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7月の風景
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7月に入ると、名取先輩の日焼けが眩しくなっていった。
「日焼け止めは欠かせないのよ。陸上部は水泳部並みに露出が多いでしょ。」
私は日焼け止めを塗っていても、健康的に焼けた名取先輩の腕に見惚れていると、三浦先輩に突かれた。
「尚美。そろそろ私達もプール掃除で肌が焦げるから、覚悟しておきなさいよ。」
「はーい。」
私は川越市内のドラッグストアで日焼け止めを何本か仕入れてきた。私は、結局部活は料理研究会だけに入る事にした。英語部はあるにはあったが、英語は独学で勉強することもできるし、何よりも英語部は寄宿舎を国際交流館に作り変えるのに、部をあげて賛成しているという噂を聞いてしまったからだ。…ただ、英語部には仮入部して2回だけ参加している。その後、本入部を検討した時に、その国際交流館の噂話を聞いてしまったのである。それが決め手となり、英語部はやめた。料理研究会は、週2回の活動にほぼ毎回参加している。図書館のバイトのない日に料理研究会の活動日がよく当たっており、これは関先輩の意向が多少入っているようだった。それとは別に関先輩は日曜に中華料理を作ってくれたり、ルーローハンという台湾の郷土料理を作ってくれたりと、本当に面倒見の良い先輩だった。
「あれ。こないだ来ていた1年生、結局仮入部だけして入らなかったか。」
「はい。諸岡先輩。…やはり寄宿舎の生徒は英語部には入りづらいのかもしれませんね。」
「ち、麗華が何か喋ったかもな。」
「あ、あの帰国子女の先輩ですね。諸岡先輩と仲の良い寄宿舎生の。」
「そう。あの子は英語もかなり成績がいいし、寄宿舎生だから、上手く取り込めば国際交流館設置プロジェクトにも参加してもらえそうだったのに。」
「諸岡先輩、関先輩を相当買っていましたもんね。」
「そう。だから、1年の12月に、次期生徒会に立候補するように勧誘もしたんだけど。英語部への勧誘共々、振られたわ。全く。この私が2度も振られるなんてね。」
「でも、寄宿舎の子は国際交流には消極的なんじゃないですか?自分たちの居場所がなくなるわけですし。」
諸岡百合子は、その後輩の意見には反応を見せなかった。想定内の意見だったからだ。
「ちょっと調べてくれる?その仮入部した寄宿舎の子。仮入部届を見せて。」諸岡百合子は、その後輩に仮入部者の仮入部届を持って来させた。
「元倉尚美。1年4組。中学では英語部。高校では寄宿舎に入ったので、アルバイトと学業と両立できる範囲で英会話部に参加したい、か…。実家は千葉の…なるほど、ちょっと実家は遠いわね。ふぅむ。だれか、1年4組の子いる?元倉尚美さんについて何か知っている人はいる?」
諸岡百合子は生徒会で慣れた大きな声をあげて部員に聞いた。1人の部員が手を挙げた。
「私、1年4組です。元倉さんは、実家に経済的な余裕がないらしくて、週3回アルバイトをしているようです。中学時代の英語部も、お金がかからず、英語の成績も上がるからという理由で入っていたようです。」
「…ありがとう。そうか、麗華というより三浦真知子に近いわね。」
諸岡百合子は、2年3組にいる寄宿舎生の顔を思い浮かべた。三浦とはほとんど喋った事はないが、寄宿舎生の事はほとんど頭に入っている。誰が私の意見に賛同してくれるのか、あるいは説得しなければならない相手か。最終的に敵となってしまう相手か…
「結局、元倉さん、英語部に入らなかったけど、どこか部活に入ったのかしらね。」
「あ、料理研究会に入ったようですよ。アルバイトのない日に参加しているようです。」
諸岡百合子は、舌打ちをした。この元倉という娘、苦学生という点では三浦真知子と重なるし、料理研究会に入ったということは関麗華とも接点がある。もともと三浦と関は家庭環境が正反対なのにとても仲がいい。そこへ両方にとって共通の接点がある元倉尚美が絡んでくれば、寄宿舎生はさらに結束が堅くなる。
「日焼け止めは欠かせないのよ。陸上部は水泳部並みに露出が多いでしょ。」
私は日焼け止めを塗っていても、健康的に焼けた名取先輩の腕に見惚れていると、三浦先輩に突かれた。
「尚美。そろそろ私達もプール掃除で肌が焦げるから、覚悟しておきなさいよ。」
「はーい。」
私は川越市内のドラッグストアで日焼け止めを何本か仕入れてきた。私は、結局部活は料理研究会だけに入る事にした。英語部はあるにはあったが、英語は独学で勉強することもできるし、何よりも英語部は寄宿舎を国際交流館に作り変えるのに、部をあげて賛成しているという噂を聞いてしまったからだ。…ただ、英語部には仮入部して2回だけ参加している。その後、本入部を検討した時に、その国際交流館の噂話を聞いてしまったのである。それが決め手となり、英語部はやめた。料理研究会は、週2回の活動にほぼ毎回参加している。図書館のバイトのない日に料理研究会の活動日がよく当たっており、これは関先輩の意向が多少入っているようだった。それとは別に関先輩は日曜に中華料理を作ってくれたり、ルーローハンという台湾の郷土料理を作ってくれたりと、本当に面倒見の良い先輩だった。
「あれ。こないだ来ていた1年生、結局仮入部だけして入らなかったか。」
「はい。諸岡先輩。…やはり寄宿舎の生徒は英語部には入りづらいのかもしれませんね。」
「ち、麗華が何か喋ったかもな。」
「あ、あの帰国子女の先輩ですね。諸岡先輩と仲の良い寄宿舎生の。」
「そう。あの子は英語もかなり成績がいいし、寄宿舎生だから、上手く取り込めば国際交流館設置プロジェクトにも参加してもらえそうだったのに。」
「諸岡先輩、関先輩を相当買っていましたもんね。」
「そう。だから、1年の12月に、次期生徒会に立候補するように勧誘もしたんだけど。英語部への勧誘共々、振られたわ。全く。この私が2度も振られるなんてね。」
「でも、寄宿舎の子は国際交流には消極的なんじゃないですか?自分たちの居場所がなくなるわけですし。」
諸岡百合子は、その後輩の意見には反応を見せなかった。想定内の意見だったからだ。
「ちょっと調べてくれる?その仮入部した寄宿舎の子。仮入部届を見せて。」諸岡百合子は、その後輩に仮入部者の仮入部届を持って来させた。
「元倉尚美。1年4組。中学では英語部。高校では寄宿舎に入ったので、アルバイトと学業と両立できる範囲で英会話部に参加したい、か…。実家は千葉の…なるほど、ちょっと実家は遠いわね。ふぅむ。だれか、1年4組の子いる?元倉尚美さんについて何か知っている人はいる?」
諸岡百合子は生徒会で慣れた大きな声をあげて部員に聞いた。1人の部員が手を挙げた。
「私、1年4組です。元倉さんは、実家に経済的な余裕がないらしくて、週3回アルバイトをしているようです。中学時代の英語部も、お金がかからず、英語の成績も上がるからという理由で入っていたようです。」
「…ありがとう。そうか、麗華というより三浦真知子に近いわね。」
諸岡百合子は、2年3組にいる寄宿舎生の顔を思い浮かべた。三浦とはほとんど喋った事はないが、寄宿舎生の事はほとんど頭に入っている。誰が私の意見に賛同してくれるのか、あるいは説得しなければならない相手か。最終的に敵となってしまう相手か…
「結局、元倉さん、英語部に入らなかったけど、どこか部活に入ったのかしらね。」
「あ、料理研究会に入ったようですよ。アルバイトのない日に参加しているようです。」
諸岡百合子は、舌打ちをした。この元倉という娘、苦学生という点では三浦真知子と重なるし、料理研究会に入ったということは関麗華とも接点がある。もともと三浦と関は家庭環境が正反対なのにとても仲がいい。そこへ両方にとって共通の接点がある元倉尚美が絡んでくれば、寄宿舎生はさらに結束が堅くなる。
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