日暮れ古本屋

眠気

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散弾銃

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「それじゃあ始めようか、沙耶ちゃん」

「ええ、手加減はなしですよ」

 地下で向き合っているのは、猫宮と沙耶だった。

 先に動いたのは猫宮、素早い動きで地下の空間に何本も設置してある柱を蹴って加速し続ける。
 縦横斜めと縦横無尽に跳び回る猫宮だが、沙耶も負けていない。

 猫宮が次に蹴る柱にある程度の目明日をつけ、札を飛ばし、爆発させる。

 それによって、跳び移る柱を慎重に選ばねばならぬ分、猫宮の移動速度が低下する。

「まだまだ!」

 そう言って、爆発で崩れた柱の破片を手に吸い寄せる。

 当然、幾つか猫宮に当たるように。

「当たらないよ、まだまだへたっぴだねえ」

 猫宮は沙耶の背後まで大きく避けてから言った。

 しかし、破片の勢いは止まらない。

 沙耶の背後にある柱に勢いよく命中。
 その様子はさながら、散弾銃のようだった。

 その後、同じように別の柱を破壊、途中それを防ごうとする猫宮に破片命中。

 立体的な動きをするための柱を失い、機動力の減った猫宮、飛ばす破片が増えて戦力が増した沙耶。

 圧倒的な環境の差が出来上がったのは、奇しくも二人で事前に決めていた手合わせ終了の時間とほぼ同時だった。

 あらかじめセットしていたアラームが鳴り、二人は戦闘体制を解く。

「沙耶ちゃん、水は?」

「あ、飲みます」

 猫宮は沙耶に向かい氷水入りの水筒を投げる。

「しっかし、沙耶ちゃんは強いねえ。
「最初に荒木寺と互角って九尾苑さんから聞いたときは、嘘だあって思ったけど、実際戦ったら勝つまであるね」

 そんな言葉に、沙耶は口を隠して少し笑う。

「荒木寺さん強いですし、あの人はトリッキーな戦い方をするタイプでしょうから、先ず私との強さの基準が違いますよ」

「へーそんなものかな」

「そんなものですよ」

 二人は少し雑談をした後、何度か手合わせをして、地上に戻った。

 夕食を早めに済ませ、猫宮の部屋にて女子会、お菓子を食べながらくだらない話をして、疲れて眠る。

 その晩、店に敵襲があるとも知らずに。
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