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帰国
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お別れの日、光村くんとコンスタンツはお互いの名前をフルネームで呼びあい、空港で抱き合ってキスを交わしていた。土屋くんは、「いいなー」と合いの手を入れていたが、それは明らかに社交辞令だと諸岡には分かっていた。土屋くんは、どちらかというと諸岡寄りの考え方をする人間だと彼女は気づいていた。土屋くんは音楽を一緒に演奏した仲間と、固い握手をして、最後にアカペラでカナダ国歌を歌っていた。諸岡もそれに混じった。諸岡の見送りに来てくれたのは、ジュディとジェレミー、ナオミの3人だった。
「じゃ。ユーリ。大学生になったら、また会いましょう。」
「ええ。ナオミ。元気でね。ジェイと仲良くね。」
「ユーリ、きっと日本に遊びに行くから。そしたらあなたの学校を案内してね。」
食堂でよく話し込んだジュディは、すっかり仲良くなった。彼女はカウガールの姿がよく似合った。諸岡は、ジェレミー以外の2人とは抱き合ったが、ジェレミーとは握手を交わすだけにとどまった。
「私、女の子だけの世界の方があっているのかもしれない…」
諸岡は、たどたどしいフランス語でつぶやいてみた。土屋くんは、「あ?ユーリ、なんか言った?」ととぼけていたが、諸岡は「なんでもない」と日本語で答えた。
成田空港に着いた頃、3人は重い荷物とたくさんの経験に囲まれていた。
「じゃ、ツッチー、ユーリ、また会おうな。」
「おう」「ミツもその時まで元気でね。」
光村くんは、一旦東京の開邦高校にクラスメイトへのお土産を置いてから、自宅に帰るようだ。荷物を軽くする考えらしい。彼だけは先にさよならをした。
「ツッチーも、確か男子校だったよね。」
「うん、…しかし、埼玉の県立高校はなんで男子校、女子高が多いのかなぁ。」
「あれ、あなた共学賛成派なんだ。」
「大賛成というわけじゃないけど、ラ=ファイエット高校のような共学校で1ヶ月も過ごしたんだ。あの汗臭い男子校にまた9月から通うとなると、ちょっとウンザリかな。」
諸岡はくすくす笑いだした。
「女子高は汗臭くないよ、私は女子高のままでいいかな。」
「そうか、ユーリは男子が校内に入って欲しくないのか。」
「そういうわけじゃないけど。でも、私も、寄宿舎のような女ばかりの密室の園はちょっと苦手かな。通学生だけの女子高が理想。」
「ユーリだって、女子学生寮楽しんでいたじゃないか。」
「そりゃそうだけど。でも男女は厳格に分けられていた。だから寮生のパーティがあんなに盛り上がったんだと思う。」
寝息が聞こえてきた。土屋君の寝顔が、諸岡の横にあった。
「話聞いてんのぉ…」彼女は土屋くんを小突こうとしたが、そのままにしておいた。浦和に着いたら、叩き起こしてやろう。彼女は荒川に架かる橋から、1ヶ月ぶりに眺める祖国の狭苦しい景色に、視線をやっていた。
「じゃ。ユーリ。大学生になったら、また会いましょう。」
「ええ。ナオミ。元気でね。ジェイと仲良くね。」
「ユーリ、きっと日本に遊びに行くから。そしたらあなたの学校を案内してね。」
食堂でよく話し込んだジュディは、すっかり仲良くなった。彼女はカウガールの姿がよく似合った。諸岡は、ジェレミー以外の2人とは抱き合ったが、ジェレミーとは握手を交わすだけにとどまった。
「私、女の子だけの世界の方があっているのかもしれない…」
諸岡は、たどたどしいフランス語でつぶやいてみた。土屋くんは、「あ?ユーリ、なんか言った?」ととぼけていたが、諸岡は「なんでもない」と日本語で答えた。
成田空港に着いた頃、3人は重い荷物とたくさんの経験に囲まれていた。
「じゃ、ツッチー、ユーリ、また会おうな。」
「おう」「ミツもその時まで元気でね。」
光村くんは、一旦東京の開邦高校にクラスメイトへのお土産を置いてから、自宅に帰るようだ。荷物を軽くする考えらしい。彼だけは先にさよならをした。
「ツッチーも、確か男子校だったよね。」
「うん、…しかし、埼玉の県立高校はなんで男子校、女子高が多いのかなぁ。」
「あれ、あなた共学賛成派なんだ。」
「大賛成というわけじゃないけど、ラ=ファイエット高校のような共学校で1ヶ月も過ごしたんだ。あの汗臭い男子校にまた9月から通うとなると、ちょっとウンザリかな。」
諸岡はくすくす笑いだした。
「女子高は汗臭くないよ、私は女子高のままでいいかな。」
「そうか、ユーリは男子が校内に入って欲しくないのか。」
「そういうわけじゃないけど。でも、私も、寄宿舎のような女ばかりの密室の園はちょっと苦手かな。通学生だけの女子高が理想。」
「ユーリだって、女子学生寮楽しんでいたじゃないか。」
「そりゃそうだけど。でも男女は厳格に分けられていた。だから寮生のパーティがあんなに盛り上がったんだと思う。」
寝息が聞こえてきた。土屋君の寝顔が、諸岡の横にあった。
「話聞いてんのぉ…」彼女は土屋くんを小突こうとしたが、そのままにしておいた。浦和に着いたら、叩き起こしてやろう。彼女は荒川に架かる橋から、1ヶ月ぶりに眺める祖国の狭苦しい景色に、視線をやっていた。
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