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第5章 遂に始動!

38話 Aランクパーティー③

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 ケンジは呆れた様子でギルドの決闘場に入るのだった。ケンジはなんで冒険者というのはすぐに頭に血が上り決闘を申し出るのか不思議でしょうがなかった。
 確かに面子というものが重要で冒険者はなめられたら終わりの部分も理解できるが、大抵の場合自分から喧嘩を吹っかけるのである。今回の場合も自分勝手な理由を言いそれが通らないと決闘なのである。

 自分の力を過信し相手の実力を認めないのである。そして破滅への道を自分から進んでいくのがケンジにはどうしても理解に苦しむのだった。

「ご主人様!本当にギルとわたしの3人で決闘をするのですか?」

「そうですよ。主!勝負は一瞬で着くかと・・・」

「俺は見学しておくからプリムが前衛の男3人を相手にして、ギルはインビジの指輪で姿を消し後衛の女二人をよろしく。」

「「えっ?後の一人は?」」

「あの子は別にいいよ。たぶん戦闘に参加してこないと思うから注意だけして、もしかかってきたら手加減して気絶させてくれたらいいよ。」

「後の5人はもう冒険者として活動できなくしてもいいからほどほどにやっちゃっていいよ。」

「ケンちゃんあたしは?」

「マイは俺と後方で見学だ!」

「えええ~~~あたしも戦いたいのに・・・」

「まあ、そういうな!マイまで参加したら本当に一瞬で終わってしまうからな。」

 ケンジはギルとプリムに指示を出し高みの見物をするつもりで決闘場にいるのであった。


 観覧席には多くの冒険者や生産者、手の空いているギルド職員そして噂を聞き付けたやじ馬の町の人たちで溢れ今か今かと始まるのを楽しみにしているのだった。
 そこにやっと【流星】のメンバーが決闘場に姿を現すのだった。そして決闘場に姿を現した【流星】のメンバーがケンジ達を見て大声で怒鳴ってくるのだった。

「おい!何でマイマールがお前の側にいるんだ!卑怯だぞ!」

「何を言っているんだ!マイは俺のパーティーメンバーだぞ。いても全然おかしくないだろ?」

「決闘を申し込んだときマイマールはいなかったじゃないか!」

「何言ってんだ!ギルドに申請した時にはマイはちゃんとギルドにいただろ?言いがかりは止めろ!」

 そこでギルド職員は流星のメンバーに書類を見せ黙らせるのだった。

「くっ!卑怯者め!」

「何が卑怯だ。Aランク冒険者が生産者に決闘を申し込むのは卑怯じゃないのかよ!」

 そうケンジが言うと観覧席からそうだそうだ!と賛同の声が飛び交うのだった。

「俺らから言わせたら流星の方がひきょうだぞ!」
「だがお前達も今日で終わりだぞ!」
「そうそう!俺らはそれを見てえんだ!」
「心置きなく奴隷に堕ちるとこをな!がはははははは!」

「何言ってんだ!俺達が生産者に負けるわけないだろうが!」

「そう思ってんのはお前等とこの町の新参者だけだよ!」

 観客から流星のメンバーにヤジが飛ぶのだった。それを聞いた流星のメンバーたちは一人を除き顔を真っ赤にして怒鳴っていたのだった。

「あんた何黙ってんのよ。悔しくないの?」
「いえ、この決闘を選択したわたし達の負けですよ・・・」
「なっ・・・何言ってんのよ!わたし達はAランクなのよ!なんで生産者に負けると!」
「まあ、いいわ・・・勝負が始まるとすぐにわかるから・・・」
「ちっ・・・何言ってんのよ。勝負が始まったらあんたのその回復量が少ないポーションを使ってあなたもちゃんと働いてよね。」
「それを使う余裕があったらいいけどね・・・」

 流星のパーティーにいるポーション使いの女性は勝負が始まる前から自分たちが負けることがわかっている口ぶりだったのだ。その意見が増々流星のメンバーを苛立たせるのだった。

 勝負が始まる前、審判のギルド職員が勝負方法を確認する為、決闘場全ての人に聞こえるように大声で説明しだすのだった。

「今回の決闘は【流星】VS【Freedom】!勝敗は全てのメンバーが動けなくなるか、死亡で決着!双方それでよろしいですか?」

 ケンジと流星のリーダーが黙って頷く。

 それを確認したギルド職員は説明を続ける。

「負けた方は相手に支払う条件は次の条件です。Freedomが負けた場合マイマール様が流星のリーダーの奴隷として移籍!」

「ちょっと待って!何であたしが貴方の奴隷になることになってのよ!」

「当たり前じゃないか!あれだけ誘ったのに素直に言う事を聞かない人間を普通に移籍させたら言う事を聞く保証がないからな!俺の奴隷になって一生言う事を聞いてもらう為だよ。」
 
 流星のリーダーはマイを見てヤラシイ笑みを浮かべるのだった。そしてそんな事お構いなしにギルド職員の説明は続く。

「そして、流星が負けた場合、メンバー全員がケンジ様の奴隷になる。以上でよろしいですか?」

「ちょっと待って!あたしは納得いってない!」

「ですが、マイマール様もう申請は受理されています。今はもう逃げれないように確認の場でございます。」

「マイさん!わたし絶対勝ちます。負ける事ないから安心してください。」
「そうですよ!私達が万が一も負ける事なんてないですよ。」

 ギルとプリムはマイを安心させるためニッコリ笑い不安を和らげるのだった。マイは二人の笑顔を見たら冷静になり負ける要素どこにもないと思い出すのだった。
 そして何か予想外の事が起きてもあたしとケンちゃんが参戦すれば良いだけの話であるとマイは思うのだった。

 すると、横にいたケンジがマイの頭に手を軽くポンッと優しく撫でて笑顔でマイを見ていたのだった。

「大丈夫だ。あの二人に任せていたらな。」

 すると審判が号令をかけてきた。

「双方どのような結果になっても恨みっこなし!」

「はじめ!」


 その号令と共に流星の前衛は踏み込みプリムに向かってダッシュしてきたのだった。

「いいか!相手のリーダーは生産者だ!まずはあの槍師をやるぞ!」

 流星の前衛3人はリーダーの剣士、大剣士と双剣士である。まず流星のリーダーと双剣士の二人は剣士のスキルであるスラッシュをプリムに放って遠距離攻撃を仕掛けてくるのである。
 このスラッシュとは剣士の初歩のアクティブスキルであり、ソードに魔力を乗せ一気に放つ技である。

「スラッシュ!」
「ダブルスラッシュ!」

 プリムはそれを薙ぎ払いで難なくスラッシュを打ち消すのである。

「「ば、馬鹿な!」」「俺達のスラッシュをあんな軽く!」

 その後方から大剣士の男が叫ぶ!

「パワーアターーーーク!」

 その超重量の大剣を振りかぶりプリムに振り下ろすのだった。だがその攻撃もプリムにとっては児戯にも等しい技で体を横に少しずらし回避するのである。
 後方からは流星のメンバーがデバフ魔法をプリムにかけているようだがプリムの今のレベルは80に届いており上級職のバルキリーである。
 パワースクロール120.00さえ手に入りレジェンダリーにさえなれば、いつでも3次職になれる位の強者なので弱体化魔法などレジストしてしまうのだ。

 そしてプリムの武器は槍であり敵対対象からある程度距離を保って戦うスタイルである。ソードや大剣相手には有利に戦え相性が良いのだ。

「くっ・・・剣の間合いが!」
「くっそおお!当たらねえ!卑怯だぞ!」

 プリムはある程度距離を取り、円の動きで槍が止まらないのである。後方で見ている流星のメンバーは本当に何が起こっているのか理解できないでいるのだった。これは観客や審判も同様に呆気にとられて開いた口が塞がらなかったのである。

 流星のメンバーはケンジの護衛はこの奴隷だと思っていなかったのである。マイマールが主体に護衛をして奴隷たちは万が一の時の囮に使うものと考えていたのだった。
 だが目の前の出来事は悪夢でしかなかったのである。あれだけ剣技をつかい攻めたてているのに懐に入れないのである。そればかりかこちらがスキルを使うのを判っているかのように全てかわされてしまうのである。

「スラッシュ!」「ダブルスラッシュ!」

 流星のメンバーは懐に入りもっとダメージの出る技を使いたかったがどうしても懐に入ることが出来ず、遠距離攻撃ができるスラッシュしか放つことができないのである。その間後衛メンバーはデバフや魔法攻撃をしているのだが、プリムは後ろにも目があるかのように攻撃を余裕でかわしているのである。

「ねえ。貴方達それでよくご主人様に喧嘩を売れたものね。もっと本気を出しなさい!」

「う、うるさい!」
「奴隷のくせに生意気言うな!」

「ホントにそれが精一杯なの?ならこれ以上付き合う必要はないわね。」

「何言ってやがる!逃げてばかりいやがって!」

 【流星】のリーダーは剣を振りかぶり剣を振り下ろした。

         どおおおん!

 大きな音が鳴り響き地面に剣を叩きつけ砂煙が舞い上がり視界が0になる。

 砂煙が落ち着くとそこにはプリムの姿はなく、流星のメンバー3人はあたりをキョロキョロしどこに行った!と叫ぶのであった。
 後方で見ていた流星のメンバー2人は左よ!と叫び3人に位置を教えたがもう遅かったのである。


 プリムは槍を長く持ち薙ぎ払うように振りかぶり構えを取った!

「旋風陣!」と叫び槍を振りかざすのだった。

 槍を薙ぎ払うと同時にプリムの前方に半径1mぐらいの旋風が発生し、流星のメンバー男3人を飲み込むのだった。その旋風が3人を飲み込んだ瞬間周りは暴風が吹き荒れ観客審判は目が開けれない程の暴風に包まれるのだった。

「な、なんだああ~~~~!」
「う、うわああ~~~~!」
「きゃああああ!!!」

 周りにいた人間は何とか飛ばされないように何かに捕まったり、人同士抱き合い何とか飛ばされないようにしていた。

 審判はいきなり何かに押さえつけられうつ伏せになり難を逃れたようだった。ギルがプリムの技を見て素早く審判の側に行き飛ばされないように庇ったのだった。
 だが、ギルはインビジビリティーの魔法により姿が消えていたため審判は何が起こったのか解らなかったのである。

 旋風陣に巻き込まれた3人の命運は尽きたのだった。この旋風陣に巻き込まれたら最後この旋風の中は地獄であるのだ。旋風陣の中はエアカッターの嵐で言ってみれば、かまいたちが強化し暴れまわっているのである。

 無数のエアカッターが3人を切り刻んで逃げることができないのである。エアカッターが当たるたびに3人は叫び声を上げるのだが、体が旋風のせいで宙に浮き身動きが出来ないのである。

 それにより逃げる事も出来ず旋風陣の効果時間が切れるまでずっと切り刻まれることになったのである。


 【旋風陣】
 槍師の上級職バルキリーが使えるアクティブスキル。
習得条件  薙ぎ払いを覚えかつ、風属性魔法の適性があるバルキリー
習得レベル 61レベル
備考
 槍を長く持ち薙ぎ払う事で前方に半径1mの旋風を発生させ
敵対対象を飲み込む。
 効果時間    20秒
 ダメージ   (レベル×10)を2秒ごとにダメージを受ける
 効果対象    旋風に巻き込まれたすべての対象


  ズパッ!バババッ!スパ!
「ぐあああああ!」
「ぎゃあああああ~~~やめてくれええ!」
「グハッ!があああああああ~~~~!」

 3人の叫び声は旋風によりかき消され誰にも聞こえないのである。

 後方の3人も援護射撃や回復をしたいのだがあまりの暴風に身動きが出来ずにいた。回復や援護射撃をしようにも相手の姿が全く見えないのである。自分の身を守るので精一杯で何も考えられなかったのだ。

 それからたった20秒ほどで旋風は消え去り旋風陣に巻き込まれた3人は気絶して地面にボタボタボタと音を立てて地面に倒れたのだった。

 流星のメンバーにはこの20秒足らずの時間が1時間にも2時間にも思えて暴風が収まったときはやっと終わったと思ったであろう。

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