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六冊目
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九尾苑さんが置いていった鏡奪知縛と言うこの鏡、恐らく九尾苑さんが妖術の説明時に言っていた道具で妖術を使うと言うのに当てはまるのだろう。
そんな事が分かったところで僕はこんな妖術の使える道具など初めて見るのでなんの役にも立たないだろうが全くの得体の知れないものでは無いだけ安心出来る。
そういえば僕は今日、もう一つ魔術を使える道具を見たな。
恐らく天狗の持っていた羽団扇も同じような妖術を使える道具なのだろう。
あのとき九尾苑さんに渡された羽団扇は一応は持っているがこんな危険な物、出来れば使いたくはない。
そんなことを思いながら僕は布団に大の字に寝そべる。
僕は、無貌木さんに案内してもらった部屋を見回す。
借りた部屋は床が畳で箪笥が一棹と窓の直ぐそばに机が一つ、あとは布団が敷いてあるだけのシンプルな部屋だった。
畳は初めてだが中々好きな匂いだ。
僕は鏡を机に置くと頭を抱えて考える。
この鏡を見るべきか。
この鏡を見れば元の記憶が戻る。
僕はそれを聞いた瞬間一つの可能性に気づいた。
もしかしたら僕両親は生きているかもしれないと言う可能性に。
今僕が知っている両親は五年前にある災害に巻き込まれて事故死している。
だがもしかしたら、それは僕の作られた記憶で本当の両親は今も何処かで生きているのかもしれない。
その可能性に気づいた瞬間、僕の中にあった鏡を見ないと言う選択肢は限りなく無に近いた。
鏡を見よう、そう声に出して言い自分を勇気づける。
しかし僕の手が鏡に向かい伸びる事はない。
何故なら僕の中に残る限りなく無に近づいた鏡を見ないの選択肢、その原因があるからだ。
確かに鏡を見たら僕の記憶は戻るのかもしれない。
しかし、僕自身はどうなるのだろう。
増えるのだろうか、戻るのだろうか。
記憶が追加されるようなら良い、問題は僕が元の僕に戻る場合だ。
元の僕に僕が戻る場合、今の僕は消えてしまうのだろうか、今の僕、記憶が消えた埋め合わせに作られた、作られただけの僕は、消えてしまうのだろうか。
消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない
それだけが僕の頭を支配する。
そんなときだった。
窓から月の光が差し込む。
その光が僕を追い越し鏡を追い越し部屋の隅を指す。
するとそこには一匹の猫が居た。
金色の瞳を持つ真っ白な猫、その月に照らされた猫は部屋の隅から物音一つ立てずに机の上に移動する。
すると猫は僕の悩みの種である鏡を包む布を咥える。
猫がくるんと体を翻すと布が鏡から猫について行くように解ける。
そう解けたのだ。
勢いよく布が解け、それと同時に宙に放り出された鏡には、僕の顔が写っていた。
特別整っていなければ崩れてもいない、そんな僕の顔が。
にゃーんと、猫の鳴き声が聞こえた気がした。
そんな事が分かったところで僕はこんな妖術の使える道具など初めて見るのでなんの役にも立たないだろうが全くの得体の知れないものでは無いだけ安心出来る。
そういえば僕は今日、もう一つ魔術を使える道具を見たな。
恐らく天狗の持っていた羽団扇も同じような妖術を使える道具なのだろう。
あのとき九尾苑さんに渡された羽団扇は一応は持っているがこんな危険な物、出来れば使いたくはない。
そんなことを思いながら僕は布団に大の字に寝そべる。
僕は、無貌木さんに案内してもらった部屋を見回す。
借りた部屋は床が畳で箪笥が一棹と窓の直ぐそばに机が一つ、あとは布団が敷いてあるだけのシンプルな部屋だった。
畳は初めてだが中々好きな匂いだ。
僕は鏡を机に置くと頭を抱えて考える。
この鏡を見るべきか。
この鏡を見れば元の記憶が戻る。
僕はそれを聞いた瞬間一つの可能性に気づいた。
もしかしたら僕両親は生きているかもしれないと言う可能性に。
今僕が知っている両親は五年前にある災害に巻き込まれて事故死している。
だがもしかしたら、それは僕の作られた記憶で本当の両親は今も何処かで生きているのかもしれない。
その可能性に気づいた瞬間、僕の中にあった鏡を見ないと言う選択肢は限りなく無に近いた。
鏡を見よう、そう声に出して言い自分を勇気づける。
しかし僕の手が鏡に向かい伸びる事はない。
何故なら僕の中に残る限りなく無に近づいた鏡を見ないの選択肢、その原因があるからだ。
確かに鏡を見たら僕の記憶は戻るのかもしれない。
しかし、僕自身はどうなるのだろう。
増えるのだろうか、戻るのだろうか。
記憶が追加されるようなら良い、問題は僕が元の僕に戻る場合だ。
元の僕に僕が戻る場合、今の僕は消えてしまうのだろうか、今の僕、記憶が消えた埋め合わせに作られた、作られただけの僕は、消えてしまうのだろうか。
消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない
それだけが僕の頭を支配する。
そんなときだった。
窓から月の光が差し込む。
その光が僕を追い越し鏡を追い越し部屋の隅を指す。
するとそこには一匹の猫が居た。
金色の瞳を持つ真っ白な猫、その月に照らされた猫は部屋の隅から物音一つ立てずに机の上に移動する。
すると猫は僕の悩みの種である鏡を包む布を咥える。
猫がくるんと体を翻すと布が鏡から猫について行くように解ける。
そう解けたのだ。
勢いよく布が解け、それと同時に宙に放り出された鏡には、僕の顔が写っていた。
特別整っていなければ崩れてもいない、そんな僕の顔が。
にゃーんと、猫の鳴き声が聞こえた気がした。
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