平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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顔合わせ

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  大広間には、三浦先輩がいた。
「お、来たか、後輩たち。」
三浦先輩は足を組んで、大広間の椅子に座っていた。
「待ってたぜ。まあ座れよ。」
なんか男っぽい話し方をする少女だ。私と相田は、大広間の床に座った。
「いいな、今年の後輩は。間違っても先輩の前で椅子に腰かけたりしないな。」
三浦先輩はそう言って笑った。
「去年、そんなバカをやった新入りがいてな。…それが実は私なんだ。」
三浦先輩は受けを狙って言ったようだが、私達は緊張しており、静かに頷くだけだった。
「ま、3年と言ってもほ号の宿舎長しかいないから。5人いる2年生が実質、寄宿舎を仕切っているようなものね。宿舎長は、入学式だというのに、新入生の顔を見にも来ない…。」
三浦先輩は寄宿舎の内情をどこまで新入生に教えるつもりなのだろうか。私達2人がいぶかしむ中、大広間には1人、また1人と女子生徒がやって来た。
「遅いぞ、2年女子、今日は入学式なんだから。新入生の顔ぐらい確認しにこい。」
「トゥイブチ、真知子。」
2番目にやって来たのはさっきのお団子頭の女子生徒だった。たしか関先輩だった。この人は時々何か私達にわからない言葉を発する。寄宿舎の業界用語か、はたまた隠語か…。
「よろしくね。新入生のお二人さん、私、柿沼律かきぬまりつ。呼び名はカッキーでもリツでもいいよ。仲良くやっていこうね。」
3番目にやってきた少女は柿沼先輩というらしい。
「ちょっと、カッキー、あんた先輩なのに後輩より先に名乗っちゃって。ものには順序というものが…。」
「はいはい、堅苦しい挨拶はなし。ごめんね、遅くなって。私、名取峰子なとりみねこ。よろしく。部活、新入生は、どこに入るか決めた?陸上部だったら、私が紹介するよ。」
汗の匂いも消えないままに、タオルを首にかけた上半身ジャージ姿の少女が飛び込んできた。細い足、小鹿のようにくりっとした瞳が印象的な女の子だった。

「ちょっとちょっと、まだ私もこの子たちの名前を聞いていないのよ。あんたたちの前からここにいるのに。」三浦先輩が慌てている。
「それを早く言いなさいって。ね、新入生さん。自己紹介お願いできる?」今合いの手を入れたのが柿沼先輩、…いや、名取先輩だ。
「はーい。私。関麗華です。趣味は太極拳と中華料理です。」
「ちょっと。麗華。いつも聞いているあんたの自己紹介はあとで。新人さんからよ。」
今つっこんだこっちが柿沼先輩だった。
「トゥイブチー。じゃ。あなたからよろしく。」
関先輩は手のひらを上にして、私の方に向けた。
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