平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

文字の大きさ
上 下
29 / 39

名門高校の生徒会選挙

しおりを挟む
「ねえ、あの経費って何?」
諸岡と対立している、生徒会書記の女の子(2年生)が生徒会会計担当(2人とも1年生)に尋ねた。
「あ、…あの、寄宿舎の費用です。」
その話を聞いた2年生書記は、顔色を変えた。

「何、あの子。諸岡って、1年のくせに寄宿舎予算を削ろうとしているの?」
「…私達にも詳しくは話さないけど、寄宿舎制度を、今の時代にあった形に変えていきたいそうなんです。」
「生意気な。寄宿舎制度を潰すつもりかしら。私が1年の時に、会長をやっていた黒沢先輩は寄宿舎生だったのに…。」
「いえ、潰すつもりはないようです。諸岡さんには寄宿舎生のお友達もいるようだし。」
もう1人の1年の会計担当が、おずおずと答えた。
「諸岡の友達かぁ。…あんまり友達多そうには見えないけど。」
2年の書記の女の子は、あまり諸岡のことが好きでないようだ。
「多くないと思います。諸岡さん、頭もいいし美人だけど、なんか話してて気を使うし。同じ学年なのに。」
「私も。学校帰りにコンビニやファーストフードに一緒に行く感じが諸岡さんからしないんです。」
会計担当の1年生の意見を聞きながら、2年の書記の女の子は、悪態をついた。
「私だって文化部の吹奏楽部の一員だし、英語部の友達だっているんだから、もうちょっと私に心を開いてくれてもいいのになぁ。」
「同学年の私達とも積極的に交流しないんだから、仕方ないですよ。会長や副会長が諸岡さんを可愛がっているんだって、面倒な事務仕事を引き受けてくれるからだし。好きで可愛がっているわけじゃないと思いますよ。」
「ね、先輩。私達文化部の生徒会も、諸岡さんいなくても頑張れますって。来年前期の生徒会で、今の平山会長と大滝副会長が受験で引退でしょ。あとは先輩が会長に、私達が副会長か書記に入れば、諸岡さんがいたとしても、数の論理で押し切れますって。あと半年の辛抱です。」
「そうね。でも、カラーガード部は毎年誰かしら選挙に送り込んでくるから、要注意よ。」

「しかし…先輩。さすが一女の生徒会ですね。大抵の学校は生徒会選挙は盛り上がらないと聞いています。でもこの学校は生徒会選挙が、部活のメンツをかけた一大イベントになってます。やっぱりこの学校はすごい学校ですよ。」
「そうね…。」
2年生書記は少し考え込んでいるようだった。

『諸岡だってそのくらい考えているはず。平山会長の忠犬を決め込んだのなら、きっと次の前期生徒会選挙で副会長か会長か、そのくらいのポストを狙ってくる。私だって2年前期と後期の2期生徒会を勤めたんだ。負けるわけにはいかない。私の支持層は、吹奏楽部と、可愛いこの会計担当の2人か。…一匹オオカミだが美人で優秀。今のところ英語部の半数ぐらいの部員しか支持基盤のない諸岡とは言え、次期生徒会選挙で彼女に完勝するとなると、あとはどこを味方につけるべきか。』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

コンプレックス

悠生ゆう
恋愛
創作百合。 新入社員・野崎満月23歳の指導担当となった先輩は、無口で不愛想な矢沢陽20歳だった。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

私と先輩のキス日和

壽倉雅
恋愛
出版社で小説担当の編集者をしている山辺梢は、恋愛小説家・三田村理絵の担当を新たにすることになった。公に顔出しをしていないため理絵の顔を知らない梢は、マンション兼事務所となっている理絵のもとを訪れるが、理絵を見た途端に梢は唖然とする。理絵の正体は、10年前に梢のファーストキスの相手であった高校の先輩・村田笑理だったのだ。笑理との10年ぶりの再会により、二人の関係は濃密なものになっていく。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...