平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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ジュディと諸岡百合子

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  翌朝、諸岡は、女子学生寮の学食でよく一緒になる、ジュディという女の子に話しかけられた。
「ダンスパーティー、一緒に行かない?」
諸岡はちょっと身構えた。私、そっちの趣味は無い。
「いやーね。誤解しないでよ。男子学生寮で、女の子と一緒にダンスパーティーに行けない子と、女子学生寮の中で、男の子に声をかけられなかった子が、後腐れなしでダンスパーティーに行きましょうって事。いつも、ダンスパーティーの前日になって、そんな話が持ち上がるのよ。」
諸岡は考え込んでしまった。要するに、売れ残り同士がくっついてダンスパーティーに行くだけだ。男の子の中にジェレミーのようないい子はいないだろう。

「ただし、後腐れなしよ。その男の子の中で、好きなタイプの男の子がいたとしても、そのダンスパーティーで一緒だったからと言って言い寄ったりしない事。このグループは今のところ男10人、女8人だけど、そんな大人数で行くグループはいないんだから。そんな事をしたら、寮内で笑われるから。ま、あなたの場合、後腐れなしも何も、お別れパーティだから、最終イベントのダンスパーティーにも出席してほしいんだけどね。私の調べた限りでは、ユーリはどうもダンスパーティーに一緒に行く男子がいない様だったから、声をかけたわけ。」
諸岡は苦笑いをした。かなり辛辣な事を言われているが、事実だからだ。

「ねぇ。ジュディ。笑わないで聞いてね。」
「うん?」ジュディは面倒そうに振り返った。
「私、この留学中に、何人かの男の子に遊びに誘われて、そしてそれに応じたけど、それでも誰からも今回のダンスパーティーに誘われなかったのよね。どうしてなのかわからないの。」
ジュディはため息混じりに言った。
「そりゃ。あなたが悪いわ。その誘ってくれた男の子達にアピールしたの?」
「え?何を?」
「ダンスパーティーには連れて行ってね、とか、留学生だけど、留学中だけでも恋人同士になりたいわ、とか。男の子の自尊心をくすぐるような事よ。あなたは美人で優秀だから、どうも男の子から言いよりにくいのでしょうね。」
「…。」

   確かに。テニスやら、いろんな遊びに連れて行ってもらって、お礼は言ったものの、それ以上の事は何もしてあげていない。諸岡はその自分の言動を振り返ってみた。私は考えてみたら、中学からずっとこんな感じではないか。だから、親密な恋人ができない。いつも自分1人で考えて完結してしまう。
「でも、ダンスパーティーは行っておくべきよ。特にあなた達、留学生はね。去年のサイタマからの子達も、3人とも参加したし。うち女の子が2人だったわね。あなたほど美人でなかったけど、ちゃんとボーイフレンドと一緒に来ていたからね。」
「…私、ちょっと下手くそね。ジュディ、誘ってくれてありがとう。ダンスパーティー、楽しみにしているから。」
「よし、これでいい。日本人は3人とも参加。」
「あれ。ジュディ、今あなた日本人は全員参加って言ったよね。ツッチーも?」
「当然よ。聞いてないの?」
「いや、…私、彼を誘ったけど、断られたから。」
嫌な沈黙が流れた。
「聞いていないのね。まあ、…ツッチーの事は、…おいおいわかるでしょ。じゃ、明日よろしくね。」
ジュディは、そそくさと去って行った。
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