日暮れ古本屋

眠気

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三十六冊目

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 全員の首を切断し終え、地上に戻る。

 死体の処理は、妖や術師などの業界では有名な骸隊というチームに任せるらしい。

 漫画などでは、血の匂いが離れないやら最後の光景が目に焼き付いてなんてよく見るが、実際そんなことないみたいだ。

 鼻には道沿いの家の夕飯の香りが通り抜け、目には今歩いている道がうつる。

 無意識に考えていることは、夕飯のことと、罪悪感などまるでない自分に対する自己嫌悪。

 しかし、それでも気分が悪くなったり憂鬱になることはなかった。
 寧ろ、納得した程だ。
 僕はこんな人間なのだと。

 店に着いて、汚れた服から着替えてから店を出る前の業務に戻る。

 しばらくすると、店の扉が開く。

 そこには、なんとも不吉な雰囲気を放つ喪服の女が立っていた。

「九尾苑さんはいらっしゃいますでしょうか」

 女は言う。

 僕がすぐに呼びますと返事をして、店の奥で茶を啜る九尾苑さんを連れてくる。

「骸隊の方ね。
「清掃終了には早いだろうに、何か不祥事でも?」

「いえ、清掃中に気になる物を見つけた為、処分してしまう前に持ち物かご確認を」

 女は言うと、懐から何かを包んだ布を取り出す。

「こちらなのですが、放置するには妖力が強く扱いに困っておりまして」

「この布はそちらで?」

「いえ、拾った時点で巻いておりました。
「厳重に封じられているので開く際にはご注意ください」

 九尾苑さんが実際にそれを手に取り、何かを確かめるように布を触って確かめる。

「うん、これは僕の物だ。
「届けてくれてありがとう」

 そう言うと、女は一度頭を下げてから帰って行った。

「ほれ、これは君のものだ。
「部屋で開けてね」

 そう言って、九尾苑さんは僕に布に包まれたものを手渡すと、店の奥に帰って行った。

 早速部屋に戻って布を開くと、視界には煌めくものが一つ。

 ああ、これは知ってるやつだ。

 そう思いながら僕の意識は途切れた。
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