日暮れ古本屋

眠気

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企みと決意

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「ねえ、本当に良かったの?
「敵を誘い込むなんて」

 そう言ったのは金髪ブロンドで瞳の赤い少女。
 小学生低学年の平均的な背丈だ。
 名はシェリー・ストゥルルソン。

「ああ、どうせ場所を知られなければあの人たちは、店付近に大量のトラップを仕掛けるだろう。
「それならば、自分の陣地に誘い込んだ方がいい」

 話し相手、端蔵晴海が答えると、シェリーは感心したように言う。

「へ~端蔵色々考えてんね! 賢いよ!」

「この程度、シェリーだって思いつくようになるさ。
「問題は、何処からこの場所がバレたかだ」

「もうバレたのに、なんでまだバレた理由を考えるの?」

「次がないようにだよ。
「前も教えただろう? 失敗の後に大切なのは反省と今後の対策だ」

「それなら端蔵言ってた! この前の勉強会で!」

 シェリーは花が咲くように笑う。

「じゃあ、僕は罠の設置場所を確認してくるよ。
「シェリーはお友達と遊んでおいで」

 端蔵が言うと、シェリーは一目散に走って消えていった。



 ****



 目を覚ました僕の視界に一番に飛び込んだものは、手合わせなどで破壊してもいいと決められたエリアの荒れ果てた姿だった。

「え、何これ」

 思わず口に出して言うと、僕より先に目覚めていた猫宮さんが説明してくれようとするが、それより先に答えが姿を表す。

「すまないね、僕が昨晩暴れたせいだ」

 九尾苑さんは突然現れて言う。

「体が鈍らないように少し動きたくなったんだ」

 九尾苑さんは、そう言いながら自分の手を開閉させる。

「誰かと手合わせしたいなら、足場が悪い、耐えてくれると僕嬉しい」

 そう言って、九尾苑さんは去っていく。
 どうやらこの寝床に設置してある自分用のベッドに荷物を取りに来ただけだったようだ。

 そして、後半若干カタコト気味かことから疲れているのも何となくわかった。

「ありゃ疲れてるわね。なんで急にあんな破壊行動を始めたかなんて、今後に備えてでしょうし、詳しく聞く必要もなさそうね」

 沙耶も同じことを思ったらしい。

 あの何事ものらりくらりとした九尾苑さんが前準備で体を動かし始めるほどの事態だ。
 僕も気合いを入れて更に強くならねば。
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