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第2話
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目が覚めると見覚えのない天井が目に入った。
「んんぁ………?ここ,どこ………だ……?」
慌てて身を起こすと白を基調とした清潔感のある空間に目がチカチカとする感覚を覚えた。と,足に不自然な重みを覚え,見てみるとまたもや見覚えのない,男子学生がすやすやと寝ていた。
「だっ、誰だ!」
驚いて足を引き寄せると,男子学生の頭がカクンッと揺れ,やがてゆっくりと顔を上げた。
「……ふぁぁぁぁ。あれ?夕弦君起きてたんですね。体は大丈夫ですか?あぁ,先生呼ばないといけませんね。ちょっと待ってください。」
と一方的に言い残し,パタパタと足早にどこかへ走り去っていってしまった。
暫くするとまたパタパタと今度は白衣を来た男と先程の見知らぬ男子学生が小走りで来た。俺はそこでやっと,ここが病院であると気づいた。
医者らしき男は,近くの椅子に腰掛けるといきなり話し始めた。
「意識が戻られたんですね。本当に良かった。一時はどうなる事かと……」
と事務的に話始められ,目が覚めた時から疑問に思っていた事を質問した。
「……あの,すみません。実はなんでここにいるか分からないんですが……。」
医者は少し驚いたように,
「まさか……今までの記憶が全てないんですか……?」
と言った。
俺はそうではない,と首を振り
「名前とか自分のことは分かるんですが,何故ここにいるのか一向に思い出せないんです。」
医者は少し安心したように
「そういうことなら大丈夫です。よくあることなので。」といい,少しずつ話してくれた。
俺が睡眠薬を大量に服用し死のうとしていたこと。そして,たまたまプリントを届けに来ていた工藤直哉という男子学生が俺が倒れた音を聞き,救急車を呼んだこと。俺はすぐに思い出した。どんな気持ちで死のうとしたのかも,全て。
工藤直哉の方を見ると,無事で良かったね,とでもいうように微笑んでいた。
その姿をみた瞬間俺は頭に血が上り,直哉に歩み寄り,突き飛ばしていた。
「お前が………お前が俺を助けたのか?!ふざけんな!俺の事をなんにも知らないのにか?なんで死のうとしたのかも知らない癖に!」
すると,直哉は少し悲しそうな顔をして,ごめん,と言った。
「ごめん。僕梶木くんのこと全然考えてなかったみたい。でも……僕は君に……死んで欲しくなかったから。」
「話したこともないくせに?」
と俺は嘲る様に言った。
「誰もいない。誰も頼れない。一日中1人きり。そんな……生きてても死んでても変わらないような,そんな風に生きるツラさを知らない癖にか…?」
「でも……」
「……もういいよ。助けてくれてありがと。もう俺に構うな。」
俺はその場で崩れ落ちた。そして,その傍らにはいつまでもその姿を暗い瞳で見守る直哉の姿があった……
To Be Continued
「んんぁ………?ここ,どこ………だ……?」
慌てて身を起こすと白を基調とした清潔感のある空間に目がチカチカとする感覚を覚えた。と,足に不自然な重みを覚え,見てみるとまたもや見覚えのない,男子学生がすやすやと寝ていた。
「だっ、誰だ!」
驚いて足を引き寄せると,男子学生の頭がカクンッと揺れ,やがてゆっくりと顔を上げた。
「……ふぁぁぁぁ。あれ?夕弦君起きてたんですね。体は大丈夫ですか?あぁ,先生呼ばないといけませんね。ちょっと待ってください。」
と一方的に言い残し,パタパタと足早にどこかへ走り去っていってしまった。
暫くするとまたパタパタと今度は白衣を来た男と先程の見知らぬ男子学生が小走りで来た。俺はそこでやっと,ここが病院であると気づいた。
医者らしき男は,近くの椅子に腰掛けるといきなり話し始めた。
「意識が戻られたんですね。本当に良かった。一時はどうなる事かと……」
と事務的に話始められ,目が覚めた時から疑問に思っていた事を質問した。
「……あの,すみません。実はなんでここにいるか分からないんですが……。」
医者は少し驚いたように,
「まさか……今までの記憶が全てないんですか……?」
と言った。
俺はそうではない,と首を振り
「名前とか自分のことは分かるんですが,何故ここにいるのか一向に思い出せないんです。」
医者は少し安心したように
「そういうことなら大丈夫です。よくあることなので。」といい,少しずつ話してくれた。
俺が睡眠薬を大量に服用し死のうとしていたこと。そして,たまたまプリントを届けに来ていた工藤直哉という男子学生が俺が倒れた音を聞き,救急車を呼んだこと。俺はすぐに思い出した。どんな気持ちで死のうとしたのかも,全て。
工藤直哉の方を見ると,無事で良かったね,とでもいうように微笑んでいた。
その姿をみた瞬間俺は頭に血が上り,直哉に歩み寄り,突き飛ばしていた。
「お前が………お前が俺を助けたのか?!ふざけんな!俺の事をなんにも知らないのにか?なんで死のうとしたのかも知らない癖に!」
すると,直哉は少し悲しそうな顔をして,ごめん,と言った。
「ごめん。僕梶木くんのこと全然考えてなかったみたい。でも……僕は君に……死んで欲しくなかったから。」
「話したこともないくせに?」
と俺は嘲る様に言った。
「誰もいない。誰も頼れない。一日中1人きり。そんな……生きてても死んでても変わらないような,そんな風に生きるツラさを知らない癖にか…?」
「でも……」
「……もういいよ。助けてくれてありがと。もう俺に構うな。」
俺はその場で崩れ落ちた。そして,その傍らにはいつまでもその姿を暗い瞳で見守る直哉の姿があった……
To Be Continued
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