・・融通が利かない部下ばかりで・・・」

「いえ・・・大丈夫ですよ。俺が貴方達の立場でもそうしますから。」

「そういってくれてありがたいよ。」


 
 ケンジはもう一回馬車の方にもどって馬車と共に団長の所へと戻るのだった。ケンジ達が馬車に乗ってどんどん町に近づくと兵士たちはツバキを見て顔を真っ青にするのだった。そして団長は馬車を引いている馬の方も見て愕然としていたのだった。

「おい・・・お前達あの近づく馬車の方をみてみろ・・・」

「え?なにか?」

「あの馬も災害級の魔物じゃないのか?」

「「「「あああああ・・・・」」」」

「いったいどうなっているんだ・・・俺は夢を見ているのか?」

 団長がそう思うのも無理はなかったのだ。アラクネだけ情報を貰っていたので遠くからみていたら漆黒の馬だと思っていたのだがバトルウォーホースなのだ。それもその威圧感からしてアラクネより強い魔物だと団長の精神に突き刺さるような感覚なのである。



 そしてケンジ達が団長のいた場所にたどり着くのだった。


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