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諸岡の想いは堂々巡り
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その後、女子寮に帰ったあと、諸岡は部屋でちょっと傷ついていた。
「せっかく、私が優しさを見せたのにな。土屋くん、欲がなくて奥手だから、きっとダンスパーティーに女の子を誘えないと思ってたのに。案外隅に置けないヤツかも。」
諸岡は、一つ見落としていることがある。土屋くんだって、県費留学生を勝ち取った秀才なのだ。そりゃ一筋縄じゃいかない。光村くんの様にモテモテでは無いけど、そんじょそこらの男子生徒よりかはずっと優秀なのだ。
諸岡がベッドで思考をグルグルさせながらひっくり返っていたその時、寮母さんから内線電話が入った。
「ユーリ、お客さんよ。男の子。」
「はぁい」
「ロビーで待っててもらうから。」
「どなたですか?」
「ユーリ、聞こえる?僕。ジェレミーだ。」
諸岡はベッドから起き上がった。ジェレミー=ハイドクリフ。テニスを何度か一緒にやったバンクーバー出身の男の子だった。
「ジェイが一番乗りか、まあいいかな。彼なら。」
ロビーにはジェレミーがいた。
「ハイ、ジェイ。急にどうしたの?」
諸岡は用件は百も承知だったが、あえてトボけてみせた。
「ユーリは、今度のお別れパーティの後のダンスパーティーは、もう誰と行くか決めた?」
「…いえ、まだ決めてないわ。」諸岡はもったいぶって答えた。
「そうか、弱ったな。」
ジェレミーはちょっと困った様な顔をした。
「実は、僕と僕の彼女と、ユーリとユーリの相棒の男の子4人でダンスパーティーに行きたいんだ。4人で行くと、いい席が取れるんだよ。ステージに近いところ。」
諸岡はかたまってしまった。よりによって、一番誘われたかった男の子にこんな話を聞くとは…。諸岡は、動揺を押し殺して、表情を変えずに問いかけた。
「ジェイ。あなたのお相手は…?」
「うん。ケベック出身の女の子。フランス語で会話するから大変だよ。でも、彼女と仲良くなりたかったから、必死でフランス語を勉強した。」
ジェレミーは、上気した顔で続けた。
「…彼女は、女子寮2階のナオミ=ミヨーさん。知ってる?」
「知ってる。日本人でもナオミって名前の人多いから…。フランス語でもナオミさんっているんだなぁ。面白いなぁって思ったよ。」
そんな会話をしているうちに、ジェイは私じゃなくって、ナオミさんを誘って、それでついでに夏休みにカナダに来た留学生の私も仲良くしていたから、2人とも誘っちゃおう、というところだったのだろう、と気づいた。諸岡は、動揺を隠せ通せたかどうか自信がなかった。
『結局、ジェイはだめだった』
でも、他にも何人か諸岡を遊びに連れて行った男の子達がいる。その子達からの誘いがあるかもしれない。
諸岡は、ロビーから戻ってきた後は、シャワーを浴びた。
しかし、その日の夜になっても、翌日になっても、ダンスパーティーに誘う男の子は来なかった。結果的に言うと、ジェレミーがまだ可愛げがあった事になる。2番手とはいえ、誘ってくれたのだから。かといって、諸岡が、自分から誘いたい男の子がいるわけではなかった。土屋くんぐらいだった。その土屋くんだって、好きだからと言うより、県費留学生が3人そろってダンスパーティーに参加したほうがいいだろうと言う「配慮」からであった。決して土屋くんのことが好きだから誘ったわけでは無い。…
何を言っても、負け惜しみになりそうだった。
「せっかく、私が優しさを見せたのにな。土屋くん、欲がなくて奥手だから、きっとダンスパーティーに女の子を誘えないと思ってたのに。案外隅に置けないヤツかも。」
諸岡は、一つ見落としていることがある。土屋くんだって、県費留学生を勝ち取った秀才なのだ。そりゃ一筋縄じゃいかない。光村くんの様にモテモテでは無いけど、そんじょそこらの男子生徒よりかはずっと優秀なのだ。
諸岡がベッドで思考をグルグルさせながらひっくり返っていたその時、寮母さんから内線電話が入った。
「ユーリ、お客さんよ。男の子。」
「はぁい」
「ロビーで待っててもらうから。」
「どなたですか?」
「ユーリ、聞こえる?僕。ジェレミーだ。」
諸岡はベッドから起き上がった。ジェレミー=ハイドクリフ。テニスを何度か一緒にやったバンクーバー出身の男の子だった。
「ジェイが一番乗りか、まあいいかな。彼なら。」
ロビーにはジェレミーがいた。
「ハイ、ジェイ。急にどうしたの?」
諸岡は用件は百も承知だったが、あえてトボけてみせた。
「ユーリは、今度のお別れパーティの後のダンスパーティーは、もう誰と行くか決めた?」
「…いえ、まだ決めてないわ。」諸岡はもったいぶって答えた。
「そうか、弱ったな。」
ジェレミーはちょっと困った様な顔をした。
「実は、僕と僕の彼女と、ユーリとユーリの相棒の男の子4人でダンスパーティーに行きたいんだ。4人で行くと、いい席が取れるんだよ。ステージに近いところ。」
諸岡はかたまってしまった。よりによって、一番誘われたかった男の子にこんな話を聞くとは…。諸岡は、動揺を押し殺して、表情を変えずに問いかけた。
「ジェイ。あなたのお相手は…?」
「うん。ケベック出身の女の子。フランス語で会話するから大変だよ。でも、彼女と仲良くなりたかったから、必死でフランス語を勉強した。」
ジェレミーは、上気した顔で続けた。
「…彼女は、女子寮2階のナオミ=ミヨーさん。知ってる?」
「知ってる。日本人でもナオミって名前の人多いから…。フランス語でもナオミさんっているんだなぁ。面白いなぁって思ったよ。」
そんな会話をしているうちに、ジェイは私じゃなくって、ナオミさんを誘って、それでついでに夏休みにカナダに来た留学生の私も仲良くしていたから、2人とも誘っちゃおう、というところだったのだろう、と気づいた。諸岡は、動揺を隠せ通せたかどうか自信がなかった。
『結局、ジェイはだめだった』
でも、他にも何人か諸岡を遊びに連れて行った男の子達がいる。その子達からの誘いがあるかもしれない。
諸岡は、ロビーから戻ってきた後は、シャワーを浴びた。
しかし、その日の夜になっても、翌日になっても、ダンスパーティーに誘う男の子は来なかった。結果的に言うと、ジェレミーがまだ可愛げがあった事になる。2番手とはいえ、誘ってくれたのだから。かといって、諸岡が、自分から誘いたい男の子がいるわけではなかった。土屋くんぐらいだった。その土屋くんだって、好きだからと言うより、県費留学生が3人そろってダンスパーティーに参加したほうがいいだろうと言う「配慮」からであった。決して土屋くんのことが好きだから誘ったわけでは無い。…
何を言っても、負け惜しみになりそうだった。
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