日暮れ古本屋

眠気

文字の大きさ
上 下
14 / 73

十三冊目

しおりを挟む
「ある程度使えるまで上に帰れると思わないでね」

 言うと九尾苑さんは、未だ羽団扇を抜いていない僕に向かい蹴りを繰り出す。

 一言言ってからにして欲しい。
 急すぎる。

 即座に羽団扇を抜き、気絶前の様に下段で構える。

 風は吹き荒れてこそいないが、僅かに羽団扇の刃の周りに存在した。

 羽団扇で蹴りを防ぎ、その勢いで九尾苑さんに斬りつける。

 しかし勢いそのまま空振る。
 斬りつけた筈の九尾苑さんの体が煙となり、消えてゆくのだ。

「残念、ダミーだよ。
「本物と偽物の見分け、出来る様になってね」

 声のする方に振り向くと、僕は背中を思い切り蹴られる。

「ダメだよ、戦ってる敵の発信した情報を素直に信じ過ぎちゃあ」

 僕の背中を蹴った九尾苑さんは、服のポケットに両手を突っ込むなどと言う余裕ぶりだ。
 少々腹が立つ。

 しかしそんな事も考えてられない、今僕は囲まれてしまったのだ。
 九尾苑さんの大量のダミーに、五十体ほどだろうか。

 ダミーの蹴りは僕に絶え間なく襲いかかる。
 縦横後前、全方位からだ。

 イメージだ、イメージしろ。
 このダミーを全て吹き飛ばす様な風をイメージするんだ。

 僕は羽団扇を床に突き刺す。
 あの風の感覚を思い出せ、その感覚を全身に巡らせろ。

 その瞬間だった。
 羽団扇と僕を中心として、風が吹いた。
 煙のダミーは消え、本物の九尾苑さんだけが残る。

「ちとコツを掴むのが早すぎる。
「もしかして天才かい」

 そんな適当な言葉を並べた後、九尾苑さんは拍手をしながら言う。

「おめでとう、第一段階、自分の意思で風を出せ、クリアだよ」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

麻雀少女激闘戦記【牌神話】

彼方
キャラ文芸
 この小説は読むことでもれなく『必ず』麻雀が強くなります。全人類誰もが必ずです。  麻雀を知っている、知らないは関係ありません。そのような事以前に必要となる『強さとは何か』『どうしたら強くなるか』を理解することができて、なおかつ読んでいくと強さが身に付くというストーリーなのです。  そういう力の魔法を込めて書いてあるので、麻雀が強くなりたい人はもちろんのこと、麻雀に興味がある人も、そうでない人も全員読むことをおすすめします。  大丈夫! 例外はありません。あなたも必ず強くなります! 私は麻雀界の魔術師。本物の魔法使いなので。  ──そう、これは『あなた自身』が力を手に入れる物語。 彼方 ◆◇◆◇ 〜麻雀少女激闘戦記【牌神話】〜  ──人はごく稀に神化するという。  ある仮説によれば全ての神々には元の姿があり、なんらかのきっかけで神へと姿を変えることがあるとか。  そして神は様々な所に現れる。それは麻雀界とて例外ではない。  この話は、麻雀の神とそれに深く関わった少女あるいは少年たちの熱い青春の物語。その大全である。   ◆◇◆◇ もくじ 【メインストーリー】 一章 財前姉妹 二章 闇メン 三章 護りのミサト! 四章 スノウドロップ 伍章 ジンギ! 六章 あなた好みに切ってください 七章 コバヤシ君の日報 八章 カラスたちの戯れ 【サイドストーリー】 1.西団地のヒロイン 2.厳重注意! 3.約束 4.愛さん 5.相合傘 6.猫 7.木嶋秀樹の自慢話 【テーマソング】 戦場の足跡 【エンディングテーマ】 結果ロンhappy end イラストはしろねこ。さん

それいけ!クダンちゃん

月芝
キャラ文芸
みんなとはちょっぴり容姿がちがうけど、中身はふつうの女の子。 ……な、クダンちゃんの日常は、ちょっと変? 自分も変わってるけど、周囲も微妙にズレており、 そこかしこに不思議が転がっている。 幾多の大戦を経て、滅びと再生をくり返し、さすがに懲りた。 ゆえに一番平和だった時代を模倣して再構築された社会。 そこはユートピアか、はたまたディストピアか。 どこか懐かしい街並み、ゆったりと優しい時間が流れる新世界で暮らす クダンちゃんの摩訶不思議な日常を描いた、ほんわかコメディ。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)  ※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「60」まで済。

千切れた心臓は扉を開く

綾坂キョウ
キャラ文芸
「貴様を迎えに来た」――幼い頃「神隠し」にあった女子高生・美邑の前に突然現れたのは、鬼面の男だった。「君は鬼になる。もう、決まっていることなんだよ」切なくも愛しい、あやかし現代ファンタジー。

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと78隻!(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。また、船魄紹介だけを別にまとめてありますので、見返したい時はご利用ください(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/696934273)。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。  ●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

Beat!

露刃
キャラ文芸
左腕と心に傷を持つ女子高生が、強くなるためにがんばる話。 空手の師匠と師匠の親友に助けられつつトラウマと戦う。 勧善懲悪もの。

美緒と狐とあやかし語り〜あなたのお悩み、解決します!〜

星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
キャラ文芸
夏祭りの夜、あやかしの里に迷い込んだ美緒を助けてくれたのは、小さな子狐だった。 「いつかきっとまた会おうね」 約束は果たされることなく月日は過ぎ、高校生になった美緒のもとに現れたのは子狐の兄・朝陽。 実は子狐は一年前に亡くなっていた。 朝陽は弟が果たせなかった望みを叶えるために、人の世界で暮らすあやかしの手助けをしたいのだという。 美緒は朝陽に協力を申し出、あやかしたちと関わり合っていくことになり…?

処理中です...