32 / 73
三十一冊目
しおりを挟む
橋を超え、道沿いの階段から橋の下にある堀に降りる。
今の僕の身体能力なら橋から飛び降りた方が早いだろうが、人としてルールを守り、道を通る。
二人で臭い臭いと言いながらも地下水道に入ると、薄いが、確かに妖力が存在する。
これならば、雑魚が少し発生している程度だろう。
「沙耶さ――沙耶は暗いところ平気?」
「ええ、当然よ。
「そんな事より、今さん付けしそうになったわね?」
急いで訂正した物の、沙耶は少し寂しそうな顔をしている。
慌てて謝罪しようとするが、それは当の沙耶に遮られる。
「冗談よ、ごめんなさい。
「それにしても貴方、揶揄った時の反応は全く変わらないのね」
悪戯な笑みを浮かべてそう言う沙耶は、警戒に関しては一切気を抜かず、背後から弾丸を放とうと、視線もくれずに回避しそうだ。
沙耶は僕の彼女らしいが、もしかしたら僕は、記憶を奪われる前から妖に関わっていたのかも知れない。
それならば、九尾苑さん曰く荒木寺さんに匹敵する実力者の沙耶が僕の彼女だったとしても不思議はない。
勿論、僕の素の性格や人物像は不明な為、これは立場的な話のみで考えた話だ。
そんな事を考えていると、突然前方から十体と少しの雑魚妖が向かってくる。
見た目の種類から人間を襲う種類と判別した為、即座に討伐せんと羽団扇を抜く。
相手が射程範囲内に侵入した瞬間、羽団扇を横に一閃する。
その一閃で三体討伐。
続けて小刀を三本投擲、内一本は運良く二体同時に刺さり、合計七体討伐完了した。
他の妖を探すと、残りは全て沙耶が仕留めていた。
手柄はいただいたと言わんばかりの笑みをこちらに向ける沙耶は、僕が投擲した小刀に向かい手を向ける。
すると、壁に刺さった状態の小刀は突如、沙耶に向かい吸い込まれる様に動き出す。
自分の顔の手前で小刀を掴んだ沙耶は、他二本も同じように自分の手を向けて、同じように掴む。
「これが私の使う術よ。
「掃除機みたいに吸い寄せるだけだけれど、中々応用が効くのよ?」
そう言って僕に小刀を手渡した沙耶は、僕より先に地下水道をどんどん進んでゆく。
途中何度か敵が現れたが、全て雑魚で戦闘と言えるほどの戦いは未だ皆無だ。
雑魚との戦いを見る限り、沙耶の能力は両手で敵を吸い込む事が可能である事。
更に、吸い寄せる事ができる範囲は、広げた手から真っ直ぐ、二十メートル程だと言う事も分かった。
沙耶は吸い寄せる敵同士をぶつけたりして敵を倒しているが、吸い寄せる軌道線上に刃物なんかを添えても良さそうだ。
そんな事を考えながらも、少しずつ出てくる雑魚を仕留めていると、突然沙耶の動きが止まる。
沙耶の背後から迫る雑魚を一撃で仕留め、どうかしたのかと駆け寄る。
すると、沙耶は突如僕を吸い寄せる。
瞬間、僕がいた箇所の壁が破裂する。
何事かと急いで目を向けると、破裂した箇所にはさっきまで戦っていた雑魚と少し色が違う妖が湧いていた。
「ごめんなさいね、アイツらの気配に驚いちゃって」
「大丈夫、それよりもアイツらは?」
「分からない、少なくとも日本には存在しない筈の妖よ。
「家の書物は全て暗記しているから間違いないわ」
沙耶が少し誇らしげに自分の記憶力を自慢していると、謎の妖達が一斉に僕たち目掛け突撃する。
「絶対に直接触れないで! 何があるか分からないから出来るだけ離れて攻撃を!」
お互い逆方向に飛んで敵を回避しながら僕が言うと、沙耶は無言で頷き、吸い寄せられる範囲ギリギリから妖同士をぶつける。
すると、その場でぶつかった妖が破裂した。
少し驚いたが、壁が壊れた破裂の時点である程度予想はしていたので動きを止める事は無く、妖に向かい、壁の破片を飛ばす。
敵は何処からか増える一向だが、一体の強さはさっきまでの雑魚と変わらない。
時間のかかる戦いになりそうだ。
今の僕の身体能力なら橋から飛び降りた方が早いだろうが、人としてルールを守り、道を通る。
二人で臭い臭いと言いながらも地下水道に入ると、薄いが、確かに妖力が存在する。
これならば、雑魚が少し発生している程度だろう。
「沙耶さ――沙耶は暗いところ平気?」
「ええ、当然よ。
「そんな事より、今さん付けしそうになったわね?」
急いで訂正した物の、沙耶は少し寂しそうな顔をしている。
慌てて謝罪しようとするが、それは当の沙耶に遮られる。
「冗談よ、ごめんなさい。
「それにしても貴方、揶揄った時の反応は全く変わらないのね」
悪戯な笑みを浮かべてそう言う沙耶は、警戒に関しては一切気を抜かず、背後から弾丸を放とうと、視線もくれずに回避しそうだ。
沙耶は僕の彼女らしいが、もしかしたら僕は、記憶を奪われる前から妖に関わっていたのかも知れない。
それならば、九尾苑さん曰く荒木寺さんに匹敵する実力者の沙耶が僕の彼女だったとしても不思議はない。
勿論、僕の素の性格や人物像は不明な為、これは立場的な話のみで考えた話だ。
そんな事を考えていると、突然前方から十体と少しの雑魚妖が向かってくる。
見た目の種類から人間を襲う種類と判別した為、即座に討伐せんと羽団扇を抜く。
相手が射程範囲内に侵入した瞬間、羽団扇を横に一閃する。
その一閃で三体討伐。
続けて小刀を三本投擲、内一本は運良く二体同時に刺さり、合計七体討伐完了した。
他の妖を探すと、残りは全て沙耶が仕留めていた。
手柄はいただいたと言わんばかりの笑みをこちらに向ける沙耶は、僕が投擲した小刀に向かい手を向ける。
すると、壁に刺さった状態の小刀は突如、沙耶に向かい吸い込まれる様に動き出す。
自分の顔の手前で小刀を掴んだ沙耶は、他二本も同じように自分の手を向けて、同じように掴む。
「これが私の使う術よ。
「掃除機みたいに吸い寄せるだけだけれど、中々応用が効くのよ?」
そう言って僕に小刀を手渡した沙耶は、僕より先に地下水道をどんどん進んでゆく。
途中何度か敵が現れたが、全て雑魚で戦闘と言えるほどの戦いは未だ皆無だ。
雑魚との戦いを見る限り、沙耶の能力は両手で敵を吸い込む事が可能である事。
更に、吸い寄せる事ができる範囲は、広げた手から真っ直ぐ、二十メートル程だと言う事も分かった。
沙耶は吸い寄せる敵同士をぶつけたりして敵を倒しているが、吸い寄せる軌道線上に刃物なんかを添えても良さそうだ。
そんな事を考えながらも、少しずつ出てくる雑魚を仕留めていると、突然沙耶の動きが止まる。
沙耶の背後から迫る雑魚を一撃で仕留め、どうかしたのかと駆け寄る。
すると、沙耶は突如僕を吸い寄せる。
瞬間、僕がいた箇所の壁が破裂する。
何事かと急いで目を向けると、破裂した箇所にはさっきまで戦っていた雑魚と少し色が違う妖が湧いていた。
「ごめんなさいね、アイツらの気配に驚いちゃって」
「大丈夫、それよりもアイツらは?」
「分からない、少なくとも日本には存在しない筈の妖よ。
「家の書物は全て暗記しているから間違いないわ」
沙耶が少し誇らしげに自分の記憶力を自慢していると、謎の妖達が一斉に僕たち目掛け突撃する。
「絶対に直接触れないで! 何があるか分からないから出来るだけ離れて攻撃を!」
お互い逆方向に飛んで敵を回避しながら僕が言うと、沙耶は無言で頷き、吸い寄せられる範囲ギリギリから妖同士をぶつける。
すると、その場でぶつかった妖が破裂した。
少し驚いたが、壁が壊れた破裂の時点である程度予想はしていたので動きを止める事は無く、妖に向かい、壁の破片を飛ばす。
敵は何処からか増える一向だが、一体の強さはさっきまでの雑魚と変わらない。
時間のかかる戦いになりそうだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
迦国あやかし後宮譚
シアノ
キャラ文芸
旧題 「茉莉花の蕾は後宮で花開く 〜妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい〜 」
第13回恋愛大賞編集部賞受賞作
タイトルを変更し、「迦国あやかし後宮譚」として5巻まで刊行。大団円で完結となりました。
コミカライズもアルファノルンコミックスより全3巻発売中です!
妾腹の生まれのため義母から疎まれ、厳しい生活を強いられている莉珠。なんとかこの状況から抜け出したいと考えた彼女は、後宮の宮女になろうと決意をし、家を出る。だが宮女試験の場で、謎の美丈夫から「見つけた」と詰め寄られたかと思ったら、そのまま宮女を飛び越して、皇帝の妃に選ばれてしまった! わけもわからぬままに煌びやかな後宮で暮らすことになった莉珠。しかも後宮には妖たちが驚くほどたくさんいて……!?

こちら、付喪神対策局
柚木ゆず
キャラ文芸
長年大事にされてきた物に精霊が宿って誕生する、付喪神。極まれにその際に精霊の頃の記憶を失ってしまい、『名』を忘れたことで暴走してしまう付喪神がいます。
付喪神対策局。
それは、そんな付喪神を救うための組織。
対策局のメンバーである神宮寺冬馬と月夜見鏡は今夜も、そんな付喪神を救うために東京の空の下を駆けるのでした――。
じゃっく!特別編━1.5話━【5人向け声劇台本】
未旅kay
キャラ文芸
第11部隊の修学旅行。
男2:女3
息遣いの追加・アドリブ自由。
(M) はモノローグです。
(N)はナレーションです。
あらすじ、登場人物、利用規約は最初に記載。

悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!

救国の巫女姫、誕生史
ぺきぺき
ファンタジー
霊や妖による事件が起こる国で、それらに立ち向かうため新設された部署・巫覡院(ふげきいん)。その立ち上げに抜擢されたのはまだ15歳の少女だった。
少女は期待以上の働きを見せ、どんどん怪奇事件を解決していくが、事件はなくなることなく起こり続ける。
さらにその少女自身にもなにやら秘密がいっぱいあるようで…。
新米巫覡がやがて救国の巫女姫と呼ばれるようになるまでの雑用係の少年との日常と事件録。
ーーーー
毎日更新・最終話まで執筆済み

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
喰って、殴って、世界を平らげる!――世界を喰らうケンゴ・アラマキ――
消すラムネ
キャラ文芸
荒巻健吾は、ただ強いだけではなく、相手の特徴を逆手に取り、観客を笑わせながら戦う“異色の格闘家”。世界的な格闘界を舞台に、彼は奇抜な個性を持つ選手たちと対峙し、その度に圧倒的な強さと軽妙な一言で観客を熱狂させていく。
やがて、世界最大級の総合格闘大会を舞台に頭角を現した荒巻は、国内外から注目を浴び、メジャー団体の王者として名声を得る。だが、彼はそこで満足しない。多種多様な競技へ進出し、国際的なタイトルやオリンピックへの挑戦を見据え、新たな舞台へと足を踏み出してゆく。
笑いと強さを兼ね備えた“世界を喰らう”男が、強豪たちがひしめく世界でいかに戦い、その名を世界中に轟かせていくのか――その物語は、ひとつの舞台を越えて、さらに広がり続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる