6 / 9
Episode
イベリスの花-2
しおりを挟む
彩乃に連れられてやって来たのは、様々な種類の草花が生い茂る森林公園。虹の様な鮮やかさが視界を埋め尽くす。周囲に人気はなく、まるで自分達だけの妖精の世界に来た様な幻想的な空間だ。
公園の隅にあるベンチに腰を下ろすと溜め息混じりに愚痴が溢れる。
「まったく…なんなのさ、急にこんなところに来て」
春斗の言葉に反応して彩乃は、待っていましたと言わんばかりに得意げな表情を見せる。後ろからごそりと何かを取り出すと、「じゃじゃーん!」と自分で効果音を口に出す。彩乃の手に握られているのはお盆サイズの籠。それも二つ。
「まさかとは思うけど…花摘みしたいなんて言わないよね?」
彩乃は瞳をキラキラと輝かせて“すごい”を連呼していた。
やはりか。春斗は半ば呆れていた。
そんな春斗の心境を露知らず、彩乃か嬉々として彼に籠を差し出す。
「これ、春くんの分!」
苦笑いを浮かべながらも、それをしっかりと受け取る春斗。
ここまで楽しそうにしている彩乃を落胆させるわけにもいかない。そう思い、春斗は重たい腰を上げて花を摘みに行く。
空はまだ澄み切った青さを保っている。
夕暮れまでに帰れば良い。それまで付き合ってあげよう。
春斗は楽しげに摘んでいる彩乃を横目で確認しながら、自分もせっせと花を探索し始めた。
公園の隅にあるベンチに腰を下ろすと溜め息混じりに愚痴が溢れる。
「まったく…なんなのさ、急にこんなところに来て」
春斗の言葉に反応して彩乃は、待っていましたと言わんばかりに得意げな表情を見せる。後ろからごそりと何かを取り出すと、「じゃじゃーん!」と自分で効果音を口に出す。彩乃の手に握られているのはお盆サイズの籠。それも二つ。
「まさかとは思うけど…花摘みしたいなんて言わないよね?」
彩乃は瞳をキラキラと輝かせて“すごい”を連呼していた。
やはりか。春斗は半ば呆れていた。
そんな春斗の心境を露知らず、彩乃か嬉々として彼に籠を差し出す。
「これ、春くんの分!」
苦笑いを浮かべながらも、それをしっかりと受け取る春斗。
ここまで楽しそうにしている彩乃を落胆させるわけにもいかない。そう思い、春斗は重たい腰を上げて花を摘みに行く。
空はまだ澄み切った青さを保っている。
夕暮れまでに帰れば良い。それまで付き合ってあげよう。
春斗は楽しげに摘んでいる彩乃を横目で確認しながら、自分もせっせと花を探索し始めた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
狂愛のダンスを一緒におどりましょう
風蓮華
恋愛
ひらひら華麗に飛び回る蝶のように、綺麗なステップを踏みましょう。
例え中身が醜悪なる悪魔だったとしても、きっと貴方は虜になるでしょう。
さぁ、私の手を取りなさい。“愛”を教えてあげます。
狂った“愛”を、ね?
それでも幸せ
salt
恋愛
幸せとは何なのか。それぞれが思い浮かべる幸せがある中で主人公は幸せを探し始める。
生きている中で辛い事や悲しい事はあると思います。作者である私もありました。
そこで、この小説を書くことで共感してもらい、読者様の心に寄り添えたらと思っています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる