10 / 11
おはようござい死ね篇
#10 ぶっ潰す
しおりを挟む
ギィ、と音を立てて重たい扉が開けられる。
謎の引力が部屋の中へと俺達を誘う。逃げる事は叶わない、という事か。上等だ。
俺は詠唱を呟きながら構えを取る。ムホン達も同様に戦闘に備える。
部屋は石レンガで出来た円形の大広間。だだっ広い空間には、魔法の詠唱だけが響き渡る。今にも消えてしまいそうな声量の詠唱達が大きく聞こえる事が、この場の静寂さを表している。
部屋中央、突如として如何にも魔法陣といった印象の紋様が床に浮かび上がる。
魔法陣から溢れ出した無数のポリゴンが渦を巻き、その巨体を形創って行く。
やがてその禍々しい姿は、五体の強紫蛙と共に完全に形成され尽した。
「グゴルァォォォォオッッッ!!!」
「ゲコォ!」
「ゲッグゲゲック……!」
「ゲロゴォッ」
「コゴロロロゲォ」
「『ピョンピョンピョン』」
「『御先真暗』」
「『ピョンピョピョン』」
「『ピョンピョン』」
「『ピョンピョピョン』」
蛙の雄叫びを上げた瞬間、蛙達の毒弾と俺達の魔法がぶつかり合う。
俺は【隠密】で取り巻きの一体に近づき、背後から猛攻を加える。
───〔スライド〕
───〔ツイン・スライド〕
「グゲェ!」
三連撃を打ち込んだ取り巻きは背中から紫の液を垂れ流し、その場に大きく崩れ落ちる。
な、体力バーが、点滅してる?
! コイツ、普通の強紫蛙じゃない……血が毒だ!
「お前ら! コイツらの血に触らないように避けろ! 毒だ!」
兎達はヒットアンドアウェイを繰り返す。毒血を浴びないよう慎重な頭突きや魔法発射が求められ、普通の戦闘よりも精神を削られる。
その時だった。ボス蛙の舌がしなる鞭のようにイチノゴを襲う。
咄嗟にイチノサンとイチノロクが駆け出しボス蛙に体当たりを仕掛ける。その巨体に頭突きを当てる事は容易だったが、問題はその後だった。
ボス蛙の身体のイボが破けると同時に、大量の毒液が辺りに撒き散らされた。
突然の出来事に反応出来る訳も無く、サンとロクは真面に毒を被ってしまう。
「チィッ! ムホン、解毒を!」
「『ピョピョン』!」
呪文を唱えるムホンに迫る強紫蛙を【短剣術】で応戦する。
───〔スピン・スライド〕
俺の身体は回転しながら地面に垂直に空に弧を描き、そのまま強紫蛙の頭部から背中にかけてを抉る。
クソ、倒せたは良いが血を浴びてしまった! 【毒耐性】のレベルも高いしヒーラーを潰されるよりかはマシだが…………面倒なヤツらだよ本当!
誰だよ、ここは初心者の狩場近いからダンジョンとしてレベル低そうとか言った奴は!俺だよクソッタレ!
兎も角、ムホンの魔法が間に合って無いのが一番の難点だ。
それにまだ不味い事がある。ヤツらの弱点である【水魔法】を使えるイチノヨン、【支援魔法】のイチノシチをさっきからやたらしつこく狙っている気がする。一々面倒臭い相手だ。
何か、何か打開策は無いか? きっと手段はあるはずだ。考えろ、考えろ。
「ヨン、なるべく広く『水波動』、ロクは地面に『強電撃』、俺とニは足止め、それ以外は……イチ以外攻撃!」
イチノヨンの魔法が蛙共の頭上で弾ける。蛙共は降り注ぐ水滴が当たると、まるでそれが猛毒かのように激しくのたうち回り逃げようとした。逃がすかよ、大人しくしてろ。
闇の手引き、暗に堕つ視線、我バンブーなり。我が真名の下に闇の力を奮い給へ。堕とせ、陰れ──
───『御先真暗』
「『ピョンピョン』」
黒い霧と触腕が蛙達を絡め、逃走を阻害する。そこに追い討ちをかけるべく電流が流される。『水波動』の所為でずぶ濡れになった蛙達に、激痛と痺れが襲いかかる。
二体の取り巻きは口から煙を吐いて息絶える。こんがり上手に焼けましたってね。
肝心のボスだが、当然のように生きている。仕留め切れなかった。だが、狙いはそこでは無い。
ボスのイボはその殆どがことごとく潰れている。今の『強電撃』で破けたのだろう。
くっくっくっ、しかもヤッコさん、アンタ今動けねぇでしょう。そりゃそうさ、だって感電しちまったんだモンなァ!
動けねぇ上に武器も無くすとは惨めな姿じゃねぇかデカガマさんよォ。
ひゃひゃっ、ここまで上手くいくたァ思わなかったぜ。随分手こずらせてくれたじゃねぇか…………行けェ野郎共ォ!あのウスノロをぶちのめせッ!
俺と兎達が一斉にけしかけようとした、その時だった。
「GEROGYUEAAAAAA!!!!」
「!?」
ボスは雄叫びを上げて舌を大袈裟に振り上げ、油断していた俺の腹にめり込ませる。
「ゴバッ、?!」
壁にめり込んだ体を動かしながら考える。これ結構骨行ってんね……
なんだ、何故動ける? そんな事を考える暇に、舌捌きは激化する。
くっ、何故だ!俺の計画は完璧だったはず。クソッタレがァ!やっぱAWLOはクソゲーだ!滅ぼさねばァ!
まずはあのクソガエルを、クソガエルを殺さねば!
俺は目をギラつかせながらクソガエルを睨みつける。まずは兎達をけしかけようそうしよう。幸いクソの攻撃は当たって…………ない?なんで?Why?
俺は油断してた。それは兎達も一緒だ。あの暴走は完全に不意を突かれた。なのに俺だけしか被弾していないとはあまりにも不自然では無いか?
俺は壁に磔になったままボス部屋を俯瞰する。兎達は激化する攻撃に処理が追い付かずギリギリの避けで精一杯だ。何故当たらない?
俺は思考を巡らせて行く。パズルのピースがはまるような、そんな感覚がある、確信を持った。
忘れていた。これはゲームでコイツはボス。なら当然あるに決まってるよな。見落としていた、失態だ。
一定の体力を下回った時にある暴走状態……!
コイツの動きは前にも増して素早いものになっている。恐らく攻撃力も。これは俺が舌で殴られた時からくる感覚的な物だが、多分おおよそ当たってる。クソガエルは強くなっている。
なら何故攻撃が不意打ち以外に当たらないのか。それはクソガエルは今、理性を欠いた状態に居るから。
これらの状況証拠から導き出される可能性はただ一つ。ボスの暴走ギミックだ。
ソクソめ、やけに色んな情報公開してると思ったら、ボスのバーサクに油断させる為のカマとはな。やられたよ。認めよう、そして叩き潰そう糞運営!
俺はパラパラと落ちる壁の欠片に見送られ、全力【疾走】する。勿論【隠密】も忘れずに。奴は兎達を捉える事に集中して、吹き飛んだ俺の事なんざ眼中に無い!
俺はクソガエルの背後に忍び寄り、跳躍して背中を抉る勢いでナイフを振り下ろす。
───〔パワー・スライド〕!
ガキン、と甲高い金属音が響く
「は?」
全く刃が通らなかった。一ミリもダメージを与えられなかった。防御力も上がってやがる! クソが!
「ッ!」
俺は慌てて舌の横薙ぎをしゃがんで躱す。クソ、悠長には考えさせねぇってか?
俺は大きく舌打ちをする。魔法を発動する暇を与えない、かと言って物理攻撃は通らない。強過ぎるだろクソガエルッ!
考えろ、考えるんだ俺。いくらバフってるからって不死身じゃない。弱点はきっとあるはずなんだ。
水魔法で弱点を突くか? ダメだ、詠唱する暇が無い!
関節を狙うか? ダメだ、そもそも刃が刺さらない!
目なら柔らかいんじゃ? ダメだ、的が小さ過ぎてこの猛攻の中では真面に狙えない!
「!!」
ベロンと伸ばした舌が俺目掛けて素早く真っ直ぐ突き進む。背中を撫でられた事が気に障ったのか、槍のような刺突で俺の身体を穿かんと迫る。
それもしつこくしつこく!全くしつけぇんだよクソガエルッ! ウザったくて仕方無ぇんだよクソがッ!!
アホみてぇに口開けて毒吐いたり舌伸ばしたり忙しいヤツだよクソッタレ!!!
「何か、策は……」
クソ、クソクソクソ! 考えが纏まらねぇ、休んでる時間が無ぇ! あのクソガエルが口さえ閉じ、れ、ば…………
……あるじゃねぇか! 体かってぇ敵を倒すド定番!
俺は打倒クソガエルの為、息を大きく吸って肺を膨らませる。
「スキル──」
コイツは今、暴走状態で理性がぶっ飛んでる。攻撃は速いが動きは単調そのもので作戦もクソも無い。そんでコイツは怒ると……
「──【挑発】!!!」
「GYURUAAAAAAAAA!!!!!!!!」
舌真っ直ぐ伸ばすんだよなァッ!!! 読めてんだよ デブガエルがよォ!!!!
───【疾走】、アンド〔スライド〕!!!
「GAU?!」
俺はピンと張られた蛙の舌に切り込みを入れながら駆け抜ける。
そして、ちゅぽんと音を立てて蛙の口にダイブインした。
「GYYOOOOOOOOOO?!?!」
いやぁ~、あったけぇな口の中。少し生臭い良い感じに湿っぽい。いや、褒めてるんだよ?ホントホント。
にしても狭くて暗いね、流石体内。さてと、胃酸に着く前にちゃっちゃと終わらせますか。
「GOO!! GOO!! GYAAA!!!!」
暴れてんじゃ、ねぇ!
───〔スライド〕!
───〔スピン・スライド〕!!
───〔ツイン・スライド〕!!!
───〔パワー・スライド〕!!!!
「GAAAA!!! GAAAA!!!」
騒いだって無駄だぞデブガエル。お前はもう時期、死ぬんだから、よォッ!
「GUAA!!!」
俺はナイフでクソガエルの肉を内側からズタズタにして行く。血を浴びる事になるが、毒がどうこう四の五の言ってたらコイツは倒せねぇ。それは分かる。ならやる事は一つだろ。
「決死の覚悟でェ! ぶっ殺すだけだよあァァァァッッ!!!!」
部屋に血飛沫とポリゴンが舞い、満身創痍の俺はバタリと倒れ込んだ。
「ピョン!」
ありがとよ、何言ってるか分かんないけど……
「ハハ、ハハハハハハハッ!!! 勝った!勝てた!勝ってやったぞソクソォ!」
俺は勝負に勝てた喜びを、声を荒らげて表した。
「アオォォォォォォォォン!」
俺は叫んだ。勝利の狼煙の代わりとして。
ムホンはそれに続くようにして叫び、①達も更に続いて鳴いた。
俺は勝った。勝てたんだ、あの理不尽な強さのクソガエルに! これで近付いた。運営をぶっ潰す計画にィ!
俺が深呼吸して再び雄叫びを上げようとした。その時だった。何処からともなく、拍手が聞こえて来た。
誰だッ!
「いやぁ、凄いよ君。まさかアイツをその人数で倒しちゃうなんてさ、しかも主戦力アサシンて! それに口の中でナイフ振り回すとか! どんだけぶっ飛んでんだよ、アハハハッ」
声の主は──フードを被った骸骨だった。
>to be continued… ⌬
謎の引力が部屋の中へと俺達を誘う。逃げる事は叶わない、という事か。上等だ。
俺は詠唱を呟きながら構えを取る。ムホン達も同様に戦闘に備える。
部屋は石レンガで出来た円形の大広間。だだっ広い空間には、魔法の詠唱だけが響き渡る。今にも消えてしまいそうな声量の詠唱達が大きく聞こえる事が、この場の静寂さを表している。
部屋中央、突如として如何にも魔法陣といった印象の紋様が床に浮かび上がる。
魔法陣から溢れ出した無数のポリゴンが渦を巻き、その巨体を形創って行く。
やがてその禍々しい姿は、五体の強紫蛙と共に完全に形成され尽した。
「グゴルァォォォォオッッッ!!!」
「ゲコォ!」
「ゲッグゲゲック……!」
「ゲロゴォッ」
「コゴロロロゲォ」
「『ピョンピョンピョン』」
「『御先真暗』」
「『ピョンピョピョン』」
「『ピョンピョン』」
「『ピョンピョピョン』」
蛙の雄叫びを上げた瞬間、蛙達の毒弾と俺達の魔法がぶつかり合う。
俺は【隠密】で取り巻きの一体に近づき、背後から猛攻を加える。
───〔スライド〕
───〔ツイン・スライド〕
「グゲェ!」
三連撃を打ち込んだ取り巻きは背中から紫の液を垂れ流し、その場に大きく崩れ落ちる。
な、体力バーが、点滅してる?
! コイツ、普通の強紫蛙じゃない……血が毒だ!
「お前ら! コイツらの血に触らないように避けろ! 毒だ!」
兎達はヒットアンドアウェイを繰り返す。毒血を浴びないよう慎重な頭突きや魔法発射が求められ、普通の戦闘よりも精神を削られる。
その時だった。ボス蛙の舌がしなる鞭のようにイチノゴを襲う。
咄嗟にイチノサンとイチノロクが駆け出しボス蛙に体当たりを仕掛ける。その巨体に頭突きを当てる事は容易だったが、問題はその後だった。
ボス蛙の身体のイボが破けると同時に、大量の毒液が辺りに撒き散らされた。
突然の出来事に反応出来る訳も無く、サンとロクは真面に毒を被ってしまう。
「チィッ! ムホン、解毒を!」
「『ピョピョン』!」
呪文を唱えるムホンに迫る強紫蛙を【短剣術】で応戦する。
───〔スピン・スライド〕
俺の身体は回転しながら地面に垂直に空に弧を描き、そのまま強紫蛙の頭部から背中にかけてを抉る。
クソ、倒せたは良いが血を浴びてしまった! 【毒耐性】のレベルも高いしヒーラーを潰されるよりかはマシだが…………面倒なヤツらだよ本当!
誰だよ、ここは初心者の狩場近いからダンジョンとしてレベル低そうとか言った奴は!俺だよクソッタレ!
兎も角、ムホンの魔法が間に合って無いのが一番の難点だ。
それにまだ不味い事がある。ヤツらの弱点である【水魔法】を使えるイチノヨン、【支援魔法】のイチノシチをさっきからやたらしつこく狙っている気がする。一々面倒臭い相手だ。
何か、何か打開策は無いか? きっと手段はあるはずだ。考えろ、考えろ。
「ヨン、なるべく広く『水波動』、ロクは地面に『強電撃』、俺とニは足止め、それ以外は……イチ以外攻撃!」
イチノヨンの魔法が蛙共の頭上で弾ける。蛙共は降り注ぐ水滴が当たると、まるでそれが猛毒かのように激しくのたうち回り逃げようとした。逃がすかよ、大人しくしてろ。
闇の手引き、暗に堕つ視線、我バンブーなり。我が真名の下に闇の力を奮い給へ。堕とせ、陰れ──
───『御先真暗』
「『ピョンピョン』」
黒い霧と触腕が蛙達を絡め、逃走を阻害する。そこに追い討ちをかけるべく電流が流される。『水波動』の所為でずぶ濡れになった蛙達に、激痛と痺れが襲いかかる。
二体の取り巻きは口から煙を吐いて息絶える。こんがり上手に焼けましたってね。
肝心のボスだが、当然のように生きている。仕留め切れなかった。だが、狙いはそこでは無い。
ボスのイボはその殆どがことごとく潰れている。今の『強電撃』で破けたのだろう。
くっくっくっ、しかもヤッコさん、アンタ今動けねぇでしょう。そりゃそうさ、だって感電しちまったんだモンなァ!
動けねぇ上に武器も無くすとは惨めな姿じゃねぇかデカガマさんよォ。
ひゃひゃっ、ここまで上手くいくたァ思わなかったぜ。随分手こずらせてくれたじゃねぇか…………行けェ野郎共ォ!あのウスノロをぶちのめせッ!
俺と兎達が一斉にけしかけようとした、その時だった。
「GEROGYUEAAAAAA!!!!」
「!?」
ボスは雄叫びを上げて舌を大袈裟に振り上げ、油断していた俺の腹にめり込ませる。
「ゴバッ、?!」
壁にめり込んだ体を動かしながら考える。これ結構骨行ってんね……
なんだ、何故動ける? そんな事を考える暇に、舌捌きは激化する。
くっ、何故だ!俺の計画は完璧だったはず。クソッタレがァ!やっぱAWLOはクソゲーだ!滅ぼさねばァ!
まずはあのクソガエルを、クソガエルを殺さねば!
俺は目をギラつかせながらクソガエルを睨みつける。まずは兎達をけしかけようそうしよう。幸いクソの攻撃は当たって…………ない?なんで?Why?
俺は油断してた。それは兎達も一緒だ。あの暴走は完全に不意を突かれた。なのに俺だけしか被弾していないとはあまりにも不自然では無いか?
俺は壁に磔になったままボス部屋を俯瞰する。兎達は激化する攻撃に処理が追い付かずギリギリの避けで精一杯だ。何故当たらない?
俺は思考を巡らせて行く。パズルのピースがはまるような、そんな感覚がある、確信を持った。
忘れていた。これはゲームでコイツはボス。なら当然あるに決まってるよな。見落としていた、失態だ。
一定の体力を下回った時にある暴走状態……!
コイツの動きは前にも増して素早いものになっている。恐らく攻撃力も。これは俺が舌で殴られた時からくる感覚的な物だが、多分おおよそ当たってる。クソガエルは強くなっている。
なら何故攻撃が不意打ち以外に当たらないのか。それはクソガエルは今、理性を欠いた状態に居るから。
これらの状況証拠から導き出される可能性はただ一つ。ボスの暴走ギミックだ。
ソクソめ、やけに色んな情報公開してると思ったら、ボスのバーサクに油断させる為のカマとはな。やられたよ。認めよう、そして叩き潰そう糞運営!
俺はパラパラと落ちる壁の欠片に見送られ、全力【疾走】する。勿論【隠密】も忘れずに。奴は兎達を捉える事に集中して、吹き飛んだ俺の事なんざ眼中に無い!
俺はクソガエルの背後に忍び寄り、跳躍して背中を抉る勢いでナイフを振り下ろす。
───〔パワー・スライド〕!
ガキン、と甲高い金属音が響く
「は?」
全く刃が通らなかった。一ミリもダメージを与えられなかった。防御力も上がってやがる! クソが!
「ッ!」
俺は慌てて舌の横薙ぎをしゃがんで躱す。クソ、悠長には考えさせねぇってか?
俺は大きく舌打ちをする。魔法を発動する暇を与えない、かと言って物理攻撃は通らない。強過ぎるだろクソガエルッ!
考えろ、考えるんだ俺。いくらバフってるからって不死身じゃない。弱点はきっとあるはずなんだ。
水魔法で弱点を突くか? ダメだ、詠唱する暇が無い!
関節を狙うか? ダメだ、そもそも刃が刺さらない!
目なら柔らかいんじゃ? ダメだ、的が小さ過ぎてこの猛攻の中では真面に狙えない!
「!!」
ベロンと伸ばした舌が俺目掛けて素早く真っ直ぐ突き進む。背中を撫でられた事が気に障ったのか、槍のような刺突で俺の身体を穿かんと迫る。
それもしつこくしつこく!全くしつけぇんだよクソガエルッ! ウザったくて仕方無ぇんだよクソがッ!!
アホみてぇに口開けて毒吐いたり舌伸ばしたり忙しいヤツだよクソッタレ!!!
「何か、策は……」
クソ、クソクソクソ! 考えが纏まらねぇ、休んでる時間が無ぇ! あのクソガエルが口さえ閉じ、れ、ば…………
……あるじゃねぇか! 体かってぇ敵を倒すド定番!
俺は打倒クソガエルの為、息を大きく吸って肺を膨らませる。
「スキル──」
コイツは今、暴走状態で理性がぶっ飛んでる。攻撃は速いが動きは単調そのもので作戦もクソも無い。そんでコイツは怒ると……
「──【挑発】!!!」
「GYURUAAAAAAAAA!!!!!!!!」
舌真っ直ぐ伸ばすんだよなァッ!!! 読めてんだよ デブガエルがよォ!!!!
───【疾走】、アンド〔スライド〕!!!
「GAU?!」
俺はピンと張られた蛙の舌に切り込みを入れながら駆け抜ける。
そして、ちゅぽんと音を立てて蛙の口にダイブインした。
「GYYOOOOOOOOOO?!?!」
いやぁ~、あったけぇな口の中。少し生臭い良い感じに湿っぽい。いや、褒めてるんだよ?ホントホント。
にしても狭くて暗いね、流石体内。さてと、胃酸に着く前にちゃっちゃと終わらせますか。
「GOO!! GOO!! GYAAA!!!!」
暴れてんじゃ、ねぇ!
───〔スライド〕!
───〔スピン・スライド〕!!
───〔ツイン・スライド〕!!!
───〔パワー・スライド〕!!!!
「GAAAA!!! GAAAA!!!」
騒いだって無駄だぞデブガエル。お前はもう時期、死ぬんだから、よォッ!
「GUAA!!!」
俺はナイフでクソガエルの肉を内側からズタズタにして行く。血を浴びる事になるが、毒がどうこう四の五の言ってたらコイツは倒せねぇ。それは分かる。ならやる事は一つだろ。
「決死の覚悟でェ! ぶっ殺すだけだよあァァァァッッ!!!!」
部屋に血飛沫とポリゴンが舞い、満身創痍の俺はバタリと倒れ込んだ。
「ピョン!」
ありがとよ、何言ってるか分かんないけど……
「ハハ、ハハハハハハハッ!!! 勝った!勝てた!勝ってやったぞソクソォ!」
俺は勝負に勝てた喜びを、声を荒らげて表した。
「アオォォォォォォォォン!」
俺は叫んだ。勝利の狼煙の代わりとして。
ムホンはそれに続くようにして叫び、①達も更に続いて鳴いた。
俺は勝った。勝てたんだ、あの理不尽な強さのクソガエルに! これで近付いた。運営をぶっ潰す計画にィ!
俺が深呼吸して再び雄叫びを上げようとした。その時だった。何処からともなく、拍手が聞こえて来た。
誰だッ!
「いやぁ、凄いよ君。まさかアイツをその人数で倒しちゃうなんてさ、しかも主戦力アサシンて! それに口の中でナイフ振り回すとか! どんだけぶっ飛んでんだよ、アハハハッ」
声の主は──フードを被った骸骨だった。
>to be continued… ⌬
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
CombatWorldOnline~落ちこぼれ空手青年のアオハルがここに~
ゆる弥
SF
ある空手少年は周りに期待されながらもなかなか試合に勝てない日々が続いていた。
そんな時に親友から進められフルダイブ型のVRMMOゲームに誘われる。
そのゲームを通して知り合ったお爺さんから指導を受けるようになり、現実での成績も向上していく成り上がりストーリー!
これはある空手少年の成長していく青春の一ページ。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる