日暮れ古本屋

眠気

文字の大きさ
上 下
65 / 73

光の先に

しおりを挟む
 しばらく歩くと、丁度扉程度のサイズの光が一つあった。

 試しに風を飛ばしてみると、光に入った瞬間光は全く別の場所に。
 しかし危険性はなさそうだった。

「やだなあ」

 そう一言だけ呟いてから、僕は光に足を踏み入れる。

「やーやーやー、あの赤顔倒したらしいね。これでまだ全盛期の一割にも満たないとか、化け物じみているね。御伽噺じみていて、馬鹿げている」

 光の奥は広めの部屋になっていた。
 部屋といっても家庭的なものではなく、店の地下にある空間を狭くしたような部屋だった。
 そして、その部屋に居た先程の声の主である少年は言った。

「僕はあの赤顔より弱いからね、大人しく道を譲らせてもらうとするよ。ほら、この奥の道を歩けばお仲間さんのところだ」

 そう言って、少年は自分の背後にある道を手で示す。

「ああ、じゃあ遠慮なく通るよ。一応言うけど、騙し打ちなんて考えないことをオススメする」

「ハハ、なにそれかっこよ。言ってんじゃん、僕はあの赤顔より弱いんだってば」

 そう言って、少年は道を開ける。

「じゃあ、二度と会わないことを願ってるよ」

 僕が開けられた道を進もうとした瞬間、少年は一言発する。

「まあ、騙し打ちしますって言う馬鹿はいないよね」

 瞬間、道の天井が僕目掛けて落下する。
 急いで引き、それを回避。
 少年の方に羽団扇を構えて振り向く。

「下衆か、じゃあ殺す」

「騙されるのが阿保なだけでしょ」

 そう言うと同時、背後の壁が突如として一部こちらに飛び出す。

「まあ、もう分かっただろうから言うけど、これが僕の術。自分が妖力でマーキングした空間を意のままに操る術さ。さっきの君がいたボロ店から平原に変わったのもこの術が理由さ」

 すると、突如として前後左右の壁に小さな穴が開く。

「一斉発砲、開始!」

 少年が叫ぶと同時、全ての穴から銃弾となった元壁らしきものが飛び出す。

「火吹きの左腕、炎柱!」

 発動と同時に四方向に炎の柱を飛ばして、銃弾を防ぐ。
 炎柱は、よほど強い攻撃でなければ表面に触れると小さな爆発が発生して触れたものを弾く。
 そして、銃弾を全て弾いたことからあの攻撃は一撃一撃は大して強くないことが分かった。

「終わってないよ!」

 少年が叫ぶと、先程のように天井が僕目掛けて落下。
 羽団扇でそれを刻み、その破片を一つ声のした方に蹴飛ばす。
 しかしその瞬間、天永貴景に焼かれた胸の傷が痛み、狙いが逸れる。

「ノーコンかよ! 雑魚エイムすぎるけど、FPSとかやらねえのかよ!」

 少年は叫ぶ。

「なにそれゲーム? 知らねえよ!」

 僕も答えるように少し大きめの声で言う。
 瞬間、壁の一部が生き物のように変形する。
 大きな視覚っぽいシルエットの人型で、漫画などで見るゴーレムを連想するような見た目だ。

「どうだ、僕のゴーレムは!」

 ゴーレムだった。

 ゴーレムの右腕振り下ろしを蹴りで弾き、首を切断。
 しかし、無機物のゴーレムだからだろうか、首を切断してなお動き続ける。
 瞬時に胴を蹴り、壁に向かって飛ばす。
 すると、激突した壁が一部崩落し、ゴーレムの動きを封じる。

「マジか~それは嘘でしょ」

 少年は言う。

「じゃあ、最後の手!」

 言って、少年はあるものを取り出す。
 ああ、これは知っているパターンだ。

「これは、最悪のパターンだ」

 僕は一言、呟いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

あばらやカフェの魔法使い

紫音
キャラ文芸
ある雨の日、幼馴染とケンカをした女子高生・絵馬(えま)は、ひとり泣いていたところを美しい青年に助けられる。暗い森の奥でボロボロのカフェを営んでいるという彼の正体は、実は魔法使いだった。彼の魔法と優しさに助けられ、少しずつ元気を取り戻していく絵馬。しかし、魔法の力を使うには代償が必要で……?ほんのり切ない現代ファンタジー。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)  ※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「60」まで済。

千切れた心臓は扉を開く

綾坂キョウ
キャラ文芸
「貴様を迎えに来た」――幼い頃「神隠し」にあった女子高生・美邑の前に突然現れたのは、鬼面の男だった。「君は鬼になる。もう、決まっていることなんだよ」切なくも愛しい、あやかし現代ファンタジー。

軍艦少女は死に至る夢を見る【船魄紹介まとめ】

takahiro
キャラ文芸
同名の小説「軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/571869563)のキャラ紹介だけを纏めたものです。 小説全体に散らばっていて見返しづらくなっていたので、別に独立させることにしました。内容は全く同じです。本編の内容自体に触れることは少ないので大してネタバレにはなりませんが、誰が登場するかを楽しみにしておきたい方はブラウザバックしてください。 なお挿絵は全てAI加筆なので雰囲気程度です。

美緒と狐とあやかし語り〜あなたのお悩み、解決します!〜

星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
キャラ文芸
夏祭りの夜、あやかしの里に迷い込んだ美緒を助けてくれたのは、小さな子狐だった。 「いつかきっとまた会おうね」 約束は果たされることなく月日は過ぎ、高校生になった美緒のもとに現れたのは子狐の兄・朝陽。 実は子狐は一年前に亡くなっていた。 朝陽は弟が果たせなかった望みを叶えるために、人の世界で暮らすあやかしの手助けをしたいのだという。 美緒は朝陽に協力を申し出、あやかしたちと関わり合っていくことになり…?

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと78隻!(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。また、船魄紹介だけを別にまとめてありますので、見返したい時はご利用ください(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/696934273)。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。  ●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。

イノリβ

山橋雪
ファンタジー
 これは一体……確実に僕は死んだはずなのに――。  友人のセリナに巻き込まれる形でビルから転落した主人公コウタは、自身が不死になっていることに気付く。  自らの不死の謎を解き日常に戻るため、コウタはセリナの知人が営む霊障コンサル事務所に転がり込むが、妖しく暗い欲望渦巻くイノリの世界に飲み込まれていく。  陰鬱陰惨、じめじめと。けれど最後はそれらを吹き飛ばす怒涛の展開。  オカルトテイストなファンタジー。

処理中です...