平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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同学年の仲

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「そうか…、じゃ、麻衣は、名取先輩の熱烈なオファーを振ったわけだ。」
「人聞きが悪いわ。私は中学で3年間頑張って来たテニスを続ける事にした。それだけのことよ。」
6月のとある放課後、私と相田麻衣は川越市内のファーストフード店で2人っきりで談笑していた。もう、私と相田麻衣は、お互いを苗字ではなく、名前で呼び合う仲になっていた。なんとなく、寄宿舎のノリがお互いの身についている。同学年の生徒同士は、下の名前で呼び捨て。上の学年の先輩は苗字+敬称。関先輩のように、レイカ先輩で良いよ、とそういう垣根を取っ払おうとしてくれる先輩もいたが、それは丁重にお断りした。カッキー先輩、レイカ先輩、名取先輩、三浦先輩…では、心の距離感に差が出る気がした。これは年頃の女子にしかわからない事だろう。
 ファーストフードはあまり入ったことの無い私は、麻衣と一緒に放課後にハンバーガーを食べる事がとても楽しい事に思えた。でも、ハンバーガー自体は好きではなく、寄宿舎の夕食や、たまに関先輩が作ってくれる中華料理の方がよっぽど美味しかった。いや、三浦先輩の料理だって美味しい。私もそれなりに料理を作るから、寄宿舎の食堂で麻衣と話せば良いのではとも思った。しかし、
「尚美と私が2人っきりになれる場所なんて、寄宿舎にないよね。」
麻衣はそう語っていた。寄宿舎は活気があって楽しいけど、たまには1年生同士でつるみたいときだってあるのだ。寄宿舎内で1年同士で内緒話をしていると、三浦先輩や関先輩がからんでくる。…暇な部活の人が、寄宿舎にいる時間が長かった。

  柿沼先輩は吹奏楽部の定期演奏会が近く、校舎内で、いつも遅くまでクラリネットを吹いていた。いつも一番遅くまで吹いていられるのは、寄宿舎生の特権とも言えた。
「尚美、麻衣。もし良かったら、聴きにきてよ。」
吹奏楽部のチケットは柿沼先輩から無料でもらった。麻衣は部活の大会と重なるため、行けなかった。私はクラスの友達にそのチケットを渡して、定期演奏会を観に行った。
「尚美、ありがとう。来てくれたんだね。」
柿沼先輩は、演奏会の日の夜遅くに帰舎し、「る号」の私の部屋までわざわざ足を運んで、お礼を言いに来てくれた。
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