日暮れ古本屋

眠気

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援軍

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「空中歩行術か、相変わらず成長が早いねえ」

 端蔵が言う。
 嬉しそうに、そしてどこか恨めしそうに言うのだ。

「青天霹靂」

 瞬間、雷のような衝撃が飛来。
 雷鳴は即座に衝撃へと変わり、僕を貫かんとする。
 この術は雷のように見えて、実際は端蔵の妖力を雷のように限りなく近づけたものだ。

 僕はそれを回避。
 雷の速度を超えたわけではない。
 経験で、回避したのだ。

 鏡奪知縛で記憶を取り戻す際、戻るのは記憶だけではない。
 経験や、感覚が戻るのだ。
 記憶の改変前に忘れてしまったようなことも、きっと思い出している。

 そのため、僕は思い出した記憶の中で端蔵が使っていた青天霹靂を事前に察知して、回避に成功したのだ。

「やっぱり経験は大事だね。その大事な経験のおかげで、僕は今、君の背後からの奇襲を避けられる」

「ッ! 気づいてたのかよ!」

「当然!」

 羽団扇を振り下ろし、袈裟切りを狙うが楽々回避される。

「君は鏡奪知縛であの晩の戦いを思い出し、経験も手に入れたようだが、僕らの戦いはあの一度ではない。君が思い出していないような経験が、他幾度とあるんだ。つまり、経験から来る予想は、君が僕を超えることは出来ないんだよ」

 そう言って一泊置いたあと、端蔵は叫ぶ。

「青天霹靂二十連射!」

 瞬間、雷のような衝撃が降り注ぐ。
 回避し、こちらも攻撃を仕掛ける隙を狙うが、この術は止まない。

 口では二十とか言いながら、実際に込めた妖力な百発分は超えるだろう。

 攻撃を避け続け炎を放つが、掠りもしない。
 そんなとき、少し離れた場所から大量の気配が現れる。

「悪いけど、そろそろ援軍が来る時間なんだよね。だから、もう終わりだ」

 端蔵は言った。
 これは不味い、端蔵一人の相手でも手一杯なのに他多くの援軍の相手など、出来るはずもない。

「彼らは己龍の精鋭だ。まあ、今の君が万全の状態ならば互角に戦えるだろうが、僕と戦いながらじゃまず不可能だろうよ」

「気にすんなよ、お前敵に気を使うほどお優しい性格してねえだろうがよっ!」

 言って、羽団扇から炎を放とうとした瞬間、すぐ側に現れた援軍よりもはるかに強い妖力を持った男が現れる。
 僕はこの男を知っている。
 嘗て僕と沙耶の前に現れたこの男を、知っているのだ。

「よく言った。この仕事乗り気じゃなかったが、仕方ねえ、やってやるよ!」

 己龍千輝は、歯を剥き出して言う。
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