日暮れ古本屋

眠気

文字の大きさ
上 下
67 / 73

敵対

しおりを挟む
「さて、敵対するか」

 大勢に向かい挑発するように、彼は言った。

 それと同時、シェリーが、悲鳴を上げる。

 それが、開戦の合図だったのかもしれない。
 ボーフォートがゴーレムを壁から作り出し、彼に攻撃するようにと妖力で指示を出す。

「もうそれは、見飽きた」

 そう一言だけ言って、彼はゴーレムを細かく切り刻む。
 その勢いのまま、彼はボーフォードを頭から股まで一刀両断する。

「二人目。次!」

 彼は小さく刻んだゴーレムの破片を一つシェリーに向けて軽く投擲。

「痛った!」

 彼の狙い通り破片は頭に当たり、死にこそしないがシェリーは気絶した。

「あと一人。降伏するなら殺さない」

 彼は言った。
 あーあ、かっこいいんだ。
 やっぱり、彼を書き続けてよかった。
 僕は心から思うよ。

 記憶が戻り、少しずつ喋り方や戦い方が変わる様はとても面白かった。
 僕は物語に自分が登場するのは許せない性格だが、これは仕方ない。

「勿論。敵対だ!」

 ああ、心躍る。



 ****



 彼は自分で敵対を選択した。
 不健康だと一目でわかる青白い肌を微かに赤くして、彼は僕に向かい駆ける。
 意外にも、彼はゴリゴリの肉弾戦派だった。
 彼が拳を振るうたびにグレーの長い髪が揺れ、彼が叫ぶたびに口の両端を縫う赤い糸が千切れそうだなと思う。
 長い髪と中性的な顔立ちのせいか、少し斬るのを躊躇ってしまう。
 シルフィーのように僕の仲間に大怪我を負わせたなどの事情があれば斬りやすいが、彼にはそれもない。

 そして何より、問題は間が空いてしまったことだ。
 羽団扇を取り戻して少しの隙間もない動きで三人倒したが、今は彼との戦闘が少し長引きそうだ。
 そして、戦いが長引くと、今は何故か傍観している端蔵がいつ手を出してくるか分からないのだ。

「ねえ、この戦いが長引くのは嫌なんだ。降参してくれないかな」

「当然、断る!」

 残念だ。
 詠唱術式でとっとと終わらせられたら一番なのだが、僕の使う詠唱術式は二つとも天から攻撃を与えるもの。
 現状自分がどこにいるか把握しきれていない今では自分ごと生き埋めになる可能性もあり、使いにくい。

 それに、妖力もあまり使いたくない。
 連戦でかなり消費しているから、一度全力で戦えば無くなってしまいそうだ。

 そんなことを考えていると、突如として彼、夢屋小豆の体にいくつもの穴が開く。

「もういいや。小豆、お前は軽く遇らわれてるんだよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ひみつ探偵しおりちゃん

未羊
キャラ文芸
高石栞は女子大卒業の市役所職員。ある時、上司に呼び出されていくと、とんでもない業務を押し付けられてしまう。 それは、市の中学校に潜入しての極秘調査だった。 童顔低身長という見た目を活かしての潜入調査。そこでは思わぬ事態に巻き込まれていってしまうのだった。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

じゃくまる
キャラ文芸
ボクの名前は夕霧暮葉。個人Vtuberの真白狐白をやってます。 普段は人とそんなに絡んだりしない人見知りな性格だけど、配信の時はビビりながらも色んなことに挑戦していくよ! そんなボクは少しだけ人と違うところがあるんだ。 どんなところかというと、オタクなことと人見知りなこと、そして種族が狐の妖種である妖狐だということくらいかな。 うんそう。ボクはみんなが噂に聞くことがある妖種なんだよ。 これはそんなボクの日常と配信を描いた物語。 のんびりしたりドタバタしたり、少しドキドキしたり時々異世界に行ってみたり。 みんなが楽しめるかわからないけど、ボクなりにみんなに見せていっちゃうからよろしくね!

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

不動の焔

桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。 「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。 しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。 今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。 過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。 高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。 千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。   本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない ──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。

和菓子屋たぬきつね

ゆきかさね
キャラ文芸
1期 少女と悪魔が和菓子屋で働く話です。 2018年4月に完結しました。 2期 死んだ女と禿鷲の悪魔の話です。 2018年10月に完結しました。 3期 妻を亡くした男と二匹の猫の話です。 2022年6月に完結しました。 4期 魔女と口の悪い悪魔の話です。 連載中です。

星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました!🌸平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。 ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。 でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。

処理中です...