平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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文化祭準備(寄宿舎と、美術部)

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「カッキー。」
「あ、えみ。久しぶり。」
「寄宿舎組は、文化祭どんな出し物やるの?」
「杏仁豆腐と点心のカフェを寄宿舎内の大広間でやる。」
「おお、なんかおしゃれだね。」
「なんたってうちには三浦真知子、関麗華の料理上手な2人がいるから。」
「カッキーは何をやるの?」
「私は実家から送ってきた野菜や果物の即売会をやるよ。料理は2人に任せる。私は吹奏楽部の演奏もあるし、その間は抜けるから。ところで、美術部は?」
「文化祭は作品の展示会かな。だけど、ただの展示じゃないよ。私達、ちょっとドレスアップするの、19世紀のフランス人みたいに。」
「へーぇ!」
「コンセプトは、『パリ万博時代のルーブル美術館』日本だと幕末期よね。」
「面白そう。期待しているね。写真撮ろうよ。」
「うん。ちょっと恥ずかしいけどね。」
「なんで?きれいじゃない。」
「実は、衣装を家で合わせていた時に、妹に笑われた。」
「そんな事気にしないの。」
「その妹、文化祭に遊びに来るっていうのよ。中学の友達連れてね。」
「いいじゃない。一女の文化祭のレベルの高さを見せつけるのよ。妹さんも一女を目指すんでしょ。いいなぁ。私末っ子だから来てくれる妹いないよ。あ、でもお姉ちゃん呼ぼうかな。」
「とにかく、美術部の展示は見に来てね。私たちの衣装より、作品見てくれればいいから。」
「しょうがないなぁ。ドレス着るんだから堂々としていなさいよ!」
柿沼律かきぬまりつは、同じクラスの中井えみと仲がいい。これといって共通点はないが、柿沼律は埼玉の北の端(住所は群馬県だが、実家の『柿沼農園』は埼玉北部にも一部農地を持っている。)から一女を受験して合格し、中井えみは埼玉の南端の武蔵市から一女を受験し、合格している。北端と南端から遠距離の通学をしている点がお互いに共感の持てる部分だったらしい。1年生の夏休みには、お互いにそれぞれの実家に遊びに行った事も2人の絆を強くした。
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