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戦闘開始
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「端蔵お前、仲間を」
「仲間? 笑わせないでくれ。仲間ってのは同次元の相手しかなれないだろ? 彼は精々、よく喋る小間使い程度の男だ」
下衆だ。
僕はまあ、敵が減ったんだから助かるが、しかしあまりいい気分ではない。
「さて、雑談するために君の相手を開けたわけじゃない。僕は君と戦うために——————」
端蔵の言葉は、そこで遮られる。
「待てよ……まだ俺の番だろ。手出しはダメだ」
「ああ、まだ生きてたんだ。もう君には飽きたんだよね、死んでていいよ」
そう言って、倒れている彼、小豆を端蔵は蔑んだ目で見下している。
「君には、口限論を使う価値もない」
そう言って、端蔵は一つ壁の破片を拾い、それを小豆に向かい投げる。
「なんで、君が妨害するんだい?」
「命に対する侮辱行為を止めただけだよ。拘りなんてないけど、見てていい気はしない」
僕は、端蔵の投げた破片を斬って小豆に当たるのを避ける。
「なあ、室内じゃ動きにくいだろ。移動しよう」
「何? 二人で外までとことこ歩きたいのかい?」
「知ってるよ。移動する術、使えるでしょ」
「ああ、君はあの時の記憶を」
そう、僕が先ほど見た記憶で、端蔵が使っていた術。
あれを使えば移動など一瞬で終わるだろう。
「さて、仕方ないから使おうかな」
端蔵はそう言って、ため息を一つ溢す。
部屋の隅に無造作に投げてある上着を着てから、端蔵は言った。
「騏驥過隙」
瞬間、景色が変わる。
「ここって、まさか!」
「ああ、君の記憶にも出た場所さ。古本屋があるのはまた別の森だけど、自然に囲まれるのが好きでね」
「そうかよ、じゃあ自然に包まれて死んでくれ!」
まあ興味ないし、真面目によーいどんで戦い始めたら不利だし、適当な返事をしてからその終わりと同時に斬りかかる。
自分に戦士のプライドとかがなくて良かったと思いながら、羽団扇を横に一閃。
「話の最中に斬りかかるとは、感心しないね」
そう言って、端蔵は僕の振るった羽団扇を指二本で止めてみせる。
即座に炎を放ち指を離させるが、今の一瞬で分かった。
僕と端蔵の圧倒的な実力差が、ハッキリとだ。
しかし絶望している時間は無い。
一度距離を取り、改めて端蔵に向かい駆ける。
「手龍!」
そう叫び、端蔵に掌を向けると、そこから腕ほどの長さがある白い龍が飛び出す。
夢で使っていた術の一つ。
この龍は僕の妖力で出来ているので、操作は自由自在だ。
龍を左から、自分は右からの挟み撃ちでの攻撃。
本当は全方向からが望ましいが、人手が足りないので我慢だ。
「火吹きの左腕!」
攻撃直前に発動させ、せめて隙ができることを願う。
「金城鉄壁!」
端蔵が言うと、地面から鋼鉄の壁が二枚。
僕の左右同時攻撃を最も容易防がれ、さらに間に壁まで。
戦いにくい。
壁を溶かすか、横から行くか。
「いや、せっかく覚えたんだ、上から行こう」
まだ端蔵達には、見せていない。
いや、先生以外には見せてない。
妖力操作の高等技術、空中での固定だ。
「数秒ぶりだな、端蔵」
空高く立って、僕は言ったのだ。
「仲間? 笑わせないでくれ。仲間ってのは同次元の相手しかなれないだろ? 彼は精々、よく喋る小間使い程度の男だ」
下衆だ。
僕はまあ、敵が減ったんだから助かるが、しかしあまりいい気分ではない。
「さて、雑談するために君の相手を開けたわけじゃない。僕は君と戦うために——————」
端蔵の言葉は、そこで遮られる。
「待てよ……まだ俺の番だろ。手出しはダメだ」
「ああ、まだ生きてたんだ。もう君には飽きたんだよね、死んでていいよ」
そう言って、倒れている彼、小豆を端蔵は蔑んだ目で見下している。
「君には、口限論を使う価値もない」
そう言って、端蔵は一つ壁の破片を拾い、それを小豆に向かい投げる。
「なんで、君が妨害するんだい?」
「命に対する侮辱行為を止めただけだよ。拘りなんてないけど、見てていい気はしない」
僕は、端蔵の投げた破片を斬って小豆に当たるのを避ける。
「なあ、室内じゃ動きにくいだろ。移動しよう」
「何? 二人で外までとことこ歩きたいのかい?」
「知ってるよ。移動する術、使えるでしょ」
「ああ、君はあの時の記憶を」
そう、僕が先ほど見た記憶で、端蔵が使っていた術。
あれを使えば移動など一瞬で終わるだろう。
「さて、仕方ないから使おうかな」
端蔵はそう言って、ため息を一つ溢す。
部屋の隅に無造作に投げてある上着を着てから、端蔵は言った。
「騏驥過隙」
瞬間、景色が変わる。
「ここって、まさか!」
「ああ、君の記憶にも出た場所さ。古本屋があるのはまた別の森だけど、自然に囲まれるのが好きでね」
「そうかよ、じゃあ自然に包まれて死んでくれ!」
まあ興味ないし、真面目によーいどんで戦い始めたら不利だし、適当な返事をしてからその終わりと同時に斬りかかる。
自分に戦士のプライドとかがなくて良かったと思いながら、羽団扇を横に一閃。
「話の最中に斬りかかるとは、感心しないね」
そう言って、端蔵は僕の振るった羽団扇を指二本で止めてみせる。
即座に炎を放ち指を離させるが、今の一瞬で分かった。
僕と端蔵の圧倒的な実力差が、ハッキリとだ。
しかし絶望している時間は無い。
一度距離を取り、改めて端蔵に向かい駆ける。
「手龍!」
そう叫び、端蔵に掌を向けると、そこから腕ほどの長さがある白い龍が飛び出す。
夢で使っていた術の一つ。
この龍は僕の妖力で出来ているので、操作は自由自在だ。
龍を左から、自分は右からの挟み撃ちでの攻撃。
本当は全方向からが望ましいが、人手が足りないので我慢だ。
「火吹きの左腕!」
攻撃直前に発動させ、せめて隙ができることを願う。
「金城鉄壁!」
端蔵が言うと、地面から鋼鉄の壁が二枚。
僕の左右同時攻撃を最も容易防がれ、さらに間に壁まで。
戦いにくい。
壁を溶かすか、横から行くか。
「いや、せっかく覚えたんだ、上から行こう」
まだ端蔵達には、見せていない。
いや、先生以外には見せてない。
妖力操作の高等技術、空中での固定だ。
「数秒ぶりだな、端蔵」
空高く立って、僕は言ったのだ。
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