平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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嵐の予感

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   大石教頭は、新入生かつ新入寮生の元倉尚美と相田麻衣を寄宿舎に案内した数日後、前期生徒会躍進選挙の立候補者名簿と公約集に目を通していた。

「ふむ。諸岡さんがね…。」
「はい、舎監。」
大石教頭は、理科準備室で佐々木紀子と対峙していた。2人きりで話したい時は、いつもここで話をする。
「諸岡さんに何があったか知らないけど、そんな過激な公約を提出してくるとは。英語部だけでも支持は固めたのかもしれないけど。」
「あの子は怖いもの知らずですね。…私達寮生を敵に回すことになるのに。」
大石教頭は、今年の2年生の寮生のクラス分けをささっとメモ書きした。

2年1組…関
2年2組…柿沼
2年3組…名取、三浦
2年4組…佐々木
「寮生はうまくばらけた気がするけど。そこへ、今回の生徒会選挙で波紋を呼びそうなメンバーが、こうか。」
2年1組…関、諸岡(副会長立候補;1年の時に書記)
2年2組…柿沼、小野寺(副会長立候補;1年の時に会計)
2年3組…名取、三浦、手塚(書記立候補;カラーガード部)
2年4組…佐々木、堀沢(書記立候補;1年の時に会計)

「やはり諸岡さんは副会長は堅いと思います。」
「そうね、小野寺さんでは勝ち目はないかな。」
「柿沼さんが、同じクラスとして支持すると思いますけど。それでも諸岡さんの支持者は増えてきたので、小野寺さんは苦戦すると思います。勝ちが見込めそうな諸岡さんはだから、『寄宿舎を国際交流棟としての機能を持たせる』なんて大胆な公約をぶち上げたのだと思います。」
「3組の手塚さんは?」
「カラーガード部の伝統で、毎回生徒会に1人は送り込んできますから。そのクチだと思います。カラーガード部は自分たちの予算と発言力を獲得するのが狙いであって、寄宿舎をどうこうする事は考えていないはずです。」
「4組の堀沢さんは…」
「この子は手堅いです。荒れそうな副会長を避けて、書記に狙いを定めていますから。新1年生に、生徒会書記をやろうという意欲のある子がいたら、わかりませんけど。でも、この子はほぼ当選確実だと思います。それに諸岡さんにブレーキをかける立場だと思いますよ。生徒会ではなにかと意見対立していたと聞いております。」
「だとすると、2年の前期の生徒会選挙は、諸岡、手塚、堀沢になるかしら。それにまだ立候補者がいない会長と、会計2名」
「舎監のお見込み通りになるのではないかと思います。」
「よし、わかりました。職員会でも寄宿舎の改革を唱える教師もいるから、そういう奴らを抑えましょう。」
「御意に。」
「佐々木さん、私とあなたの仲は不思議な関係だけど、そこまでかしこまった話し方をする必要はないのよ。」
「失礼をば。」
「佐々木さん、もういいわ。寄宿舎に戻りなさい。」
「はい。」
常に生徒の自主性を重んじる川越第一女子高校の校風が、マイナスに働くときもある。この時、寄宿舎制度そのものについて改革すると諸岡百合子が公約化した事は、大石教頭と、寄宿舎の2年生達に危機感を抱かせた。
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