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第5章 遂に始動!
22話 アプリコット③
しおりを挟むおやじさんの話を聞いていたアプリコットはその話の内容に驚きを隠せないでいたのだった。ケンジは町の人たちと対等に接して持ちつ持たれつの関係を築き、町の人が困っていると率先して助けFランクの仕事内容以外にも一緒に来ていた奴隷たちを使い町の人達を助けていたのだった。
そのかわりにケンジは町の人たちと友好な関係を築き奴隷たちの顔と名前を覚えてもらい奴隷だけでも町で活動
してもらえるようにしていたのだった。
アプリコットはここにきてケンジの言った対等の関係という言葉の意味を知ったのだった。
(ならなぜ今更ギルドに顔を出して話があると言ったのかしら・・・)
「嬢ちゃんどうしたんだ?急に考え込んで・・・」
「いえ・・・おじさんちょっと考えこんじゃっただけよ。肉串ありがとう!わたし寄る所を思い出したからいくわね。」
「お!少し元気が出てきたみたいだな。」
アプリコットは久しぶりに人と血の通った会話をして何か大事な事を思い出した感じだった。
「おじさんのおかげです。ありがとね!」
「ああ!役に立ったなら俺も少しは恩返しできたようで良かったよ。」
「え?」
「いや、こっちのはなしだ。寄る所があるんだろ!早く言って上げな!」
「あ・・・はい。ありがとうございました。」
アプリコットは変な事言うおじさんだなと思い、丁寧にお礼を言いケンジの家に向かうのだった。
アプリコットがケンジの家に着いたときには陽がとっぷり落ちて辺りは街灯の明かりしかなく真っ暗になっていたのである。
「すいませ~ん!夜分遅くに失礼します・・・」
アプリコットは御店は閉まっているし店の横をすり抜け屋敷と店舗の間の敷地内に入ってきていた。この世界には門の所に呼び鈴など無いので夜に人を訪ねることなどめったにないのである。
アプリコットは昼間ケンジの話が気になってこの時間なのに家に来てしまっていたのだった。
するといきなりアプリコットの後ろから男がアプリコットの口をふさぎ喉元に短剣をあててきたのだった。
「こんな夜に何者だ!このまま帰るなら見逃してやるが抵抗するなら・・・」
アプリコットはいったい何が起こっているのかわからなかった。まさか人の家に来て喉元に短剣を当てられると思ってもいなかったのである。アプリコットはとっさに両手を上げて抵抗の意思が無いことをアピールした。
するとその男は顔を覗き込みアプリコットの顔を見たのだった。するとその男はいきなりパッと剣を外し謝罪してきたのだった。
「すいません!アプリコット様とは知らず不審者が入って来たとばかり・・・」
その男はアプリコットも顔を見たことがありケンジの後ろをよく護衛をしているギルと言う名前の男奴隷だと認識する。
「びっくりするじゃないですか!」
「ですが何であんな忍び足で敷地内に入ってくるのですか!泥棒だと思うじゃないですか!」
「あ・・・そうか・・・夜だからおもわず・・・」
「ったく・・・主に用があるのですね。こちらへどうぞ!」
アプリコットは客室に通されケンジは今お風呂に入っているから少し待っていてほしいと言われるのだった。セバスから紅茶を出され、セバスは同じ部屋にずっと居続けるのだった。
「あの今日はこんな夜に何の御用でしょうか?」
「昼間ケンジ様がギルドに顔を出した理由が気になり話を聞きにきました。」
「ほう!ご主人様がギルドにわざわざあなたにお会いに行かれたのですか?」
「はい!わたしに話があると・・・その時は追い返しちゃったのでそのあと色々ありケンジ様の言ってたことが気になりこんな夜ですが訪問させていただきました。」
「なるほど・・・その話の内容は私も少しご主人様からお聞きしていますが、アプリコット様にはつらい選択になりますが本当によろしいのですか?」
「つらい選択・・・」
「ですが間違った選択をしなければ、アプリコット様は今の状況から逃げ出すことができるでしょう。」
「それってどうゆう事?」
「詳しくはご主人様からお聞きになると納得できるでしょう。」
その後セバスはアプリコットと他愛もない会話をしてアプリコットの気を紛らわせるのだった。
すると1時間ぐらいアプリコットとセバスと話していたら客室の扉が開きケンジが笑顔で入ってきて、そのあとにユエティーとウランも入室してくるのだった。
「お待たせしてしまってすいません。やっぱりきてくれましたね。」
ケンジはアプリコットの対面のソファーに腰を掛けユエティーとウランはケンジの後ろにたったのである。
「昼間は追い返してしまい本当にすいませんでした。」
「いや、俺は気にしてないから謝罪はいいよ。俺もギルドには同じことをしているわけだしね。」
「それで昼間ケンジ様が言っていた話が気になり夜に来てしまいました。」
「ふむ、それで何で心変わりしたかまず聞きたいんですがいいですか?」
アプリコットは変な事を聞くなと思ったが、ケンジがギルドから出て行ってから自分もギルドでの境遇がいたたまれなくなって飛び出してしまったことから順にケンジに話し始めたのだった。
全部話し終わった後ケンジは目をつむりこう話し始めるのだった。
「これからする話はたぶんアプリコットさんにとって耐えがたい選択になると思うが聞く覚悟はありますか?」
「耐えがたいとは?」
「その勇気がないならこのまま帰った方がよろしいかと・・・」
アプリコットはケンジの瞳を見つめ、自分を憐れみ悲しそうな目をみたのだった。
(耐えがたい選択ってなによ!)
(二日後には私は奴隷に堕ちてしまうのにこれ以上わたしに耐えがたいって
何を言うつもりなの?)
アプリコットはケンジの言う勇気がなかなか出ないのだった。だがケンジはその間アプリコットの瞳をじっと見つめていたのだった。
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