日暮れ古本屋

眠気

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僕は今、いつものように学校が終わり日が暮れてきた頃の夕飯にはまだ早い時間を、街中を練り歩き脳内マッピングすることで潰している。まぁ、脳内マッピングなんてカッコつけた言い方をしたが有り体に言ってしまえば散歩だ。

 いつもの日常、決して変わることの無い日常だ。

 いや、訂正しよう。僕は今、人生で最も華やかしい日々を過ごす高校二年生だが、それでもいつかは高校に別れを告げ、大学に行き、社会人になるのだろう。

 そうしたらこんな時間を只潰す為だけの散歩の時間などなくなるだろう。

 そんな事を考えながら歩いていると突然、僕の視界は一つの建物へと吸い込まれるようにギョロりと横をむく。

 其処には真新しい一軒家ばかりの住宅街には削ぐわない、古ぼけた店が置いてあった。

 置いてあったとは建物には削ぐわない不思議な表現に聞こえるだろうけど事実だ。
 住宅街の道の真ん中に、ぽつんと置き去りにされた学校机とその上に乗る掌サイズの店。

 其の店は道の真ん中に学校机の上に置いてあるというこの不思議な状況を頭から削除しても、何処か異界めいていた、嘘めいていた、まるでそこには何もないように感じる。実際にある物がないかのような、僕の目が、脳が嘘をついているような。

 僕はその店へと吸い込まれるように手を伸ばす。

 ぴたりと店の小さな扉に指が触れた瞬間、静電気のような衝撃が指に駆け巡る。

 手を引くと直ぐに痛みは引いた、其処で僕はある違和感に気づく。

 先程までは其処にないように感じていた店が今はハッキリとそこにあると断言出来る程の存在感を発しているのだ。

 恐る恐る僕は再び扉に触れる、今度は何も起きない。
 そういえば扉とは指を添えるものではない、叩くものだ。

 僕は扉を二度叩く。
 コンコン、すると扉が開く、瞬間僕は店の中へと吸い込まれた、視線が吸い込まれた訳でも、吸い込まれるように扉に触れた訳でもない、頭から、全身、全てが吸い込まれた。

「お客様ですよ、店長」
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